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解説EU-EUにおける適切な最低賃金に関する指令

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法令の情報時期:2022年10月 公布 ページ作成時期:2026年09月

目的

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本指令は、EUにおける生活条件および労働条件、とりわけ労働者にとっての最低賃金の適切性を改善し、社会的な上方収斂に寄与するとともに賃金格差を縮小することを目的としている。この目的のため、次の事項に関する枠組みを設けている(第1条第1項)。

■ 適切な生活条件および労働条件の実現を目指した、法定最低賃金の適切性

■ 賃金決定に関する団体交渉の促進

■ 国内法または労働協約において最低賃金保護に関する権利が定められている場合における、労働者の当該権利への実効的なアクセスの強化

本指令は、労使の自律性ならびに労働協約を交渉し締結する権利の完全な尊重を妨げるものではなく、また最低賃金の水準を定める加盟国の権限や、法定最低賃金を設けるか労働協約による最低賃金保護へのアクセスを促進するかの選択にも影響を及ぼさない(第1条第2項、第3項)。

概要

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本指令は、加盟国において効力を有する法令、労働協約または慣行により定義される雇用契約または雇用関係を有する、EU域内の労働者に適用される(第2条)。加盟国に対する枠組み指令であり、事業者に対する要件は国内法化を通じて生じる構造となっている。

第一の柱は団体交渉の促進である。加盟国は労使の交渉能力の構築・強化、賃金交渉の奨励、団体交渉に参加する労働者・労働組合代表の保護等の措置を講じる。団体交渉カバー率が80%の基準を下回る加盟国は、カバー率を段階的に高めるための行動計画を策定し、公表のうえ欧州委員会へ通知しなければならない(第4条)。

第二の柱は法定最低賃金である。法定最低賃金を有する加盟国は、その設定・更新の手続を整備し、購買力、賃金水準と分布、賃金の伸び率、長期的な生産性水準と推移を少なくとも含む基準を定める。適切性の評価には、総中位賃金の60%や総平均賃金の50%といった指標的参照値を用いる。更新は少なくとも2年ごと(自動物価連動制を用いる場合は少なくとも4年ごと)に行う(第5条)。

第三の柱は横断的規定であり、公共調達、モニタリングとデータ収集、情報公開、救済および制裁が定められている(第9条から第13条)。

加盟国は2024年11月15日までに本指令を遵守するために必要な措置を採択しなければならない(第17条第1項)。

適用除外(対象外・猶予・免除等)

適用除外

本指令には、指令全体の適用から事業者・製品・施設・行為を一律に免除する規定は置かれていない。適用範囲に関わる定めとして、次の点がある。

■ 合同海事委員会または国際労働事務局理事会が権限を与えた他の機関が定期的に定める船員の最低賃金に関する措置を加盟国が実施する法令等は、本指令第II章(法定最低賃金)の適用を受けない。ただし、これらの法令等は団体交渉の権利およびより高い最低賃金水準を採択する可能性を妨げない(第1条第5項)。

■ 第II章は法定最低賃金を有する加盟国を名宛人としており、賃金形成が専ら労働協約により確保されている加盟国に対して法定最低賃金の導入を義務づけるものではない(第1条第4項(a))。

事業者が注意すべき内容

本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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本指令の要件の大半は加盟国に向けられており、事業者に直接適用される義務は、国内法化された法令および労働協約を通じて生じる。以下では、事業者に影響を及ぼすと考えられる内容を条項ごとに整理する。

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団体交渉に関する事業者の行為規律(第4条)

■ 加盟国は、賃金決定に関する団体交渉に参加し、または参加を希望することを理由に、雇用に関して労働者および労働組合代表が差別される行為から、これらの者を保護する措置を適宜講じる(第4条第1項(c))。事業者側の対応として、団体交渉への参加を理由とする不利益取扱いが国内法上禁止されることになる。

■ 加盟国は、団体交渉に参加しまたは参加を希望する労働組合および使用者団体を、相互のまたはその代理人・構成員による、設立・運営・管理への干渉行為から保護する措置を適宜講じる(第4条第1項(d))。

■ 団体交渉カバー率が80%未満の加盟国では、団体交渉のための実現条件の枠組みおよび行動計画が設けられる(第4条第2項)。事業を行う加盟国においてカバー率の引上げに向けた施策が導入されうる点に留意が必要である。

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法定最低賃金の水準および更新への対応(第5条、第6条)

■ 法定最低賃金を有する加盟国では、購買力(生活費を考慮する)、賃金の一般的水準と分布、賃金の伸び率、長期的な国内生産性の水準と推移を少なくとも含む基準に基づき、法定最低賃金が設定・更新される(第5条第1項、第2項)。

■ 法定最低賃金の更新は、少なくとも2年ごとに、自動物価連動制を用いる加盟国では少なくとも4年ごとに、定期的かつ適時に行われる(第5条第5項)。事業者としては、これらの周期で賃金水準の見直しが生じることを前提とした人件費管理が必要となる。

■ 特定の労働者集団に対する異なる法定最低賃金率や、報酬を法定最低賃金の水準未満に引き下げる控除を加盟国が認める場合、それらは無差別および比例性(正当な目的の追求を含む)の原則に適合するものでなければならない(第6条第1項)。本指令は、加盟国に変動や控除の導入を義務づけるものではない(第6条第2項)。

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執行・監督への対応(第8条)

■ 加盟国は、労働監督機関または法定最低賃金の執行を担う機関による、実効的、比例的かつ無差別な管理および現地査察を行うこととされている(第8条(a))。

■ 加盟国は、遵守していない使用者を先行的に特定し追及できるよう、訓練およびガイダンスを通じて執行当局の能力を高めることとされている(第8条(b))。事業者としては、最低賃金の支払状況に関する査察を受けうることを前提とした記録・運用の整備が求められる。

