2026.10.06
EU|欧州委員会、AI等の技術と著作権に関する対象限定の意見募集を開始
2026年09月29日、欧州委員会は、人工知能(AI)を含む技術が著作権の実効的な保護に及ぼす影響について、課題と今後の措置の選択肢に関する対象限定の意見募集(targeted consultation)を開始しました。意見募集は、①AIにおける著作権で保護されたコンテンツの利用、②ライブイベントなどのコンテンツのオンライン海賊版対策、③音楽の実演家および製作者の単一の衡平な報酬請求権の適用、④科学研究の著作権、の4分野に焦点を当てています。欧州委員会は、EUにはすでに堅固な著作権の枠組みがあるとしつつ、新たな課題と市場の動向を踏まえ、追加の措置によって枠組みを強化すべきかどうかが問われているとしています。意見を求める対象は、著作権および著作隣接権の権利者、生成AIの提供者その他AIバリューチェーン上の関係者、仲介事業者、集中管理団体、スポーツその他のライブイベントの主催者、研究機関、各国当局、消費者団体、非政府組織など幅広く、意見募集の期限は2026年11月03日です。生成AIの開発・提供、コンテンツ配信、音楽、学術出版などに関わる事業者にとって、EUの著作権制度の見直しに意見を反映させる機会となります。
意見募集の背景
欧州委員会は、今回の意見募集の趣旨を、市場と技術の発展のなかで、創作物とイノベーションに対する著作権の実効的な保護に技術が及ぼす影響を踏まえ、将来とりうる措置の課題と選択肢について意見を集めることと説明しています。
- EUはすでに堅固な著作権の枠組みを有しているとの認識が出発点です
- そのうえで、新たに生じている課題と市場の動向から、追加の措置によって枠組みを強化すべきかどうかという問いが提起されています
- 今回の意見募集は、2026年に実施された「根拠に基づく情報提供の照会」(Call for evidence)で寄せられた意見と、これまでの関連する研究・評価で集められた根拠を土台としています
意見募集の回答様式の表題は「欧州の創造性とイノベーションのためのより良い著作権環境に向けた潜在的なイニシアチブに関する対象限定の意見募集」とされており、欧州委員会が新たなイニシアチブの可能性を視野に入れて情報を集めていることがうかがえます。
意見募集の対象となる4つの分野
AIにおける著作権で保護されたコンテンツの利用
第1の分野は、AIにおける著作権で保護されたコンテンツの利用です。回答様式には、著作権と生成AI、ライセンスとエンフォースメント、AIが生成する実演家の模倣に関する項目が設けられています。生成AIの提供者およびAIバリューチェーン上のその他の関係者が、意見を求める対象として明示されています。
ライブイベントなどのコンテンツのオンライン海賊版対策
第2の分野は、ライブイベントのようなコンテンツのオンライン海賊版への対策です。回答様式には、時間的な価値が高いコンテンツのオンライン海賊版に関する項目が設けられています。スポーツその他のライブイベントの主催者と仲介事業者が、意見を求める対象に含まれています。
音楽の実演家・製作者の単一の衡平な報酬請求権の適用
第3の分野は、音楽の実演家および製作者の単一の衡平な報酬請求権の適用です。回答様式には、EU域外の録音物のEUにおける利用に関する項目が設けられています。集中管理団体が、意見を求める対象に含まれています。
科学研究の著作権
第4の分野は、科学研究の著作権です。回答様式には、著作権と研究に関する項目が設けられています。研究機関が、意見を求める対象に含まれています。
意見を求められている関係者
欧州委員会は、次の関係者に意見の提出を呼びかけています。
- 著作権および著作隣接権の権利者
- 生成AIの提供者、およびAIバリューチェーン上のその他の関係者
- 仲介事業者
- 集中管理団体
- スポーツその他のライブイベントの主催者
- 研究機関
- 各国当局
- 消費者団体
- 非政府組織
回答様式の構成
意見募集は、欧州委員会のオンライン調査プラットフォーム「EUSurvey」で実施されています。回答様式は、次の項目で構成されています。
- はじめに
- 回答者の属性
- 著作権と生成AI
- ライセンスとエンフォースメント
- AIが生成する実演家の模倣
- オンライン海賊版(時間的な価値が高いコンテンツ)
- EU域外の録音物のEUにおける利用
- 著作権と研究
- 追加の文書(ファイルの添付)
回答様式はEUの24の公用語で利用でき、設問は、選択式、自由記述、評価尺度、ファイルの添付などの形式で構成されています。
