産業用ファンのエコデザイン要件を定める規則案について

2023年11月03日、欧州委員会は、産業用ファンのエコデザイン要件を定める規則案について意見募集を終了しました。幅広い製品を規則の対象とし、各種データの測定において正確性と再現性を実現するため、旧来の規則(EU)327/2011は廃止し、新たな規則を制定します。なお、採択の時期は未定となっています。

背景

■エコデザインにおけるファンの実情

製品が環境に与える側面を考慮し、環境性能の向上を目的としてプロダクト設計することをエコデザインと言います。

規則2009/125/ECでは、EUで使用・販売される製品が満たすべきエコデザインの設定が求められ、規則(EU)327/2011において特定のファンについてエコデザインの要件が定められています。

欧州委員会による規則(EU)327/2011の見直しの結果、ファンはEUにおいて大きな存在感を誇る電力消費ファクターであると位置づけられました。

2020年には132MtのCO2当量排出に相当する、336TWhの電力を消費しています。

そのうえ、今後も市場の拡大が予想されるため、2030年には電力使用量は384TWhまで上昇すると予測されています。

ファンのエネルギー消費を改善するためには、技術的進歩の規則への反映、規制の対象拡大、正確な定義の適用などが必要であると指摘されています。

■規制を強化する必要性

製品に組み込まれているファンも数多く存在します。省エネルギー効果を最大化するために、当該製品にも規制を適用させるべきです。

エコデザイン・エネルギーラベル作業計画2022～2024にファンは組み込まれており、2030年には年間10TWhの省エネが見込まれています。

この計画は規則(EU)327/2011による規制を維持しつつ、さらなる規制をかけるものになっています。

また、製品の各種データの測定は正確性と再現性が求められるため、欧州標準化機構が採択した基準を含む最新の方法を導入すべきです。

それから、ファンに適用される要件の差異を、製品の種別ごとに明確化すべきであり、透明性についても確保しなくてはなりません。

よって、現状に合致した法体制を構築するためにも、規則(EU)327/2011を廃止する必要があります。

概要

本規則は市場に流通している消費電力が125Wから500kWのファンを対象としています。

主な内容は下記の通りです。

■適用日以降、ファンの種類や性能、エネルギー効率、リサイクルや廃棄を容易にするための情報などを製品に掲示

■発効日の2年後から、ユーザーマニュアル、ファンの製造元または輸入業者等による無料アクセス可能なウェブサイトなどを製品に掲示

■適用日以降、製造業者・輸入業者等が修理業者に対して予備部品を提供する義務の規定

■加盟国の当局による市場監視を目的とした検査の実施規定

欧州委員会は技術の進歩を考慮したうえで本規則を再評価できます。そして、発効から6年後までに、必要に応じて改定案を提出します。

目次

第一条　目的および範囲

第二条　定義

第三条　エコデザイン要件

第四条　適合性評価

第五条　市場監視目的の検証手続き

第六条　回避行為

第七条　指標的なベンチマーク

第八条　見直し

第九条　廃止及び移行規定

第十条　発効および適用

附属書I　附属書の目的に適用される定義

附属書II　ファンのエコデザイン要件

附属書III　測定と計算

附属書IV　市場サーベイランスのための検証手順

参考情報

エネルギー効率 産業用ファンのエコデザイン要件