カーボンフットプリントの計算方法を定める委任法の背景となる情報の一つ
2023年07月27日、欧州自動車サプライヤー協会(CLEPA)は、以下のレターを送付したことを報道しました。
■ 懸念共同書簡:「EV用電池のカーボンフットプリントの計算に関する規定」およびリサイクル材料を考慮するアプローチの最終JRC草案
概要
■ レターの対象となっているのは、共同研究センター(JRC)の報告書草案「JRC政策のための科学レポート:EV用電池のカーボンフットプリントの計算に関する規定」です。
■ JRCの文書では、EV用電池の寿命を終えた状態(the end-of-life of EV batteries)をモデル化する方法として、製品環境フットプリント(PEF)法を参考に、「サーキュラー・フットプリント・フォーミュラ(CFF)」を電池カーボンフットプリントの計算に適用することを提案しています。
■ レターでは、この計算は実務者や報告企業に大きな複雑さの負担を強いるだけでなく、世界的に認められた他の会計慣行からも逸脱していると指摘しています。
■ そのため、EU各機関に対し、EV用電池の寿命を終えた状態のモデル化には、CFFではなく、広く採用され認知されている「カットオフ」手法を使用するよう勧告しています。
サーキュラーフットプリント・フォーミュラ(CFF)は、他のアプローチ(「カットオフ」アプローチなど)と比較して、非常に簡略化され、リサイクル活動に関するELV排出クレジットを割り当てるもので、将来行われると想定されるが、計算時にはまだ検証できないだろうと指摘。
また、CFFアプローチは、その適用に必要なパラメータが多数あるため、実務者や報告企業に多大な複雑さの負担を強いるだけでなく、ISO規格、GHG製品プロトコル、および国際電池連盟、Catena-X7、WBCSD PACTフレームワーク、Together for Sustainability(TfS)が発行するその他のセクター別基準で規定されているような(「カットオフ」アプローチを支持する)他の世界的に認められた会計慣行からも逸脱している点も指摘しています。
そのため、CFFの採用のみを主張する欧州の個別規制は、EU域内またはEU域外で製造されたEV用電池のカーボンフットプリントのベンチマークと比較の可能性を制限することになる、というのがレターでの主張です。
■ レターの中よりその他、重要な情報が一点あります。JRCが当該報告書の草案について、協議の段階に入ったというものです。JRCの報告書は、法令案やそれに係わる影響評価文書の背景の一つになることがあります。これは、実際に他の分野の最近の法令案の影響評価文書の情報などで確認可能です。そのため、法令案がどのような形で出てくるかを予想する上で、JRCの報告書は有用な情報源の一つといえます。
そのため、電池規則のCFP要件の中でも最も早く遵守期限が訪れるEV用電池のCFPについて、どのような計算方法を定める委任法となるか、今回の情報とその行方は重要な情報の一つとなると思われます。
背景
■ 電池規則では、EV用電池を対象とするカーボンフットプリントの計算方法について、2024年02月18日までに、欧州委員会に対して、電池のカーボンフットプリントの計算および検証のための方法論を定める委任法令を定めるよう要求しています。(第7条1)
参考情報
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