2026年09月10日、欧州委員会は、医療用放射性同位体の供給を確保するための政策枠組み「欧州放射性同位体バレー・イニシアティブ(European Radioisotope Valley Initiative、ERVI)」(C/2026/6132)を公表しました。医療用放射性同位体はEU域内で年間1,000万件を超える医療処置に用いられており、腫瘍学および循環器の領域が主な適用分野です。本枠組みは、欧州における生産の主導的地位を強化するとともに、ロシアへの戦略的な依存を低減することを目的としています。本件はコミュニケーション(政策文書)であり、直ちに事業者に法的義務を課す立法提案ではありません。
5つの優先事項
- 研究開発と市場投入:戦略的研究革新アジェンダ(SRIA)の策定、次世代の放射性医薬品の開発支援、共通欧州利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)および欧州イノベーション会議の活用
- 生産設備への投資:EU域内における高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)の製造能力の開発、既存原子炉の改良と新設、公的資金と民間資金を組み合わせる枠組みの検討
- 市場の監視と予測:供給および需要の動向の可視化、医療用放射性同位体の供給に関する欧州オブザーバトリーの強化、医薬品不足への対策との統合
- 国際的な連携:英国および米国との協力によるHALEU供給網の構築、信頼できるパートナーとの間での供給網の多様化
- 規制枠組みの発展:国際原子力機関(IAEA)との協力、医療用放射性同位体の国際輸送の円滑化、放射線防護および廃棄物管理に関する手続の合理化
事業者への影響
- 製造事業者および医療機関にとっては、投資機会の拡大と規制手続の簡素化が図られるとされています。
- 輸送事業者にとっては、IAEAとの協力を通じて国際輸送に関する便宜の向上が見込まれるとされています。
- 委員会は、ロシアから輸入されている安定同位体について、信頼できるパートナーとの間で供給網を多様化する方針を示しています。
資金面の措置
「EU Startup and Scaleup Strategy」、一般経済利益サービス(SGEI)に関する国家補助の枠組み、および2026年に政治合意に至った重要医薬品法(Critical Medicines Act)の活用が示されています。
これまでの経緯
- 2021年:SAMIRA(医療分野における放射線技術の戦略的アジェンダ)の採択
- 2024年06月:理事会結論
- 2025年05月:REPowerEUロードマップの策定
- 2026年03月:実現可能性調査の公表
- 2026年09月10日:ERVIコミュニケーションの公表
本コミュニケーションで確認できない事項
個別の措置の実施時期、および事業者に対する具体的な要件は示されていません。本枠組みは政策の方向性を示すものであり、今後の立法措置や資金措置の内容は、それぞれの手続を通じて定まることになります。
参考情報
欧州委員会 エネルギー総局(European Commission, Directorate-General for Energy)

