法令の情報時期:2024年4月 U.S.C.確認 | ページ作成時期:2024年4月 |
目的

HMTAは、米国運輸長官の権限の下で、「州内、州間、および外国通商における地上、航空、海上、またはパイプライン経由の危険物の輸送によって影響を受ける人、財産、および環境を守る」ことを目的としている。
概要

この法律は、危険物輸送に関する既存の規制の統一性を高め、危険物の流出や不法投棄を防止するための手段として成立した背景がある。出荷人または運送人となりうる事業者への「許可・登録制」「(危険物の)取扱基準」「危険物取扱従業員の訓練要件」「民事罰・刑事罰」などが主な内容となっている。
危険物輸送法の執行は、輸送手段と輸送される危険物の種類に基づき、連邦自動車運送安全局(FMCSA)、連邦鉄道管理局(FRA)、連邦航空局(FAA)、米国沿岸警備隊(USCG)、パイプライン・危険物安全局(PHMSA)、エネルギー省(DOE)、環境保護庁(EPA)、労働安全衛生局(OSHA)といった様々な機関などを通じて実施される。
HMTAの対象は、危険物の輸送全般に携わるすべての人物であるが、責任が重い者は危険物の出荷人としての危険物使用者である。一方、自動車運送業者を含む運送人は、危険物の荷物に添付された必要な情報を、事故時に関係者に直ちに受け渡しできるようにすることのみが義務付けられている。
HMTA規制に違反した場合、民事罰または刑事罰が科される可能性がある。
注目定義
■ 「危険物取扱従業員」(hazmat employee)
「危険物取扱従業員」(hazmat employee)とは、以下のものをいう。(5102(3)) (A) 人物 (i) (I) 危険物使用者にフルタイム、パートタイム、または一時的に雇用されている者。 (II) 危険物を商業輸送する自営業者(自動車、船舶、航空機の所有者を含む)。 (ii)フルタイム、パートタイム、一時的な雇用、または自営業の過程において、長官が規則で定める危険物輸送の安全に直接影響を与える者。 (B)危険物使用者にフルタイム、パートタイム、または一時的に雇用されている人物、または自営業の人物で、雇用期間中に以下を行った者をいう。 (i) 危険物を積み込み、積み下ろし、または取扱。 (ii) 危険物の商業輸送に使用する資格があると表示、マーク、認定、または販売されている包装、容器、または包装部品を設計、製造、加工、検査、マーク、維持、再調整、修理、または試験。 (iii) 危険物を輸送するための準備。 (iv) 危険物の輸送の安全性に関する責任を負担。 (v) 危険物の輸送に使用される車両を運転。 |
■ 「危険物使用者」(hazmat employer)
「危険物使用者」(hazmat employer)とは、以下の者をいう。(5102(3)) (A) 人物 (i) (I) 少なくとも1名の危険物取扱者をフルタイム、パートタイム、または臨時で雇用または使用する者。 (II) 危険物を商業的に輸送する自営業者(自動車、船舶、航空機の所有者を含む)。 (ii) (I) 危険物を商業的に輸送する者。 (II) 危険物を商業目的で輸送させる者。 (III) 商業上の危険物の輸送に使用する資格があると表示、マーク、認定、または販売されている包装、容器、または包装部品を設計、製造、加工、検査、マーク、維持、再調整、修理、または試験する者。 (B) (ii)項に記載された活動を実施する、米国政府の省庁もしくは機関、または国務省、州の政治的下部組織、もしくはインディアン部族の当局を含む。 |
■ 「自動車運送業者」(motor carrier)
「自動車運送業者」(motor carrier)とは (A) 合衆国法典13102条に定義される自動車運送事業者、自動車専用運送事業者、貨物運送事業者をいう。 (B) ただし、貨物運送事業者が高速道路輸送を行っていない場合は、ここで定義される貨物運送事業者には含まれない。(5102(7)) |
■ 「人物」(person)
「人物」(person)とは、合衆国法典タイトル1の第1項に基づく意味にいう。さらに、以下を含む。(5102(9))
(A) 以下の政府、インディアン部族、または政府もしくは部族の当局を含む。 (i) 危険物を商業輸送のために提供する。 (ii) 危険物を営利事業のために輸送する。 (iii) 危険物の商業輸送に使用する資格があると表示、マーク、認定、または販売されている包装、容器、または包装部品を設計、製造、加工、検査、マーク、維持、再調整、修理、または試験する。 (B) ただし、以下を含まない。 (i) アメリカ合衆国郵便公社。 (ii) 本法5123条および5124条における、政府の省庁または機関。 |
■ 「公共部門職員」(public sector employee))
「公共部門職員」(public sector employee)とは、以下の人物をいう。(5102(10)) (A) 州、州の政治的下部組織、またはインディアンの部族に雇用され、危険物の輸送を伴う事故または事件への対応に関連する職務を有する。 (B) 州、州の政治的下部組織、またはインディアン部族に消防士または執行官として雇用されている。 (C) 州、州の行政区画、またはインディアン部族のために消防士として志願する。 |
■ 「長官」(Secretary)
「長官」(Secretary)とは、別段の定めがある場合を除き、運輸長官をいう。(5102(11)) |
■ 「危険物」(hazardous material)
「危険物」(hazardous material)とは、本法第5103条(a)に基づき、長官が指定する物質または材料をいう。(5102条(2)) 長官は、危険な物(爆発物、放射性物質、感染性物質、引火性または可燃性の液体、固体、気体、有毒物質、酸化性物質、腐食性物質、圧縮ガスを含む)、そのグループまたはクラスを、特定の量と形態で商取引において輸送することが、健康や安全、または財産に不合理なリスクをもたらす可能性があると判断した場合に、危険物として指定する。(5103条(b)) |
適用除外(対象外・猶予・免除等)

