| 法令の情報時期:2024年11月 統合版 | ページ作成時期:2026年09月 |
目的
本指令は、プラットフォーム労働における労働条件および個人データの保護を改善することを目的としている。その手段として、次の3点が掲げられている(第1条第1項)。
■ プラットフォーム労働に従事する者の正しい雇用上の地位の判定を容易にする措置を導入すること
■ プラットフォーム労働におけるアルゴリズムによる管理について、透明性、公正性、人的監視、安全性および説明責任を促進すること
■ 国境を越える状況を含め、プラットフォーム労働に関する透明性を改善すること
本指令は、EU域内でプラットフォーム労働に従事するすべての者に適用される最低限の権利を定めるとともに、雇用契約または雇用関係を有しない者を含め、アルゴリズムによる管理に関する措置を通じて個人データの処理に関する自然人の保護を改善する規則を定めている(第1条第2項)。
概要
本指令は、EU域内で行われるプラットフォーム労働を組織するデジタル労働プラットフォームに対し、その設立地や他に適用される法にかかわらず適用される(第1条第3項)。EU域外に設立された事業者であっても、EU域内で行われるプラットフォーム労働を組織していれば適用対象となる。
規律は3つの柱から成る。第一に雇用上の地位である。加盟国は正しい雇用上の地位を判定する手続を整備し、指揮および管理を示す事実が認められる場合に雇用関係の存在を推定する、反証可能な法的推定を設ける。推定を覆す立証責任はデジタル労働プラットフォームが負う(第4条、第5条)。
第二にアルゴリズムによる管理である。自動化監視システムおよび自動化意思決定システムによる一定の個人データ処理を禁止したうえで、データ保護影響評価、透明性、人的監視、人による審査、安全衛生、情報提供・協議に関する義務を定めている(第7条から第14条)。
第三にプラットフォーム労働の透明性である。所管当局への労働の申告、および従事者数・一般契約条件・仲介者等の情報の提供が求められる(第16条、第17条)。
加盟国は2026年12月02日までに本指令を国内法化しなければならない(第29条第1項)。
適用除外(対象外・猶予・免除等)
本指令には、指令全体の適用を事業者・製品・行為について一律に免除する規定は置かれていない。適用範囲に関わる定めとして、次の点がある。
■ 「デジタル労働プラットフォーム」の定義には、資産の活用または共有を主たる目的とするサービスの提供者、および専門業者でない個人が物品を再販売する手段となるサービスの提供者は含まれない(第2条第2項)。これらの提供者は本指令が名宛人とするデジタル労働プラットフォームに当たらない。
■ このほか、法的推定を税務・刑事・社会保障に関する手続には適用しないこと(第5条第3項第2段)や、規則(EU) 2019/1150にいうビジネスユーザーにも該当するプラットフォーム労働従事者には第11条を適用しないこと(第11条第5項)など、個別の条項に限定した適用除外が定められている。
事業者が注意すべき内容
| 本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。 ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 |
雇用上の地位の判定と法的推定(第3条から第5条)
■ 雇用関係の存否は、契約上の呼称にかかわらず、自動化システムの利用を含む実際の労務提供に関する事実に基づき判断される(第4条第2項)。
■ 指揮および管理を示す事実が認められる場合、契約関係は雇用関係と法的に推定され、これを覆そうとする場合の立証責任はデジタル労働プラットフォームが負う。推定は、正しい雇用上の地位が争点となる関連する行政手続・司法手続に適用される(第5条第1項、第3項)。
■ 2026年12月02日より前に締結され同日時点で継続している契約関係については、推定は同日以降の期間についてのみ適用される(第5条第6項)。
■ 仲介者を用いる場合、仲介者と契約する従事者にも直接契約する者と同水準の保護が及ぶよう加盟国が措置を講じる。措置には、適切な場合、連帯責任制度が含まれる(第3条)。
個人データ処理の禁止事項(第7条)
■ 自動化監視システムまたは自動化意思決定システムにより、次の処理を行ってはならない。感情的・心理的状態に関する処理、私的な会話に関する処理、労働を提供・遂行していない間の個人データの収集、基本権の行使を予測する処理、人種・民族的出自、移住上の地位、政治的意見、信条、障害、健康状態、労働組合員資格、性生活または性的指向等を推知する処理、および本人確認のための生体データの照合(第7条第1項)。
■ これらの制限は募集・選考手続の開始時点から適用され、従事者に影響を及ぼす決定を行いまたは支援する他の自動化システムにも及ぶ(第7条第2項、第3項)。
データ保護影響評価(第8条)
■ 規則(EU) 2016/679第35条第1項に基づく影響評価を行う際、従事者およびその代表の意見を求めなければならない。当該評価は労働者代表に提供する(第8条)。
