| 法令の情報時期:2026年09月 確認 | ページ作成時期:2026年09月 |
目的
本サブパートは、米国労働安全衛生法(OSH Act)に基づく一般産業向けの労働安全衛生規則(29 CFR Part 1910)の一部であり、緊急事態が発生した際に従業員が事業場から安全に退避できる状態を確保することを目的とする。
規則自身は、本サブパートが、緊急時における従業員の安全な退避を可能にする避難経路に関する要件と、緊急時対応計画および防火計画に関する要件を定めるものであると規定している(§1910.34(b))。
具体的には次の点が目的となる。
■ 事業場内のいかなる地点からも安全な場所まで、連続し障害物のない退避のための経路を確保すること(§1910.34(c)、§1910.36)
■ 避難経路の維持管理、照明および標識により、緊急時に経路が実際に機能する状態を保つこと(§1910.37)
■ 緊急事態の発生を従業員に確実に周知し、退避、重要設備の停止、人員の点呼、救助・応急手当の手順をあらかじめ定めておくこと(§1910.38)
■ 火災の発生自体を抑制するため、主要な火災危険源、可燃性廃棄物および発熱機器の管理について計画を定めること(§1910.39)
概要
本サブパートは、車両や船舶などの移動式作業場所を除く、一般産業のすべての事業場に適用される(§1910.34(a))。避難経路を、事業場内の任意の地点から安全な場所に至る連続し障害物のない退避のための経路と定義し、これが出口進入部(exit access)、出口(exit)、出口放出部(exit discharge)の3つの部分で構成されるものとしている(§1910.34(c))。
規制の内容は大きく4つに分かれる。第1に、避難経路の設計および施工に関する要件であり、耐火性能、経路の数、出口放出部、扉の構造、容量、高さおよび幅、屋外経路の条件を定める(§1910.36)。第2に、維持管理および運用に関する要件であり、経路上の障害物の排除、照明、標識の表示、防火塗料の更新、工事中の取扱い、従業員警報装置の設置を定める(§1910.37)。第3に、緊急時対応計画の作成義務と記載事項を定める(§1910.38)。第4に、防火計画の作成義務と記載事項を定める(§1910.39)。
なお、NFPA 101(Life Safety Code、2009年版)またはInternational Fire Code(2009年版)の避難経路に関する規定を遵守している事業者は、§1910.34、§1910.36および§1910.37の対応する要件を満たしたものとして扱われる(§1910.35)。緊急時対応計画および防火計画は、本パート内の他のOSHA規則がこれらを求める場合に作成義務が生じる(§1910.38(a)、§1910.39(a))。
適用除外(対象外・猶予・免除等)
■ 車両や船舶などの移動式作業場所は、本サブパートの適用対象外である(§1910.34(a))。
■ NFPA 101(2009年版)またはInternational Fire Code(2009年版)の避難経路に関する規定を遵守する事業者は、§1910.34、§1910.36および§1910.37の対応する要件を遵守しているものとみなされる(§1910.35)。
上記以外に、法令全体の適用から特定の事業者、製品、施設または行為を一律に免除する規定は置かれていない。
事業者が注意すべき内容
| 本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。 ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 |
避難経路の設計および施工(§1910.36)
■ 避難経路は事業場の恒久的な部分でなければならない(§1910.36(a)(1))。出口を他の区域から隔てる建築材料は、出口が3階層以下を結ぶ場合は1時間、4階層以上を結ぶ場合は2時間の耐火性能を有しなければならない(§1910.36(a)(2))。
■ 出口に設けられる開口部は、居室から出口への進入または出口放出部への通行に必要なものに限られ、認定試験機関により表示または承認された自閉式の防火扉で保護し、常時閉鎖するか火災警報・従業員警報の作動時に自動的に閉鎖しなければならない(§1910.36(a)(3))。
■ 少なくとも2つの避難経路を利用可能とし、一方が塞がれても他方で退避できるよう実行可能な限り互いに離して配置しなければならない(§1910.36(b)(1))。従業員数、建物の規模、用途または配置により全従業員が安全に退避できない場合は3つ以上を設ける(§1910.36(b)(2))。これらの条件から全従業員が安全に退避できる場合に限り、1つでよい(§1910.36(b)(3))。
