2026年7月23日、スウェーデンの気候・企業省(Klimat- och näringslivsdepartementet)は、特定の消費者向け製品について国内独自にPFAS(有機フッ素化合物)を規制する政令改正案をまとめた省庁資料「Nationellt förbud mot PFAS i vissa konsumentprodukter」(整理番号 KN2026/01597)を公表しました。改正の対象は、化学製品の取扱い・搬入・搬出に係る禁止等に関する政令(förordning (1998:944))で、同政令に第11a条から第11f条を新設し、あわせて環境監督政令(miljötillsynsförordningen (2011:13))を改正するものです。規制の対象となるのは、衣類および履物、衣類・履物用の含浸剤(撥水剤)、化粧品、食品と接触することを意図した台所用品、スキーワックスの5分類で、これらの製品にPFASが定められた限度値以上の濃度で含まれる場合、スウェーデン市場において消費者に提供すること(tillhandahållas på marknaden till konsumenter)が禁止されます。施行予定日は2028年1月1日です。本案は、EUレベルでの規制が整うまでの間の措置と位置付けられており、REACH規則やPOPs規則によって同等の禁止が既に生じている場合には適用されません。EU域内市場に製品を供給する事業者にとっては、加盟国が独自の上市制限を設ける動きとして、また濃度限度値の具体的な設定例として、実務上の注目に値します。
規制案の位置付け
PFASについては、EUレベルで包括的な制限に向けた検討が進められていますが、スウェーデン政府は、その結論を待つ間の国内措置として、消費者の暴露が大きいと考えられる製品分類に絞った禁止を提案しています。本案は、EUレベルの規制によって同等の禁止が導入された場合には国内の禁止を廃止することを前提とした、一時的な措置として設計されています。
規制の手法は、既存の政令に禁止条項を追加するもので、新法の制定ではありません。監督や罰則についても、環境法典(miljöbalken)および環境監督政令の既存の枠組みに接続する形が採られています。
禁止の対象となる製品
新設される第11b条は、「次の製品は、第11c条に定める限度値と同じかそれ以上の濃度でPFASを含む場合、消費者に対して市場で提供してはならない」と定め、次の5分類を列挙しています。
- 衣類および履物(kläder och skor)
- 衣類・履物用の含浸剤(impregneringsmedel för kläder och skor)
- 化粧品(kosmetiska produkter)
- 食品と接触することを意図した台所用品(köksredskap som är avsedda att komma i kontakt med livsmedel)
- スキーワックス(skidvalla)
ここで重要なのは、禁止の対象が「消費者に対する提供」である点です。事業者間の取引そのものを直接禁止する構成にはなっていません。もっとも、最終的に消費者へ渡る製品を供給する事業者にとっては、取引先が国内で販売できない製品を供給することになるため、実質的にはサプライチェーンの上流にも影響が及びます。
製品分類のうち、化粧品については化粧品規則(規則(EC)第1223/2009号)の定義が参照されており、それ以外の分類には個別の定義規定が置かれていません。したがって、日常用語としての範囲で判断されることになります。
PFASの定義と濃度限度値
第11a条は、PFASの定義について、包装・包装廃棄物規則(規則(EU)2025/40)第5条第5項第2段落の定義と同一とする旨を規定しています。あわせて、非ポリマーPFAS、ポリマーPFAS(フルオロポリマー、パーフルオロポリエーテル、フッ素化側鎖を有するポリマー)、および分解によりPFASに変化しうる前駆体(prekursor)の概念が用いられます。
第11c条が定める限度値は、次の3つが並行して適用されます。
- 個々の非ポリマーPFASについて 25 µg/kg 以上
- すべての非ポリマーPFASの合計について 250 µg/kg 以上(前駆体の分解によって生成する非ポリマーPFASを含む)
- すべてのPFASの合計について 50 mg/kg 以上
