2026年9月1日、中国商務部は、工業情報化部および国家市場監督管理総局と連名で「汽車行業境外競争行為与合規建設指引」(商合函〔2026〕451号、2026年8月24日付)を公表しました。海外市場で事業を展開する中国系自動車企業を対象に、価格戦略や販売・広告の在り方、進出先での法令遵守体制の構築について、当局が期待する行為規範を体系的に示したものです。全4章20条で構成され、コストを踏まえた価格設定、表示価格以外の追加費用の徴収禁止、販売店の価格決定権の尊重、現地労働法の遵守、車載データおよび個人情報の適正な取扱い、知的財産権の保護、独占禁止法令の遵守などを求めています。中国当局が自国企業の海外市場における競争行為そのものを規律の対象として明示した点が特徴です。
指引の位置付けと適用範囲
本指引は、国際化経営を行う中国自動車企業の境外市場における競争行為に適用されます。企業に対し「依法合規、公平競争、互利共贏」の原則に従うこと、対外投資・貿易関連法規および「企業境外履行社会責任工作指引」等を遵守することを求めています。第19条は、本指引が一般的な参考資料であり、企業は最新の法規を注視して運用を調整すべき旨を定めています。
海外市場での競争行為に関する規範
- コストを基礎とした価格戦略を構築し、不当な競争上の優位を得るために市場の競争秩序を乱す行為を行わないこと(第4条)
- 完成車の希望小売価格について、仕様ごとに明確な価格の階層を設定し、大幅な変動を避けること(第5条)
- 地域ごとの税・費用や物流コスト等を総合的に考慮し、合理的な価格差を設定すること(第6条)
- 販売店・代理店の独立した価格決定権を尊重し、販売奨励策では明確かつ合理的な取決めを作成・履行すること(第7条)
- 透明で明確な価格表示を行い、表示価格以外の追加費用を徴収しないこと(第8条)
- 販売促進活動は現地の商慣行・文化的慣習を遵守し、契約を履行すること(第9条)
- 広告・宣伝では情報を真実かつ完全に開示し、虚偽表示や消費者を誤導する表示を行わないこと(第10条)
現地でのコンプライアンス経営能力の向上
- 視察・商談・建設・生産・価格設定・調達・サービスの全過程における法令遵守の確保(第11条)
- 政治・経済・安全・産業面のリスク評価と、安全事故対応の予備計画の整備(第12条)
- 品質管理体系およびアフターサービス体系の構築(第13条)
- 現地労働法の遵守、平等な採用、職業技能訓練の実施、従業員の権益保障(第14条)
- 車両インターネットおよび自動運転に関するデータ処理の適法性確保と個人情報保護(第15条)
- 知的財産権の海外市場における出願・保護と、紛争への適切な対応(第16条)
- 独占禁止法令の遵守の強化(第17条)
- 気候変動枠組条約および現地規制に基づくサプライチェーンのグリーン・低炭素転換の推進(第18条)
事業者への示唆
本指引は罰則を伴う法令ではありませんが、中国系自動車企業と取引する部品供給者、販売代理店、物流事業者にとっては、取引先が今後求める価格表示・契約条件・データ管理・調達要件の水準を予測する手がかりとなります。とりわけ価格表示の透明化と表示外費用の禁止、データおよび個人情報の取扱い、サプライチェーンの脱炭素対応は、取引契約や監査項目に反映される可能性があります。
参考情報
中華人民共和国商務部「汽車行業境外競争行為与合規建設指引」(商合函〔2026〕451号)
http://www.mofcom.gov.cn/zcfb/dwjjjshz/art/2026/art_a5a8acef37944a2184f9736f9d237fa8.html



