解説 | EU ー アクセシビリティ指令

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法令の情報時期:2019年4月 ページ作成時期:2025年9月

目的

目的

この指令の目的は、特定の製品およびサービスに対するアクセシビリティ要件に関する加盟各国の法律、規則、行政規定を近似させ、それによって域内市場の適切な機能を促進することである。そのため、特に加盟各国におけるアクセシビリティ要件の相違から生じる製品およびサービスの自由な移動に対する障壁を排除および防止する。

概要

概要

目的と背景:この指令の目的は、特定の製品およびサービスに対するアクセシビリティ要件に関する加盟各国の法律、規則、行政規定を近似させ、それによって域内市場の適切な機能を促進することである。

加盟各国のアクセシビリティ要件に関する法律、規則、行政規定がまちまちであることから、各市場向けの製品・サービス開発には追加コストが生じている。その結果、消費者にとって製品が高額となる一方、個人事業主、中小企業や零細企業が自国以外での事業展開を躊躇する結果につながっている。本指令は、域内市場のアクセシビリティ要件を調和させ、このような歪みを是正することを目指す。

そのため本指令では、主に以下の製品・サービスについて一般的要件のほか、個別に追加アクセシビリティ要件を定め、各事業者の義務を規定している。

  • 緊急通信を含む電子通信サービス
  • 視聴覚メディアサービスへのアクセスを提供するサービス
  • 航空、バス、鉄道、水上旅客輸送サービス
  • 都市部および郊外の交通サービスと地域交通サービス
  • 消費者向けコンピューターハードウェア、OS
  • 消費者向け銀行サービス
  • 電子書籍
  • Eコマースサービス

罰則:この指令に従って採択された各国国内規定への違反に対して、各国が罰則を定め、確実に実行する。罰則は、違反の重大性、関係する違反製品またはサービスの数量、および影響を受ける人数を考慮して決定される。

注目定義

■ 「障がい者」(persons with disabilities)

長期にわたる身体的、精神的、知的または感覚的障害を有し、それらの障害とさまざまな障壁との相互作用により、他の者と平等に社会に完全かつ効果的に参加することが妨げられる可能性のある者。

■ 「製品」(product)

食品、飼料、生きた植物および動物、人間起源の製品、および将来の繁殖に直接関連する植物および動物の製品以外の、製造プロセスを通じて生産された物質、調製品、または商品

■ 「サービス」(service)

欧州議会及び理事会の指令2006/123/EC第4条1項に定義されるサービスを指す。

■ 「サービス提供者」(service provider)

EU市場内でサービスを提供する、またはEU内の消費者にそのようなサービスを提供する申し出を行う自然人または法人

■ 「零細企業」(microenterprise)

従業員が10人未満であり、年間売上高が200万ユーロ以下、または年次貸借対照表合計が200万ユーロ以下の企業。

■ 「中小企業」(small and medium-sized enterprises (SMEs))

従業員数が250人未満で、年間売上高が5,000万ユーロ以下、または年次貸借対照表合計が4,300万ユーロ以下の企業(上記に定義された零細企業は除く)。

■ 「視聴覚メディアサービスへのアクセスを提供するサービス」(services providing access to audiovisual media services)

電子通信ネットワークによって送信されるサービスであり、視聴覚メディアサービスに関する情報の識別、選択、受信、視聴に使用され、聴覚障害者用字幕、音声解説、音声字幕、手話通訳など、指令2010/13/EUの第7条に規定するサービスをアクセス可能にする措置を実施した結果として提供される機能

■ 「電子通信サービス」(electronic communications service)

指令(EU)2018/1972第2条第4項に定義されている電子通信サービス。

■ 「緊急通報受付機関(PSAP)」(public safety answering point)

指令(EU)2018/1972の第2条36項に定義されている緊急通報受付機関(PSAP)。

適用除外(対象外・猶予・免除等)

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この指令は、ウェブサイトおよびモバイルアプリケーションの一部のコンテンツには適用されない。詳細は第2条を参照のこと。

さらに、第4条に規定するアクセシビリティ要件は、以下の条件を満たす場合にのみ適用される(第14条)。

  • 要件への適合が、製品またはサービスにその基本的な性質を根本的に変えるような重大な変更を必要としないこと。
  • 要件への適合が、関係する各事業者に過大な負担を課す結果とならないこと。

