2024.07.03
EU|エコデザイン規則(ESPR)の公布
Ecodesign for Sustainable Products Regulation, ESPR
2024年06月28日、欧州官報にて「持続可能な製品に対するエコデザイン要件設定のための枠組みを確立する規則」(通称「エコデザイン規則(ESPR)」が公布されました。07月18日より施行されます。
★ウェビナー開催:2024年07月30日「EUエコデザイン規則の要点解説」★
案内ページはこちら
目的・適用範囲
■ エコデザイン規則は、次の事項を確保するために製品が上市または使用開始される際に遵守しなければならないエコデザイン要件を設定するための枠組みを確立することを目的としています。
- 持続可能な製品を標準とするために製品の環境持続可能性を改善すること。
- 製品のライフサイクル全体におけるカーボンフットプリントと環境フットプリントを削減すること。
- 域内市場内における持続可能な製品の自由な移動を確保すること。
■ また、デジタル製品パスポート制度を整備し、グリーン公共調達の必須要件を定め、売れ残った消費者製品の破壊を防ぐ枠組みを構築することも目的に掲げています。
■ 本規則は、コンポーネントや中間製品を含め、上市または使用開始されるあらゆる物理的商品に適用されます。
- 適用除外項目としては、食品、飼料、医薬品、動物用医薬品、生きている植物、動物及び微生物、ヒト由来製品、将来の繁殖に直接関係する動植物の生産物、車両が特定されています。
注目すべき内容
適合性評価制度
■ エコデザイン規則における適合性評価制度は、製品群別に設けられる委任法で規定される要件への適合を証明するために、委任法で指定される適合性評価手順で評価を実施し、EU適合宣言の作成及びCEマーキングの貼り付けによって、対外的に製品の適合性を証明する制度となります。
※ EU適合宣言は製品が上市または市場で利用可能にすることを行う加盟国が要求する言語または複数の言語に翻訳が必要。
※ CEマーキングは原則製品に、製品の性質上それが不可能な場合または保証されない場合は、包装および付属する文書に貼り付けが必要。
■ 「製品群別に設けられる委任法で規定される要件」は、第5条に定めるエコデザイン要件の項目を背景に、性能面での具体的な要件である第6条「性能要件」、情報提供や情報開示の面での具体的な要件である第7条「情報要件」から構成されます。そして、それぞれについては、さらに次の内容で構成されています。
<性能要件>
- 附属書1に言及される関連製品パラメータに基づく性能要件(定量または定性要件)
<情報要件>
- デジタル製品パスポート要件(必須)
- 懸念物質に関連する要件(必須)
以下は、必要に応じて要求される項目;
- 修理可能性スコア、耐久性スコア、カーボンフットプリントまたは環境フットプリ ントを含む、附属書1で言及される1つ以上の製品パラメータに関する製品の性能に関する情報
- 環境への影響を最小化し、最適な耐久性を確保するための製品の設置方法、使用方法、保守方法、修理方法、関連する場合にはサードパーティ製オペレーティングシステムの設置方法、再生または再製造のための回収方法、使用終了時の製品の返却または取り扱い方法に関する消費者およびその他の関係者向けの情報
- 分解、再使用、再生、リサイクル、または使用済み製品の廃棄に関する処理施設向けの情報
- 適切な使用、価値維持のための作業、及び使用終了時の正しい処理を促進するために、顧客の持続可能な製品の選択、及び製造者以外による製品の処理方法に影響を与える可能性のあるその他の情報
※ 情報要件のうちラベル表示要件に関連する詳細が第4章に規定されています。
→ 附属書1に言及される関連製品パラメータに基づく性能要件
附属書1のパラメータには、例えば次の項目が含まれています。それらパラメータの中から、製品群別の委任法で特定の性能要件が規定される形になります。
製品の保証寿命、耐久性や、修理・保守の容易性、再使用や再製造の容易性、リサイクル設計、リサイクルしやすい材料の使用、リサイクル可能なコンポーネントや 材料、有害物質を含むコンポーネントや材料への安全で容易かつ非破壊的なアクセス、再使用やリサイクル、再製造等に支障をきたす技術的解決策を避けること、懸念物質、製品の1つ以上のライフサイクル段階におけるエネルギー、水、その他の資源の使用または消費、サイクル材料の使用または含有、および重要な原材料を含む材料のリカバリー、製品の環境フットプリント(カーボンフットプリント、マテリアルフットプリント)、マイクロプラスチックおよびナノプラスチックの放出、製品の1つまたは複数のライフサイクル段階で放出される大気、水、土壌への排出、プラスチック廃棄物、包装廃棄物、再使用の容易さ、有害廃棄物の量、機能的性能および使用条件、軽量設計