誰が、いつまでに、何をすればよいか
- 誰が:上記の関係者に該当する事業者・団体。EU域内でAIの開発・提供、コンテンツの配信・仲介、音楽の利用、ライブイベントの開催・配信、学術出版や研究に関わる事業者が中心となります
- いつまでに:2026年11月03日まで
- 何を:EUSurvey上の回答様式に、自らが関係する分野の設問への回答を入力して提出します。必要に応じて、補足の文書を添付できます
- どのように備えるか:自社の事業が4分野のいずれに関係するかを整理し、現行の枠組みのもとで生じている実務上の課題(ライセンスの取得・付与、権利の行使、侵害コンテンツへの対応など)を具体的な事例とともにまとめておくことが、回答の準備として有用です
今回の意見募集は情報収集の段階にあり、この時点で事業者に新たな法的義務が生じるものではありません。ただし、欧州委員会は追加の措置による枠組みの強化の要否を検討するとしており、寄せられた意見はその検討の材料となります。
関連するEUの著作権法令
欧州委員会は、EUの著作権の枠組みを構成する法令として、13の指令と2つの規則を挙げています。今回の意見募集の4分野に関係しうる主なものは次のとおりです。
指令
- 情報社会指令(指令2001/29/EC):情報社会における著作権および著作隣接権の一定の側面を調和させるもの
- 貸与権・貸出権指令(指令2006/115/EC):貸与権、貸出権および著作隣接権に関するもの
- 知的財産権執行指令(IPRED)(指令2004/48/EC):知的財産権の執行に関するもの
- データベース指令(指令96/9/EC):データベースの法的保護に関するもの
- ソフトウェア指令(指令2009/24/EC):コンピュータ・プログラムの法的保護に関するもの
- 保護期間指令(指令2011/77/EU):著作権の保護期間に関するもの
- 集中管理指令(CRM指令)(指令2014/26/EU):著作権の集中管理と、音楽作品の複数地域ライセンスに関するもの
- デジタル単一市場における著作権指令(DSM指令)(指令 (EU) 2019/790):デジタル単一市場に向けて著作権を現代化するもの
- 衛星・ケーブル指令(指令93/83/EEC)および衛星・ケーブルII指令(指令 (EU) 2019/789):衛星放送・ケーブル再送信、放送事業者のオンライン送信に関する規程を定めるもの
- このほか、追及権指令(指令2001/84/EC)、孤児著作物指令(指令2012/28/EU)、マラケシュ条約の実施に関する指令(指令 (EU) 2017/1564)
規則
- ポータビリティ規則(規則 (EU) 2017/1128):オンライン・コンテンツ・サービスの越境での利用を可能にするもの
- マラケシュ条約に関する規則:利用しやすい形式の複製物の越境での交換に関するもの
意見募集の4分野は、これらの法令のうち、AIによる著作物の利用(DSM指令、情報社会指令)、権利の執行(知的財産権執行指令)、実演家・製作者の報酬(貸与権・貸出権指令、集中管理指令)などと関係します。意見を提出する事業者は、自社の事業に適用されている現行の規程を踏まえて、課題と要望を整理することが求められます。
今後のスケジュール
- 2026年09月29日:意見募集の開始
- 2026年11月03日:意見募集の期限
参考情報
欧州委員会「Commission seeks feedback on challenges and way forward in the area of the effect of technology on copyright」
欧州委員会 EUSurvey「Targeted consultation on a potential initiative for a better copyright environment for European creativity and innovation」
https://ec.europa.eu/eusurvey/runner/targetedconsultationcopyright
欧州委員会「The EU copyright legislation」
https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/policies/copyright-legislation
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