解説EU – 一般製品安全規則(GPSR)

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法令の情報時期:2023年5月 公布 ページ作成時期:2025年9月

目的

目的

本規則の目的は、EU域内市場の機能のさらなる向上を図りつつ高レベルの消費者保護を行うことであり、市場に流通する消費者製品の安全性について重要なルールを規定している。

概要

概要

本規則は、先行する一般製品安全指令2001/95/ECを、新技術やオンライン販売等の動向を踏まえ、EU整合法令および標準化立法の動向との整合性を確保し、製品安全リコールの機能向上を図る観点から改正し、これにとって代わるものである。同時に、これまで指令87/357/EEC によって規制されてきた食品を模した製品についても、規制の枠組みをより明確にしている。

適用範囲:この規則は、市場に投入される製品のうち、当該製品の安全性確保を対象とした特定のEU法が存在しないものに適用される。また、製品が EU 法によって課される特定の安全要件の対象である場合、本規則はそれらの要件でカバーされていない側面およびリスクまたはリスクのカテゴリにのみ適用される

各事業者は、製品の上市に先立って安全性を評価し、定められた規格のいずれかに適合した安全な製品のみを市場に供給することが求められる。安全性評価においては、特に同時使用する他製品の影響、製品のラベル表示、使用者の年齢・性別によるリスク、製品の誤認・誤用によるリスク、サイバーセキュリティ機能、等に留意することが求められている。

本規則では製造者、流通業者等の各事業者について義務が定められているほか、オンラインマーケットプレースの提供者の義務に関しても別途詳細な規定が設けられている。

本規則に違反した際の罰則は各加盟国が国内法として定め、実施する。

注目定義

■ 「安全な製品」(safe product)

通常の、または合理的に予見可能な使用条件下で、いかなるリスクも呈さない、または製品の使用と両立する最小限のリスクのみを呈し、許容可能と考えられ、消費者の健康と安全の高度な保護に反しないと考えられる製品。

■ 「危険な製品」(dangerous product)

上記の「安全な製品」に該当しない製品すべて。

■ 「リスク」(risk)

危害を引き起こす危険の発生確率と、その危害の重大度の組み合わせを指す。

■ 「重大なリスク」(serious risk)

リスク評価に基づき、製品の通常かつ予見可能な使用を考慮に入れた上で、市場監視当局による迅速な介入が必要であると判断されるリスクを指す。リスクの影響が直ちに現れないケースも含む。

■ 「フルフィルメント サービス プロバイダー」(fullfilment service provider)

商業活動の過程において、製品の所有権を持つことなく倉庫保管、梱包、住所指定および発送のサービスのうち少なくとも 2 つを提供する自然人または法人(郵便サービスや貨物輸送サービス等、除外対象あり)。

■ 「オンラインマーケットプレイスの提供者」(provider of an online marketplace)

消費者が商品の販売について事業者と遠隔契約を締結することを可能にするオンラインインターフェースを使用して仲介サービスを提供する者。

■ 「オンライン インターフェース」(online interface)

ウェブサイト、ウェブサイトの一部、またはモバイル アプリケーションを含むアプリケーションを含むあらゆるソフトウェア。

■ 「リコール」(recall)

すでに消費者に対して提供された製品の返品を目的としたあらゆる措置。

■ 「回収」(withdrawal)

サプライチェーン上のある製品が市場で入手できなくなることを目的としたあらゆる措置。

適用除外(対象外・猶予・免除等)

制限、限定

本規則は以下には適用されない(第2条)

  • 人間または動物用の医薬品
  • 食物
  • 飼料
  • 生きた植物や動物、封じ込め使用される遺伝子組み換え生物および遺伝子組み換え微生物、ならびに植物や動物の生産物で将来の繁殖に直接関連するもの
  • 動物の副産物および派生製品
  • 植物保護製品
  • 消費者が乗車または移動する機器であって、消費者に提供される輸送サービスの一環としてサービス提供者によって直接操作され、消費者自身によって操作されないもの
  • EU 規則 2018/1139 第2条 3項(d)に規定される航空機
  • 骨董品