各事業者は原則として、これらの条件があてはまるか否かを評価、文書化して保管する義務を負う。

事業者が注意すべき内容

本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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製造者の義務(第7条)

  • 製品の上市前に、製品が本指令のアクセシビリティ要件に従って設計および製造されていることを確認する。
  • 本指令附属書Ⅳに従って技術文書を作成し、規定された適合性評価を実施、適合性が実証されればEU適合宣言書を作成してCEマークを貼付する。
  • 技術文書とEU適合宣言書は、上市後5年間保管する。
  • 量産に際しても、必ず製品が安全要件に適合するようにする。製品や、適合性判定の基準となる整合規格、技術仕様の変更等を適切に考慮すること。
  • 製品または包装に型式、バッチ番号、シリアル番号等を消費者が容易に認識できる形で添付する。
  • 製品または包装に名称、商標のほか連絡先住所や電子メールアドレスを記載する。
  • 製品が上市される加盟国の指定に従い、消費者が容易に理解できる言語で、明確な取扱説明書及び安全情報を製品に添付する。
  • 自らが市場に投入した製品が本指令に適合していないと考えられる場合には、直ちに適合のための是正措置や回収等の対策を講じるとともに、不適合の詳細や是正措置について加盟各国の市場監視当局に通知しなければならない。
  • 各国当局からの要請があれば、適合性を証明する書類を提出する。また上市した商品についてアクセシビリティ要件への不適合を是正するための措置に関して当局に協力する義務がある。
資格、認定

認定代理人の義務(第8条)

  • 製造業者は、書面によって認定代理人を任命することができる。その際は、少なくとも以下の業務を遂行する権限を与えなければならない。
    • EU 適合宣言書および技術文書を5年間保管し、市場監視当局の要請があれば提供する。
    • 管轄の各国当局の要請に応じて、製品の適合性を証明するために必要なあらゆる情報や書類を提出する。

    • 管轄の各国当局の要請があれば、製品のアクセシビリティ要件への不適合を排除するためのあらゆる措置に協力する。

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輸入業者の義務(第9条)

  • 適合製品のみを上市すること。
  • 製品を市場に出す前に、製造業者が適合性評価を実施したこと、技術文書を作成したこと、製品にCEマークが貼付されており、必要な書類が添付されていること、並びに第7条5項、6項の要件を遵守していることを確認しなければならない。
  • 製品が本指令のアクセシビリティ要件に適合していないと判断した場合、当該製品が適合するまでは市場に出してはならない。さらに、当該製品が不適合である場合、その旨を製造業者と市場監視当局に通知する。
  • 製品または包装もしくは添付文書に名称、商標のほか連絡先住所を記載する。
  • 製品に消費者が容易に理解できる言語で書かれた説明書と安全情報が添付されていることを確認する。
  • 製品がその責任下にある間、保管または輸送条件によって本指令に定められたアクセシビリティ要件への製品の適合性が損なわれないようにすること。
  • EU宣言適合書の写しを、製品を市場に出した日から5年間保管し、市場監視当局の要請に応じて提出しなければならない。
  • 市場に供給した製品がこの指令に適合していないと考えられる場合には、直ちに適合のための是正措置または回収等の措置を取る。また、製品を供給した各国の管轄当局に不適合の詳細と是正措置を報告し、苦情があった場合はその記録を保持する。
  • 各国当局からの要請があれば、適合性を証明する情報屋書類を提出する。また上市した商品についてアクセシビリティ要件への不適合を是正するための措置に関して当局に協力する義務がある。
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流通業者の義務(第10条)

  • 製品を市場に供給する際には本指令の要件に十分な注意を払うこと。
  • 製品を市場に出す前に、製品にCEマークが貼付されており、必要な書類が添付されていること、製造業者と輸入業者がそれぞれ第7条5項、6項、ならびに第9条4項の要件を遵守していることを確認しなければならない。
  • 製品が本指令のアクセシビリティ要件に適合していないと判断した場合、当該製品が適合するまでは市場に出してはならない。さらに、当該製品が不適合である場合、その旨を製造業者または輸入業者と市場監視当局に通知する。
  • 製品がその責任下にある間、保管または輸送条件によって本指令に定められたアクセシビリティ要件への製品の適合性が損なわれないようにすること。
  • 市場に供給した製品がこの指令に適合していないと考えられる場合には、直ちに適合のための是正措置または回収等の措置を取る。また、製品を販売した各国の管轄当局に不適合の詳細と是正措置を報告する。
  • 各国当局からの要請があれば、適合性を証明する情報や書類を提出する。また上市した商品についてアクセシビリティ要件への不適合を是正するための措置に関して当局に協力する義務がある。
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製造業者の義務が輸入業者や流通業者に適用される場合(第11条)