長官は、規則で定める手続きに基づき、本法5103条(b)、5104条、5110条、もしくは5112条に基づいた規則からの変更を許可する特別許可を、長官が規制する安全レベルを達成する方法で実施する者に対し、発行、変更、または終了することができる。(5117条(a))
ただし、特別許可証または特別許可証の更新を申請する場合、特別許可証の正当性を証明するために長官が定める安全性分析を提出しなければならない。(5117条(b))
本法及び本法に基づき規定される規則から、以下を除外するものとする;(A) 公用船舶、(B) 他の法によって除外される船舶、(C) 1972年港湾水路安全法に基づいた船舶。一方、以下は必ず除外されない;(A) 人物による、人物使用のための銃器、(B) 商取引における銃器または弾薬の輸送。(5117条(d))
事業者が注意すべき内容
本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。 ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 |

以下の者が危険物の輸送に関わる人物として、本法の対象となり適用される。(5103条(b))
(i) 危険物を通商で輸送する者
(ii) 危険物を商取引で輸送させる者
(iii) 危険物の商業輸送に使用する資格があると表示、マーク、認定、または販売されている包装、容器、または包装部品を設計、製造、加工、検査、マーク、維持、再調整、修理、または試験する者
(iv) 危険物を商業的に輸送するために準備し、受け入れる者
(v) 危険物の商業輸送の安全性に責任を負う者
(vi) 本法に基づく要件の遵守を証明する者
(vii) 当該者が(i)から(vi)までのいずれかに従事していると誤って表明する者

運送人である自動車運送業者の危険物を通商輸送する自動車の運転は免許性となっており、その人物は国土安全保障省長官によって決定される。
決定は、司法長官からの経歴調査の内容や保健福祉長官からの運搬する化学物質に関する勧告などが参考とされる。
運送人が外国人である場合、氏名、住所、およびその他の情報を国土安全保障省長官に申請し審査の上で、免許が発行される。(5103(a)条)

危険物の輸送免許が許可された場合、輸送において包装または包装の構成要素、輸送形式(自動車、鉄道貨車など)をマーキング、ラベル、プラカード、または説明において、安全である、認証されている、または本法に準拠していることを表示することができる。
ただし、それらの内容を変更、除去、改ざんしてはならない。(5104条)

長官は、本法に基づいた規則により、以下を含む危険物の取扱基準を定めている。(5106条)
(1) 最低限の人員
(2) 要員の訓練と資格の最低レベル
(3) 検査の種類と頻度
(4) 危険物がもたらすリスクを検知、警告、管理するための機会
(5) 危険物の取扱および輸送に使用される機器および設備の使用に関する方法
(6) 危険物を輸送する際の安全手順を監視するシステム

危険物使用者(雇用主等)は、危険物の従業員訓練の要件である「訓練要件」に基づいて、危険物取扱従業員に訓練を提供しなければならない。以下は訓練の内容事項の抜粋である。(5107条)
(a)または(c)項に基づき、危険物を取り扱う従業員は規制が定められてから6ヶ月以内に訓練を開始しなければならない。訓練終了後、雇用主は、長官が規則で要求する書類を添えて、従業員が少なくとも以下の1つの訓練と試験を受けたことを証明しなければならない。
(1) 運輸省の危険物分類システムを認識と理解
(2) 危険物のプラカード、ラベル、マーキングシステムの使用と制限
(3) 一般的な取扱手順、荷積み・荷降ろし技術、および危険物の輸送中または輸送に付随して発生する放出や損傷の可能性を低減するための方法
(4) 危険物および危険物の輸送に関連する健康、安全、リスク要因
(5) 危険物輸送に関わる事故や事件に対処するための、適切な緊急対応と連絡手順
(6) 同局の緊急対応ガイドブックの使用とその限界の認識、または同等の文書の使用とそれらの文書の限界の認識
(7) 適用される危険物輸送規制
(8) 人物の防護技術
(9) 危険物を輸送するための出荷書類の作成

