| 法令の情報時期:2026年10月 確認 | ページ作成時期:2026年10月 |
目的
本規則は、米国労働安全衛生法(OSH Act)に基づく一般産業向けの労働安全衛生規則(連邦規則集第29編第1910部)の一部であり、13種の発がん性物質を取り扱う区域において、従業員が当該物質にばく露し、または接触することを防ぐことを目的とする。
規則が定める内容から、具体的には次の点が目的となる。
■ 対象物質を製造、加工、使用、再包装、放出、取扱いまたは保管する場所に「規制区域」を設け、立入りを許可された従業員に限定すること(§1910.1003(c))
■ 作業の形態(隔離系、閉鎖系、開放容器系、移送・投入・排出、保守・除染)ごとに、換気、保護衣、呼吸用保護具、洗浄・シャワー等の措置を定めること(§1910.1003(c)、(d))
■ 危険有害性の周知、標識、教育訓練および医学的監視を通じて、従業員に危険性を認識させ、健康状態を継続的に把握すること(§1910.1003(e)、(g))
概要
本規則は、次の13種の発がん性物質を製造、加工、再包装、放出、取扱いまたは保管するすべての区域に適用される。4-ニトロビフェニル、α-ナフチルアミン、メチルクロロメチルエーテル、3,3′-ジクロロベンジジン(およびその塩)、ビス-クロロメチルエーテル、β-ナフチルアミン、ベンジジン、4-アミノジフェニル、エチレンイミン、β-プロピオラクトン、2-アセチルアミノフルオレン、4-ジメチルアミノアゾベンゼン、N-ニトロソジメチルアミンである。
事業者は、これらの物質を取り扱う場所に規制区域を設定し、立入りを許可された従業員に限定しなければならない。開放容器系での作業は禁止されている。閉鎖系からの移送や投入・排出の作業では、連続的な局所排気、全身を覆う清浄な保護衣、物質に応じた呼吸用保護具の使用、退出時の保護衣の取り外しと洗浄が求められる。
さらに、規制区域の陰圧維持、飲食・喫煙等の禁止、緊急時の退避と24時間以内の医師による特別な医学的監視、危険有害性周知規則(HCS)に基づく分類・表示、規制区域入口の標識、立入り前および年1回の教育訓練、配置前および年1回以上の健康診断と記録の保存が定められている。
適用除外(対象外・猶予・免除等)
■ 密封された容器による積替え(transshipment)には、本規則は適用されない。ただし、(e)(2)、(e)(3)および(e)(4)に基づく表示等の要件は適用される(§1910.1003(a)(1))
■ 4-ニトロビフェニル、メチルクロロメチルエーテル、ビス-クロロメチルエーテル、β-ナフチルアミン、ベンジジンまたは4-アミノジフェニルの含有率が重量または体積で0.1パーセント未満である固体または液体の混合物には、本規則は適用されない(§1910.1003(a)(2))
■ α-ナフチルアミン、3,3′-ジクロロベンジジン(およびその塩)、エチレンイミン、β-プロピオラクトン、2-アセチルアミノフルオレン、4-ジメチルアミノアゾベンゼンまたはN-ニトロソジメチルアミンの含有率が重量または体積で1.0パーセント未満である固体または液体の混合物には、本規則は適用されない(§1910.1003(a)(2))
事業者が注意すべき内容
| 本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。 ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 |
規制区域の設定(§1910.1003(c) 柱書)
■ 事業者は、対象の発がん性物質を製造、加工、使用、再包装、放出、取扱いまたは保管する場所に、規制区域を設定しなければならない。当該区域は、以下の作業形態ごとの要件に従って管理しなければならない(§1910.1003(c))
隔離系(§1910.1003(c)(1))
■ グローブボックス等の隔離系で作業する従業員には、割り当てられた作業の完了時、および隔離系に関係しない他の活動に従事する前に、手および腕を洗浄させなければならない(§1910.1003(c)(1))
閉鎖系での作業(§1910.1003(c)(2))
