中国|全人代、危険化学品安全法(草案)の意見募集を開始

HOME > 国・地域, セクター, 化学物質, 中国, 化学工業, 一般・工業, > 中国|全人代、危険化学品安全法(草案)の意見募集を開始

中国|全人代、危険化学品安全法(草案)の意見募集を開始

2024年12月26日、中華人民共和国の全国人民代表大会(全人代)は、「危険化学品安全法(草案)」のパブリックコメントを開始しました。意見募集期間は2025年1月23日までとなっています。

背景

 中国では、危険化学品に関する規制は主に「危険化学品安全管理条例」(国務院令第591号)という行政規則に基づいて行われています。この規則は、危険化学品の安全管理を強化し、関連事故の防止と軽減に大きく貢献してきました。しかし、中国の急速な経済発展に伴い、以下のような理由から危険化学品管理がますます困難になっています。

  • 安全責任の履行の不十分;

  • 部門間の連携不足;

  • 情報監視システムの老朽化

  • 化学工業団地の計画不足

  • 緊急対応能力の欠如など

 これらの課題を踏まえ、既存の規制を基に、危険化学品の管理に特化した法律を制定する必要性が高まっています。この新しい法律は、危険化学品のサプライチェーン全体およびライフサイクルのあらゆる段階における安全管理の強化を目的としています。

 この草案は、2024年12月21日に全人代常務委員会に初回審議として提出され、現在、公衆からの意見を募集しています。以下では、現行規則(591号令)と比較した草案の主な特徴と変更点を概説します。

監督責任と措置の明確化

 草案の第1章第7条では、危険化学品のライフサイクル全体(製造、保管、使用、運営、輸送)における安全管理と監督責任を9つの主要政府機関(応急管理部門、公安機関、市場監督管理部門、生態環境主管部門、交通輸送主管部門など)に割り当てています。また、これら以外の政府機関も、それぞれの責任を果たすことが求められます。草案は、すべての関係政府機関が監督の連携や共同法執行を強化することを求めています。

 また、第8条では監督および検査措置を明確にし、危険化学品の安全管理に責任を持つ当局が現場検査を行う権限を明記しました。さらに、情報技術を活用して、オンライン検査や重大危険源のスポットチェックを実施することも推奨されています。

情報技術を活用した安全管理

 第1章第11条によれば、県レベル以上の当局は、危険化学品の電子識別とライフサイクル全体のIT管理を導入することで、情報に基づいた監督を強化する必要があります。一方、化学工業団地は危険化学品の安全監視、制御、早期警戒を実現するために情報技術インフラを整備し、関連する政府当局との相互運用性を確保しなければなりません。

ライフサイクル全般における厳格な安全性管理基準

 第3章から第6章では、危険化学品の製造・保管、使用、運営、輸送における安全管理要件をより詳細かつ厳格に規定しています。

具体的には:

  • 危険化学品を製造・保管する企業は、安全リスク分類および管理システムならびにプロセス安全管理(PSM)システムを確立する必要があります。

  • 製造業者に加えて、輸入業者も該当するSDS(安全データシート)およびGHSラベルを提供し、新たな危険性が判明した場合には迅速に更新する必要があります。

  • 危険化学品を使用する機関(企業、学校、研究機関、検査施設、医療機関など)は、使用する危険化学品の種類や量に基づいて安全リスク分類および管理システムを導入する必要があります。

  • 高毒性化学品および爆発性前駆体化学品の許可証、記録保持、届出要件が強化され、オンラインでの販売または購入が禁止されます。

危険化学品登録の免除要件の明確化

 第85条では、危険化学品の登録免除基準を定めています。すなわち、研究開発、試験製造、試験販売の過程で量が少なく、放出や曝露が少ない危険化学品は登録を免除されます。この具体的な規定は、応急管理部(MEM)、工業情報化部(MIIT)、公安部(MPS)、生態環境部(MEE)およびその他関連当局によって策定されます。

化学工業団地の安全管理

 草案は、現行規則にない危険化学品の生産および保管に関する包括的な計画と合理的な配置を定めた専用の章(第2章、第15条〜第21条)を導入しています。ここでは、化学工業団地の安全管理の重要性が強調されています。

具体的には:

  • 安全リスク評価を少なくとも3年ごとに実施する必要性。

  • 危険化学品の保管、積載、輸送に関連する物流の計画(物流団地や給油所を含む)。

  • 化学工業団地と都市部または感受性の高い場所との間に安全距離を維持し、土地利用計画に安全管理ラインを組み込む必要性。

  • 化学工業団地は、団地内に出入りするすべての危険化学品の動的監視を実施し、重要な場所や主要な危険源、インフラに対してリスク監視および早期警戒を行う義務を負います。

 草案は現在、全人代によるパブリックコメントの募集として公開されています。全人代によるパブリックコメントの募集は必ずしも1回に限らず、場合により、さらに修正が加えられ2回目、3回目の募集が実施される可能性もあります。草案が全関係者の間で合意され、さらなる検討を要する重要な問題がなくなった場合、立法プロセスは投票段階に進みます。草案が過半数の支持を得た場合、この法律は公布され、全国的に施行されることになります。

転載元

REACH24Hコンサルティンググループ

本記事の著作権は、REACH24H コンサルティンググループに帰属します。なお、記事の相互掲載について、当社とREACH24H コンサルティンググループとの間で合意がなされています。

■ 転載元:REACH24Hコンサルティンググループ (URL: https://reach24h.com/jp/)

注目情報一覧

新着商品情報一覧

Page Top
「目次」 「目次」