危険物の輸送は登録性で、適切な者(a)は、登録届出書(b)の提出が義務付け(c)られている。以下は、(a)~(c)の内容と届出書の閲覧、登録に関する手数料、本項における従業員への適用についての抜粋である。(5108条の全項(a)~(i)、ここでは一部割愛)
(a) 提出が義務付けられている者
(1) 以下のいずれかを商業的に輸送している、または輸送させている場合、本款に基づき登録報告書を長官に提出しなければならない:
(A) 高速道路において決められた量の放射性物質。
(B) 自動車、鉄道車両、または輸送用コンテナ内に25キログラムを超える、規定された爆発性物質。
(C) 長官が吸入による毒性が極めて強いと指定した個々に包装された危険物の1リットルを超える量。
(D) 長官が定義するバルク包装、コンテナ、またはタンク内の危険物質で、バルク包装、コンテナ、またはタンクの容量が少なくとも3,500ガロン、または468立方フィートを超える場合。
(E) 本法に基づいた規則により、車両、鉄道車両、または貨物用コンテナへのプラカード貼付が義務付けられている危険物のクラスが5,000ポンド以上の貨物(バルク包装を除く)。
(2) (1)以外の場合でも、長官が求めれば登録届出書の提出を求められる場合がある。
(3) 本項に基づいて登録届出書を提出した者は、本項の定める届出書を提出している場合に限り、 危険物の輸送に使用する包装、容器包装部品、または容器を、輸送し、または輸送させること、もしくは設計、製造、 加工、検査、表示、維持、再調整、修理、または試験することができる。
(4) 米国外の場所から米国への輸送のためにのみ危険物を提供する米国に居住しない者について、当該者が居住する国が、「米国内の場所から外国への輸送のためにのみ危険物を提供する米国に居住する者に対し当該提供のために登録届出書を提出すること、または手数料を支払うことを義務付けていない」場合、本項おいて義務付けられている登録届出書の提出、または手数料の支払い、あるいはその両方が免除される。
(b) 書式、内容、および提出の制限
(1) 本項(a)に基づく登録届出書は、規則により要求する書式および以下の情報を含むものとする。運輸省および環境保護庁の既存の書式を使用することができる。声明書においても以下の情報を含む。
(A) 登録者の名称および主たる事業所
(B) 本項(a)に基づいて登録届出書の提出が必要とされる者が行う各活動の説明。
(C) 登録者がいずれかの活動を実施している各州。 (2) 複数の活動を行う者、または複数の場所で活動を行う者は、本項の(a)項を遵守するために1つの登録届出書を提出するだけでよい。
(c) 提出 登録届出書を提出しなければならない者(5108条(a))は、長官の定める規則に従い、登録届出書(5108条(b))を提出しなければならない。
(f) 危険物の取扱の登録届出書(b)は、手数料の支払いにより何人も閲覧できる。
(g) 登録届出書を提出する必要がある者(a)は、届出書の処理にかかる手数料を徴収される。設定される手数料に加え、年間手数料も徴収される。年間手数料は、本項に基づき登録届出書を提出する必要のある各人から250~3,000ドルで設定される。年間手数料の額は、「危険物の輸送による総収入」「危険物の種類や量、出荷数」「危険物が原因の事故による環境に対するリスク」などに基づいて長官が決定する。5108条(a)(4)において登録は必要であるが免除された者には、25ドルの手数料が課される。
(h) 手数料の支払いの証明は、本法に基づく規則により保持が求められる。
(i) 5108条は、危険物使用者の従業員には適用されない。

