解説EU – オゾン層破壊物質規則(2024年版)

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法令の情報時期:2024年02月 公布版 ページ作成時期:2024年09月

目的

目的

本規則の目的は、オゾン層破壊物質の製造、輸出入、上市、保管、その後の供給、使用、回収、リサイクル、再生、破壊、およびこれらの物質に関連する情報の報告、オゾン層破壊物質を含む、またはその機能がオゾン層破壊物質に依存する製品および機器の輸出入、上市、その後の供給、使用に関する規定を定めることである。

概要

概要

本規則は、オゾン層破壊物質の製造、輸出入、上市、保管、その後の供給、使用、回収、リサイクル、再生、破壊、およびこれらの物質に関連する情報の報告、オゾン層破壊物質を含む、またはその機能がオゾン層破壊物質に依存する製品および機器の輸出入、上市、その後の供給、使用に関する規定を定めるために定められた。

本規則は、(a) 附属書1および2に記載されているオゾン層破壊物質、およびその異性体で、物質単体であるか混合物であるかを問わないもの、ならびに(b) オゾン層破壊物質を含有する、またはその物質に依存した機能をもつ製品および機器およびその部品に適用される。

本規則に違反した場合、加盟国は効果的、比例的、かつ抑止的な罰則を定め、これには行政課徴金、不法に入手された商品の没収、オゾン層破壊物質の使用禁止などが含まれ、違反の重大性や事業者の過去の違反歴、財務状況に応じて決定される必要がある。

注目定義

■ 「生産者」(producer)

「生産者」とは、欧州連合域内でオゾン層破壊物質を生産する自由人または法人をいう。(第3条)

■ 「事業者」(undertaking)

「事業者」とは、本規則でいう活動を実施する自然人または法人をいう。(第3条)

■ 「原料」(feedstock)

「原料」とは、元の組成から完全に変換される工程で化学変化を受け、その排出量が軽微なオゾン層破壊物質ををいう。(第3条)

■ 「加工剤」(process agents)

「加工剤」とは、附属書3に記載される用途で化学加工剤として使用するオゾン層破壊物質をいう。(第3条)

■ 「容器」(container)

「容器」とは、主にオゾン層破壊物質を輸送または貯蔵するために設計された容器をいう。(第3条)

■ 「製品および機器」(products and equipment)

「製品および機器」とは、容器を除き、オゾン層破壊物質の輸送または貯蔵に使用されるすべての製品および機器、その部品をいう。(第3条)

■ 「未使用物質」(virgin substance)

「未使用物質」とは、過去に使用されたことのない物質をいう。(第3条)

■ 「発泡パネル」(foam panel)

「発泡パネル」とは、発泡体と、片面または両面に結合された木材や金属などの硬質材料とを含む層からなる構造体をいう。(第3条)

■ 「ラミネート・ボード」(laminated boar)

「ラミネート・ボード」とは、プラスチックなどの非剛性材料の薄い層で覆われた発泡ボードをいう。(第3条)

■ 「輸入」(import)

「輸入」とは、1987年の「オゾン層破壊物質に関するモントリオール議定書」(「議定書」)の批准が適用される領域において、物質、製品および機器の欧州連合の税関領域への持ち込みを意味し、一時保管および規則(EU) No. 952/2013の201条および210条にいう税関手続きを含む。(第3条)

■ 「輸出」(export)

「輸出」とは、、議定書の批准が適用される領域から、物質、製品、機器を欧州連合の関税領域外に持ち出すことをいう。(第3条)

■ 「上市」(placing on the market)

「上市」とは、欧州連合域内の自由流通のために税関から放出されること、または域内の他者に、初めて、有償または無償で、供給もしくは利用可能にすること、または生産された物質もしくは製造された製品もしくは機器を自己使用のために使用することをいう。(第3条)

■ 「使用」(use)

「使用」とは、オゾン層破壊物質と関連して、製品および機器の製造、保守、再充填を含む整備、または本規則でいうその他の活動および工程における利用をいう。(第3条)

■ 「回収」(recover)

「回収」とは、保守点検中、または容器、製品、機器を破壊する前に、容器、製品、機器からオゾン層破壊物質を回収し、保管することをいう。(第3条)

