解説ドイツ-事業場に関する規制 (ArbStättV)

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法令の情報時期:2024年03月 統合版 ページ作成時期:2025年08月

目的

目的

本規制の目的は、事業場の設置および運用に際して、被雇用者の安全ならびに健康の保護に資することである。

概要

概要

事業場(建物内の作業室、敷地内屋外、建設現場等)および付帯設備を包括的に対象として、使用者に対して危険性評価とそれに基づく措置の実施、設置・運用における技術・人間工学・衛生上の要件の遵守を求める。

運用面では施設の保守、清掃、避難・救助計画、応急手当体制の整備、非喫煙者保護、教育訓練を義務付ける。

視覚表示端末を用いる作業や屋外・建設現場、宿泊・休憩・衛生施設等については附属書で、通路・避難口、表示・照明、温熱環境・換気・騒音などの具体仕様を定める。

危険性評価の文書化と変更時の見直し、設備の定期点検、障害のある労働者へのバリアフリー配慮を規定している。

テレワークや共同宿舎への特則、公共交通用車両や農地等の限定適用、州当局による例外許可、連邦労働社会省(BMAS)所管の委員会による技術ルールの位置づけ、経過・罰則規定が設けられている。

喫煙規制は紙巻たばこに加え大麻製品や電子たばこも対象とする。

注目定義

<対象製品>

■ 「事業場」(Arbeitsstätten)

「事業場」とは、次の場所をいう。ただし、作業場所としての利用が予定されているものに限る。  1.事業場の敷地内にある建物内の作業室その他の場所 2.事業場の敷地内の屋外の場所 3.建設現場における場所 また、事業場には被雇用者が業務の範囲で立ち入ることのできる場所や、使用する以下のような設備も含まれる。例:交通経路、避難経路、非常口、倉庫・機械室・付属室、衛生室、食堂、休憩室および待機室、応急手当室、宿泊施設、事業場の運用に供する設備、特に安全照明、消火設備、供給設備、照明設備、空調(室内空気)設備等

■ 「作業室」(Arbeitsräume)

「作業室」とは、建物内において、作業場所が恒久的に設けられている室をいう。

■ 「作業場所」(Arbeitsplätze)

「作業場所」とは、被雇用者が業務の範囲で作業する区域をいう。

■ 「ディスプレイ作業場」(Bildschirmarbeitsplätze)

「ディスプレイ作業場」とは、作業室内にあり、ディスプレイ装置およびその他の作業用具を備えた作業場所をいう。

■ 「ディスプレイ装置」(Bildschirmgeräte)

「ディスプレイ装置」とは、視覚情報表示用の画面、データの入出力設備、その他の制御・通信ユニット(コンピュータ)ならびに業務の遂行を制御・実行するためのソフトウェアからなる機能単位をいう。

■ 「テレワーク用ディスプレイ作業場」(Telearbeitsplätze)

「テレワーク用ディスプレイ作業場」とは、被雇用者の私的居住空間に雇用者が恒久的に設けるディスプレイ作業場であって、雇用者が被雇用者と合意した週間の労働時間および設置期間を定めたものをいう。

■ 「共同宿舎」(Gemeinschaftsunterkünfte)

「共同宿舎」とは、事業場または建設現場の敷地内外に設けられる宿舎であって、1.雇用者が、または雇用者の依頼により第三者が、被雇用者に有償または無償で提供するもの、かつ 2.複数の被雇用者により、全体として少なくとも4人で共同利用されるものをいう。

■ 「設置」(Einrichten)

「設置」とは、事業場を供給し、整備することをいう。設置には、特に次の事項が含まれる。1.建築上の措置または変更 2.機械、設備、その他の作業用具および家具ならびに照明・換気・暖房・消火・供給設備による装備 3.交通経路および避難経路の設置・標示ならびに危険箇所および防火設備の標示 4.作業場所の設定

■ 「事業場の運用」(Das Betreiben von Arbeitsstätten)

「事業場の運用」とは、事業場の使用、維持管理および最適化ならびに事業場における作業(作業手順を含む)の組織および設計をいう。

■ 「維持管理」(Instandhalten)

「維持管理」とは、事業場の建築的・技術的状態を維持するための保守、点検、修繕または改善をいう。

■ 「技術水準」(Stand der Technik)

