| 法令の情報時期:2026年10月 確認 | ページ作成時期:2026年10月 |
目的
本規則は、米国労働安全衛生法(OSH Act)に基づく一般産業向けの労働安全衛生規則(連邦規則集第29編第1910部)の一部であり、作業場の空気中に存在する物質への従業員のばく露を、表に定める限度内に制限することを目的とする。
規則が定める内容から、具体的には次の点が目的となる。
■ 表Z-1、表Z-2および表Z-3に掲げる物質について、従業員のばく露の上限(天井値、8時間時間加重平均、許容天井濃度等)を定めること(§1910.1000 柱書、(a)〜(c))
■ ばく露濃度が変動する場合および複数の物質の混合物にばく露する場合の、限度超過の有無を判定する計算式を定めること(§1910.1000(d))
■ 限度を遵守するために事業者が講じる措置の優先順位(管理的または工学的対策を優先し、実行可能でない場合に保護具等を用いる)を定めること(§1910.1000(e))
概要
本規則は、表Z-1、表Z-2または表Z-3に掲げる物質への従業員のばく露を、(a)〜(e)の各項に従って制限することを求めるものである。本文は(a)〜(e)の5項と3つの表から構成される。
表Z-1「空気汚染物質の限度」は、物質名、CAS番号、ppmおよびmg/m3による限度値、皮膚に関する表示の各欄からなる。限度値の前に「C」が付された物質は天井値であり、いかなる時も超えてはならない。「C」が付されていない物質は、8時間時間加重平均(TWA)による限度である。
表Z-2は、8時間時間加重平均、許容天井濃度、ならびに許容天井濃度を上回る許容最大ピーク濃度およびその最大継続時間を物質ごとに定める。表Z-3「鉱物性粉じん」は、シリカ、雲母、タルク、ポルトランドセメント、黒鉛、石炭粉じん、不活性・迷惑粉じん等について8時間時間加重平均の限度を定める。
適用対象は、これらの物質に従業員がばく露する事業場の事業者である。事業者は、まず管理的または工学的対策を決定して実施し、それでは完全に遵守できない場合に保護具その他の保護措置を用いなければならない。
適用除外(対象外・猶予・免除等)
本規則全体の適用から特定の事業者、製品、施設または行為を一律に免除する規定は置かれていない。
なお、表の脚注において、個別の物質に関する規則との関係から、表の限度値が適用される範囲が次のとおり限定されている。これらは本規則全体の適用除外ではない。
■ 表Z-2のベンゼンの限度値は、ベンゼンに関する規則(§1910.1028)の1 ppm(8時間時間加重平均)および5 ppm(短時間ばく露限度)の適用が除外されている産業区分に適用される(表Z-2 脚注a)
■ 表Z-2のカドミウム、クロム酸およびクロム酸塩、ベリリウムおよびベリリウム化合物の限度値は、それぞれカドミウム(§1910.1027)、六価クロム(§1910.1026)、ベリリウム(§1910.1024)に関する規則のばく露限度が停止され、またはその他の理由で効力を有しない作業または部門に適用される(表Z-2 脚注b、c、d)
■ 表Z-3の結晶質シリカの限度値は、吸入性結晶質シリカに関する規則(§1910.1053)が停止され、またはその他の理由で効力を有しない作業または部門に適用される(表Z-3 脚注f)
■ 表Z-2のホルムアルデヒドについては、限度値に代えて§1910.1048を参照する旨が示されている(表Z-2)
事業者が注意すべき内容
| 本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。 ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 |
ばく露の制限に関する基本的義務(§1910.1000 柱書)
■ 表Z-1、表Z-2または表Z-3に掲げる物質への従業員のばく露は、(a)〜(e)の各項の要件に従って制限しなければならない(§1910.1000 柱書)
表Z-1の物質(§1910.1000(a))