事業者が注意すべき内容

本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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製造者の義務(第9条)

  • 製品の上市前に、第5条に定める一般安全要件に従って設計および製造されていることを確認する。
  • 上市前に社内リスク分析を実施し、技術文書を作成する。
  • 量産に際しても、必ず製品が安全要件に適合するようにする。
  • 技術文書は、上市後10年間保管し、市場監視当局の要請があれば提出する。
  • 製品または包装に型式、バッチ番号、シリアル番号等を消費者が容易に認識できる形で添付する。
  • 製品または包装に名称、商標のほか連絡先住所や電子メールアドレスを記載する。
  • 製品が市場に提供される加盟国の指定に従い、消費者が容易に理解できる言語で、明確な取扱説明書及び安全情報を製品に添付する。
  • 自らが市場に投入した製品が危険であると考えられる場合には、直ちに安全要件適合のための是正措置、回収やリコール等の対策を講じるとともに、消費者、加盟各国の市場監視当局に通知しなければならない。また関係するサプライチェーン内の各事業者、責任者、およびオンライン マーケットプレイスの提供者にも適時情報を提供する。
  • 消費者が苦情や事故情報等を提出できる窓口(電話やウェブサイト)を提供する。安全性に関する苦情は調査し、是正措置等を内部記録として保持しなければならない。
資格、認定

認定代理人の義務(第10条)

  • 製造業者は、書面によって認定代理人を委任することができる。その際は、少なくとも以下の業務を遂行する権限を与えなければならない。
    1. 市場監視当局の要請に応じて、製品の安全性を証明する書類を提供する。
    2. 製品が危険を呈すると考えられる場合にはその旨を製造業者に通知する。
    3. セーフティ ビジネスゲートウェーを通じて、管轄国家当局に対し、製品のリスク排除のため講じた措置について通知する。
    4. 管轄国家当局の要請があれば、製品リスク排除のためのあらゆる措置にに協力する。
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輸入者の義務(第11条)

  • 製品を上市する前に、製品が第5条に定める一般安全要件に適合していること、並びに製造者が第9条(2)、(5)及び(6)に定める要件を遵守していることを確認しなければならない。
  • 製品が第5条並びに第9条(2)、(5)及び(6)に適合していないと判断した場合、当該製品が適合するまでは市場に出してはならない。さらに、当該製品が『危険な製品』である場合、直ちにその旨を製造業者に通知するとともに、セーフティ ビジネス ゲートウェーを通じて必ず市場監視当局に通知すること。
  • 製品または包装(不可能な場合は添付文書)に名称、商標のほか連絡先住所や電子メールアドレスを記載する。その際は製造業者の記載に重ならないように注意すること。
  • 輸入した製品には、必ず消費者が容易に理解できる言語で書かれた説明書と安全情報が添付されていなければならない。
  • 製品がその責任下にある間、貯蔵または輸送条件によって本規定に定められた製品の適合性が損なわれないようにすること。
  • 技術文書の写しを、製品を市場に出した日から10年間保管し、市場監視当局の要請に応じて提出しなければならない。
  • 製品の安全性確保のため、市場監視当局ならびに製造業者と協力すること。
  • 市場に供給した製品が危険な製品であると考えられる場合には、1) 直ちに製造業者にその旨通知し、適合のための是正措置またはリコール等の措置が確実に取られるようにする。仮にこれらの措置が講じられない場合には、輸入業者がそれを行わなければならない。2) 消費者ならびに製品の流通各国の市場監視当局にも当該製品の危険性について必ず通知されるようにする。
  • 消費者が苦情や事故情報等を提出できる窓口(電話やウェブサイト、第9条参照)が提供されていることを確かめ、仮に提供されていない場合は輸入業者がこれを提供しなければならない。
  • 自らが市場に提供した製品の安全性に関する苦情は調査し、是正措置等を内部記録として保持しなければならない。また、製造業者、販売業者、フルフィルメント サービス提供者及びオンライン マーケットプレイス提供者に対し、実施した調査の内容及びその結果について適時に報告しなければならない。
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流通業者の義務(第12条)