■ 「リサイクル」(recycling)

「リサイクル」とは、ろ過や乾燥などの基本的な洗浄工程を経て回収されたオゾン層破壊物質を再使用することをいう。(第3条)

■ 「再生」(reclamation)

「再生」とは、オゾン層破壊物質の再生を可能にする適切な機器と手順を備え、要求される品質レベルを評価し証明できるライセンスされた再生施設において、回収されたオゾン層破壊物質を、その使用目的を考慮して、未使用物質と同等の性能に再処理することをいう。(第3条)

■ 「撤去」(decommissioning)

「撤去」とは、オゾン層破壊物質を含む製品または機器の運転、または使用からの永久的な撤去を意味し、施設の最終閉鎖を含む。(第3条)

■ 「破壊」(destruction)

「破壊」とは、オゾン層破壊物質を恒久的かつ可能な限り完全に、オゾン層破壊物質ではない1つまたは複数の安定物質に変換または分解するプロセスをいう。(第3条)

■ 「欧州連合域内の施設」(establishment within the Union)

「欧州連合域内の施設」とは、自然人の場合は欧州連合域内に常居所を有すること、法人の場合は欧州連合域内に規則(EU) No. 952/2013の5条(32)に定める恒久的な施設を有することをいう。(第3条)

適用除外(対象外・猶予・免除等)

本法令には、法令全体からの適用除外や免除を規定する内容はない。

事業者が注意すべき内容

本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
人の安全

オゾン層破壊物質に関する禁止事項として、附属書1に記載された物質の製造、販売、供給、使用が禁止される。また、これらの物質の輸出入も禁止される。さらに、オゾン層破壊物質を含む製品や機器、またはその機能に依存する製品や機器の欧州連合内での販売や供給も禁止され、輸出入も同様に禁止されるが、個人所有物にはこの禁止が適用されない。(第4条、第5条)

文書登録、文書管理、文書作成

第4条(1)の適用除外により、附属書1に記載されるオゾン層破壊物質は、特定の条件下で生産、販売、供給が許可される。これには、加工剤として附属書Ⅲで言及される工程で使用する場合や、1997年9月1日に存在した機器において、排出が軽微であり、規定された条件に従う場合が含まれる。また、実験や分析に不可欠な用途においても、同様の条件の下で製造、販売、供給が可能である。(第6条、第7条、第8条)

機械安全、設備安全

第4条(1)の適用除外により、附属書5に従ってハロン類を上市し、重要用途に使用することが可能である。ただし、ハロン類は加盟国の承認を受けた事業者のみが上市や供給を行える。重要用途に使用されるハロンを内蔵する防火システムや消火器は、附属書5で定める最終日までに撤去されなければならず、ハロンは20条(5)に従って回収される必要がある。また、緊急事態において欧州委員会は臭化メチルの一時的な生産や使用を許可できるが、使用中の臭化メチルの排出を削減するための措置を規定し、期間や量に制限がある。さらに、第5条(1)の適用除外によりライセンスされたオゾン層破壊物質を含む製品や機器は上市が許可されるが、重要用途を除くハロンを含む防火システムや消火器は撤去される必要があり、寿命終了時にオゾン層破壊物質を含む製品や機器も撤去されるべきである。(第9条、第10条、第11条)

資格、認定

第4条(2)および5条(2)の適用除外により、特定のオゾン層破壊物質の輸入が認められ、具体的には原料、加工剤、実験や分析に不可欠な用途、技術による破壊用の物質、再生利用のための物質、緊急用の臭化メチル、重要用途のために認可されたハロン、さらに関連製品や機器が含まれる。ただし、これらの輸入は16条に基づく有効なライセンスの提示が条件である。輸出についても同様に、実験や分析用の物質、原料、加工剤、未使用または再生したハイドロクロロフルオロカーボン、重要用途のために貯蔵されたハロンや関連製品が認められ、特にハイドロクロロフルオロカーボンの輸出には経済的価値や残存寿命を考慮し、欧州委員会の許可が必要である。この際、輸出先国の国内法がオゾン層破壊物質の放出を抑える適切な取り扱いを保証することが求められる。また、これらの輸出も16条に従って有効なライセンスの提示が条件である。(第13条、第14条)