■ 限度値の前に「C」が付された物質(天井値)については、従業員のばく露は、いかなる時も当該物質について定められた限度値を超えてはならない。瞬時の測定が実行可能でない場合は、天井値を15分間の時間加重平均ばく露として評価し、これを作業日のいかなる時も超えてはならない(§1910.1000(a)(1))
■ 限度値の前に「C」が付されていない物質については、従業員のばく露は、週40時間労働のうちのいずれの8時間作業シフトにおいても、当該物質について定められた8時間時間加重平均を超えてはならない(§1910.1000(a)(2))
■ 表Z-1には、例えばアセトン(1000 ppm、2400 mg/m3)、アンモニア(50 ppm、35 mg/m3)、一酸化炭素(50 ppm、55 mg/m3)、酢酸(10 ppm、25 mg/m3)のように物質ごとの限度値が定められている。アリルグリシジルエーテルのように「C」が付された物質((C)10 ppm、(C)45 mg/m3)、アニリンおよび同族体のように皮膚に関する表示が付された物質もある。自社で取り扱う物質が表に掲げられているか、およびその限度値を個別に確認する必要がある(表Z-1)
表Z-2の物質(§1910.1000(b))
■ 表Z-2に掲げる物質への従業員のばく露は、週40時間労働のうちのいずれの8時間作業シフトにおいても、表Z-2に定める8時間時間加重平均の限度を超えてはならない(§1910.1000(b)(1))
■ 表Z-2に掲げる物質への従業員のばく露は、8時間シフトの間のいかなる時も、表に定める許容天井濃度を超えてはならない。ただし、表の「8時間シフトにおける許容天井濃度を上回る許容最大ピーク」の欄に定める最大継続時間および濃度を超えない範囲に限り、許容天井濃度を上回ることが認められる(§1910.1000(b)(2))
■ 条文は例として、8時間時間加重平均10 ppm、天井濃度25 ppm、ピーク50 ppmの物質Aを挙げている。従業員は8時間作業シフト中、最大10分間に限り25 ppmを超える濃度(ただし50 ppmを超えてはならない)にばく露することができるが、そのばく露は10 ppm未満の濃度へのばく露によって補われ、8時間作業シフト全体の累積ばく露が加重平均10 ppmを超えないようにしなければならない(§1910.1000(b)(3))
■ 表Z-2には、例えばトルエン(8時間時間加重平均200 ppm、許容天井濃度300 ppm、許容最大ピーク500 ppm・10分間)、スチレン(同100 ppm、200 ppm、600 ppm・いずれの3時間においても5分間)、二硫化炭素(同20 ppm、30 ppm、100 ppm・30分間)、フッ化水素(8時間時間加重平均3 ppm)等が定められている(表Z-2)
表Z-3の物質(§1910.1000(c))
■ 表Z-3に掲げる物質への従業員のばく露は、週40時間労働のうちのいずれの8時間作業シフトにおいても、表に定める8時間時間加重平均の限度を超えてはならない(§1910.1000(c))
■ 表Z-3は鉱物性粉じんを対象とし、限度値は空気1立方フィートあたりの粒子数(百万個単位)またはmg/m3で示される。結晶質シリカ(石英)等については、粉じん中のシリカの含有率を用いた算式により限度値が定まる。物質名を個別に掲げられていない不活性粉じんまたは迷惑粉じんは、鉱物性、無機、有機を問わず、不活性・迷惑粉じんの限度(吸入性粉じん5 mg/m3、総粉じん15 mg/m3)の対象となる(表Z-3、脚注d)
計算式(§1910.1000(d))
■ 8時間時間加重平均が定められている物質について、従業員が規制上の限度を超えてばく露しているかを判定する際は、本項の計算式を適用しなければならない(§1910.1000(d))
■ 8時間作業シフトの累積ばく露は、E =(Ca×Ta + Cb×Tb + … + Cn×Tn)÷ 8 により算定する。Eは当該作業シフトの等価ばく露、Cは濃度が一定である期間Tにおける濃度、Tは濃度Cでのばく露の継続時間(時間)である。Eの値は、当該物質について定められた8時間時間加重平均を超えてはならない。条文の例では、限度100 ppmの物質Aに150 ppmで2時間、75 ppmで2時間、50 ppmで4時間ばく露した場合、(2×150 + 2×75 + 4×50)÷ 8 = 81.25 ppm となり、限度内である(§1910.1000(d)(1))
