Critical Raw Materials Act

2024年05月03日、欧州官報にて、「重要原材料の確保および持続可能な供給を保証するための枠組みを設ける規則」（通称、「重要原材料法」）が公布されました。同規則は、05月23日に発効し、いくつかの内容については、条項ごとに個別の適用開始日が設定されています。

本規則は、「重要原材料」の供給について、海外依存度の低減と輸入の多様化のために、依存度の低減と輸入の多様化に貢献する戦略的プロジェクトを特定し支援することなどを通して、域内市場を分断する可能性のある重要原材料に関する供給途絶のリスクを低減すること、加えて、供給リスクを監視し、軽減するEUの能力を向上させることなどを目的としています。

事業者への直接的な要件はそう多くはないものの、加盟国へ対応を求める内容が多く、CRM法→加盟国の国内法→事業者という流れで、中長期的には影響を及ぼす枠組み的な法令となっているため、事業者要件が少なくとも、EU域内で対象の原材料の供給や扱いに関心がある事業者は、今から把握しておくべき法令の一つです。

注目すべき内容

戦略的原材料（Strategic Raw Materials）

戦略的原材料のリストには、グリーンおよびデジタル移行を支える戦略的技術、あるいは防衛や航空宇宙用途での使用を考慮し、域内市場の機能にとって戦略的に重要性が高く、世界的な供給と予測される需要との間に潜在的に大きなギャップがあり、供給能力を高める新規プロジェクトのリードタイムが長いなどの理由で増産が比較的困難な原材料が含まれている。

重要原材料（Critical Raw Materials）

重要原材料のリストには、すべての戦略的原材料に加え、EU経済全体にとって重要性が高く、競争を歪め、域内市場を分断する可能性のある供給途絶のリスクが高いその他の原材料が含まれている。

欧州委員会は、現在の慣行を継続しつつ、幅広い原材料の生産、貿易、用途、リサイクル、代替に関するデータに基づく評価を定期的に実施し、戦略的原材料および重要原材料のリストを、域内市場におけるこれらの原材料に関連する経済的重要性と供給リスクの変遷を反映して更新すべきとされている。

また、重要な原材料のリストには、経済的重要性と供給リスクの両方の閾値に達するか、それを超える原材料を含めるべきとも指摘されている。

従来、欧州委員会は2011年の第1次リスト以降、3年毎に「重要原材料リスト」を作成・更新してきた。（参考）

今回の規則の附属書2に特定されているリストは、第5次リストに位置付けられている。

2030年までのベンチマーク

■　戦略的原材料のバリューチェーンとEUの供給多様化について、以下のベンチマークを設定

戦略的プロジェクト制度

■　戦略的プロジェクト制度を設け、適用範囲や選定基準、申請・認定手続きを規定し、認定を受けたプロジェクトは資金調達など各種恩恵を受けることができる。

持続可能性と循環性

■　EU加盟国は、重要原材料を多く含む廃棄物のリカバリーを改善し、二次的重要原材料へのリサイクルを確保するための措置を講じる必要があり、EU加盟国及び民間事業者は、抽出廃棄物からの重要原材料のリカバリーの可能性を調査する必要がある。

（要件例）

指令2006/21/ECの第5条に従い廃棄物管理計画を策定する義務のある事業者は、同指令の第 3 条の(27)に定義される所管当局に対し、以下のものからの重要原材料の潜在的な回収に関する予備的経済評価研究を提供しなければならない。
(a) 施設に保管されている抽出廃棄物
(b) 生成される抽出廃棄物、またはより効果的と考えられる場合には、廃棄物となる前の抽出物

参考情報

■　Regulation (EU) 2024/1252

目次

■　第１条　総則

ー第１条　主題及び目的
ー第２条　定義

■　第２章　戦略的原材料及び重要原材料

ー第３条　戦略的原材料のリスト
ー第４条　重要原材料のリスト

■　第３章　EU原材料バリューチェーンの強化

・第１節　ベンチマーク

ー第５条　戦略的プロジェクトの認知基準

・第２節　戦略的プロジェクト

ー第６条　戦略的プロジェクトの認定基準
ー第７条　申請及び認定
ー第８条　戦略的プロジェクトに関する報告及び情報義務

・第３節　許可付与プロセス

ー第９条　単一の連絡先
ー第10条　戦略的プロジェクトの優先ステータス
ー第11条　許可付与プロセスの期間
ー第12条　環境アセスメント及び認可
ー第13条　計画立案
ー第14条　UNECE条約の適用可能性

・第４節　可能な条件

ー第15条　戦略的プロジェクト実施の加速化
ー第16条　資金調達の調整
ー第17条　オフテイク合意の促進
ー第18条　管理情報のオンラインアクセシビリティ

・第５節　調査

ー第19条　国家調査プログラム

■　第４章　リスクモニタリング及び緩和

ー第20条　モニタリング及びストレステスト
ー第21条　モニタリングの情報義務
ー第22条　戦略的ストックの報告
ー第23条　戦略的ストックの調整
ー第24条　企業リスクへの備え
ー第25条　共同購入

■　第５章　持続可能性

・第１節　循環性

ー第26条　循環性に関する国家施策
ー第27条　抽出廃棄物からの重要原材料のリカバリー
ー第28条　永久磁石のリサイクル性
ー第29条　永久磁石のリサイクル材料含有量

・第２節　証明及び環境フットプリント

ー第30条　認定スキーム
ー第31条　環境フットプリント宣言

・第３節　自由移動、適合性及び市場監視

ー第32条　自由移動
ー第33条　適合性及び市場監視
ー第34条　実施及びEU調和法令との整合

■　第６章　ガバナンス

ー第35条　欧州重要原材料委員会
ー第36条　欧州重要原材料委員会の構成と機能
ー第37条　国際協力と戦略的パートナーシップ

■　第７章　委任権限及び専門委員会手続き

ー第38条　委任の執行
ー第39条　専門委員会手続き

■　第８章　改正

ー第40条　規則 (EU) 168/2013の改正
ー第41条　規則 (EU) 2018/858の改正
ー第42条　規則 (EU) 2018/1724の改正
ー第43条　規則 (EU) 2019/1020の改正

■　第９章　最終条項

ー第44条　モニタリングプロセス
ー第45条　加盟国の報告
ー第46条　機密情報の扱い
ー第47条　罰則
ー第48条　評価
ー第49条　発効

■　附属書１　戦略的原材料
・第１節　戦略的原材料リスト
・第２節　戦略的原材料の選択のための方法論

■　附属書２　重要原材料
・第１節　需要原材料リスト
・第２節　経済的重要性及び供給リスクの計算

■　附属書３　戦略的プロジェクトの認定基準の評価

■　附属書４　証明スキームに関する基準

■　附属書５　環境フットプリント
・Part 1　定義
・Part 2　適用範囲
・Part 3　宣言単位
・Part 4　システム境界
・Part 5　インパクト・カテゴリー
・Part 6　企業固有および二次データセットの使用
・Part 7　インパクト・アセスメント法
・Part 8　環境フットプリント性能クラス
・Part 9　適合性評価

戦略的原材料

「戦略的原材料（Strategic raw materials）」は附属書１に特定されています。

重要原材料

「重要原材料（Critical raw materials）」は附属書２に特定されています。

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