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解説EU-特定液体燃料硫黄分制限指令

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法令の情報時期:2016年05月 ページ作成時期:2026年08月

目的

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本指令は、特定の種類の液体燃料を燃焼させることによって発生する二酸化硫黄の排出量を削減し、それによって人の健康および環境に及ぼすこのような排出の有害な影響を低減させることを目的とする。

■ EU域内の領土、領海、排他的経済水域、または汚染管理水域において、対象となる液体燃料を使用する条件として、その硫黄分に厳格な制限を設定すること。

■ 酸性雨の原因となり、デリケートな生態系の破壊や生物多様性の喪失、森林や農作物の成長阻害、歴史的な建築物や文化遺産への損害をもたらす二酸化硫黄の主要な発生源である液体燃料の仕様を一律に規制すること。

■ 特に、船舶からの高硫黄舶用燃料の燃焼に伴う大気汚染物質を削減し、港湾都市等の大気質を改善すること。

概要

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本指令は、EU域内で流通・使用される重油、軽油、舶用ディーゼル油、および舶用ガスオイルに含まれる硫黄分の上限値を包括的に定め、陸上燃焼プラントおよび海上船舶の両面から大気汚染を抑制する規制の枠組みを規定したものである。

■ 背景: 石炭や石油に微量に含まれる硫黄は、何十年もの間、二酸化硫黄排出の主因として認識されてきた。特に海上船舶からの高硫黄燃料燃焼による排出は、域内の大気汚染を深刻化させており、何の対策も講じなければ、船舶からの排出量が陸上すべての排出源を合わせた量を上回りそうな状況に達していた。これに対応するため、国際条約であるMARPOL条約の環境基準との整合性を図りつつ、より厳しい環境基準を設定する必要が生じた。

■ 問題意識: 二酸化硫黄は大気中で微粒子状物質の形成に寄与し、呼吸器系に疾患を抱える人々を中心に人の健康に極めて重大な影響を与える。また、停泊中の船舶から排出される大気汚染物質は、加盟国の港湾都市における大気質制限値の達成を困難にさせる大きな要因となっていた。

■ 期待される効果: 重油、軽油、および各舶用燃料に含まれる硫黄の最大含有量に一律に制限を適用することで、EU全体の大気質を劇的にクリーンにする。特に、指定された「SOx排出規制海域」内や港湾に停泊する船舶における低硫黄燃料の使用を義務付け、沿岸地域や港湾都市の公衆衛生および生態系の健全性を大きく回復させることが期待されている。

■ 適用対象の事業者: EU域内で重油や軽油を使用する燃焼プラントの運用者、およびEU域内の領海・排他的経済水域・汚染管理水域内を航行または港に停泊する船舶の運航者・船主。また、これらに燃料を供給・販売する燃料供給事業者。

■ 適用製品・施設: 域内で燃料として使用される重油、軽油、およびすべての舶用燃料(舶用ディーゼル油、舶用ガスオイルを含む)、ならびに、それらを熱エネルギー等の生成のために燃焼させる「燃焼プラント」などの技術的装置および海上船舶。

■ 主な事業者要件: 基準値(質量比)を超える硫黄を含有する燃料の使用禁止(重油:1.00%以下、軽油:0.10%以下、停泊船舶燃料:0.10%以下、一般海域:0.50%以下、SOx排出規制海域:0.10%以下)。舶用燃料供給者におけるバンカーデリバリーノート(BDN)への確実な硫黄分記載および署名済みサンプルの船上保管義務、船舶運航者における航海日誌への燃料切り替え記録義務等。

■ 施行時期: 本指令は、EU官報掲載の20日後に発効した。本指令は、前身である指令1999/32/ECおよびその累次の改正指令を法典化したものであり、加盟国の国内法への移転期限はそれぞれの旧指令が定めた期限がそのまま維持され、継続して適用されている。

適用除外(対象外・猶予・免除等)