→ デジタル製品パスポート要件
デジタル製品パスポートに含まれるデータ項目は附属書3に規定されています。製品群別の委任法でその中から必要な項目が選定され、要件として設定されます。また、データキャリアの種類やそのレイアウト、製品モデル、バッチ、品目のいずれのレベルで対応が必要かの指定、販売・契約前のアクセス方法、主体別のアクセス権限、作成・更新することができる者や関連する取り決め、利用可能な期間も含まれる情報項目として挙げられています。
デジタル製品パスポートは、データキャリアを介して固有識別子と紐づけが必要。データキャリアは、製品、その包装、または製品に付随する文書に表示が必要。
製品を上市する経済事業者は、販売業者およびオンラインマーケットプレイスのプロバイダーに対し、データキャリアまたは固有製品識別子のデジタルコピーを提供し、データキャリアまたは固有製品識別子を、潜在的消費者が製品に物理的にアクセスできない場所でもアクセスできるようにする対応が必要。
※ 第11条にはデジタル製品パスポートの技術的設計・運用要件が規定されています。
※ 製品を上市または使用開始する経済事業者は、デジタル製品パスポート登録簿へ指定のデータのアップロードが必要。
※ また、デジタル製品パスポートに関する税関管理に関する規定が第15条に置かれています。
→ 懸念物質に関連する要件
製品のライフサイクル全体を通じて、懸念物質の追跡を可能にする情報要件で、少なくとも次の内容を含むとされています。
- 製品に含まれる懸念物質の名称または数値コード
- 製品内の懸念物質の位置
- 製品、関連コンポーネント、またはスペアパーツのレベルでの、懸念物質の濃度、最大濃度、または濃度範囲
- 製品の安全使用のための関連指示書
- 分解、再使用の準備、再使用、リサイクル、および使用済み製品の環境的に健全な管理に関連する情報
※ 情報は、その製品が市場で利用可能にすること、または使用開始される加盟国が定める、顧客が容易に理解できる言語で提供する必要があります。
適合性評価制度以外の要件
売れ残り消費者製品の破壊について
■ 売れ残り消費生活用製品の廃棄を直接行う、あるいは廃棄を代行させる経済事業者は、ウェブサイトで年次ベースで次の情報を公表しなければならない。
- 売れ残った消費者製品の年間廃棄数および重量を、製品の種類またはカテゴリーごとに区別して開示すること
- 製品を廃棄する理由、及び該当する場合、適用除外の内容
- 廃棄物ヒエラルキーに従って、再使用の準備(再生、再製造を含む)、リサイクル、その他のリカバリー(エネルギーリカバリーを含む)、及び廃棄の各作業を行うために、直接又は第三者を通じて引き渡される廃棄製品の割合
- 売れ残った消費者製品の破壊を防止する目的で実施された措置および計画された措置
■ 2026年07月19日以降は、附属書7に列挙される売れ残った消費者製品の破壊は禁止となります。
事業者別の要件
■ 製造者、認定代理人、輸入者、流通業者、販売業者など、事業者別の要件が第7章に規定されています。但し、中小・零細企業向けの適用除外規定も置かれています。
自主規制措置
■ 2者以上の経済事業者は、委任法の範囲に含まれない製品、または作業計画に含まれない製品のエコデザイン要求事項を定める自主規制措置を欧州委員会に提出することができ、指定の基準が満たされているという証拠を提出する必要があります。
優先順位付け
■ 欧州委員会は少なくとも3年間を対象とする作業計画を定め、定期的に更新することとなっています。委任法で優先的に対象とする製品群についての優先順位付けが目的となります。
■ 規則では2025年04月19日までに採択される最初の作業計画において、次の製品群を優先すると規定されています。
鉄鋼 | アルミニウム | 繊維製品、特に衣料品と履物 |
マットレスを含む家具 | タイヤ | 洗剤 |
塗料 | 潤滑剤 | 化学薬品 |
初めてエコデザイン要件を設定する、または指令 2009/125/EC に従い採択された既存の対策が本規則に基づき見直されるエネルギー関連製品 | 情報通信技術製品およびその他の電子機器 |
■ エコデザイン要件や作業計画の作成は「エコデザイン・フォーラム」が担当し、そのサブグループとして、「加盟国専門家グループ」がエコデザイン要件の作成と自主規制措置の評価を担当します。