自動化システムに関する透明性(第9条)
■ 自動化監視システムについては利用・導入の事実、監視対象データと行為の類型、監視の目的と方法、個人データの受領者および移転を、自動化意思決定システムについては利用・導入の事実、決定の類型、考慮されるデータと主要パラメータおよびその相対的重要性、アカウントの制限・停止・終了や支払拒否等の理由を情報提供する(第9条第1項)。
■ 情報は書面(電子的形式を含む)で、平易な言語により提供する。従事者へは遅くとも最初の就業日、労働条件等に影響する変更の導入前および請求時に、労働者代表へはシステムの利用前、当該変更の導入前および請求時に包括的かつ詳細な形式で、所管当局へは請求時に提供する。募集・選考の対象者へは、当該手続で用いるシステムに限定した情報を手続の開始前に提供する(第9条第2項から第5項)。
■ 従事者は、評価やレビューを含め生成された個人データのポータビリティの権利を有する。その行使を容易にする手段を無償で提供し、請求があれば当該データを第三者へ直接移転しなければならない(第9条第6項)。
人的監視および人による審査(第10条、第11条)
■ 自動化システムによる個別の決定が従事者に及ぼす影響を監視し、労働者代表の関与の下、少なくとも2年ごとに評価を行う。監視・評価のために十分な人的資源を確保し、担当者には自動化された決定を覆すことを含む能力・訓練・権限を与え、職務の遂行を理由とする不利益な取扱いから保護する(第10条第1項、第2項)。
■ 差別の高いリスクが特定された場合、または個別の決定が従事者の権利を侵害したと認められた場合、システムの改修や利用中止を含め将来の再発を回避する措置を講じる。評価に関する情報は労働者代表へ伝達し、請求があれば従事者および所管当局にも利用可能とする(第10条第3項、第4項)。
■ 契約関係またはアカウントの制限・停止・終了に関する決定およびこれと同等の不利益を伴う決定は、人間が行わなければならない(第10条第5項)。
■ 自動化意思決定システムによる決定について、不当に遅滞することなく口頭または書面で説明し、事実・状況・理由を協議するための連絡担当者を指定する。アカウントの制限・停止・終了、支払拒否、契約上の地位に関する決定等については、遅くとも効力発生日までに理由を記載した書面を交付する(第11条第1項)。
■ 審査の請求に対しては、十分に根拠づけられた回答を書面で、受領から2週間以内に行う。決定が権利を侵害している場合は決定から2週間以内に是正し、是正が不可能な場合は適切な補償を申し出るとともに、将来の再発を回避する措置を講じる(第11条第2項、第3項)。
安全衛生(第12条)
■ プラットフォーム労働者に関し、自動化システムが安全衛生に及ぼすリスク(労働災害、心理社会的リスク、人間工学的リスク)を評価し、安全対策の適切性を判断し、予防措置および保護措置を導入する。これらの要件に関し、指令89/391/EEC第10条および第11条に従い、労働者およびその代表への情報提供・協議と参加を確保する(第12条第1項、第2項)。
■ 自動化システムを、労働者に不当な圧力を加える方法で、またはその安全および身体的・精神的健康を危険にさらす方法で用いてはならない(第12条第3項)。暴力およびハラスメントからの保護を含め、実効的な通報経路の設置を含む予防措置を講じる(第12条第5項)。
情報提供および協議(第13条、第14条)
■ 自動化システムの導入または利用の大幅な変更につながる可能性のある決定も、労働者代表への情報提供・協議の対象となる。労働者代表は自ら選任する専門家の支援を受けることができ、当該加盟国における労働者が250人を超える場合、専門家の費用は相当な範囲でデジタル労働プラットフォームが負担する(第13条)。労働者代表がいない場合は、当該決定を労働者へ直接、書面により平易な言語で情報提供する(第14条)。
申告および情報の提供(第16条、第17条)
■ プラットフォーム労働者が行った労働を、労働が行われる加盟国の所管当局へ、当該加盟国の法に定める規則および手続に従い申告しなければならない(第16条第1段)。
■ 所管当局および従事者代表に対し、活動水準別に区分した従事者数とその契約上・雇用上の地位、一般契約条件、定期的に従事する者の平均活動期間・平均週間労働時間・平均収入(請求があった場合のみ)、契約関係を有する仲介者の情報を利用可能としなければならない。情報は加盟国ごとに提供し、少なくとも6か月ごとに、一般契約条件は実質的な変更のたびに更新する(中小企業は年1回以上とすることを加盟国が定めうる)。追加の説明を求められた場合は、不当に遅滞することなく根拠を示して回答する(第17条)。
連絡手段、証拠開示、不利益取扱いの禁止(第20条、第21条、第23条)
■ 自らのデジタルインフラまたは同等に実効的な手段により、従事者が相互に、また従事者代表と私的かつ安全に連絡できる可能性を提供し、その連絡および通信にアクセスまたは監視することを差し控えなければならない(第20条)。
