| 法令の情報時期:2024年05月 | ページ作成時期:2026年08月 |
目的
本規則は、EU域内における道路輸送部門からの排出ガスおよび各種環境性能に関する共通のルールを策定することを目的とする。
■ 自動車およびエンジンの排出ガス、エネルギー消費、バッテリー耐久性に関する共通の技術要件と管理規定を定めること。
■ EUの全加盟国において環境保護および健康保護を高い水準で達成すること。
■ 自動車関連製品におけるEU単一市場の適切な機能、すなわち自由な移動および公正な競争を確保・維持すること。
■ 排出ガスの削減に加え、ブレーキ粉塵やタイヤ摩耗などの非排出ガス汚染物質、ならびに電気自動車等に搭載されるトラクションバッテリーの最低耐久性基準を新たに導入し、持続可能なゼロエミッション・モビリティへの移行を促進すること。
■ 排出ガス制御システムや走行距離計に対する不正改造を防止し、車両のサイバーセキュリティ対策およびデータ管理に関する厳格なルールを確立すること。
概要
本規則は、これまで乗用車・小型商用車(Euro 5/6基準)と大型商用車(Euro VI基準)に分かれていた排出ガス規制を「ユーロ7(Euro 7)」として1つの規則に統合・再編し、最新の技術動向や電気自動車の普及に対応した画期的な共通基準を定めたものである。
■ 背景: 欧州では長年にわたり自動車からの排出ガスによる健康被害や環境汚染への対策が行われてきた。大型商用車向けの基準は2009年に策定された古い技術を基盤にしていたため、最新の排出制御技術を反映した更新が必要であった。また、電動化への移行に伴い排ガス自体は減少するものの、今後はブレーキやタイヤから発生する微小粒子状物質やマイクロプラスチックが主たる汚染源になると予測されるため、これらを包括的に管理する新たな規制フレームワークとして本規則が成立した。
■ 問題意識: 従来の排出ガス規制のさらなる厳格化が必要であるほか、固体粒子数の測定下限を従来の23ナノメートルから10ナノメートルに引き下げ、極小粒子による健康リスクを低減する必要があった。また、中古電気自動車の購入者を含めた消費者からの信頼を獲得するため、トラクションバッテリーが数年間の使用に耐えうる耐久性性能を保持していることを実証・監視できる制度の導入が求められていた。
■ 適用範囲: 乗用車、バス、トラック、トレーラー、被牽引車などの自動車、およびそれら向けに設計されたエンジン、システム、部品、独立技術単位、ならびにタイヤを対象とする。
■ 期待される効果: 実質的な排出量の低減、特に実走行(RDE)条件下における排出ガスの極小化、電気自動車バッテリーの性能維持、およびブレーキやタイヤからの粒子状物質排出の抑制により、欧州全土における人の健康、空気質、および生態系の保護を大幅に強化すること。
■ 主な要件: 自動車製造者に対しては、車種別・重量別に定められた厳格な排出限界値の遵守、トラクションバッテリーの最低耐久性要件の達成、車載自己診断(OBD)および車載監視(OBM)システム、車載燃料・電力消費監視(OBFCM)装置の設置、ならびに車両ごとの環境対応車パスポート(EVP)の発行などが義務付けられる。
■ 施行時期: 本規則はEU官報掲載の20日後に発効した。具体的な適用開始日は以下の通り段階的に設定されている。
- 乗用車・小型商用車の新規型式:2026年11月29日以降
- 乗用車・小型商用車の新規登録車両:2027年11月29日以降
- バス・トラック・トレーラーの新規型式:2028年5月29日以降
- バス・トラック・トレーラーの新規登録車両:2029年5月29日以降
- タイヤ(新規型式):2028年7月1日以降
- 小規模製造者が製造する車両:乗用車・小型商用車は2030年7月1日以降、バス・トラックは2031年7月1日以降
適用除外(対象外・猶予・免除等)
■ アイスグリップタイヤ: 過酷な氷上路面での走行を主目的として設計された氷上用グリップタイヤについては、技術的な特性上、タイヤ摩耗制限等の本規則が定めるタイヤ関連要件の適用対象外となる。
事業者が注意すべき内容
| 本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。 ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 |
事業者が対応すべき具体的な要件は、以下の通り条項別・製品カテゴリ別に多岐にわたる。
■ 新車および新規部品の型式認証取得(第4条第1項、第2項、第4項)
- 自動車製造者: EU域内で販売、登録、または運行開始されるすべての新車について、本規則に適合した型式認証を取得しなければならない(第4条第1項)。
- 部品製造者: 型式認証を必要とするエンジン、トラクションバッテリー、ブレーキシステム、タイヤ、および交換用排出ガス制御装置について、本規則に基づく認証の取得が必須となる(第4条第1項)。
