2026年08月27日、米国環境保護庁(EPA)は、動物実験によらずに化学物質の毒性を評価するための二つの科学的進展を採用したと公表しました。一つは、石けんや洗剤に用いられる界面活性剤の肺への刺激性について、三次元の人工気道組織を用いた予測モデルを採用するものです。もう一つは、一部の農薬の経口毒性の予測に、化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)の混合物に関する計算式を適用するもので、国立環境衛生科学研究所(NIEHS)と連携して行った約700種類の農薬の分析に基づいています。EPAは2035年までに哺乳類を用いる試験を段階的に廃止する目標を掲げており、今回の措置はその一環です。化学物質や農薬の登録・届出を行う事業者にとっては、申請に際して提出できるデータの選択肢が広がり、試験に要する期間と費用の見直しにつながる可能性があります。
採用された二つの手法
- 界面活性剤の肺刺激性評価:三次元の人工気道組織(3D人工気道モデル)を用いた予測モデルを採用し、生きた動物を用いずに吸入時の刺激性を評価できるようにするものです。対象は石けんや洗剤などに広く使用される界面活性剤です。
- 農薬の経口毒性の予測:GHSの混合物に関する計算式(mixtures equation)を用いて、製剤全体の急性経口毒性を構成成分のデータから算定する手法です。NIEHSと連携した約700種類の農薬の分析結果によって、その妥当性が裏付けられたとされています。
NAMs(新たなアプローチ手法)の位置付け
EPAは、生きた動物を用いずに化学物質の毒性を評価する技術を総称してNAMs(New Approach Methodologies)と呼んでいます。コンピュータモデリング、細胞を用いた試験、データ共有プラットフォームなどが含まれ、今回採用された二つの手法もこの枠組みに位置付けられます。
根拠となる法令
- 有害物質規制法(TSCA):2016年の改正により、脊椎動物を用いる試験の削減を促進することが明記されています。
- 連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA):農薬の登録に係る毒性データの提出要件に関わります。
事業者への影響
- 化学物質や農薬の新規申請にあたり、動物実験の結果に代えて、NAMsに基づくデータを提出することが認められる範囲が広がります
- 界面活性剤を含む家庭用・工業用洗浄剤の製造者、農薬の登録者は、自社製品に関する試験計画を、今回採用された手法を前提に見直す余地があります
- EPAが2035年までに哺乳類試験の段階的廃止を目指していることから、今後も評価手法の置換が段階的に進むと見込まれます。試験受託機関との契約や社内の安全性評価手順について、中期的な計画の見直しが有用です
なお、今回公表されたのは評価手法の採用であり、既存の登録製品に対して直ちに新たな義務が生じるものではありません。
参考情報
米国環境保護庁(EPA)「EPA Announces Two Major Scientific Advancements to Further Eliminate Animal Testing and Raise Scientific Standards」(2026年08月27日)