  • 製品を市場に出す前に、製造業者、及び該当する場合は輸入業者が、第9条(5)、(6)及び(7)、並びに第11条(3)及び(4)に規定する要件を遵守していることを確認しなければならない。
  • 製品がその責任下にある間、貯蔵または輸送条件によって本規定に定められた製品の適合性が損なわれないようにすること。
  • 自らの所有する情報に基づき、製品が本規則に適合していないと判断した場合、製品が適合するまで、その製品を市場に提供してはならない。
  • 自ら市場に提供した製品が『危険な製品』である、または本規則に適合していないと判断した場合、直ちにその旨を製造業者/輸入業者に通知するとともに、適合のための是正措置またはリコール等の措置が確実に取られるようにする。また、セーフティ ビジネス ゲートウェーを通じて必ず市場監視当局に通知すること。
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製造業者の義務が他の者に適用される場合(第13条)

  • 自らの名または商標の下に製品を上市する自然人または法人は本規則の目的において製造業者とみなされ、第9条に規定する製造業者の義務を負う。
  • 製造業者以外の自然人または法人で製品に大幅な変更を加える者は製造業者とみなされ、その変更に影響を受ける製品の部分について、または変更によって製品の安全性が影響を受ける場合には製品全体について、第9条に規定する製造業者の義務を負う。
  • 上記における『大幅な』変更の定義の詳細は第13章3項を参照。
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遠隔販売における各事業者の義務(第19条)

オンラインまたはその他の遠隔販売手段を通じて製品を市場に提供する場合の各事業者の義務については第19条を参照。

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製品の安全性に関連する事故が発生した場合の各事業者の義務(第20条)

  • 製造業者は、セーフティ ビジネス ゲートウェイを通じて遅延なく、製品の種類及び識別番号、事故の状況等を事故が発生した加盟国の管轄当局に通知する。
  • 輸入業者及び販売業者は、自らが市場に投入し、又は提供した製品に起因する事故を知った場合には、遅滞なく製造業者にその旨を通知する。製造業者は、第1項の規定に従って通知するか、輸入業者若しくは流通業者のいずれかに通知を行うよう指示しなければならない。
  •  製品の製造業者がEU域内に所在していない場合、事故を認識している本規則第16条1項または規則(EU)2019/1020第4条1項の意味における責任者は、確実に通知が行われるようにする。
文書登録、文書管理、文書作成

製品安全に関するオンラインマーケットプレイス提供者の特定の義務(第22条)

  • オンライン マーケットプレイスの提供者は、セーフティゲート ポータルに登録し、製品の安全性の問題に関して加盟国の市場監視当局と電子的手段で直接通信できる単一の連絡先に関する情報を示す。
  • 製品の安全性の問題に関して消費者が直接かつ迅速に連絡できるように、単一の連絡先を指定する。
  • 本規則の関連要件に遅滞なく準拠するために、製品の安全性に関する内部プロセスを整備しておく。
  • 市場監視当局から、危険製品の提供に関する特定のコンテンツに関して、当該コンテンツをオンラインインターフェースから削除し、アクセスを無効化し、または明確な警告を表示するよう求める命令を受けた場合は、命令受領から2日以内に必ず行動しなければならない。
  • 製品の安全性に関する規則(EU) 2022/2065の第31条(3)を遵守するために、オンラインマーケットプレイスの提供者は少なくともセーフティゲート ポータルを使用する必要がある。
  • 自社のサービスを通じてオンライン販売される製品に関して、安全性の問題に関連する通知があれば、いかなる場合でも通知の受領後 3 営業日以内に処理すること。
  • オンラインマーケットプレイスの構成については、製品を提供する事業者が製品ごとに名称、写真や安全情報等、定められた情報を提供でき、これらが消費者に容易に閲覧できるような方法でインターフェースを設計および構成する。
  • 本規則に準拠していない製品を頻繁に提供する事業者へのサービスの提供を、事前の警告を発した上で、相当の期間停止すること。
  • 市場監視当局、取引業者、各事業者と協力し、自らのサービスを通じてオンラインで提供されている、または提供されていた製品によってもたらされるリスクを排除または軽減するためのあらゆる措置を促進する(詳細は第22条12項を参照)。