  • 輸入業者または流通業者は、自らの名または商標の下に製品を上市する場合、またはすでに上市されている製品を本指令の要件への準拠に影響を及ぼすような方法で変更する場合には、本指令の目的において製造業者とみなされ、第7条に規定する製造業者の義務を負う。

サービス提供者の義務(第13条)

  • 必ず本指令のアクセシビリティ要件に従ってサービスを設計し、提供する。附属書Vに従って必要な情報を作成し、サービスアクセシビリティ要件をどのように満たしているかを説明しなければならない。情報は、障害者にもアクセス可能な方法を含め、書面及び口頭で公開する。
  • サービス提供の特性の変化、適用されるアクセシビリティ要件の変化、及びサービスのアクセシビリティ要件適合性の判定基準となる整合規格又は技術仕様の変化を適切に考慮し、常にサービスがアクセシビリティ要件に適合しているようにする。
  • サービスがアクセシビリティ要件に適合していない場合には、直ちに適合のための是正措置を講じる。また、サービスを提供する各国の管轄当局に不適合の詳細と是正措置を報告する。
  • 各国当局からの要請があれば、適合性を証明する情報や書類を提出する。またサービスについてアクセシビリティ要件への不適合を是正するための措置に関して当局に協力する義務がある。

目次

第1章 一般規定

第1条 主題

第2条 適用範囲

第3条 用語定義

第2章 アクセシビリティ要件と自由な移動

第4条 アクセシビリティ要件

第5条 旅客輸送の分野における既存のEU法

第6条 自由な移動

第3章 製品を扱う各事業者の義務

第7条 製造業者の義務

第8条 認定代理人

第9条 輸入業者の義務

第10条 流通業者の義務

第11条 製造業者の義務が輸入業者や流通業者に適用されるケース

第12条 製品を扱う取引先に関する情報提供義務

第4章 サービス提供者の義務

第13条 サービス提供者の義務

第5章 製品またはサービスの根本的な改変と各事業者への過剰な負担

第14条 根本的な改変と過剰な負担

第6章 製品およびサービスの整合規格と技術仕様

第15条 適合性の推定

第7章 製品の適合性とCEマーク

第16条 製品のEU適合宣言書

第17条 製品のCEマークの一般的原則

第18条 CEマーク貼付の規則と条件

第8章 製品の市場監視とEUセーフガード手続き

第19条 製品の市場監視

第20条 適用されるアクセシビリティ要件に準拠していない製品の扱いに関する各国レベルの手順

第21条 EUセーフガード手続き

第22条 形式上の不適合

第9章 サービスのコンプライアンス

第23条 サービスのコンプライアンス

第10章 他のEU法におけるアクセシビリティ要件

第24条 他のEU法におけるアクセシビリティ

第25条 他のEU法における整合規格および技術仕様

第11章 委任法令、実装権限および最終規定

第26条 委任の実施

第27条 下部委員会の手続き

第28条 作業部会

第29条 執行

第30条 罰則

第31条 国内移行

第32条 経過措置

第33条 報告とレビュー

第34条 発効

第35条 この指令の発令先

附属書 Ⅰ 製品およびサービスのアクセシビリティ要件

附属書 Ⅱ 附属書 Ⅰのアクセシビリティ要件を満たす一助となる解決策の例(任意)

附属書 Ⅲ 本指令の適用範囲におけるサービスが提供される建築環境に関する第4条4項の目的のためのアクセシビリティ要件

附属書 Ⅳ 適合性評価手順 – 製品

附属書 Ⅴ アクセシビリティ要件を満たすサービスに関する情報

附属書 Ⅵ 過剰な負担の評価基準

基礎情報

法令(現地語)

DIRECTIVE (EU) 2019/882 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 17 April 2019 on the accessibility requirements for products and services (Text with EEA relevance)

法令(日本語)

欧州アクセシビリティ指令 2019/882

公布日

2019年4月17日

所管当局

作成者

株式会社先読

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