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海底・深海底 解説|国際海底機構(ISA)と海底鉱物資源関連活動

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海底の鉱物資源

鉱物資源は陸地から取得するほかに、海底から獲得する方法もあります。ここ数年では「メタンハイドレート」が話題になったりもしましたが、島国であり資源の確保が大きな課題の一つである日本は、古くから海底資源に着目してきました。海洋基本法に基づいて、2008年に最初の「海洋エネルギー・鉱物資源基本計画」が策定され、日本近海の鉱物資源を探査・活用するための方針が示された後、2019年02月に改定された計画が2022年02月時点で確認できる最新のものとなります。

日本の「海洋エネルギー・鉱物資源基本計画」の詳細と関連政策の近況については、別の記事で記載することとしますが、ここで触れておきたいのは、海底資源の探査・掘削には、上述のような各国の領海内で行われるものと、いずれの国の領海にも属さない、いわゆる「公海」における海底資源探査・掘削があることです。後者について1982年国連海洋法条約(Convention on the Law of the Sea (UNCLOS))では「領域(Area)」という定義を設け、規定しています。また、「領域における活動」についても同様に定義しており、領域内の資源の探査および掘削活動がそれにあたるとしています。

“Area” means the seabed and ocean floor and subsoil thereof, beyond the limits of national jurisdiction; “activities in the Area” means all activities of exploration for, and exploitation of, the resources of the Area; Convention on the Law of the Sea

ここで、その「領域における活動」について、管理するのは誰か、という点で登場するのが、国際海底機構(ISA)です。領域とその資源は、人類の共通遺産です。エリアは、世界の海の総面積の約54%を占めているとされています。

国際海底機構(ISA)

ISAは上述のUNCLOSと同条約第11部の実施に関する1994年協定に基づいて設立された国際機関で、本部をジャマイカのキングストンに置き、UNCLOSの締約国が、領域におけるすべての鉱物資源関連活動を組織し、管理するための組織として位置づけられています。ISAは、深海関連の活動から生じる可能性のある有害な影響から、海洋環境を効果的に保護することも使命に含んでいます。UNCLOSの締約国はISAのメンバーとなっており、2020年05月時点で、ISAには167の加盟国とEUを含む168の加盟国・地域が参加しています。

ISAの加盟国・地域

ISAの加盟国・地域はこちらから確認可能です。

ISA Member States>

ISAの取り組み

事業者にとって関心があるのは、領域(公海)における海底探査・掘削は、どのような手順で行い、どのような規定を遵守しなければならないのか、という点だと思われます。この点を規定しているのが、ISAが検討・策定・発行・管理する「マイニングコード(Mining Code)」です。

マイニングコード(Mining Code)

「マイニングコード」は、国際海底地域としての「領域」における海洋鉱物の探鉱、探査、開発を規制するためにISAが発行した包括的な規定、規則、手続きです。背景にはUNCLOSの法的枠組みと上述の1994年協定があり、大きく「探査(Exploration)」と「掘削(Exploitation)」に分かれています。

■ 探査(Exploration)

|_探査規則

|_勧告・ガイダンス

■ 掘削(Exploitation)

|_掘削規則(案)

|_基準・ガイドライン(案)

|_公式文書

|_ワーキンググループ など

マイニングコード|探査規則

ポリメタリック・ノジュール(Polymetallic Nodules)について

■ 領域内ポリメタリック・ノジュールの探鉱・探査に関する規則の改正および関連事項に関する国際海底機関理事会決定

■ 領域内ポリメタリック・ノジュールの探鉱・探査に関する規則の改正に関する国際海底機関総会決定

多金属硫化物(polymetallic sulphides)について

■ 領域内での試掘および多金属硫化物の探査に関する規制に関する国際海底機関総会決定

コバルトリッチ・フェロマンガン・クラスト(Cobalt-rich Ferromanganese Crusts)について

■ 領域内のコバルトリッチ・フェロマンガン・クラストの探鉱・探査に関する規則に関連する国際海底機関総会決定

その他

■ 探査契約の管理・監督のための諸経費に関する国際海底機関総会決定

■ 2019年から2020年の会計期間における国際海底機関の予算に関する国際海底機関総会決定

■ 1982年12月10日国連海洋法条約第11部の実施に関する協定附属書第1項、第9項に従って承認された探査作業計画を延長するための手続きと基準に関する国際海底機関理事会決定

(2022年01月確認時点)

マイニングコード|掘削規則(案)

マイニングコードとしての掘削規則案の検討は2014年から開始され、現在確認されている状況では、規則案が作成された段階まで情報が公開されています。正式な規則として発行されるには、総会で採択される必要があるとされています。

(2022年01月確認時点)

探鉱・探査のコントラクター

上記に見るように、領域内の海底鉱物資源の探鉱・探査については、マイニングコードが発行されています。マイニングコードに基づき、探査については、ISAと契約を結ぶ必要があり、各契約者は、契約に基づく活動プログラムの開始に先立ち、探査地域での活動に起因する事故に効果的に対応するための危機管理計画(contingency plan)を事務総長に提出することが義務付けられています。契約を結んだ主体はコントラクター(契約者)と呼ばれ、ISAによって公表されています。

■ ポリメタリック・ノジュールの探査コントラクター|こちらから確認可能

合計で19の主体が確認できます。日本からは、深海資源開発株式会社の名前が挙がっておりますが、2021年06月19日に契約延長失効期限の記載があるため、その後の状況については確認が必要と思われます。

■ 多金属硫化物の探査コントラクター|こちらから確認可能

7つの主体の名前が確認できます。ほとんど全てが各国政府組織とISAの契約となっています。

■ コバルトリッチ・フェロマンガン・クラストの探査コントラクター|こちらから確認可能

5つの主体の名前が確認できます。日本からは独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の名前が確認でき、2029年01月が失効期日とされています。

各コントラクターは、その活動プログラムに関する年次報告書を提出することが求められています。

なお、日本においては、ポリメタリック・ノジュールを「マンガン団塊」、多金属硫化物を「海底熱水鉱床」、コバルトリッチ・フェロマンガン・クラストを「コバルトリッチクラスト」と読み替えた方が政府関連文書と整合性をもって読むことができます。

※海底資源の種類と詳細については別記事にて記載致します。

ISAの取り組みの方向性

ISAの今後の方向性を知るためには、2022年01月確認時点で次の文書が有用です。

■ ISA 2019-2023年戦略プラン

■ 持続可能な開発のための2030年アジェンダに対するISAの貢献

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