罰則、移行、適用
■ 本規則に関連する罰則は加盟国が定めることとなっています。エコデザイン指令のもとで各国に整備されている罰則規定の更新になる見込みです。
■ エコデザイン指令は2024年07月18日をもって廃止されます。(細かな個別の移行規定あり)
■ 適用については、エコデザイン規則に基づく委任法が公布されてからが本格的な対応フェーズとなると見込まれます。
※ 上記は要点整理となります。詳しい要件整理などは個別にご相談・お問い合わせください。
参考情報
目次
※2024年07月26日 Updated
第1章 一般規定
第1条 主題と適用範囲
第2条 定義
第3条 自由な移動
第2章 エコデザイン要件
第4条 委任法を採択する権限の付与
第5条 エコデザイン要件
第6条 性能要件
第7条 情報要件
第8条 委任法の内容
第3章 デジタル製品パスポート
第9条 デジタル製品パスポート
第10条 デジタル製品パスポートの要件
第11条 デジタル製品パスポートの技術的設計および運用
第12条 固有識別子
第13条 デジタル製品パスポート登録簿
第14条 デジタル製品パスポートのデータ用ウェブポータル
第15条 デジタル製品パスポートに関する税関管理
第4章 ラベル
第16条 ラベル
第17条 ラベルの模倣
第5章 優先順位付け、計画作成および協議
第18条 優先順位付けと計画作成
第19条 エコデザイン・フォーラム
第20条 加盟国専門家グループ
第21条 自主規制措置
第22条 小規模および中規模企業
第6章 売れ残った消費者製品の破壊
第23条 破壊防止の一般原則
第24条 売れ残った消費者製品に関する情報の開示
第25条 売れ残った消費者製品の破壊
第26条 売れ残った消費者製品の破壊に関する統合情報
第7章 経済事業者の義務
第27条 製造者の義務
第28条 認定代理人
第29条 輸入者の義務
第30条 流通業者の義務
第31条 販売業者の義務
第32条 ラベルに関する義務
第33条 フルフィルメント・サービスプロバイダーの義務
第34条 製造者の義務が輸入者および流通業者に適用される場合
第35条 オンライン・マーケットプレイスおよびオンライン検索エンジンのプロバイダーの義務
第36条 経済事業者の情報義務
第37条 経済事業者の監視と報告義務
第38条 サプライチェーン関係者に対する要件
第8章 製品の適合性
第39条 試験、測定及び計算方法
第40条 迂回および性能悪化の防止
第41条 適合性の推定
第42条 共通仕様
第43条 適合性評価
第44条 EU適合宣言
第45条 CEマーキングの一般原則
第46条 CEマーキングの貼り付けに関する規程および条件
第47条 マーキングに関する特別規程
第9章 適合性評価機関の届出
第48条 届出
第49条 届出当局
第50条 届出当局に関連する要件
第51条 届出当局に関する情報義務
第52条 届出機関に関連する要件
第53条 適合性評価機関の適合性の前提条件
第54条 届出機関の子会社および届出機関による請負事業
第55条 届出の申請
第56条 届出手続き
第57条 届出機関の識別番号およびリスト
第58条 届出の変更
第59条 届出機関の能力の確認
第60条 届出機関の業務上の義務
第61条 届出機関に関する情報義務
第62条 知見の交換
第63条 届出機関の調整
第10章 インセンティブ
第64条 加盟国のインセンティブ
第65条 グリーン公共調達
第11章 市場監視
第66条 計画的な市場監視活動
第67条 報告とベンチマーキング
第68条 市場監視の調整および支援
第12章 セーフガード手続き
第69条 国家レベルでリスクを呈する製品に対処するための手順
第70条 EUセーフガード手続き
第71条 形式的な不遵守事項
第13章 委任権限および専門委員会手続き
第72条 委任の行使
第73条 専門委員会手続き
第14章 最終規定
第74条 罰則
第75条 モニタリングと評価
第76条 消費者の救済
第77条 指令(EU) 2020/1828の改正
第78条 規則(EU) 2023/1542の改正
第79条 廃止および移行規定
第80条 発効
(注釈)
附属書1 製品パラメーター
附属書2 性能要件を規定するための手順
附属書3 デジタル製品パスポート
附属書4 内部生産管理(モジュールA)
附属書5 EU適合宣言
附属書6 自主規制措置に関する基準
附属書7 経済事業者による破壊が禁止されている消費者製品
附属書8 相関表
※ 特別無料記事