法令の情報時期:2019年06月 公布版 | ページ作成時期:2020年06月 |
EUの医薬品規制概要
<2021年09月時点>
日本において病院や薬局で処方される医療用医薬品や薬店で市販されている一般用医薬品等を含むヒト用医薬品は、欧州ではMedical product for humanと翻訳・記載されます。日本において、病気の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人または動物の身体 に直接使用されることのないもののことで、血液、尿便等を検査するために使用する試薬等である体外診断用医薬品はIn vitro device for a companion diagnosticと翻訳・記載されます 。
欧州における体外診断用医薬品を含む医薬品の規制は、「欧州薬局方の精緻化に関する条約」に基づいて創設された医薬品・ヘルスケアの質に関する欧州総局(European Directorate for the Quality of Medicines and HealthCare (EDQM) of the Council of Europe)が法令を作成し、欧州医薬品庁(European Medicines Agency, EMEAもしくはEMA)が規制を行っています。欧州における体外診断用医薬品を含む医薬品は、欧州薬局方(European Pharmacopoeia)に収載されます。収載医薬品のリストは、3年ごとに新版が発行されます。
医薬品・体外診断用医薬品は法令(法的拘束力のある規則Regulation、指令Directive、 決定 Decision)に加え、忠告的意味合いの基準(勧告Recommendation、決議Resolutions、合意Agreements、ガイドラインGuidelines、意見Opinion、通達Communication、決定Decision)があり、その制定は欧州理事会(EU Council)が欧州議会(The European Parliament)の参画により行われています。これら複数の法令はEUR-Lexにまとめられており、検索可能となっています。
ヒト用医薬品
ヒト用医薬品のEUにおける一括した法的枠組みは、EMAが所管している「 欧州連合における医薬品のルール(Legal framework governing medicinal products for human use in the EU )」に記載されています。ヒト用医薬品のためのEUの法的枠組みは、高いレベルで公衆衛生を保護するため、承認された医薬品の品質、安全性、有効性を確保するための基準として設定されています。また、既存薬の存在により 新薬の開発や上市を妨げないように作成されています。EU全体での法律の解釈と統一された適用を行うために、規制と科学的検査に対する多数のガイドラインが採用されており、承認手続きおよびその他の規制ガイダンスの詳細な説明は、「欧州連合における医薬品のルール」の第2巻「申請者への通知」にまとめられています。また、欧州連合の医薬品を含む薬用製品を管理する規則をまとめたユードラレックス(EudraLex)の第3巻 「人間用薬品の科学的ガイドライン」に要約がまとめられ、実際の複雑な手続きは「医薬品の立法枠組みの中での欧州連合のガイドラインおよび関連文書の手順」に詳しく示されています。以下に規制の要約を記載します。
ヒト用医薬品は、管轄当局であるEMA 内の薬用製品委員会(Committee for Medicinal Products for Human Use、CHMP)により一つ一つ品質、安全性、有効性が評価され、最終的には欧州理事会を通して欧州加盟国すべてにおいて承認されます。ただし、加盟国で個別に承認された後に他の加盟国によって承認される相互承認審査制度を使うこともできます。ちなみにEMAは加盟国からの間接的助成金と同様にEUと製薬産業からの資金提供により運営されています。またEMAへ評価の申請を行うには、手数料が必要となります。
承認の要件と手順、および認可された製品を監視するための規則は、主に指令2001/83/ECおよび規制 (EC)No 726/2004に定められています。これらの中には、ヒト用医薬品の製造、卸売、または広告のための規定も含まれています。さらに、EUの法律は、EUにおける管理された条件下での医薬品の安全性と有効性をテストする臨床試験(Clinical trials)の実施に関する共通の規則も規定しています。すべての臨床試験データはEMAにより欧州データベース(European Union Drug Regulating Authorities Clinical Trials Database、EudraCT)に 保存され、自由に参照することができます。さらに、医薬品の品質については、EUの法律で定められた基準(指令の附属書1 2001/83/ECとガイドライン(ユードラレックス 第3巻)に従って評価されます。医薬品自体の製造についてのガイドラインはユードラレックス第4巻に記載されています。
ちなみに平成30年に日本と欧州連合(EU、European Union) 相互承認協定を結び、日本で製造した原薬は許可・確認書が無くてもEUに輸出することができます。すべての医薬品製造および輸入ライセンスはEMAにより管理される欧州 のデータベーであるEudraGMPに保存され、自由に参照することができます。欧州では医薬品の安全性と有効性は市場に出る前にEMAにより注意深く検査・確認される必要があることが規定され、そのためのガイダンスがユードラレックス第3巻に示されています。検査においてはEMAのCHMPが科学的な評価を行い、薬が許可されるべきかどうかについて意見を発表します。その後、この意見に基づき、欧州理事会のもと欧州委員会(European Commission、EC)が販売承認を発行、却下、修正します。加えて、ヒト用医薬品は、承認後も引き続き「欧州連合における医薬品のルール」により監視され、EC はCHMPの評価の元、販売承認を一時停止する権限も持ちます。
体外診断用医薬品
体外診断用医薬品のEUにおける法的な枠組みは、人間の医薬品と同様に、高いレベルで公衆衛生を保護するため、承認された医薬品の品質、安全性、有効性を確保するための基準として設定されています。体外診断用医薬品は、EU医療機器規則(European Union Medical Device Regulation、 MDR)内のコンパニオン診断薬(Companion diagnostics)に当たり、MDRに基づき、体外診断用機器規則(In vitro diagnostic Regulation 、IVDR)によって規定されています。
原薬製造業者は、人用医薬品と同様に、製造管理及び品質管理の基準であるGMP(Good Manufacturing Practice)を遵守して製造を行い、GMP適合性調査及び医薬品製造業許可の定期的な更新を受ける必要があります。販売者・輸入者(流通管理)を規定する法令として、日本では品質管理システムはQMS省令(Quality Management System)で、製造販売後の安全管理基準はGVP省令(Good Vigilance Practice)でと、上市する前後で明確に区別されています。ところが、欧州では上市する前よりPMS(Post Marketing Surveillance、市販後調査・製造販売後調査)の内容を含んだQMSが承認される必要となります。また、このQMSには既に日本や米国などの欧州圏外のPMSやGVPの内容があった場合にはそのすべて 取り入れて作成する必要があります。
動物用医薬品
動物用医薬品(Medical products for veterinary use) のEUにおける一括した法的枠組みは 、EMAが所管している「動物用医薬品のルール(Legal framework governing medicinal products for veterinary use in the EU)」に記載されています。ヒト用医薬品は市場に出される前に、管轄当局であるEMA 内の獣医用医薬品委員会(Committee for medicinal products for Veterinary Use、CVMP)により一つ一つ品質、安全性、有効性が評価され、最終的には欧州理事会を通して欧州加盟国すべてにおいて承認されます。ルールと委員会が異なるだけで、その他はヒト用医薬品と同じ規則によって規定されています。
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