国・地域、セクター、新領域

ポリメタリック・ノジュール

国際海底機関(ISA)の関連文書や規則で用いられる多金属硫化物(polymetallic sulphides)は、海底資源の文脈では「熱水鉱床」としての呼称の方が通りがよいでしょう。実際に、ISAでは多金属硫化物についての説明の冒頭で次のような記述を設けています。

熱水鉱床(hydrothermal mineral deposits)の証拠は、1948年にスウェーデンのアルバトロス海洋探検隊が紅海で初めて発見した。続いて1963年から66年にかけて、紅海の地溝帯で金属性の泥や塩水が発見された。これらの金属性泥には、銅、亜鉛、鉛、鉄、銀、金などが大量に含まれていた。この発見をきっかけに、世界の他の海域でも同じような資源を探すようになり、70年代には東太平洋海嶺系、ガラパゴス海嶺、フアン・デ・フカ海嶺、ゴルダ海嶺に沿っていくつかの熱水鉱床が発見された。

ISA

他方、日本政府の「海洋エネルギー・鉱物資源基本計画」では、「熱水鉱床」として政策が設けられており、次のように紹介されています。

海底熱水鉱床は、海底の地下深部に浸透した海水がマグマ等の熱により熱せられ、地殻に含まれている有用元素を抽出しながら海底に噴出し、それが冷却される過程で、熱水中の銅、鉛、亜鉛、金、銀等の有用金属が沈殿したものである。我が国周辺海域では、島弧-海溝系に属する沖縄海域及び伊豆・小笠原海域において、水深 700m~2,000m の海底に多くの海底熱水鉱床の兆候が発見されており、比較的近海かつ浅海に賦存しているため開発に有利と期待されている。

資源エネルギー庁「海洋エネルギー・鉱物資源基本計画」

日本

海洋エネルギー・鉱物資源基本計画においては、日本周辺の資源量調査の実施、採鉱・揚鉱技術の確立、選鉱・製錬技術の確立、環境影響評価手法の確立、法制度等の検討、経済性評価の実施を行うとされていました。

海洋エネルギー・鉱物資源基本計画では、これまでに行われた探査・調査状況や関連技術の確立状況が報告されており、経済性の検討について、銅や金・銀を多く含む経済価値のより高い鉱床を開発対象とし、コスト改善や金属価格の上昇が達成されるケース等で、経済性を見出しうるとしながらも、揚鉱水の取扱いや閉山処理を含む将来の法制度の整備状況のほか、環境影響への懸念や他産業との利用海域の重複に伴う社会的受容性、国内の選鉱場(尾鉱堆積場含む)の不在、精鉱の国内での受入可否等の要素は考慮されていないために、今後の課題として位置づけられています。

当社で対象とするような法制度検討については、国内法のまえにまずはISA等のルール作りへ貢献していくべきとされています。

米国

米国の国家海洋大気庁(NOAA)では、西大西洋での海底鉱物探査活動について取り上げており、商業的な深海採鉱はまだ探求段階にあるとしながらも、「地上の資源から急速に枯渇しつつある鉱物の必要性が予想されるため、確実に行われるだろう」と述べています。

中央太平洋の「Prime Fe-Mn Crust Zone (PCZ)」と呼ばれる地域が、鉱物資源の豊富な地殻を採掘する上で、世界で最も経済的な関心を集めている場所として、すでに特定されていることや、現在、PCZにおける将来の採掘場所のモデリングを行い、最適な場所を特定しようとしていることについての説明がなされています。

また、別途グアムと北マリアナ諸島(CNMI)を囲む米国のEEZ内、およびISAが承認した試掘採鉱地のすぐ近くにあるPCZ内の海山で、フェロマンガンクラストの分布状況を調査することにも言及されています。

■ Deep-sea Mining Interests and Activities in the Western Pacific/NOAA

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