適用除外

本指令全体の適用から、あるいは特定の燃料仕様から明示的に適用範囲外と規定されている燃料および行為は以下の通りである。

■ 研究および試験を目的とする燃料。

■ 最終燃焼の前に加工を行うことを目的とする燃料。

■ 精製業界において加工される予定の燃料。

■ 軍艦およびその他の軍務に就く船舶で使用される燃料。

■ 船舶の安全確保、または海上での人命救助という特定の目的のために必要とされる、船舶における燃料のあらゆる使用。

■ 船舶またはその設備が被った破損を理由として必要となる船舶での燃料の使用。

■ 排出削減方法を採用している船舶の船上で使用される燃料。

また、本指令における軽油の定義から、以下の製品が明示的に適用外とされている。

■ 指令98/70/ECに規定されるディーゼル燃料。

■ 非道路移動作業機械および農業用トラクターで使用される燃料。

事業者が注意すべき内容

本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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事業者が対応すべき具体的な要件を、条項および実務的立場別に整理して以下に示す。

燃焼プラントの運用者に対する要件

■ 重油の最大硫黄分の遵守:EUの領土内で重油を使用する燃焼プラントの運用者は、燃料の硫黄分が質量比で「1.00%」を超えるものを使用してはならない (第3条第1項)。

■ 例外的に1.00%超の重油を使用する場合の認可取得要件:2016年1月1日以降、1.00%を超える重油を燃焼プラントで使用して稼働させる場合、権限ある当局から排出限界値を明記した個別の許可を発行されなければならず、さらに適切な排出監視を実施しなければならない (第3条第3項)。 具体的には、以下のいずれかの設備要件を満たす必要がある。

  • 指令2010/75/EUの第III章の適用を受け、同指令の附属書Vに定める二酸化硫黄の排出限界値を遵守している、または同限界値が適用されない場合は月平均の二酸化硫黄排出量が、乾きガス酸素濃度3%換算で「1,700 mg/Nm3」以下である燃焼プラント (第3条第3項(a))。
  • 上記以外の燃焼プラントであって、月平均の二酸化硫黄排出量が、乾きガス酸素濃度3%換算で「1,700 mg/Nm3」を超えないもの (第3条第3項(b))。
  • 精製所内における燃焼において、使用される燃料の種類や組み合わせにかかわらず、精製所内のすべての燃焼プラントの二酸化硫黄排出量の月平均値が、酸素含有量3%換算で「1,700 mg/Nm3」を超えないもの(ただし、Chapter III of Directive 2010/75/EUの適合プラントやガスタービン、ガスエンジンは算出から除く) (第3条第3項(c))。
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軽油の使用事業者に対する要件

■ 軽油の最大硫黄分の遵守:EUの領土内で軽油を使用する事業者は、その硫黄分が質量比で「0.10%」を超える軽油を使用してはならない (第4条)。

船舶の運航者・船主に対する要件

■ 使用する舶用燃料の最大硫黄分の遵守(一般水域):EUの領海、排他的経済水域、および汚染管理水域を航行する船舶の運航者は、その船舶の旗国や出発地にかかわらず、硫黄分が質量比で以下の制限を超える舶用燃料を使用してはならない:

  • 質量比で「3.50%」を超える舶用燃料:(第5条)。
  • 2020年1月1日以降:質量比で「0.50%」を超える舶用燃料:(第6条第1項)。

■ SOx排出規制海域内における極めて厳格な硫黄分制限の遵守:SOx排出規制海域を航行する船舶の運航者は、硫黄分が質量比で「0.10%」を超える舶用燃料を使用してはならない。この要件は、すべてのフラッグの船舶に一律で適用される (第6条第2項)。

■ 定期旅客船に適用される制限の遵守:EUの港を発着する定期航路を運航する旅客船であって、SOx排出規制海域外の加盟国の領海、排他的経済水域、汚染管理水域を航行するものは、2020年1月1日までの期間、硫黄分が質量比で「1.50%」を超える舶用燃料を使用してはならない (第6条第5項)。

