米国|道路交通安全局、乗用車・小型トラックの燃費基準を緩和する最終規程を公布
2026年09月30日、米国運輸省の道路交通安全局(NHTSA)は、企業平均燃費(CAFE)制度を大幅に見直す最終規程「2022~2031年モデルイヤーの乗用車および小型トラックに関する安全で手頃な燃費効率の車両(SAFE)規則III」を連邦官報で公布しました(91 FR 61988)。最終規程は、小型車の燃費基準を2022~2026年モデルイヤーおよび2027~2031年モデルイヤーについて改めて定めるとともに、車両の区分やその他の遵守の方法に関する規定を改正します。発効日は2026年11月30日です。乗用自動車の基準は、新たに定めた2022年モデルイヤーの基準から2029年モデルイヤーまで年0.90%、その後2031年モデルイヤーまで年1%の割合で引き上げられます。非乗用自動車(小型トラック)の基準は、2029年モデルイヤーまで年0.51%、その後2031年モデルイヤーまで年1%の割合で引き上げられます。あわせて、車両区分の大幅な見直しが2030年モデルイヤーから適用され、製造者間のクレジット取引制度は2028年モデルイヤーに獲得されるクレジットから廃止されます。改正の対象は、連邦規則集第49編(49 CFR)第523、531、533、536、537、578部です。自動車製造者は、燃費基準の水準の変更に加えて、車両区分とクレジットの取扱いの変更を踏まえ、遵守計画を見直す必要があります。
背景と目的
NHTSAは、今回の最終規程の目的を、CAFE制度を法律に適合させること、ならびに、市場の需要にも合致せず、議会が意図した製造者の車両群の燃費性能の着実な改善ももたらさない設計上の判断を製造者に促してきた、従来の規制上の歪みを取り除くことにあると説明しています。
法的な根拠として、NHTSAは合衆国法典第49編第32902条(h)を挙げています。同項は、運輸長官が燃費基準を定める際に、次のことを定めています。
- 専用自動車(代替燃料のみで走行する自動車)の燃費を考慮してはならないこと。
- 二元燃料自動車は、ガソリンまたはディーゼル燃料のみで走行するものとして考慮すること。
- クレジットの取引、移転または利用可能性を考慮してはならないこと。
NHTSAは、2022年モデルイヤーから基準を改めることについて、2025年1月28日付けの運輸長官の覚書「CAFE制度の是正(Fixing the CAFE Program)」の指示に沿うものであり、かつ、2022年モデルイヤーはNHTSAがCAFEの遵守に関する手続を完了していない最も早いモデルイヤーであると説明しています。
適用範囲
- 対象となる車両:小型車(乗用自動車、および小型トラックである非乗用自動車)
- 対象となるモデルイヤー:2022~2026年および2027~2031年
- 対象となる事業者:米国で販売される乗用自動車および小型トラックの製造者
- 改正される規定:49 CFR第523部(車両の区分)、第531部(乗用自動車の平均燃費基準)、第533部(小型トラックの燃費基準)、第536部(燃費クレジットの移転および取引)、第537部(自動車燃費に関する報告)、第578部(民事制裁金)
燃費基準の水準
乗用自動車
- 新たに定めた2022年モデルイヤーの基準を起点とします。
- 2029年モデルイヤーまで:年0.90%の割合で引上げ
- その後2031年モデルイヤーまで:年1%の割合で引上げ
非乗用自動車(小型トラック)
- 新たに定めた2022年モデルイヤーの基準を起点とします。
- 2029年モデルイヤーまで:年0.51%の割合で引上げ
- その後2031年モデルイヤーまで:年1%の割合で引上げ
いずれについても、2030年モデルイヤーの基準の水準は、車両区分の見直しの前後をつなぐ橋渡しとして位置づけられています。NHTSAは、2030年モデルイヤーから適用する基準の算定式を、確定した車両区分の規定に基づく変更を反映するよう改めています。
規程案からの変更
規程案の段階では、新たに提案した2022年モデルイヤーの基準から2026年モデルイヤーまで年0.5%、2027年モデルイヤーは乗用車0.35%・小型トラック0.7%、その後2031年モデルイヤーまで年0.25%の割合で引き上げることが提案されていました。最終規程の引上げ率は、規程案よりも高く設定されています。
車両区分の見直し
- NHTSAは、小型車の車両群の区分を大幅に見直すことを確定しました。
- 見直しの趣旨は、非乗用自動車に区分される車両が、アプローチアングルや走行時の最低地上高といったオフハイウェイ車両としての特性を示す、真に非乗用としての能力を備えたものとなるようにすることにあります。