■ 対象物質が密封容器で保管され、または配管系を含む閉鎖系内に収容され、試料採取口や開口部が閉じられている規制区域では、立入りを許可された従業員に限定しなければならない(§1910.1003(c)(2)(i))
■ 4-ニトロビフェニル、α-ナフチルアミン、3,3′-ジクロロベンジジン(およびその塩)、β-ナフチルアミン、ベンジジン、4-アミノジフェニル、2-アセチルアミノフルオレン、4-ジメチルアミノアゾベンゼンまたはN-ニトロソジメチルアミンにばく露する従業員には、規制区域から退出するたびに、退出地点の近くで、他の活動に従事する前に、手、前腕、顔および首を洗浄させなければならない(§1910.1003(c)(2)(ii))
開放容器系での作業の禁止(§1910.1003(c)(3))
■ 隔離系、実験室型フードまたは同等の保護を与えるその他のシステムの中にない開放容器で対象物質を扱う作業(開放容器系での作業)は、禁止されている(§1910.1003(c)(3)、(b)(13))
閉鎖系からの移送、投入・排出箇所での作業等(§1910.1003(c)(4))
■ 立入りは、許可された従業員に限定しなければならない(§1910.1003(c)(4)(i))
■ 各作業には連続的な局所排気装置を設け、空気の流れが常に通常の作業区域から当該作業へ向かうようにしなければならない。排気は、除染されない限り、規制区域、非規制区域または外部環境へ排出してはならない(§1910.1003(c)(4)(ii))
■ 従業員には、規制区域に入る前に、清浄な全身保護衣(スモック、カバーオール、または長袖シャツとズボン)、靴カバーおよび手袋を支給し、着用させなければならない(§1910.1003(c)(4)(iii))
■ 上記(c)(2)(ii)に掲げる9物質の取扱作業に従事する従業員には、NIOSH認証の粒子フィルター付き半面形ろ過式呼吸用保護具を支給し、着用・使用させなければならない。メチルクロロメチルエーテル、ビス-クロロメチルエーテル、エチレンイミンまたはβ-プロピオラクトンの取扱作業に従事する従業員には、全面形面体を備え、プレッシャーデマンド式その他の陽圧式で作動する自給式呼吸器、または全面形面体を備え、プレッシャーデマンド式その他の陽圧式で作動し、補助用の陽圧式自給式呼吸器と組み合わせた送気式呼吸用保護具を支給し、着用・使用させなければならない(§1910.1003(c)(4)(iv))
■ 規制区域から退出する前に、従業員に保護衣および保護具を退出地点で取り外させ、そこに置かせなければならない。その日の最後の退出時には、使用済みの保護衣および保護具を、除染または廃棄のため、退出地点で不浸透性の容器に入れさせなければならない。当該容器の内容物は、(e)の定めに従い識別しなければならない(§1910.1003(c)(4)(v))
■ 規制区域内に水飲み場を設けてはならない(§1910.1003(c)(4)(vi))
■ 従業員には、規制区域から退出するたびに手、前腕、顔および首を洗浄させなければならない。また、本号が指定する物質にばく露する従業員には、その日の最後の退出の後にシャワーを浴びさせなければならない(§1910.1003(c)(4)(vii))
保守および除染の作業(§1910.1003(c)(5))
■ 対象物質に直接接触するおそれのある保守・除染の作業に入る許可された従業員には、手袋、長靴および連続送気式フードを含む、清浄で不浸透性の衣服を支給し、着用させなければならない(§1910.1003(c)(5)(i))
■ 当該従業員は、保護衣およびフードを脱ぐ前に除染し、脱いだ後にシャワーを浴びさせなければならない(§1910.1003(c)(5)(ii)、(iii))
規制区域の一般要件(§1910.1003(d))
■ 事業者は、§1910.134の所定の項に従い、呼吸用保護プログラムを実施しなければならない(§1910.1003(d)(1))
■ 緊急事態では、緊急事態と判断され次第、影響を受けるおそれのある区域から退避させ、通常の作業を再開する前に、危険な状態を除去し当該区域を除染しなければならない(§1910.1003(d)(2)(i)、(ii))