■ 出口放出部は屋外、街路、歩道、避難区域、公道または屋外に通じる空地に直接通じ、その到達先は利用が見込まれる在館者を収容できる広さを有しなければならない(§1910.36(c)(1)、(c)(2))。出口階段が出口放出部のある階を越えて続く場合は、その階で扉や間仕切り等により中断し、出口放出部の方向を明示する(§1910.36(c)(3))。
■ 避難経路の扉は、鍵・工具・特別な知識なしに常時内側から開けられなければならない(§1910.36(d)(1))。故障時に緊急使用を妨げるおそれのある装置や警報器を設けてはならない(§1910.36(d)(2))。内側からの施錠が認められるのは、常時監督者が配置され退避計画を有する精神科施設、刑事施設または矯正施設に限られる(§1910.36(d)(3))。
■ 居室と避難経路を接続する扉は側面吊り扉とし、50人を超える人数の使用を想定する居室または高危険区域では退避方向へ外開きとしなければならない(§1910.36(e)(1)、(e)(2))。
■ 避難経路は各階の最大収容人数に対応する容量を有し、出口放出部へ向かう方向で容量を減少させてはならない(§1910.36(f)(1)、(f)(2))。
■ 天井高は7フィート6インチ(2.3 m)以上、天井からの突出物は床面から6フィート8インチ(2.0 m)未満に達してはならない(§1910.36(g)(1))。出口進入部の幅は全地点で28インチ(71.1 cm)以上とし、単一の出口進入部が出口または出口放出部に通じる場合、出口および出口放出部の幅は出口進入部の幅以上とする(§1910.36(g)(2))。幅は各階の最大収容人数を収容できるものとし、突出物により最小幅を下回らせてはならない(§1910.36(g)(3)、(g)(4))。
■ 屋外避難経路は、上記の高さ・幅の要件に加え、墜落のおそれがある開放側への手すりの設置、雪氷が堆積するおそれがある場合の覆いの設置(危険が生じる前に除去できることを事業者が示せる場合を除く)、概ね直線でなめらかかつ堅固なほぼ水平の歩行面、20フィート(6.2 m)を超える行き止まりの禁止が求められる(§1910.36(h)(1)〜(h)(4))。
維持管理、保護措置および運用上の特徴(§1910.37)
■ 避難経路には爆発性または引火性の高い調度品や装飾を置いてはならない(§1910.37(a)(1))。従業員が高危険区域へ向かって移動することにならないよう配置する(間仕切り等で有効に遮蔽される場合を除く。§1910.37(a)(2))。
■ 避難経路は障害物のない状態に保ち、資材や機器を置いてはならない。出口進入部を施錠可能な室内を通過させたり、行き止まりの通路に導いたりしてはならず、経路がほぼ水平でない場合は階段またはスロープを設ける(§1910.37(a)(3))。緊急時に従業員を保護するための保護措置は常時正常に機能する状態に維持する(§1910.37(a)(4))。
■ 避難経路は、正常な視力の従業員が経路を視認できる程度に照明しなければならない(§1910.37(b)(1))。各出口は明確に視認でき、「Exit」と記載した標識で表示する(§1910.37(b)(2))。標識の視認性を損なう装飾や掲示を扉に設けてはならない(§1910.37(b)(3))。
■ 出口または出口放出部への方向が直ちに明らかでない場合は、最寄りの出口および出口放出部の方向を示す標識を出口進入部に沿って掲示し、標識への視線が常時確保されるようにする(§1910.37(b)(4))。出口と誤認されるおそれのある出入口には「Not an Exit」等の表示または実際の用途を示す標識を付す(§1910.37(b)(5))。
■ 出口標識は、信頼できる光源により表面照度5フットカンデラ(54ルクス)以上で照明し、識別しやすい色とする。自発光式または電界発光式の標識は、輝度0.06フートランバート(0.21 cd/m²)以上であれば認められる(§1910.37(b)(6))。「Exit」の文字は高さ6インチ(15.2 cm)以上、主要な線幅は4分の3インチ(1.9 cm)以上とする(§1910.37(b)(7))。
■ 防火塗料または防火溶液は、その防火性能を維持するために必要な頻度で塗り直さなければならない(§1910.37(c))。
■ 新築工事中は、必要な避難経路が完成し使用可能となるまで従業員を事業場に立ち入らせてはならない(§1910.37(d)(1))。修繕・改修中は、必要な避難経路が利用可能で既存の防火措置が維持されているか、同等の安全水準を与える代替の防火措置が講じられるまで立ち入らせてはならない(§1910.37(d)(2))。通常許容される条件を超える引火性・爆発性物質や、退避を妨げるおそれのある状態に従業員をさらしてはならない(§1910.37(d)(3))。