■ 航海日誌への記入および燃料切り替え記録義務:船舶の運航者は、航海日誌を正確に記入しなければならない。これには、低硫黄燃料への切り替え作業をいつ完了したかの詳細な日時および記録、さらに燃料変更時の各燃料タンク内の液量等の具体的な情報が含まれなければならない (第6条第6項)。

■ 基準適合燃料が購入できなかった場合の証拠提示要件:船舶が本指令に適合する燃料を購入できずに不適合となった場合、運航者は、適合を達成するために試みたすべての行動記録を提示して、ポートステートの検査当局に不適合の不可抗力性を証明しなければならない (第6条第8項)。

■ 燃料入手不可時の速やかな当局への通報義務:適合する舶用燃料を購入できない事態に直面した船舶の運航者は、直ちにその自船の旗国および目的地の港の権限ある当局に対してその旨を通知しなければならない (第6条第8項)。

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船舶の運航者・船主に対する要件(つづき)

■ EUの港に停泊中の船舶における制限の遵守:EUの港に停泊する船舶の運航者は、停泊中、硫黄分が質量比で「0.10%」を超える舶用燃料を使用してはならない。到着後できるだけ速やかに、出発前ならばできるだけ直前に、必要な燃料切り替え作業を完了させなければならず、その時間を航海日誌に記録しなければならない (第7条第1項)。

  • 本要件の適用除外(例外):
    • 公表された時刻表に基づいて、予定される停泊時間が「2時間未満」である場合 (第7条第2項)。
    • 停泊中にすべてのエンジンをオフにし、陸電を使用する場合 (第7条第2項)。

■ 代替技術(排出削減方法)を使用する場合の継続的な同等性要件:低硫黄燃料を使用する代替として、排出削減方法を使用する船舶の運航者は、基準適合燃料を使用した場合に達成される削減量と同等以上の二酸化硫黄の排出削減を継続的に達成しなければならない (第8条第2項)。 また、これらの技術や装置は、CEN規格やISO規格に準拠したバイオ燃料の使用基準、化学物質を使用した洗浄水の海への排出制限基準等に規定される基準を常に満たさなければならない (第8条第4項)。

■ 新しい排出削減方法の試験を実施する場合の要件:新しい排出削減技術の試験を、加盟国の承認を得て実施する船舶の運航者は、その試験期間中、以下の技術的および手続的要件をすべて満たさなければならない (第10条):

  • 試験開始の少なくとも6ヶ月前に、欧州委員会および関係する港湾国に対して書面で通知すること(第10条)。
  • 試験の許可期間は18ヶ月を超えてはならない(第10条)。
  • すべての試験対象船に、不正開封防止が施された、煙突の排ガス連続監視用機器を設置し、試験期間を通じて稼働させること(第10条)。
  • 試験中の排ガス削減レベルについて、本指令の燃料基準と同等以上の削減を常に達成すること(第10条)。
  • 試験プロセスで発生するあらゆる廃棄物について、試験期間中にわたり適切な廃棄物管理システムを導入して適切に処理すること(第10条)。
  • 試験期間中、海洋環境への影響を評価すること(第10条)。
  • 試験終了後6ヶ月以内に、すべての結果を欧州委員会に提出し、かつ公表すること(第10条)。
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燃料供給・販売事業者に対する要件

■ バンカーデリバリーノート(BDN)の作成・交付およびサンプル採取同行義務 舶用燃料の供給事業者は、EU域内で販売されるすべての舶用燃料について、その硫黄分を文書化したBDNを作成し、受領する船舶に交付しなければならない。また、受領船舶の代表者が署名および封印したサンプルをこのBDNに添付し、適切に保管・記録しなければならない(第6条第9項)。