- 限界値の遵守義務: 新車およびシステム、部品は、附属書Iに定められる排出限界値を、附属書IIIの試験条件下で満たし、かつ附属書IVに定められる車両寿命にわたって性能を維持しなければならない(第4条第2項、第4項、第6条第1項)。
■ 車両への監視・警告システムの装備義務(第4条第6項) 自動車製造者は、製造するすべての車両に、以下のシステムを設計・搭載しなければならない。
- 車載自己診断(OBD)システム: 排出基準超過を招く不具合や、排出性能に関連するコンポーネントの異常を検知・修理するためのシステム(第4条第6項(a))。
- 車載監視(OBM)システム: 排出ガスを継続的に監視・検知し、不適合時にユーザーへ修理を警告・誘導するシステム(第4条第6項(b)、第6条第6項)。
- 車載燃料・電力消費監視(OBFCM)装置: 実際の走行における燃料および電力量消費量、および積載荷重などを測定・記録するシステム(第4条第6項(c))。
- バッテリー劣化状態(SOH)モニター: 駆動用トラクションバッテリーの劣化状況をユーザーが確認できる監視機能(第4条第6項(d))。
- 排出ガス基準超過および反応剤不足に関する運転者警告システム: 基準値を超えるガスが排出されている場合や、排出制御用の還元剤の残量が低下した場合に、運転者へ警告し、適切な期間内に修理されない場合には自動的な始動・稼働制限をかけるシステム(第4条第6項(e)、(f)、第6条第6項(c))。
- データ外部伝達機能: 蓄積された環境データを、定期技術検査や路上検査、あるいはスマート充電システム等に向けて車外へ安全に伝達できる機能(第4条第6項(g))。
■ 操作防止およびサイバーセキュリティ要件(第4条第5項、第7項、第8項、第11項)
- 操作デバイスの禁止: 規制試験時のみ適合しているように見せかけ、実走行時に排出ガスを増加させるような操作デバイスや操作戦略を車両に組み込むことは一切禁止される(第4条第5項)。
- 脆弱性の排除: 燃料噴射、エンジン制御、トラクションバッテリー管理、走行距離計、排出ガス制御システム、OBFCM装置、OBDシステム、OBMシステム、および環境パスポートデータ等の各システムについて、ライフサイクル全体で不正な改変や操作が行われないよう脆弱性を最小化しなければならない。脆弱性が発見された場合は、ソフトウェア更新等を用いて直ちに是正しなければならない(第4条第7項、第8項)。
- セキュリティと暗号化: データの伝達や、排出量・バッテリー劣化に関連するデータ送信は、強固なサイバーセキュリティ対策によって保護・暗号化されなければならない(第4条第11項)。
■ 独立事業者へのアクセス開示(第4条第9項)
- 製造者は、操作防止対策を理由として、独立したアフターマーケット部品開発業者が適合部品を開発・装着・稼働させるために不可欠な情報、ツール、プロセスへのアクセスを拒否してはならない。ただし、情報秘匿がセキュリティ対策上適切な手段であると合理的に証明できる場合はこの限りではない(第4条第9項)。
■ ユーザーへの情報提供と環境対応車パスポート(EVP)の発行(第4条第10項、第7条第4項)
- 製造者は、各新車に紐づくデジタル形式のEVPを発行し、車両購入者へ引き渡さなければならない(第7条第4項)。
- EVPのデータやOBMシステム、OBFCM装置から得られる走行寿命データ、SOH情報は、車両内部のディスプレイまたは二次元コード等を通じて、ユーザーが容易にアクセス・表示できるように設定しなければならない(第4条第10項、第7条第4項)。
■ バッテリー性能・耐久性基準の適合(第6条第1項、第2項、附属書II)
- 最低性能要件の達成: 搭載するトラクションバッテリーは、経過年数および走行距離に応じて、附属書IIに定められた最低耐久性パーセンテージを達成しなければならない(第6条第1項)。
■ 不適合発生時の迅速な是正措置(第6条第8項)
- 自社が製造・供給した車両、システム、部品等に深刻な不適合やリスクが判明した場合、製造者はそれを覚知した時点から直ちに修理や仕様変更等の必要な是正措置を講じ、該当する型式認証機関にその詳細を速やかに報告しなければならない(第6条第8項)。
■ 申請時の適合宣言書の提出(第7条第2項)
- 型式認証の申請にあたり、実走行排出ガス(RDE)、二酸化炭素の常温補正、OBDシステム、OBMシステム、バッテリー耐久性、不正改造防止、クランクケース排出物などに関し、本規則の要件に完全に適合している旨を表明した署名付きの適合宣言書を認証機関に提出しなければならない(第7条第2項)。
■ 経済事業者および独立事業者に対する不正改造の禁止(第12条第1項)
- 車両の修理、整備、チューニング等を行う独立事業者を含むすべての経済事業者は、車両やその排出制御に関わる搭載システムに対して、不正な改変や機能無効化を行ってはならない(第12条第1項)。
■ 小規模製造者およびエンジン単体認証車両に対する特別規則(第8条、第9条)
- 小規模製造者の特例: 年間販売台数が一定規模以下の製造者は、型式認証試験の一部を適合宣言書の提出によって代替することが認められる。また、小規模製造者は、OBMシステム、OBFCM装置、警告システムの一部装備義務が適用除外となる(第8条第1項)。