目次

第1章 総則

第1条 目的および主題

第2条 適用範囲

第3条 定義

第4条 遠隔販売

第2章 安全要求事項

第5条 一般安全要求事項

第6条 製品安全性評価のポイント

第7条 一般安全要求事項への適合性の推定

第8条 製品安全性評価において考慮すべきその他のポイント

第3章 各事業者の義務

セクション Ⅰ

第9条 製造業者の義務

第10条 認定代理人の義務

第11条 輸入者の義務

第12条 流通業者の義務

第13条 製造者の義務がそれ以外の者に適用される場合

第14条 製品安全性のための内部プロセス

第15条 各事業者の市場監視当局への協力義務

第16条 EU域内市場に流通する製品の安全性に責任を持つ者

第17条 各事業者への情報提供

第18条 特定の製品、カテゴリーまたは製品群に対するトレーサビリティー要件

セクション Ⅱ

第19条 遠隔販売の場合における事業者の義務

第20条 製品安全性に関連する事故が発生した場合の事業者の義務

第21条 電子型式での情報提供

第4章 オンライン マーケットプレイスの提供者

第22条 製品安全性に関するオンライン マーケットプレイス提供者の義務

第5章 市場監視と実施

第23条 市場監視

第24条 報告

第6章

セーフティーゲート緊急警報システムとセーフティー ビジネス ゲートウェイ

第25条 セーフティーゲート緊急警報システム

第26条 セーフティーゲート緊急警報システムを通じた危険製品の通報

第27条 セーフティ ビジネス ゲートウェイ

第7章 欧州委員会の役割と執行の調整

第28条 重大なリスクを呈する製品に対するEUの措置

第29条 リスク評価における見解相違の場合の委員会意見の請求

第30条 消費者安全ネットワーク

第31条 製品安全性に関する共同活動

第32章 複数の市場監視当局による協調一斉管理行動(『スイープ』)

第8章 情報および救済措置を受ける権利

第33条 当局と一般市民の間の情報

第34条 セーフティゲート ポータル

第35条 各事業者とオンライン マーケットプレース提供者から消費者への製品安全性情報

第36条 リコール通知

第37条 製品安全リコールの場合の救済措置

第38条 基本合意書

第39条 代表訴訟

第9章 国際協力

第40条 国際協力

第10章 財務関連条項

第41条 資金の提供

第42条 EUの経済的利益の保護

第11章 最終条項

第43条 責任

第44条 罰則

第45条 権限の委任

第46条 下部委員会プロセス

第47条 評価とレビュー

第48条 EU規則 No 1025/2012 の修正

第49条 EU指令 2020/1828 の修正

第50条 廃止

第51条 経過規定

第52条 発効と適用

附属書 相関表

基礎情報

法令(現地語)

REGULATION (EU) 2023/988 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 10 May 2023on general product safety, amending Regulation (EU) No 1025/2012 of the European Parliament and of the Council and Directive (EU) 2020/1828 of the European Parliament and the Council, and repealing Directive 2001/95/EC of the European Parliament and of the Council and Council Directive 87/357/EEC

法令(日本語)

EU 一般製品安全規則(GPSR)

公布日

2023年5月10日 公布

所管当局

作成者

株式会社先読

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