自動車での危険物の運送は許可制となっている。以下は、「運送人に対する許可」と「出荷人の責任」ついての抜粋である。(5109条(a)~(c)、ここでは一部割愛)
(a)許可された自動車運送事業者は、本項に基づき長官が発行する、当該運送を許可する安全許可証を保有し、当該許可証の写し、または当該許可証の存在を証明するその他の証拠を車内に保管している場合に限り、通商上の危険物を自動車で運送する、またはさせることができる。運送人が適切で能力があると認められた場合のみ、長官より許可証が発行される。
(b) 運送人は、長官が規則で定めた危険物の種類および量のみ輸送できる。
(c)、(d) 運送するためには、運送人は安全許可申請を長官に提出し、許可を得なければならない。長官より、申請の一部を承認や却下、また許可後にも、変更、一時停止、取消しが行われる場合がある。
(f)出荷人として自動車輸送のために危険物を提供する者は、その輸送を許可する本項に基づき発行された安全許可を当該輸送人(業者)が有している場合に限り、当該危険物を自動車輸送業者に提供することができる。

出荷人は、長官が規則で規定する開示事項を記載した出荷書類(Shipping Papers)を、輸送を提供する運送人に提供しなければならない。
また輸送後も出荷人は2年間当該書類を保管しなければならない。一方、有害物質を運搬する運送人は、この出荷書類を、輸送する車両などに保管しなければならない。
また輸送後も運送人は1年間当該書類を保管しなければならない。
輸送中の危険物に関わる事故が発生した場合、運送人は、緊急対応当局の要請があれば直ちに、事故に対応する要員や危険物調査を実施する要員に危険物に関する情報を開示しなければならない。(5110条)

危険物の高速輸送に関しては、州もしくはインディアン部族に対し、(A) 危険物を自動車で輸送してよい、または輸送してはならない特定の高速道路ルートの指定、(B) 高速道路経路に関する制限および所定の要件等を満たす必要がある。
また、(C) 路線のリスト、頻度を公表し、その内容は適切な時に更新するものとする。(5112条)

本章の対象となる者は、以下を行わなければならない。
(1) 記録などを維持し、報告書を作成し、規制または命令により長官が要求する情報を提供する。
(2) 長官が調査を行う場合、または要請を行う場合、記録、財産、報告書、および情報を提供する。
また、検査、調査、試験、または調査の結果、危険があると判断された場合、長官より通知または聴聞が行われ、特に差し迫った危険の場合には、緊急の危険物の制限、禁止、回収、または業務停止命令が行われる場合もある。(5121条)

民事罰として罰金が科せられる場合がある。故意に行った、つまり「当該人物が違反に関する事実を知っていた」場合などは、本法の「規制、命令、特別許可または承認」の各違反に対して、最高75,000ドルの民事罰の責任を負う。
別個の違反は、危険物を輸送する、または輸送させる者が犯した違反が継続する日ごとに考慮される。
違反が人の死亡、重篤な疾病、傷害につながった場合、または物的損害につながった場合は、長官の裁量に基づき、罰金額を175,000ドルまで引き上げることができる。研修活動に起因する違反は、少なくとも450ドルでなければならない。(5123条)

刑事罰が科せられる場合もある。
一般的に、危険物の輸送に使用されるラベルまたは包装について故意に改ざんした場合、または故意または無謀に、同法に基づく「規制、命令、特別許可、または承認」に違反した場合、刑事罰の対象となり、合衆国法典タイトル18に基づく罰金、5年以下の懲役、またはその両方が科される。対象となる人物が本法に基づく違反の結果、危険物質が放出され、人の身体に傷害を負わせたり死亡させたりした場合、最高で10年の懲役刑が科される。(5124条)

本法に規定される場合を除き、本法に基づいた規則よりも、州、州の政治的下部組織、またはインディアン部族の要件が、先取(優先)される。(5125条)
目次
29 U.S.C. 第51章 危険物の輸送
条項
5101. 目的
5102. 定義
5103. 一般的な規制権限
5103a. 危険物免許の発行制限
5104. 表示および改ざん
5105. 特定の高濃度放射性物質の輸送
5106. 取扱基準
5107. 危険物従業員訓練の要件と助成金
5108. 登録
5109. 自動車運送業者の安全許可
5110. 輸送書類および情報開示
[5111. 廃止]
5112. 危険物の高速道路経路
5113. 不十分な安全評価
5114. 電離放射線物質の航空輸送
5115. 公共部門向け訓練カリキュラム
5116. 計画および訓練の補助金、監視、審査。
5117. 特別許可および除外
5118. 危険物質技術評価、研究開発、分析プログラム
5119. 統一書式および手順
5120. 基準と要件の国際的統一
5121. 管理
5122. 執行
5123. 民事罰
5124. 刑事罰
5125. (州などの)先取
5126.他の法律との関係
5127. 司法審査
5128. 充当の承認
基礎情報
法令(現地語) | |
法令(日本語) | 危険有害物質輸送法 |
公布日 | 1975年1月3日 (本稿執筆時点の最終改正:2021年11月15日) |
所管当局 |
作成者

株式会社先読