- エンジン単体認証: 大型の車両カテゴリにおいて、すでに型式認証を取得しているエンジンを搭載して車両を製造する場合、車両製造者が全体の型式認証の責任を負うが、あらかじめ合意がある場合には、エンジン製造者側に実走行適合性(ISC)などの責任の一部を分担させることができる(第9条第1項、第2項)。
■ 政府への要件を通じて将来的に事業者へ影響を及ぼすと思われる内容 本規則は、今後の技術の進歩や国際基準の進捗に応じて、欧州委員会に多くの委任行為を採択する権限を与えており、以下の分野で技術要件や数値基準が大幅に更新されることが明記されている。
- タイヤ摩耗の個別基準策定(第15条第2項、第3項): 現在、附属書Iに示されているタイヤ摩耗限度値の欄は未定であり、国連における国際規格の策定状況を待っている状態である。もし国連での策定が遅れた場合、欧州委員会は自ら測定方法および制限値を決定するための委任権限を行使し、タイヤの種類に応じて段階的に独自の制限を課す。タイヤ製造業者および自動車製造者は、この動向に追従しなければならず、技術的な不確実性が残されている(第15条第2項、第3項)。
- ブレーキ粒子排出制限の追加と厳格化(第15条第2項(a)、第18条第5項): 2030年1月1日以降、ブレーキシステムから排出される粒子状物質に関して、より高度な技術を反映した第2段階の厳格な限界値が設定される予定である。2027年12月31日までに実施される欧州委員会の技術評価報告に基づき、委任行為によって具体的な数値が決定されるため、ブレーキシステム製造者は開発ロードマップの調整が必要となる(第15条第2項(a)、第18条第5項)。
- バッテリー耐久性目標のさらなる拡大(第18条第4項): 欧州委員会は2027年12月31日までにバッテリー耐久性に関する報告書を作成し、さらに長期にわたる使用期間における新たな最低性能要件の導入が適切かどうかを評価する。これが導入された場合、バッテリー素材やセル管理システムに対する長期の製品保証義務がより過酷なものとなる(第18条第4項)。
- 新たな有害物質の排出制限(第15条第1項(c)、第18条第6項): 燃料組成の多様化に伴い、ホルムアルデヒド等の排出が増加する可能性がある。2027年12月31日までの技術評価に基づき、特定の車両を対象に新たな制限値が追加される見込みであり、エンジンおよび触媒システムの適合設計に直接影響する(第15条第1項(c)、第18条第6項)。
注目定義
目次
第I章:対象事項、範囲および定義
第1条:対象事項
第2条:範囲
第3条:定義
第II章:製造者の義務
第4条:車両、システム、部品および独立技術単位の製造に関する製造者の義務
第5条:車両の製造および名称指定に関する製造者の選択肢
第6条:車両、システム、部品および独立技術ユニットの耐久性要件
第7条:排出型式認証に関する製造者の義務
第8条:小規模製造者に対する特別規則
第9条:型式認証済みのエンジンを搭載する車両に対する特別規則
第III章:排出型式認証および市場監視に関する加盟国の義務
第10条:排出型式認証、生産適合性、使用過程適合性および市場監視
第11条:システム、部品および独立技術単位の排出型式認証に関する加盟国の特定の義務
第12条:還元剤を使用するシステムおよび排出制御システムの運用
第IV章:使用過程適合性および市場監視に関する欧州委員会および認められた第三者の役割
第13条:欧州委員会および認められた第三者による試験要件の適用
第V章:試験および宣言
第14条:手続および試験
第15条:技術的進歩への適合
第VI章:一般規定
第16条:委任権限の行使
第17条:委員会手続
第18条:報告および見直し
第VII章:最終規定
第19条:規則(EU) 2018/858の改正
第20条:廃止
第21条:発効および適用
附属書I:ユーロ7排出限界値
附属書II:バッテリー耐久性に関するユーロ7最小性能要件
附属書III:試験条件
附属書IV:寿命要件
附属書V:試験要件および宣言の適用
附属書VI:相関表
基礎情報
| 法令(現地語) | |
| 法令(日本語) | 自動車およびエンジン、ならびに当該車両向けのシステム、構成部品および独立技術ユニットの、排出ガスおよびバッテリー耐久性に関する型式認定(Euro 7)に関する2024年4月24日付欧州議会および理事会規則(EU)2024/1257(欧州議会および理事会規則 (EU) 2018/858を改正し、欧州議会および理事会規則(EC)第715/2007号、同 (EC)第595/2009号、欧州委員会規則(EU)第582/2011号、欧州委員会規則(EU)第2017/1151号、欧州委員会規則(EU)第2017/2400号、ならびに欧州委員会実施規則(EU)第2022/1362号を廃止) |
| 公布日 | 2024年05月08日 |
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