米国|EPA、TSCAに基づくリスク評価を実施するための手続き枠組み規則の改正を提案

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米国|EPA、TSCAに基づくリスク評価を実施するための手続き枠組み規則の改正を提案

TSCAリスク評価手続きの改善

2023年10月30日、米国連邦官報にて、有害物質規制法(TSCA)に基づくリスク評価を実施するための手続き枠組み規則の改正を提案する内容が公示され、意見募集が開始されました。意見募集期限は12月14日です。2016年TSCA改正の制定後にリスク評価プログラムを実施したEPAの経験を反映し、さらなる改善を図る内容となっています。

概要・背景

■ 新たな手続きは、原則、最終規則の日付以降に開始されるすべてのリスク評価に適用。実施中のリスク評価については、法定要件と期限を考慮して、実施可能な範囲においてのみ適用。

■ 化学物質の区分に関するリスク評価への適用に関して規制を明確化することを提案。TSCA第26条(c)に基づき、TSCAがEPAに対し化学物質に関する措置の実施を要求または許可している場合、EPAは、化学物質の区分(すなわち、化学物質群)に関して同じ措置を実施することができることを明確に。化学物質の区分が同じものとは、例えば、分子構造、物理的、化学的、または生物学的特性、用途、あるいは人体や環境への浸透様式が類似している化学物質群をいう。

■ いくつかの定義に関する更新。
>「利用可能な最善の科学(best available science)」および「科学的証拠の重み(weight of scientific evidence)」を削除。
>「過度な負担を強いられている地域社会(overburdened communities)」の追加を提案
>「経路(pathway)」および「ルート(route)」について、既存のガイダンスとの定義の整合性の確保

■ リスク評価において、すべての使用条件を考慮することを明確化。(特定の条件を除外しないことを明確に)

■ すべてのばく露経路を考慮することを明確化。

※ 例えば、最初の10回のリスク評価を実施する際、大気、水域、および土地への放 出による一般住民への特定の暴露の分析を除外することにより、評価の範囲を狭めるという対応がなされた。

■ リスク評価過程について、優先順位決定過程にある化学物質が高優先度化学物質として指定されることが明らかな場合に、 優先順位決定過程中にスコープ文書(リスク評価における焦点や考慮すべき範囲などを特定する文書)の草案を公表するという本提案方法について、今回、意見を募集。

■ リスク評価の最終段階において、個々の使用条件に関する個別のリスク判定ではなく、「化学物質」に関する単一のリスク判定を行うことを提案。

■ 「過度の負担を強いられている地域社会(overburdened communities)」が、リスク評価の中で潜在的にばく露または影響を受けやすい亜集団として考慮される可能性のある集団の一例であることを明確化。これは、EPAが、化学物質が不合理なリスクを示すか否かの判断の一環として、潜在的にばく露にさらされる、あるいは影響を受けやすい亜集団に対するリスクを検討することを明確にするもの。

参考情報

■ 連邦官報2023-23428

有害物質規制法(TSCA)とは?

米国の「有害物質規制法」、通称「TSCA」は、化学物質の管理・規制に関する米国の国レベルの基本的な法令の一つです。日本の化審法、EUのREACH規則と並べて、あるいは比較して言及されたりもします。 合衆国法典では第15編、第53章に収載されており、全部で6つの大項目から構成されています。このうち、日本の事業者が関心が高く、よく相談が持ち込まれる大項目は、「有害物質の管理」、「複合木材製品のホルムアルデヒド基準」です。

目次

SUBCHAPTER I 有害物質の管理 SUBCHAPTER II アスベスト有害性緊急対応 SUBCHAPTER III 屋内ラドン削減 SUBCHAPTER IV 鉛ばく露低減 SUBCHAPTER V 健康的な高いパフォーマンスの学校 SUBCHAPTER VI 複合木材製品のホルムアルデヒド基準

注目される制度

TSCAのもとでは様々な規制が敷かれていますが、事業者からの相談・問い合わせが多く、注目度が高い制度には次のものが例として挙げられます。

新規化学物質の製造前届出制度

■ 第5条(§2604)(a)(1)に基づき、新規化学物質の製造・輸入・加工については、90日前までにEPAへの届出が必要

化学物質の試験制度

■ 第4条(§2603)に基づき、EPAが人の健康や環境へ不当なリスクをもたらすと判断した場合には、化学物質や混合物の製造、商業流通、加工、使用、廃棄、またはそのような活動の組み合わせに関連して、関連事業者に試験の実施を要求することができる。関連規則に基づき、規則や同意命令などの形で発出される。

重要新規利用規則(SNUR)

■ 第5条(§2604)(a)(2)に基づき、化学物質の使用が、通知が必要とされる重要新規利用(Significant New Use)であるかどうかをEPAが判断し、必要に応じて規則を設ける。特定されたものについて、製造者・輸入者や加工業者は、当該新規利用を開始する90日前までに関連規則に基づいた通知(SNUN)が必要とされる。

化学物質のリスク評価制度に基づく個別の規制

■ 第6条(§2605)に基づき、EPAが化学物質または混合物の製造、加工、商業流通、使用、廃棄、またはそのような活動の組み合わせが、人の健康や環境へ不当なリスクをもたらすと判断した場合には、規制を定める規則の検討を行う。

既存化学物質の管理制度

■ 第8条(§2607)に基づく記録保持・報告要件は、インベントリー制度としても知られている。EPAが化学物質についての情報をインベントリーとして管理するために、事業者には情報の提出や更新が求められている。

輸出入規制

■ 輸出(§2611)や輸入(§2612)についても規制が敷かれているが、特に注目されるのは、輸入時における「TSCA証明」である。詳細は規則で規定されているが、輸入化学物質が TSCA に準拠していることを証明する方法(positive certification)と、TSCAの適用外であることを証明する方法(negative certification)が存在する。

複合木材製品規制

■ 米国内で販売、供給、販売促進、製造、輸入される複合木材製品は、TSCA Title VI適合と表示されなければならない。これらの製品には、広葉樹合板、中密度繊維板、パーティクルボード、およびこれらの製品を含む家庭用品やその他の完成品(finished goods)が含まれる。自主的合意基準、第三者認証制度など要件遵守保証のための制度が導入されている。

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