■ 火災その他の緊急事態を警告する識別可能な信号を発する従業員警報装置を設置し、維持しなければならない。ただし、従業員が十分な警告を与えうる時間内に火災や危険を直接見聞きできる場合を除く。当該装置は§1910.165に適合する必要がある(§1910.37(e))。
緊急時対応計画(§1910.38)
■ 本パート内のOSHA規則が緊急時対応計画を要求する場合、事業者は当該計画を有しなければならない(§1910.38(a))。計画は書面で作成し事業場に備え置き、従業員が閲覧できるようにする。ただし従業員が10人以下の事業者は口頭で伝達できる(§1910.38(b))。
■ 計画には少なくとも、火災その他の緊急事態の通報手順、退避の種類および避難経路の割当てを含む退避手順、退避前に重要な設備運転を継続する従業員の手順、退避後の全従業員の点呼手順、救助または医療業務を行う従業員の手順、計画について説明を求める際の連絡先となる従業員の氏名または職名を記載しなければならない(§1910.38(c)(1)〜(6))。
■ 事業者は従業員警報装置を備えて維持し、用途ごとに識別可能な信号を用い、§1910.165に適合させなければならない(§1910.38(d))。また、他の従業員の安全かつ秩序ある退避を補助する従業員を指名し、訓練しなければならない(§1910.38(e))。
■ 計画の対象となる各従業員に対し、計画の策定時または当該従業員の初任配置時、計画上の責任が変更されたとき、計画が変更されたときに、計画の内容を確認させなければならない(§1910.38(f)(1)〜(3))。
防火計画(§1910.39)
■ 本パート内のOSHA規則が防火計画を要求する場合、事業者は当該計画を有しなければならない(§1910.39(a))。計画は書面で作成し事業場に備え置き、従業員が閲覧できるようにする。ただし従業員が10人以下の事業者は口頭で伝達できる(§1910.39(b))。
■ 計画には少なくとも、主要な火災危険源の一覧、危険物の適切な取扱い・保管手順、想定される着火源とその管理方法、各主要危険源の管理に必要な消防設備の種類、可燃性および燃焼性の廃棄物の堆積を管理する手順、偶発的な着火を防ぐための発熱機器の保護装置の定期保守手順、着火源または火災の防止・管理のための機器の保守に責任を負う従業員の氏名または職名、燃料源の危険性の管理に責任を負う従業員の氏名または職名を記載しなければならない(§1910.39(c)(1)〜(5))。
■ 事業者は、従業員の初任配置時に当該従業員がさらされる火災危険源について周知し、自己防護に必要な防火計画の部分を各従業員と確認しなければならない(§1910.39(d))。
注目定義
<対象>
■ 「避難経路」(exit route)
| 事業場内の任意の地点から安全な場所に至る、連続し障害物のない退避のための経路。出口進入部、出口および出口放出部の3つの部分から構成される(§1910.34(c))。 |
<対象>
■ 「高危険区域」(high hazard area)
| 高い危険性を有する材料、工程または内容物を扱う作業が行われる事業場内の区域(§1910.34(c))。扉の開き方向(§1910.36(e)(2))や経路の配置(§1910.37(a)(2))の判断に直結する。 |
<対象>
■ 「収容人数」(occupant load)
| 事業場またはその一部を同時に占有しうる人数の総計。NFPA 101(2009年版)またはInternational Fire Code(2009年版)の収容人数係数により、総床面積を除して算定する(§1910.34(c))。避難経路の容量および幅の要件の基礎となる(§1910.36(f)、(g))。 |
目次
- 1910.33 目次
- 1910.34 適用範囲および定義
- 1910.35 代替の避難経路規格の遵守
- 1910.36 避難経路の設計および施工に関する要件
- 1910.37 避難経路の維持管理、保護措置および運用上の特徴
- 1910.38 緊急時対応計画
- 1910.39 防火計画
サブパートE附表(非強制的ガイドライン)
基礎情報
| 法令(現地語) |
29 CFR Part 1910 Subpart E—Exit Routes and Emergency Planning |
| 法令(日本語) | 連邦規則集第29編第1910部 サブパートE 避難経路および緊急時計画 |
| 公布日 | 1974年06月27日(39 FR 23502)。その後1975年05月28日(40 FR 23072)に再指定され、現行のサブパートEの構成は2002年11月07日(67 FR 67961)の改正により整備された。直近の改正は2011年06月08日(76 FR 33606)である。 |
| 所管当局 | 米国労働省 労働安全衛生局(OSHA) |
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