本ページでは、スペインの法形成過程の要点について整理しています。
段階、項目、主体、内容、そして期限があるものについては期限の情報も整理しています。
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【調査・確認時期:2023年上半期】
法律案(PROYECTOS DE LEY)
■ スペインにおいて法律案の発議(iniciativa legislativa)を行えるのは、政府(Gobierno)、下院(Congreso)、上院(Senado)、自治州議会(Asambleas de las Comunidades Autónomas)、および国民(los ciudadanos)である。
■ 政府を主体とする法律案は「proyectos de ley」といい、その他の主体による法律案は「proposiciones de ley」という。「proyectos de ley」も「proposiciones de ley」も、基本的には議会で同じ手続きを経るが違いもある。
■ 国民による法律案の発議(iniciativa popular)では、法律案の草案(texto)に国民50万人以上の証明済みの署名が添えられる必要がある。
■ 議会は、本会議(Pleno)、ならびに委員会(Comisiones)を単位として機能する。
<政府を主体とする法律案(PROYECTOS DE LEY)について>
段落 | 項目 | 主体 | 内容 | 期限 | 根拠法 | 根拠条項 |
1 | 発議 | 上記参照 | 法案の発議 | ー | ご関心がある場合はこちらより | |
2 | 承認(APROBACIÓN) | 内閣(Consejo de Ministros) | 内閣の承認を得た後、下院へ提出される。 | ー | ||
3 | 修正案(ENMIENDAS) – 法律案の全体に対する修正案(ENMIENDAS DE TOTALIDAD) – 特定の条項、または部分に対する修正案(ENMIENDAS AL ARTICULADO O PARCIALES) |
下院役員会(Mesa del Congreso) | ■ 下院役員会(Mesa del Congreso)が法律案の草案(texto)を受け取り、スペイン国会の官報(Boletín Oficial de las Cortes Generales (BOCG))へ掲載することによる公表、および該当する委員会(Comisión)への送達を命じる。 ■ 公表の後、15日間のうちに会派(Grupos Parlamentarios)は法律案の草案に対する修正案を提出することができる。ただし、いずれかの会派の要請に応じて下院役員会が期間の延長に同意する場合はこの限りではない。 |
15日 | ||
4 | 全体に関する討議(DEBATE DE TOTALIDAD) | 下院 | ■ 法律案の全体に対する修正案が提出された場合、本会議での討議が、その法律案を成立させるための最初の手続きとなる。所轄の大臣が法律案を弁護し、抗弁する。 ■ そして、修正案を提出した会派とそれに反対する会派がそれぞれ15分ずつ意見を表明し、自らの立場を明らかにする。さらに法律案の全体に対する修正案について投票が行われる。 – 修正案の差し戻し(enmienda de devolución)が可決されれば、その発議の手続きは行われない。 – 修正案の代替草案(enmienda de texto alternativo)が可決されれば、提出された新しい草案(texto)での法律案の手続きが代わりに進められる。 – すべての修正案が否決されたときは、法律案の発議の議会での手続きが進められる。 |
ー | ||
5 | 調査報告委員会(Ponencia)による報告書(Informe)の作成 | 調査報告委員会(Ponencia) | ■ 修正案を提出する期間、ならびに全体に関する討議が完了したら、該当する委員会(Comisión)の委員の中から指名して、すべての会派の下院議員で構成される調査報告委員会を発足させる。 ■ 調査報告委員会は、政府が提出した草案と、提出された修正案を検討して報告書(Informe)を作成する。 |
ー | ||
6 | 委員会(Comisión)での審議 | 委員会(Comisión) | ■ 調査報告委員会(Ponencia)による報告書が完成したら、委員会(Comisión)は報告書について、ならびに修正案について条項ごとに審議するため集まる。投票を行った後、調査報告委員会(Ponencia)による報告書の内容と委員会(Comisión)が内容をまとめた見解書(Dictamen)を承認し、下院の本会議(Pleno)にかける。 | ー | ||
7 | 下院の本会議(Pleno)での審議 | 下院の本会議、政府 | 政府による法律案についての弁護・抗弁、および委員会(Comisión)の委員による見解書(Dictamen)の提出によって、本会議での討議が開始する。これで「proyecto de ley」の議会手続きの最初の段階が完了し、法律案は上院(Senado)へと送られる。 | ー | ||
8 | 上院での手続き(TRAMITACIÓN EN EL SENADO) | 上院(Senado) | ■ 法律案の草案(texto)を受け取ったら、上院(Senado)では2ヶ月の期間のうちに法律案について手続きを行う。この期間のうちに行われることは、以下に示す通り。 – 下院の場合と同じ条件で法律案の草案(texto)を承認する。この場合、法律案は最終的に承認されたことになる。 – 修正案を提出する。この場合、法律案は下院の本会議に戻され、単純多数決(mayoría simple)にて受け入れられるか、拒絶される。 – 拒否権を行使する。この場合、上院は絶対多数決(mayoría absoluta)をもってこれを承認しなければならない。下院は、上院における原案否決の場合は絶対多数決(mayoría absoluta)により、上院へ送付した後2ヶ月を経過したときは単純多数決(mayoría simple)により、原案を再び可決するか、または単純多数決により修正案を採択するか否かを言明するのでなければ、法律案(proyectos de ley)を国王の裁可に付すことはできない。 |
ー | ||