「技術水準」とは、被雇用者の安全確保および健康保護のための措置が実際に適合すると見なされる、先進的な手法・設備または操業方法の開発水準をいう。

<対象者>

■ 「専門的知見を有する者」(Fachkundig)

「専門的知見を有する者」とは、本規制に定める職務の遂行に必要な専門知識を有する者をいう。専門性の要件は当該職務の種類に応じて定まる。専門知識は、研修への参加により常に最新の状態に維持しなければならない。

適用除外(対象外・猶予・免除等)

人の安全

鉱山法(Bundesberggesetz)対象の事業場は、「ディスプレイ作業場(テレワークを含む)」を除き本規制の対象外とされている。(第1条)

事業者が注意すべき内容

本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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・次の事業場については、第5条および附属書1.3のみが適用される。
1.旅行営業および市場取引における事業場
2.公共交通に用いられる輸送手段
3.農業または林業の事業に属する畑地・森林その他の区域で、当該事業の建築物が建つ区域の外に位置するもの

・事業場または建設現場の敷地外にある共同宿舎については、次のみが適用される。
1.第3条
2.第3a条
3.附属書4.4

・テレワーク用ディスプレイ作業場については、次のみが適用される。

1.労働条件および作業場所の初回評価に関する第3条

2.第6条および附属書第6項

ただし、当該作業場所が事業場内の作業場所と異なる場合に限る。第1文に掲げる規定は、テレワーク用ディスプレイ作業場の特性を考慮した要件が当該作業場所に適用可能な範囲で適用される。

・附属書第6項は、次については適用されない。

1.ディスプレイ装置を備えた機械の操作席または車両の運転席

2.作業場所で恒常的に使用されない、移動用途の携行型ディスプレイ装置

3.当該作業用具を直接使用するために必要な、小型のデータ又は計測値表示装置を備えた計算機、レジスターその他の作業用具

4.ディスプレイを備えた従来型のタイプライター
 (詳しくは第1条「目的・適用範囲」参照)

ばく露

(1)雇用者は、労働保護法(ArbSchG)第5条に基づく労働条件の評価(危険性評価)に際し、被雇用者が事業場の設置および運用における危険へのばく露の有無、ばく露する可能性について確認しなければならない。危険性がある場合には、被雇用者の安全および健康に対するあらゆる可能な危険を評価し、その際、事業場における業務の組織および作業手順の影響を考慮しなければならない。
危険性評価においては、身体的負担および心理的負担、ならびにディスプレイ作業場における特に眼に対する負担、または被雇用者の視力に対する危険を考慮しなければならない。危険性評価の結果に応じて、雇用者は本規則およびその附属書の規定に従い、技術水準、労働医学および衛生に基づく被雇用者保護のための措置を定めなければならない。その他の確立された労働科学上の知見も考慮しなければならない。

(2)雇用者は、危険性評価が専門的知見をもって実施されることを確保しなければならない。雇用者自身が当該知見を有しない場合は、専門家の助言を受けなければならない。

(3)雇用者は、業務の開始前に危険性評価を文書化しなければならない。文書には、作業場所で生じ得る危険および第1項第4文に基づき実施すべき措置を記載しなければならない。(第3条 危険性評価)

3

事業場を設置・運用する際、危険をできる限り除去・低減し、被雇用者の安全と健康が確保されるように設計・管理する。基準は技術水準、労働医学、衛生、人間工学に適合させなければならない。

障害のある被雇用者のニーズを踏まえ、動線・設備・サイン等に合理的配慮を組み込まなければならない。

労働社会省が公表する「作業場の技術ルール(ASR)」に適合する措置を講じた場合、本規則の要求を満たすと推定される。ASRと異なる方法を採るときは、同等以上の安全衛生水準を確実に示す。

他の公法上の規制(とくに州建築法など)による要求は本規則に優先・併存し得るため、設置・運用はそれらの要求とも整合させる。
(詳しくは第3a条参照)