■ 空気汚染物質の混合物の場合、事業者は Em =(C1÷L1)+(C2÷L2)+ … +(Cn÷Ln)により等価ばく露を算定しなければならない。Emは混合物の等価ばく露、Cは個々の汚染物質の濃度、Lは当該物質のばく露限度であり、Emの値は1を超えてはならない。条文の例では、500÷1,000 + 45÷200 + 40÷200 = 0.925 となり、限度内である(§1910.1000(d)(2))
遵守のための措置(§1910.1000(e))
■ (a)〜(d)を遵守するため、実行可能な場合は常に、まず管理的対策または工学的対策を決定し、実施しなければならない(§1910.1000(e))
■ これらの対策によっては完全な遵守を達成することが実行可能でない場合は、保護具その他の保護措置を用いて、従業員の空気汚染物質へのばく露を本規則に定める限度内に保たなければならない(§1910.1000(e))
■ この目的で用いる機器または技術的措置は、個別の用途ごとに、能力のある産業衛生専門家またはその他の技術的に適格な者の承認を受けなければならない(§1910.1000(e))
■ 呼吸用保護具を使用する場合、その使用は§1910.134(呼吸用保護具)に適合しなければならない(§1910.1000(e))
解釈上残る曖昧な点
本規則は、ばく露濃度の測定の頻度、方法および記録の保存について具体的な定めを置いていない。また、管理的・工学的対策が「実行可能」であるか否かの判断基準、および「能力のある産業衛生専門家またはその他の技術的に適格な者」の資格要件も条文上は示されておらず、これらの点には曖昧な部分が残っていると考えられる。
注目定義
| 本規則には定義規定が置かれていない。ただし、要件の解釈上重要な次の用語は、条文中でその意味が示されている。 |
<対象>
■ 「天井値」(Ceiling Values)
| 表Z-1において限度値の前に「C」が付された値をいい、従業員のばく露がいかなる時も超えてはならない限度をいう(§1910.1000(a)(1)) |
<対象>
■ 「等価ばく露」(equivalent exposure)
| 濃度が一定である各期間の濃度とばく露時間の積を合計し、8で除して算定する、当該作業シフトのばく露をいう(§1910.1000(d)(1)(i)) |
<対象>
■ 「混合物の等価ばく露 Em」
| 個々の汚染物質の濃度をその物質のばく露限度で除した値の合計をいい、1を超えてはならない(§1910.1000(d)(2)(i)) |
目次
§1910.1000 空気汚染物質
(a) 表Z-1
(a)(1) 限度値の前に「C」が付された物質(天井値)
(a)(2) その他の物質(8時間時間加重平均)
(b) 表Z-2
(b)(1) 8時間時間加重平均
(b)(2) 許容天井濃度
(b)(3) 例
(c) 表Z-3
(d) 計算式
(e) 遵守のための措置(管理的・工学的対策および保護具)
表Z-1 空気汚染物質の限度
表Z-2
表Z-3 鉱物性粉じん
基礎情報
| 法令(現地語) |
29 CFR Part 1910 Subpart Z—Toxic and Hazardous Substances, § 1910.1000 Air contaminants |
| 法令(日本語) | 連邦規則集第29編第1910部 サブパートZ 有毒・有害物質 §1910.1000 空気汚染物質 |
| 公布日 | サブパートZの出典表示は1974年06月27日(39 FR 23502)であり、1975年05月28日(40 FR 23072)に再指定された。本条はその後、2006年04月03日(71 FR 16673)、2016年03月25日(81 FR 16861)等に改正されている。 |
| 所管当局 | 米国労働省 労働安全衛生局(OSHA) |
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