第12次勧告草案
2024年02月07日、欧州化学品庁(ECHA)は、欧州における化学品規制の基本法令の一つであるREACH規則に基づく認可の対象物質へ、5物質を追加する内容の勧告の草案を公表し、05月07日までの意見募集を開始しました。
REACH規則において附属書14に収載されている物質は認可の取得が必要とされることから、認可対象物質として知られています。勧告は、附属書14への物質の収載や修正に関係して行われるものです。
勧告の対象物質
勧告草案として対象とされた物質は次の通りです。勧告には意見募集の対象とする勧告草案と、最終勧告と呼ばれる欧州委員会向けの勧告がありますが、今回は前者の位置づけとなります。
物質名 | EC No. | CAS No. | 固有特性 |
Melamine | 203-615-4 | 108-78-1 | Equivalent level of concern having probable serious effects to human health (Article 57(f) – human health). Equivalent level of concern having probable serious effects to the environment (Article 57(f) – environment) |
Bis(2-ethylhexyl) tetrabromophthalate covering any of the individual isomers and/or combinations thereof ※TBPH | - | - | vPvB (Article 57e) |
S-(tricyclo[5.2.1.0 2,6]deca-3en-8(or 9)-yl) O-(isopropyl or isobutyl or 2-ethylhexyl) O(isopropyl or isobutyl or 2ethylhexyl) phosphorodithioate | 401-850-9 | 255881-94-8 | PBT (Article 57d) |
Diphenyl(2,4,6trimethylbenzoyl)phosphine oxide | 278-355-8 | 75980-60-8 | Toxic for reproduction (Article 57 c) |
Barium diboron tetraoxide | 237-222-4 | 13701-59-2 | Toxic for reproduction (Article 57c) |
合わせて公表された文書では、認可のスコープとして想定されている用途情報の例も整理されています。
REACH規則の認可対象物質リストとは?
REACH規則の第7篇(Title VII)「認可」では、「高懸念物質(SVHC)」として特定された有害物質の中から選定された物質について、経済的・技術的に可能な場合での代替を促すべく、特定の物質の上市や使用について、認可制度を設けています。
その目的にある通り、対象となる物質はECHAが特定する「高懸念物質(SVHC)」リスト(通称「候補リスト」)から選ばれ、勧告案(Draft Recommendation)と呼ばれる提案の公開、意見募集を経て、ECHAから欧州委員会への最終勧告(Final Recommendation)というプロセスを経て、特定されます。欧州委員会で検討された後は、理事会や議会の審議の後、改正規則という形で公布され、その中で対象物質の追加や削除、更新が行われます。
具体的には、附属書14にその対象物質が一覧で表示されており、認可対象物質としてリストに収載されると、その物質を上市するために使用すること、あるいは使用するためには所定の手続きにしたがって認可を取得する必要が生じます。
附属書14の認可対象物質リストには、収載の理由になった有害性である固有特性と、認可申請期日である最新申請期日、認可なしには上市/使用できなくなる日没日、必要に応じて免除用途や見直し期間が記載されます。例えば、医療機器用途の~はyyyy年mm月dd日までは免除される、などです。この免除規定(あるいは移行期間の設定)は、申請期日や日没日の欄に設定される場合もあります。特定用途について、特定の期日まではその申請期日や日没日を適用しない、といった内容です。
認可申請には、REACH規則およびECHA指定の情報を提出する必要があり、その中には代替分析の文書を含む必要があるなど、企業にとっては負担の大きい作業が必要となります。また、申請には手数料も必要となり、別の規則で規定されています。
申請した認可については、審査された後、個別の欧州委員会決定(Decision)という形で公布され、特定事業者、特定物質、特定用途について、公布されます。
なお、見直し期日というものが設定されており、その期日までに認可の更新を申請するか、物質を代替することが求められています。認可制度の目的に照らせば、期限付きの認可を与えることで、その期間内に代替を促す狙いがある、ということになります。
認可対象物質と混合物での使用との関係は?
附属書14に収載される物質、即ち認可対象物質を単独で、あるいは混合物中に含んで使用する場合には、原則、認可の申請・取得が必要とされています。
しかしながら、混合物での使用の場合には、一定の閾値未満であれば、その要件の適用が免除される仕組みがあります。REACH規則の第56条(6)の内容がこれに相当し、次の閾値が適用されています。
-REACH規則の第57条(d)、(e)、(f)の基準を満たすSVHCについて:0.1 % w/wの濃度未満
-その他のすべての物質についてはCLP規則の第11条(3)で指定されている値未満
REACH規則第57条は「附属書XIVに収載される物質」について規定しており、CLP規則第11条は混合物中の物質に関するカットオフ値について規定しています。このカットオフ値はCLP規則附属書Iのsection 1.1.2.2「カットオフ値」を参照するよう定められています。
カットオフ値は有害性クラスの種類によって0.1%や1%など、値が異なります。
参考
■ 認可対象物質の勧告草案に関する意見募集ページ/ECHA
※特別無料記事