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雇用者は下記の事項を実施/考慮しなければならない。

  • 事業場を常に安全かつ衛生的な状態に維持し、欠陥は速やかに是正し、適切な方法で清掃する。

  • 避難経路・非常口を常時支障なく使用できるよう確保・標示し、必要に応じて非常照明を備える。

  • 火災探知・警報・消火、換気・照明などの安全関連設備の機能を確保し、定期的に点検・保守する。

  • 事業場の性質・規模・作業内容に応じ、避難・救助計画を作成し、掲示のうえ、適切な避難/初期消火等の訓練を実施する。

  • 応急手当体制を整え、救急資機材・救急室や連絡手段を確保し、必要数の実施者を指名する。

  • 設備の機能に支障が生じた場合は、復旧までの間、代替措置を講じて労働者の安全・健康を確保する。
    (詳しくは第4条「事業場の運用に関する特別要件」参照)

 
情報伝達、連絡

事業場において、被雇用者の非喫煙者が、たばこ製品・大麻製品・電子たばこ等の煙や蒸気による健康被害から実効的に保護されるよう、雇用者は必要な措置を講じなければならない。

来客や一般公衆の出入りがある事業場では、実態に応じて追加の技術的・組織的措置(例:全面禁煙化、動線分離、換気・隔離等)を講ずる。

雇用者は全面禁煙を選択できる。喫煙を許可する区域・室を設ける場合でも、煙や蒸気が他の区域に流入しないようにし、非喫煙者の保護が損なわれないよう管理する。

上記の保護は、第6条(被雇用者への安全衛生教育)や附属書の標識要件と整合的に実施されることが前提となる。
(詳しくは第5条「受動喫煙の防止」参照)

雇用者は、勤務時間内に、被雇用者が理解できる形式・言語で、事業場の安全衛生に関する十分かつ適切な教育(情報提供を含む)を行わなければならない。

教育は就業開始前に実施し、その後も少なくとも年1回は反復する。業務内容・設備・作業方法・組織などに重要な変更があった場合は、速やかに追加で実施する。

内容は、危険性評価の結果に基づく措置や設備・標識の意味、非常時の行動(避難・救助)、初期消火や応急手当の手順など、当該作業に即した事項を含む。
(詳しくは第6条「被雇用者への安全衛生教育」参照)

目次

第1条 目的・適用範囲

第2条 用語の定義

第3条 危険性評価

第3a条 事業場の設置および運用

第4条 事業場の運用に関する特別要件

第5条 受動喫煙防止

第6条 被雇用者への安全衛生教育

第7条 事業場委員会

第8条 経過規定

第9条 犯罪行為および違法行為

附属書 第3条第1項に基づく事業場に対する要件および措置

第1項 一般要求事項
第1.1項 建築物の構造および強度に関する要件
第1.2項 室の寸法および空気容積
第1.3項 安全衛生表示
第1.4項 エネルギー配分設備
第1.5項 床・壁・天井・屋根
第1.6項 窓・天窓
第1.7項 扉・門
第1.8項 交通経路
第1.9項 エスカレーター・動く歩道
第1.10項 荷さばき用ランプ
第1.11項 垂直はしご・ステップボルト通路

第2項 特別な危険からの保護措置
第2.1項 墜落および落下物からの防護、危険区域への立入り
第2.2項 火災対策
第2.3項 避難経路および非常口

第3項 作業条件
第3.1項 動作空間
第3.2項 作業場所の配置
第3.3項 装備
第3.4項 照明および視覚連絡
第3.5項 室温
第3.6項 換気
第3.7項 騒音

第4項 衛生・休憩・待機室、食堂、応急手当室および宿泊施設
第4.1項 衛生室
第4.2項 休憩室および待機室
第4.3項 応急手当室
第4.4項 宿泊施設

第5項 特定の事業場および作業場所に関する補足的要件および措置
第5.1項 全周が囲われていない事業場の作業場所および屋外の作業場所
第5.2項 建設現場

第6項 ディスプレイ作業場の設計に関する措置
第6.1項 ディスプレイ作業場に関する一般要件
第6.2項 ディスプレイおよびディスプレイ装置に関する一般要件
第6.3項 作業場所で据置き使用するディスプレイ装置および作業用具に関する要件
第6.4項 作業場所での移動用途のための携行型ディスプレイ装置に関する要件
第6.5項 ディスプレイ作業場の使用快適性に関する要件

基礎情報

法令(現地語)

Verordnung über Arbeitsstätten (Arbeitsstättenverordnung – ArbStättV)

法令(日本語)

事業場に関する規制(事業場規制ーArbStättV)

公布日

2004年08月12日

所管当局

連邦労働社会省(BMAS)

作成者

株式会社先読

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