■ 販売制限:最大硫黄分の絶対基準

  • 舶用ディーゼル油:燃料供給事業者は、硫黄分が質量比で「1.50%」を超える舶用ディーゼル油をEU市場に投入してはならない(第6条第10項)。
  • 舶用軽油:燃料供給事業者は、硫黄分が質量比で「0.10%」を超える舶用軽油をEU市場に投入してはならない(第7条第3項)。
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政府への要件を通して将来的に事業者へ影響を及ぼすと思われる内容

■ ポートステートコントロール等によるサンプリング監査の強化:加盟国政府には、使用および市場投入される燃料が本指令に適合しているかをチェックするため、定期的かつ十分な頻度と数量によるサンプリングおよび分析を、実際に使用中の燃料タンクやバンカーの密封サンプル、日誌、BDNの検査を通じて行うことが義務付けられている(第13条第1項、第2項)。これにより、事業者は、予告のない検査、サンプリング要請、および日誌提示に常時対応するためのオペレーション体制を構築しなければならない。

■ 違反による経済的利益を剥奪する巨額の罰則:加盟国は、本指令の国内対応規則に違反した者に対する罰則を定めることになっているが、本指令はこれら罰則について有効かつ比例的で、抑止力のあるものとすることを義務付けている。具体的には、適用される罰金が、違反行為によって事業者等が得た経済的利益を最低でも剥奪するような金額設定にすること、さらに違反を繰り返すごとにその罰金額を段階的に引き上げる措置を講じることを明示的に求めている(第18条)。これにより、不適合燃料を使用した際のリスクは極めて巨額な金銭的損失となり、事業の存続を脅かす要素となる。

■ 燃料の供給ストップ時等における臨時規制緩和手続き:原油や石油製品の突然の供給変化により、特定の加盟国が本指令の重油や軽油の制限を適用することが著しく困難になった場合、加盟国の通報に基づいて欧州委員会は最大6ヶ月にわたり、より高い上限値を適用できる(第12条)。

■ 委員会への委任権限による将来的なサンプリング・測定規格のアップデート:欧州委員会は、サンプリングの頻度、方法、代表サンプルを決定するための実施行為の採択権限(第13条第4項)、および分析方法規格の変更に伴う技術的アップデートのための委任行為の採択権限を付与されている(第15条)。これらの改正は直接本指令の適用範囲や硫黄上限値を変えるものではないとされるが、事業者は新しい測定分析プロセスへの即時適応を迫られ、分析機器のアップデート等の追加コストが生じる可能性がある。

注目定義

目次

第1条:目的および適用範囲

第2条:定義

第3条:重油の最大硫黄分

第4条:軽油中の最大硫黄分

第5条:舶用燃料中の最大硫黄分

第6条:加盟国の領海、排他的経済水域および汚染管理水域(SOx排出規制海域を含む)で使用される舶用燃料、およびEUの港を発着する定期航路を運航する旅客船が使用する舶用燃料の最大硫黄分

第7条:EUの港に停泊中の船舶が使用する舶用燃料の最大硫黄分

第8条:排出削減方法

第9条:加盟国の旗を掲げる船舶における使用のための排出削減方法の承認

第10条:新しい排出削減方法の試験

第11条:財務的措置

第12条:燃料供給の変動

第13条:サンプリングおよび分析

第14条:報告および見直し

第15条:科学技術の進歩への適応

第16条:委任の行使

第17条:委員会手続き

第18条:罰則

第19条:廃止

第20条:発効

第21条:宛先

附属書I:第8条第2項に言及される排出削減方法に対する同等排出値

附属書II:第8条第4項に言及される排出削減方法の使用基準

附属書III:パートA – 廃止された指令およびその累次の改正の一覧

パートB – 国内法化の期限

附属書IV:相関表

基礎情報

法令(現地語)

Directive (EU) 2016/802 of the European Parliament and of the Council of 11 May 2016 relating to a reduction in the sulphur content of certain liquid fuels (codification)

法令(日本語)

特定の液体燃料の硫黄含有量の削減に関する2016年5月11日付欧州議会および理事会指令(EU) 2016/802(統合法)

公布日

2016年05月21日

作成者

株式会社先読

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