世界各国のコンプライアンス情報収集・調査対応

ARTICLE 2026.09.07

EU|欧州委員会、市場支配的地位の排除的濫用に関する指針を採択

公開日
2026.09.07

2026年09月03日、欧州委員会は、EU機能条約(TFEU)第102条を市場支配的地位にある事業者の排除的濫用行為に適用する際の考え方を示すガイドライン「Guidelines on the application of Article 102 of the Treaty on the Functioning of the European Union to abusive exclusionary conduct by dominant undertakings」を採択しました。EU司法裁判所の判例と欧州委員会自身の執行経験を踏まえ、支配的地位の認定から、メリットに基づく競争からの逸脱、排除効果の評価、正当化事由の主張に至るまでの分析の枠組みを包括的に整理したものです。採択にあわせて、従来運用されてきた執行優先順位に関するガイダンス(2008年採択、2023年改正)は撤回されました。ガイドライン自体が新たな義務を課すものではありませんが、EU域内で高い市場シェアを有する事業者にとっては、自社の価格設定や取引条件が第102条の下でどのように評価されるのかを点検する契機となります。

約3年の協議を経た初のガイドライン

欧州委員会は、排除的濫用に関するガイドラインを策定するのは今回が初めてであるとしています。策定の経緯は、2023年03月の意見招請の開始、2024年08月の草案に対する公開協議、2025年02月のステークホルダー向けワークショップを経たもので、約3年間の協議の結果として採択されました。欧州委員会は、その狙いを「現代的で経済学的に健全な枠組み」を提供することにあると説明しています。

明確化された主な論点

  • 支配的地位の判断:エコシステムやアフターマーケットを含む文脈における評価の考え方
  • メリットに基づく競争からの逸脱と排除効果:どのような行為が競争の実力によらないものとして問題となり、いかなる場合に排除効果が認められるかの基準
  • 行為類型ごとの分析枠組み:略奪的価格設定(predatory pricing)、マージンスクイーズ、排他的取引、供給拒否などの類型別の考え方
  • 正当化事由:客観的な必要性、または排除効果を上回る効率性による正当化の可能性

従来ガイダンスの撤回

撤回された執行優先順位に関するガイダンスは、欧州委員会がどの事件を優先して取り上げるかの方針を示すものでした。今回のガイドラインは、その後のEU司法裁判所の判例で確立された効果に基づくアプローチを反映したうえで、実体的な評価の枠組みを示す文書へと位置付けを改めるものです。執行の予見可能性と加盟国間での一貫性を高めることが目的とされています。

事業者に必要な確認

  • EU域内の特定の市場で高い地位を有する可能性がある場合、自社が支配的地位にあると評価され得るかを、エコシステムやアフターマーケットの観点も含めて確認する
  • 割引・リベート制度、独占的供給契約や購買契約、垂直統合下での卸売価格と小売価格の関係、他社への技術・データ・設備へのアクセス提供の条件について、ガイドラインの類型別の考え方に照らして点検する
  • これらの行為について客観的な必要性や効率性による説明が可能かを、記録を含めてあらかじめ整理しておく

今後の見通し

欧州委員会は、排除的濫用以外の類型である搾取的濫用については、後の段階でガイダンスを示すことを検討しているとしています。

参考情報

欧州委員会 競争総局(DG COMP)「Commission adopts EU Guidelines on exclusionary abuses of dominance」(2026年09月03日)

https://competition-policy.ec.europa.eu/about/news/commission-adopts-eu-guidelines-exclusionary-abuses-dominance-2026-09-03_en

RELATEDあわせて読む

分野「執行・監査」ほか、この記事と同じ分類から

同じ分野の記事

この分野の一覧へ →

法令解説

商品(和訳・解説書)

C Topics

CONSULTATION

「執行・監査」の調査相談(無料)

概要調査、詳細調査、比較調査、個別の和訳、定期報告調査、年間コンサルなど、様々な調査に柔軟に対応します。

  • ●●の詳細調査/定期報告調査
  • ●●の他国(複数)における規制状況調査
  • 細かな質問への適宜対応が可能な年間相談サービス
  • 世界複数ヵ国における●●の比較調査 など

個人の方は「個人」とご入力ください。

「目次」 「目次」