■ 緊急事態の発生時に当該区域にいた従業員について、24時間以内に医師による特別な医学的監視を開始しなければならない。対象物質に接触したことが判明している従業員には、身体の負傷により禁忌とされる場合を除き、できる限り速やかにシャワーを浴びさせなければならない(§1910.1003(d)(2)(iii)、(iv))
■ エチレンイミンまたはβ-プロピオラクトンへの直接ばく露が最も起こりやすい場所の近くに、飲用に適した流水を供給する緊急用シャワーおよび洗眼設備を設置しなければならない(§1910.1003(d)(2)(v))
■ 規制区域内での食品の保管または摂取、飲料容器の保管または使用、化粧品の保管または使用、喫煙等は禁止されている(§1910.1003(d)(3)(i))
■ §1910.141の所定の項に従い、洗浄設備およびシャワー設備を設け、更衣を要する従業員の数に応じた清浄な更衣室を設けなければならない。規制区域内に便所がある場合は、別室としなければならない(§1910.1003(d)(3)(ii)〜(v))
■ 屋外の系を除き、規制区域は非規制区域に対して陰圧に維持しなければならない。この要件は局所排気により満たすことができる。除去した空気は、同量の清浄な補給空気で置き換えなければならない(§1910.1003(d)(4)(i))
■ 規制区域に持ち込み、または持ち出す機器、材料その他の物品は、非規制区域または外部環境を汚染しない方法で扱わなければならない。材料、機器および除染施設の表面から対象物質を除去する除染手順を定め、実施しなければならない(§1910.1003(d)(4)(ii)、(iii))
■ 上記(c)(2)(ii)に掲げる9物質については、乾式の掃き掃除および乾式のモップ掛けは禁止されている(§1910.1003(d)(4)(iv))
危険有害性の周知(§1910.1003(e))
■ 化学品の製造者、輸入者、流通業者および事業者は、13物質のそれぞれについて、危険有害性周知規則(HCS、§1910.1200)のすべての要件を遵守しなければならない(§1910.1003(e)(1)(i))
■ 危険有害性の分類にあたっては、少なくとも(e)(1)(iv)に物質ごとに掲げられた危険有害性を取り上げなければならない。すべての物質に「がん」が掲げられ、物質により急性毒性、皮膚・眼・呼吸器への影響、皮膚感作性、変異原性、肝臓・腎臓への影響、引火性が加わる(§1910.1003(e)(1)(ii)、(iv))
■ 事業者は、HCSを遵守するために策定する危険有害性周知プログラムに、これらの物質を含めなければならない。また、各従業員が、これらの物質の容器のラベルおよび安全データシートを利用でき、かつHCSおよび(e)(4)の要件に従って教育訓練を受けることを確保しなければならない(§1910.1003(e)(1)(iii))
■ 規制区域の入口には、「DANGER」「(化学物質の名称)」「MAY CAUSE CANCER」「AUTHORIZED PERSONNEL ONLY」の文言を記した標識を掲示しなければならない。(c)(5)の保守・除染の作業が行われる規制区域の入口の標識には、これらに加えて「WEAR AIR-SUPPLIED HOODS, IMPERVIOUS SUITS, AND PROTECTIVE EQUIPMENT IN THIS AREA」の文言を記さなければならない(§1910.1003(e)(2)(i)、(ii))
■ 規制区域の入口および出口に、適切な標識および指示を掲示しなければならない(§1910.1003(e)(2)(v))
■ 必要とされる標識、ラベルまたは指示の上またはその近くに、必要とされる警告、情報または指示と矛盾し、またはその効果を損なう記述をしてはならない(§1910.1003(e)(3))
■ 各従業員には、規制区域への立入りを許可する前に、教育訓練を実施しなければならない。内容は、発がん性の危険の性質(局所毒性および全身毒性を含む)、ばく露を生じうる作業の具体的内容、医学的監視プログラム・除染・緊急時の手順・応急処置の目的と適用、緊急時における当該従業員の役割、対象物質の放出につながりうる状況の認識と評価、ならびに本規則の確認(最初の教育訓練時およびその後毎年)である(§1910.1003(e)(4)(i))