9 | 法律としての成立 | 国王 | 15日以内に国王は法律を裁可(sanción)し、公布し、公表を命じる。 | 15日 |
<下院(Congreso)、上院(Senado)、自治州議会(Asambleas de las Comunidades Autónomas)、および国民(los ciudadanos)を主体とする法律案(PROPOSICIONES DE LEY)について>
段落 | 項目 | 主体 | 内容 | 期限 | 根拠法 | 根拠条項 |
1 | 議会による法律案の発議 | 議会 | – 下院による法律案の発議の場合、1人の下院議員が他の14人の下院議員の署名を得るか、1つの会派がその代表者の署名を得ることでこれを提出することができる。(下院規定第126条1) – 上院による法律案の発議の場合、1つの会派、もしくは25人の上院議員がこれを提出することができる。(上院規定第108条1) – それぞれの役員会(Mesa)がその公表、ならびに政府への送達を命じる。これにより歳入予算(ingresos presupuestarios)の増減に関わるのであれば討議(toma en consideración)の基準、ならびに手続きへの適合性の有無を政府に表明してもらう。(下院規定第126条2、上院規定第151条) – 30日経過しても行政が手続きへの適合性を明確に否定しなければ、法律案(proposiciones de ley)は本会議で行う討議(toma en consideración)の予定(orden del día)に組み込まれる。最初に下院、次に上院で手続きが行われる。 – 討議(toma en consideración)は、政府を主体とする法律案(proyectos de ley)の全体に関する討議(debate de totalidad)と同様の性質のものである。法律案(proposiciones de ley)を提出した会派が本会議の予定への組み込みを決定したときに行われる。その後、手続きは政府を主体とする法律案(proyectos de ley)と同一である。 – 上院での討議(toma en consideración)の後、法律案は下院へと送られて手続きが続けられる。 |
ー | ご関心がある場合はこちらより | |
自治州議会による法律案の発議 | 自治州議会 | – 手続きの内容は基本的に同じである。唯一の違いは、自治州議会が3人以下の代表者を下院に送り、討議(toma en consideración)で発議について弁護および抗弁することができるという点である。(下院規定第127条) | ー | |||
国民による法律案の発議 | 国民 | – 組織法(ley orgánica)は、法律提案の提出につき、国民発議権の行使型式および要件を定める。すべての場合において、50万を下らない信頼すべき署名を要する。国民発議権は、組織法、税法もしくは国際性を有する法律または恩赦に関する事項の場合においては、これを行使することができない。(スペイン憲法第87条3) – 発議の推進者は、6ヶ月の期間のうちに、提議(propuesta)を保証する少なくとも50万の署名を議会に提出しなければならないが、この提議は組織法、税法もしくは国際性を有する法律に関する事項にかかわるものであってはならない。(組織法第3号/1984年) |
ー |
法規(reglamentos)
■ 法規(reglamentos)に関する権力の行使、すなわち法律の下位に位置する一般的な規定を発する行為は、スペイン憲法第97条、ならびに1997年11月27日の法律第50号に従って政府が行うことができる。
■ 政府が発する法規(reglamentos)は以下のように整理することができる
1. 勅令(Real Decreto)により承認される首相、もしくは内閣の規定(disposiciones)
2. 省令(Orden Ministerial)により承認される規定(disposiciones)
■ 省令(大臣が定める規定および決議)
規定または決議がさまざまな部門に影響をもたらす場合、該当する大臣の提案に応じ、内閣官房長官令(Orden del Ministro de la Presidencia)という形をとる。
■ 省令とは、省の名義人がその権限に固有の事項について発する一般的な性質を持った規定、法規である(1997年11月27日の法律第50号)。法規に関する権力の行使は、大臣に付される。
<法規の立案の手続き>
段落 | 項目 | 主体 | 内容 | 期限 | 根拠法 | 根拠条項 |
1 | 草案(texto)を作成する前におけるパブリックコメントの募集 | 該当する部門 | 草案(texto)を作成する前に、権限を有する部門のポータルウェブサイトを通して、将来的に成立する法規の影響を受ける可能性がある人々、ならびに最も代表的な組織が以下に関して自らの意見を発することができる方法で、それらの人々、ならびに組織からの意見を求め、パブリックコメントとして審議する。 a) 新しい法規で解決しようとする問題。 b) 当該草案を承認する必要性と機会。 c) 法規の目的。 d) 考えられる法規的な、および非法規的な代替の解決策。 |
- | ご関心がある場合はこちらより | |
2 | 公聴会 | 該当する部門 | 人々の正当な権利および利益に法規が影響を及ぼす可能性があるのであれば、公聴会(audiencia)が開かれる。 | - | ||
3 | 調査、および協議 | 該当する部門、および該当する省の総合技術局 | さらに、草案を作成する前に、法規の適格性と合法性を保証するのにふさわしいと思われる調査および協議が行われる。 そして法規案が、該当する省の総合技術局(Secretaría General Técnica)により報告される。 |
- | ||
4 | 提議の提出と内閣の承認 | 副大臣、次官の総合委員会、内閣 | 提議(propuesta)が副大臣(Secretarios de Estado)および次官(Subsecretarios)の総合委員会(Comisión General)に提出され、内閣(Consejo de Ministros)に承認を仰ぐ。 | - | ||
5 | 官報への掲載 | 政府 | 政府が法規を承認したら、官報において公表する。 | - |
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