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公共調達およびコンセッション契約(第9条)

■ 加盟国は、指令2014/23/EU、2014/24/EUおよび2014/25/EUに従い、公共調達契約またはコンセッション契約の付与および履行において、経済事業者およびその下請業者が、賃金、団結権および賃金決定に関する団体交渉に関して適用される義務を遵守することを確保するための適切な措置を講じる(第9条)。

■ ここでいう義務には、EU法、国内法、労働協約により定められた社会・労働法分野の義務に加え、国際的な社会・労働法規定(ILO結社の自由及び団結権保護条約(第87号、1948年)およびILO団結権及び団体交渉権条約(第98号、1949年))に基づく義務が含まれる(第9条)。EUの公共調達に参加する事業者およびその下請業者は、これらの遵守を求められる。

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救済および不利益取扱いの禁止(第12条)

■ 国内法または労働協約に定められた法定最低賃金または最低賃金保護に関する権利の侵害があった場合、雇用関係が終了した者を含む労働者が、実効的、適時かつ公平な紛争解決および救済を受けられるよう、加盟国が確保する(第12条第1項)。

■ 加盟国は、労働組合の組合員または代表である者を含む労働者および労働者代表を、使用者による不利益な取扱い、ならびに使用者への苦情申立てや遵守の確保を目的として開始された手続に起因する不利益な結果から保護するために必要な措置を講じる(第12条第2項)。事業者は、最低賃金に関する苦情申立てや手続の開始を理由とする不利益取扱いを行わないよう留意する必要がある。

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制裁(第13条)

■ 加盟国は、本指令の適用範囲に含まれる権利および義務であって国内法または労働協約に定められたものの違反に対し、制裁に関する規則を定める。法定最低賃金のない加盟国では、労働協約の執行に関する規則に定められた補償または契約上の違約金への参照を含み、またはこれに限定することができる(第13条)。

■ 制裁は実効的、比例的かつ抑止的でなければならない(第13条)。具体的な制裁の内容は加盟国の国内法により定まるため、事業を行う加盟国ごとの確認が必要である。

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情報の周知および国内法化の期限(第11条、第14条、第16条、第17条)

■ 加盟国は、法定最低賃金および普遍的に適用されると宣言された労働協約に定められた最低賃金保護に関する情報(救済の仕組みに関する情報を含む)を、障害のある者を含めて包括的かつ容易にアクセスできる方法で公開する(第11条)。事業者は、適用される最低賃金の水準および内容をこれらの情報源で確認できる。

■ 加盟国は、本指令を国内法化する措置および第1条に定める対象事項に関して既に効力を有する関連規定を、中小企業を含む使用者および労働者に周知することを確保する(第14条)。

■ 本指令は、加盟国において既に労働者に与えられている保護の一般的水準の引下げ、とりわけ最低賃金の引下げまたは廃止を正当化する根拠とはならない(第16条第1項)。加盟国はより有利な法令や労働協約の適用を妨げられない(第16条第2項)。

■ 加盟国は2024年11月15日までに本指令を遵守するために必要な措置を採択しなければならない(第17条第1項)。加盟国は、労使が共同で要請した場合、行動計画の策定を含め、本指令の実施の全部または一部を労使に委ねることができる(第17条第3項)。事業者に実際に適用される要件は各加盟国の国内法および労働協約により定まる。

注目定義

<対象>

■ 「最低賃金(第3条第1号)」

公共部門を含む使用者が、一定の期間に行われた労働に対して労働者に支払うことを法令または労働協約により求められる最低限の報酬。

<対象>

■ 「法定最低賃金(第3条第2号)」

法令その他の拘束力ある法的規定により定められる最低賃金。ただし、適用される規定の内容について宣言当局の裁量なしに普遍的に適用されると宣言された労働協約により定められる最低賃金を除く。

<対象>

■ 「団体交渉カバー率(第3条第5号)」

国レベルで労働協約が適用される労働者の割合。労働協約の適用を受ける労働者数を、国内法および慣行に従い労働条件が労働協約により規律されうる労働者数で除して算出する。

目次

第I章 総則

■ 第1条 対象事項

■ 第2条 適用範囲

■ 第3条 定義

■ 第4条 賃金決定に関する団体交渉の促進

第II章 法定最低賃金

■ 第5条 適切な法定最低賃金の設定手続

■ 第6条 変動および控除

■ 第7条 法定最低賃金の設定および更新への労使の関与

■ 第8条 労働者の法定最低賃金への実効的なアクセス

第III章 横断的規定

■ 第9条 公共調達

■ 第10条 モニタリングおよびデータ収集

■ 第11条 最低賃金保護に関する情報

■ 第12条 救済を受ける権利ならびに不利益な取扱いまたは結果からの保護

■ 第13条 制裁

第IV章 最終規定

■ 第14条 情報の周知

■ 第15条 評価および見直し

■ 第16条 後退禁止およびより有利な規定

■ 第17条 国内法化および実施

■ 第18条 発効

■ 第19条 名宛人

基礎情報

法令(現地語)

Directive (EU) 2022/2041 of the European Parliament and of the Council of 19 October 2022 on adequate minimum wages in the European Union

法令(日本語)

EUにおける適切な最低賃金に関する2022年10月19日の欧州議会および理事会の指令(EU) 2022/2041

公布日

2022年10月25日(官報 OJ L 275, 33頁)

所管当局

加盟国の所管当局(労働監督機関または法定最低賃金の執行を担う機関、第5条第6項にいう諮問機関を含む)および欧州委員会

作成者

株式会社先読

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