■ 具体的な緊急時手順を定めて掲示し、従業員にその内容を習熟させ、訓練しなければならない。プログラムに関するすべての資料は、求めに応じて当局の権限ある代表者に提供しなければならない(§1910.1003(e)(4)(ii)、(iii))
医学的監視(§1910.1003(g))
■ 規制区域への立入りの配置を検討している従業員および許可された従業員について、従業員の費用負担なしに、医学的監視プログラムを策定し実施しなければならない(§1910.1003(g) 柱書)
■ 規制区域への立入りに配置する前に、医師による配置前健康診断を実施しなければならない。健康診断には、本人の既往歴、家族歴および職業歴(遺伝的要因および環境要因を含む)を含める(§1910.1003(g)(1)(i))
■ 許可された従業員には、配置前健康診断の後、年1回以上の頻度で定期健康診断を実施しなければならない(§1910.1003(g)(1)(ii))
■ すべての健康診断において、医師は、免疫能の低下、ステロイドまたは細胞毒性薬剤による治療、妊娠、喫煙等、リスクを高める状態の有無を考慮する(§1910.1003(g)(1)(iii))
■ 事業者は、すべての健康診断について完全かつ正確な記録を保存させなければならない。記録は当該従業員の雇用期間中、保存しなければならない(§1910.1003(g)(2)(i))
■ 記録は、求めに応じて、§1910.1020の所定の項に従い従業員、指定代理人および当局に提供しなければならない。健康診断を行った医師は、当該ばく露業務への従業員の適性に関する意見書を事業者に提出する(§1910.1003(g)(2)(ii)、(iii))
解釈上残る曖昧な点
(f)「報告」は留保とされており、現行の条文には当局への報告義務の内容が定められていない。また、本規則は対象物質の空気中濃度に関する数値上の限度を定めておらず、規制区域の範囲をどのように画定するかについての具体的な基準も条文上は示されていない。これらの点には曖昧な部分が残っていると考えられる。
注目定義
<対象>
■ 「規制区域」(regulated area)
| 出入りが制限され、管理されている区域をいう(§1910.1003(b)) |
<対象>
■ 「閉鎖系」(closed system)
| 対象の発がん性物質を扱う作業であって、封じ込めにより、当該物質が規制区域、非規制区域または外部環境へ放出されることを防止するものをいう(§1910.1003(b)) |
<対象>
■ 「許可された従業員」(authorized employee)
| 職務上、規制区域内にいることを要し、かつ事業者により特に指名された従業員をいう(§1910.1003(b)) |
目次
§1910.1003 13種の発がん性物質(4-ニトロビフェニル等)
(a) 適用範囲
(b) 定義
(c) 発がん性物質を扱う区域に関する要件
(c)(1) 隔離系
(c)(2) 閉鎖系での作業
(c)(3) 開放容器系での作業
(c)(4) 閉鎖系からの移送、投入または排出箇所での作業等
(c)(5) 保守および除染の作業
(d) 規制区域の一般要件
(d)(1) 呼吸用保護プログラム
(d)(2) 緊急事態
(d)(3) 衛生設備および衛生上の慣行
(d)(4) 汚染の管理
(e) 危険有害性の周知
(e)(1) 危険有害性の周知
(e)(2) 標識
(e)(3) 禁止される記述
(e)(4) 教育訓練
(f) 報告[留保]
(g) 医学的監視
(g)(1) 健康診断
(g)(2) 記録
基礎情報
| 法令(現地語) | |
| 法令(日本語) | 連邦規則集第29編第1910部 サブパートZ 有毒・有害物質 §1910.1003 13種の発がん性物質(4-ニトロビフェニル等) |
| 公布日 | サブパートZの出典表示は1974年06月27日(39 FR 23502)であり、1975年05月28日(40 FR 23072)に再指定された。本条の出典表示は1996年03月07日(61 FR 9242)であり、直近の改正は2012年03月26日(77 FR 17779)である。 |
| 所管当局 | 米国労働省 労働安全衛生局(OSHA) |
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