■ 本指令に関する手続において、国内裁判所または所管当局は、デジタル労働プラットフォームが管理する関連証拠の開示を命じうる(第21条第1項)。
■ 本指令上の権利の行使を理由とする解雇・契約終了およびこれと同等の措置ならびにその準備行為は禁止される。従事者から求められた場合は根拠づけられた理由を遅滞なく書面で提供し、従事者が解雇等を推認させる事実を示した場合、別の理由に基づくことの立証責任はデジタル労働プラットフォームが負う(第23条)。
監督、制裁および国内法化の期限(第24条、第29条)
■ データ保護に関する限りにおいて、規則(EU) 2016/679の監督機関が第7条から第11条の監視・執行を担い、これらの違反には同規則第83条第5項の制裁金の上限が適用される(第24条第1項)。
■ 加盟国は国内規定の違反に対する制裁を定める。制裁は実効的かつ抑止的であり、違反の性質・重大性・期間および影響を受けた労働者数に比例したものでなければならない。正しい雇用上の地位を判断した法的決定に従わない場合には、金銭的制裁を含みうる制裁が定められる(第24条第5項、第6項)。
■ 加盟国は2026年12月02日までに本指令を遵守するために必要な法令等を施行する(第29条第1項)。事業者に適用される具体的な要件は各加盟国の国内法により定まるため、事業を行う加盟国ごとに確認が必要である。
注目定義
<対象>
■ 「デジタル労働プラットフォーム(第2条第1項(a))」
| 次のすべてを満たすサービスを提供する自然人または法人。少なくとも一部がウェブサイトやモバイルアプリケーション等の電子的手段により遠隔で提供されること、サービスの受領者の求めに応じて提供されること、必要かつ本質的な構成要素として、対価と引換えに個人が行う労働の編成を伴うこと(オンラインか特定の場所かを問わない)、および自動化監視システムまたは自動化意思決定システムの利用を伴うこと。 |
<対象>
■ 「プラットフォーム労働従事者(第2条第1項(c))」
| 契約関係の性質や当事者による呼称にかかわらず、プラットフォーム労働を行う個人。うち、加盟国の法令・労働協約・慣行により定義される雇用契約または雇用関係を有する者およびこれを有するとみなされる者が「プラットフォーム労働者」である(第2条第1項(d))。 |
<対象>
■ 「自動化意思決定システム(第2条第1項(i))」
| 電子的手段により、プラットフォーム労働従事者に重大な影響を及ぼす決定を行いまたは支援するために用いられるシステム。特に、採用、業務の割当てへのアクセスと編成、個別業務の価格設定を含む収入、安全衛生、労働時間、訓練へのアクセス、昇進またはこれに相当するもの、およびアカウントの制限・停止・終了を含む契約上の地位に影響する決定が含まれる。 |
目次
第I章 総則
■ 第1条 対象事項および適用範囲
■ 第2条 定義
■ 第3条 仲介者
第II章 雇用上の地位
■ 第4条 正しい雇用上の地位の判定
■ 第5条 法的推定
■ 第6条 支援措置の枠組み
第III章 アルゴリズムによる管理
■ 第7条 自動化監視システムまたは自動化意思決定システムによる個人データ処理の制限
■ 第8条 データ保護影響評価
■ 第9条 自動化監視システムおよび自動化意思決定システムに関する透明性
■ 第10条 自動化監視システムおよび自動化意思決定システムに対する人的監視
■ 第11条 人による審査
■ 第12条 安全衛生
■ 第13条 情報提供および協議
■ 第14条 労働者への情報提供
■ 第15条 プラットフォーム労働者代表以外のプラットフォーム労働従事者代表に関する特則
第IV章 プラットフォーム労働に関する透明性
■ 第16条 プラットフォーム労働の申告
■ 第17条 プラットフォーム労働に関する関連情報へのアクセス
第V章 救済および執行
■ 第18条 救済を受ける権利
■ 第19条 プラットフォーム労働従事者のためのまたはこれを支援する手続
■ 第20条 プラットフォーム労働従事者のための連絡手段
■ 第21条 証拠へのアクセス
■ 第22条 不利益な取扱いまたは結果からの保護
■ 第23条 解雇からの保護
■ 第24条 監督および制裁
第VI章 最終規定
■ 第25条 プラットフォーム労働における団体交渉の促進
■ 第26条 後退禁止およびより有利な規定
■ 第27条 情報の周知
■ 第28条 労働協約および個人データ処理に関する特則
■ 第29条 国内法化および実施
■ 第30条 欧州委員会による見直し
■ 第31条 発効
■ 第32条 名宛人
基礎情報
| 法令(現地語) | |
| 法令(日本語) | プラットフォーム労働における労働条件の改善に関する2024年10月23日の欧州議会および理事会の指令(EU) 2024/2831 |
| 公布日 | 2024年11月11日(指令の日付は2024年10月23日) |
| 所管当局 | 加盟国の所管当局。データ保護に関する限りにおいて、規則(EU) 2016/679の適用を監視する監督機関(第24条第1項) |
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