いずれか一つに該当すれば禁止の対象となります。前駆体の分解によって生じる非ポリマーPFASを合計値に含める点は、原材料の仕様書上「PFAS不使用」とされている場合であっても分析上は限度値を超え得ることを意味しており、事業者にとって確認が必要な論点です。
台所用品については、限度値は食品と接触することを意図した部分に適用されることが明記されています。製品全体ではなく接触部位を基準とする整理です。
適用除外
第11f条は、次の場合に禁止を適用しないこととしています。
- 最終使用者からの廃棄物に由来する再生材料を20%以上含む衣類
- 使用者をリスクから保護することを目的とする個人用保護具(規則(EU)2016/425に従うもの)
- 当該個人用保護具を再度含浸処理するための含浸剤
- 使用済みであって継続使用に適した製品(中古品)
再生材料を含む衣類の除外は、循環経済の観点から再生繊維の利用を妨げないようにする趣旨と読めます。個人用保護具の除外は、代替が困難な機能性を考慮したものです。
EU規制との関係
第11e条は、「第11b条の禁止は、対応する禁止が規則(EC)第1907/2006号(REACH規則)または規則(EU)第2019/1021号(POPs規則)によって既に生じていない場合にのみ適用される」と定めています。すなわち、EUレベルの規制と国内規制の二重適用を避ける建て付けです。将来的にREACH規則の制限としてPFASの包括的な規制が導入されれば、この国内禁止は役割を終えることになります。
監督と罰則
監督は、既存の環境監督の枠組みに沿って分担されます。
- 化学品庁(Kemikalieinspektionen)が中心的な監督機関となります
- 小売店・卸売業者に対する監督は自治体(コミューン)が担います
- 化粧品については医薬品庁(Läkemedelsverket)が監督します
禁止に違反した場合は、環境法典第29章第3条第2項第2号の既存の罰則規定(環境に有害な化学品の取扱いに関する罪)が適用されます。新たに独自の制裁金制度を設けるのではなく、既存の刑事罰の枠組みに取り込む形が採られています。
施行日と今後の手続
政令改正は2028年1月1日の施行が予定されています。この施行日は、次の通報手続に要する期間を織り込んだものと説明されています。
- 本案は技術的規則を含むと評価されるため、指令(EU)2015/1535に基づく欧州委員会への通報が必要とされています
- あわせて、WTOの貿易の技術的障害に関する協定(TBT協定)に基づく通報も行うべきものとされています
これらの通報には通常3か月の期間を要するため、成立時期には一定の幅が生じ得ます。また、本案には既に市場に置かれた製品や在庫に関する特段の経過規定は置かれていません。禁止は施行日以後の消費者への提供に適用される構成であり、施行日をまたぐ在庫の取扱いには注意が必要です。
事業者に求められる対応
スウェーデン市場向けに対象5分類の製品を供給する事業者について、現時点で整理できる対応は次のとおりです。
- 誰が:衣類・履物、含浸剤、化粧品、食品接触用の台所用品、スキーワックスを、スウェーデンで消費者に提供する事業者(およびその供給元)
- いつまでに:施行予定日である2028年1月1日まで。在庫の入替えを考慮すると、実際の切替えはそれ以前に完了させる必要があります
- 何を:対象製品のPFAS含有状況を、個々の非ポリマーPFAS、非ポリマーPFAS合計(前駆体由来を含む)、全PFAS合計の3つの指標で把握すること
- どうすればよいのか:原材料・副資材(撥水加工剤、離型剤、インク、コーティング等)のサプライヤーに対して、上記3指標に対応した情報提供を求め、必要に応じて分析による確認を行うこと。台所用品については食品と接触する部分を特定して評価すること。再生材料を含む衣類や個人用保護具については、除外要件に該当するかを文書で確認しておくこと
あわせて、本案が指令(EU)2015/1535に基づく通報の対象とされていることから、通報後の欧州委員会や他の加盟国からの意見によって内容が変更される可能性がある点にも留意が必要です。最終的な条文は、通報手続を経たうえで政令として決定されます。
参考情報
スウェーデン政府(Regeringskansliet、気候・企業省)「Nationellt förbud mot PFAS i vissa konsumentprodukter」
スウェーデン政府(Regeringskansliet)「Nationellt förbud mot PFAS i vissa konsumentprodukter(本文PDF)」