- 規程案では、3列以上の座席を備える車両を非乗用とする区分基準を削除すること、および、乗員向けの設計要素に依拠せずに貨物輸送用の車両を正しく区分するため、性能に基づく新たな指標「小型車ワークファクター(LDWF)」を加えることが提案されていました。
- 適用開始:2030年モデルイヤー。NHTSAは当初の日程を改め、車両区分の見直しの実施を2030年モデルイヤーに繰り延べました。
区分の見直しにより、現在は非乗用自動車として扱われている車両が乗用自動車に区分されることがありえます。製造者は、2030年モデルイヤー以降の製品計画について、自社の各車種がいずれの区分に当たるかを確認する必要があります。
クレジット制度の変更
- 製造者間のクレジット取引制度は、2028年モデルイヤーに獲得されるクレジットから廃止されます。この制度は合衆国法典第49編第32903条(f)により認められているものの、義務づけられてはいないとNHTSAは説明しています。
- 2027年モデルイヤーまでに獲得されたクレジットは、現行の規則のとおり、引き続き取引することができ、最長5モデルイヤーにわたって充当することができます。例えば、2026年モデルイヤーに獲得されたクレジットは2031年モデルイヤーまで、2027年モデルイヤーに獲得されたクレジットは2032年モデルイヤーまで、購入して充当することができます。
- NHTSAは、取引制度の廃止によって、製造者が第三者である電気自動車の製造者から取得するクレジットに頼るのではなく、自社の車両群全体で燃費を着実に改善することが促されるとしています。あわせて、製造者が他の製造者からのクレジットの購入を含む遵守の方法に投資してきたことを踏まえ、廃止の時期を2028年モデルイヤーに獲得されるクレジットからとしたと説明しています。
その他の変更
- 空調効率およびオフサイクルの燃料消費改善値:NHTSAは、2028年モデルイヤー以降、基準を設定するための分析において、空調効率およびオフサイクルの燃料消費改善値を考慮の対象から除いています。
- 民事制裁金:CAFE基準の未達に対する法定の民事制裁金は、2025年7月4日に成立した公法119-21によって0ドルとされました。NHTSAは、これに合わせて民事制裁金の規定を改める技術的な改正を確定しています。
スケジュール
- 2026年9月30日:連邦官報で公布
- 2026年11月30日:発効(参照により組み込まれる文書の承認も同日付け)
- 2027年モデルイヤーまで:この期間に獲得されたクレジットは、引き続き製造者間で取引可能
- 2028年モデルイヤー:この年以降に獲得されるクレジットについて、製造者間の取引制度を廃止
- 2030年モデルイヤー:新たな車両区分を適用
- 2031年モデルイヤー:今回定められた基準の最終年
事業者に求められる対応
- 遵守計画の見直し:2022~2031年モデルイヤーの基準が改められたことを踏まえ、自社の車両群の燃費の実績および見通しと、新たな基準との関係を確認します。
- クレジットの管理:他社から取得したクレジットに依拠している製造者、および他社にクレジットを売却している製造者は、2028年モデルイヤー以降に獲得されるクレジットが製造者間で取引できなくなることを前提に、保有するクレジットの充当の計画を見直す必要があります。
- 車両区分の確認:2030年モデルイヤーから適用される新たな区分のもとで、自社の各車種が乗用自動車と非乗用自動車のいずれに当たるかを確認し、製品計画に反映します。
最終規程の構成
- I 要旨および概要
- II 最終規程の分析の技術的な基礎
- III 最終規程で検討した規制上の選択肢
- IV 規制上の選択肢の影響
- V 確定した基準が実現可能な最大限の水準であるとNHTSAが判断した根拠
- VI 遵守および執行
- VII 規制に関する通知および分析
参考情報
連邦官報「The Safer Affordable Fuel-Efficient (SAFE) Vehicles Rule III for Model Years 2022 to 2031 Passenger Cars and Light Trucks」(91 FR 61988、文書番号2026-19964、Docket No. NHTSA-2025-0491)
注目情報一覧
新着商品情報一覧
調査相談はこちら
概要調査、詳細調査、比較調査、個別の和訳、定期報告調査、年間コンサルなど
様々な調査に柔軟に対応可能でございます。
- ●●の詳細調査/定期報告調査
- ●●の他国(複数)における規制状況調査
- 細かな質問への適宜対応が可能な年間相談サービス
- 世界複数ヵ国における●●の比較調査 など