0.2μm未満の繊維を測定しない場合の限界値:0.002 fibres/cm3
2023年11月30日、欧州官報にて、「作業場アスベストばく露保護指令」(Directive 2009/148/EC)を改正する指令が公布されました。アスベストへの職業上のばく露から労働者を保護するために、より厳格な限界値などが規定されています。
概要・背景
■ 「アスベスト」の定義更新
Name | CAS No. |
asbestos, actinolite | 77536-66-4 |
asbestos, amosite (grunerite) | 12172-73-5 |
asbestos, anthophyllite | 77536-67-5 |
asbestos, chrysotile | 12001-29-5 |
asbestos, crocidolite | 12001-28-4 |
asbestos, tremolite | 77536-68-6 |
■ 適用範囲の更新
- 建設、改修、解体作業、廃棄物管理、採掘、消火活動など、労働者が作業中にアスベストまたはアスベストを含む材料から発生する粉じんにさらされる、またはさらされる可能性のあるすべての活動にも適用される。従来の指令では、解体やアスベスト除去から生じる製品の処理と処分は例外とされていた。
■ ばく露限界値の厳格化
- ばく露限界値(更新される第8条)
適用 | ||
~2029年12月20日 | 8h-TWA | 0,01 fibres/cm3 |
2029年12月21日~ | 8h-TWA:0.2マイクロメートル未満の繊維を測定する場合 | 0.01 fibres/cm3 |
8h-TWA:0.2マイクロメートル未満の繊維を測定しない場合 | 0.002 fibres/cm3 |
- 空気中のアスベスト繊維を測定する目的で考慮される繊維のサイズ、すなわち幅0.2~3マイクロメートルの繊維と、電子顕微鏡に技術移行した時点から幅0.2マイクロメートル未満の繊維に応じて、異なる制限値を設定すべきとされた。
- 空気中のアスベスト繊維の測定においては、長さが5マイクロメートルを超え、幅が3マイクロメートル未満であり、長さと幅の比が3:1を超える繊維のみを考慮するとされている。(追加される第7条7項)
※ その他詳細な改正内容についてはお問い合わせください。
参考情報
■ 改正指令:Directive (EU) 2023/2668
作業場アスベストばく露保護指令とは?
作業場アスベストばく露保護指令(Directive 2009/148/EC)は、2009年12月に公布された指令で、全26条と3つの附属書から構成されています。
概要
■ 本指令は、作業場でのアスベストへのばく露から生じる健康へのリスクから労働者を保護することを目的としている。
■ 解体、修理、メンテナンス、アスベスト除去作業、労働者への情報提供、協議、訓練、健康モニタリングなどについて規定している。
■ 禁止作業:以下の場合に労働者をアスベスト繊維にさらすことは禁止:
- アスベストの抽出
- アスベスト製品の製造・加工
- 意図的に添加されたアスベストを含む製品の製造・加工。
(例外)解体やアスベスト除去から生じる製品の処理と処分 ← ★本記事の焦点
解体やアスベスト除去作業について ← ★本記事の焦点
■ アスベストの除去から生じる製品の処理・処分は許可されている。
■ 一般的な解体が行われる前に、事前に計画された作業でアスベストが除去される場合は、解体から生じる製品の処理・処分も許可されている。
■ ばく露は、以下の方法で最小限に抑えなければならない。
- 作業に従事する労働者の数を制限すること
- アスベスト粉塵の発生を避けるように設計された作業工程
- 清潔でよく管理された施設と設備
- 廃棄物は、密封されラベル付けされた容器に入れ、速やかに除去すること
■ アスベスト粉じんにさらされる可能性がある場合、そのリスクは、労働者の個人的なばく露の代表サンプリングに基づいて、そのばく露の性質と程度を決定するために評価されなければならない。雇用者は、作業開始前に、以下の内容を含め、関係するEU加盟国の担当当局に通知しなければならない。
- 作業現場の場所および関係する労働者の数
- アスベストの種類と量
- 計画されている作業および工程、作業期間
- ばく露を制限するための措置
■ いかなる労働者も、1cm3あたり0.1繊維を超えるアスベストの空気中濃度にさらされてはならない。
- これを超える場合は、関係する労働者を保護するため、呼吸器や個人用保護具などの使用、制限値を超えた場合の警告表示、訓練などを含む更なる対策が講じられるまで作業を中止しなければならない。
■ 雇用者は、アスベストまたはアスベストを含む材料による粉じんに曝される、または曝される可能性のあるすべての労働者に対し、定期的に、かつ労働者に負担をかけることなく、適切な訓練を実施しなければならない。
■ 各労働者の健康状態は、ばく露前に評価されなければならず、個々の記録を作成し、少なくとも3年ごとに更なる評価を行わなければならない。
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