文書登録、文書管理、文書作成

オゾン層破壊物質用の再充填不可能な容器の輸入、上市、供給、使用、輸出は、実験や分析に不可欠な用途を除き禁止され、この容器は破壊のための保管または輸送にのみ使用されるべきである。再充填不可能な容器は税関当局によって押収または市場から回収され、再輸出は禁止される。再充填容器を上市する事業者は、容器の返却に関する拘束力のある取り決めを証明する適合宣言書を作成し、関連情報を特定しなければならず、この宣言書は少なくとも5年間保管する必要がある。オゾン層破壊物質の上市は、製造過程で生成されるトリフルオロメタンが適切に処理されたことを証明する書類の提出が求められ、これも5年間保管する必要がある。また、オゾン層破壊物質は、指定された用途にのみ使用することができる旨のラベルが必要で、これに関する実施法も定められる。事業者は、オゾン層破壊物質の生産や取引に関して、詳細な記録を保持し、5年間保管する義務があり、その情報は秘密として保持されることが求められる。(第15条)

人の安全

第13条(2)または14条(3)に基づくライセンスの取得を希望する事業者は、ライセンス・システムを用いて申請書を提出する必要があり、その前に有効な登録を行わなければならない。また、報告を行う前にもライセンス・システムに有効な登録であることを確認する必要がある。ライセンスの申請は30日以内に処理され、発行は附属書7に定める規則および手続に従う。ライセンスは、域内または域外に施設を有する事業者に発行されるが、域外に施設を持つ事業者は、域内に施設を有する唯一の代表者を任命し、その者が本規則の遵守に全責任を負う。ライセンスを保有する事業者は、有効期間中に発生する可能性のある変更について、不当な遅滞なく欧州委員会に通知しなければならない。(第16条)

資格、認定

輸入においては、本規則の13条(2)に基づくライセンスを保有する事業者が輸入者となり、輸入者が不在の場合は税関申告書に記載された事業者が許可を保有する者とされる。輸出に関しては、14条(3)に基づく許可を有する事業者が税関申告書に記載された輸出者とされる。オゾン層破壊物質を含む製品や機器を輸入する場合、輸入者は税関当局に対してライセンス番号や経済事業者登録識別番号、オゾン層破壊物質の質量およびそのODP(オゾン層破壊ポテンシャル)、商品コードなどの情報を提供しなければならない。再充填可能な容器に入ったオゾン層破壊物質の輸入者は、税関申告書提出時に再充填容器の返却手配を確認する証拠を含む適合性の申告書を提出する必要がある。また、ハロンの輸入者および輸出者は、自由流通に関する税関申告書提出時に物質の性質を確認する証明書を税関当局に提供しなければならない。オゾン層破壊物質の輸入者は、自由流通のための放出に関連する税関申告書提出時に必要な証拠を税関当局に提出する義務がある。(第17条)

機械安全、設備安全

冷凍および空調機器、ヒートポンプ、溶剤を含む機器、防火システム、消火器に含まれるオゾン層破壊物質は、機器の保守点検時や解体・破壊前に回収し、破壊、リサイクル、再生が求められる。2025年1月1日以降、建築物の所有者および請負業者は、発泡体を含む発泡パネルの撤去を伴う作業において、発泡体やその含有物を確実に破壊する方法で取り扱い、可能な限り排出を避けなければならない。発泡体の回収は、適切な資格を有する者のみが行う必要がある。技術的に発泡体の除去が不可能な場合は、証明書を作成し、5年間保管しなければならない。また、防火システムおよび消火器に含まれるハロンは、機器の保守点検や解体前にリサイクルまたは再使用のために回収されるべきであり、ハロンの破壊は、再生や再使用が技術的に不可能であるという証拠がない限り禁止される。破壊を行う事業者は、この証拠を5年間保管し、要請があれば提供する義務がある。(第20条)

文書登録、文書管理、文書作成

オゾン層破壊物質の大気中への意図的な放出は、本規則で許可された使用目的に技術的に必要な場合を除き禁止される。事業者は、他の化学物質の製造や使用、保管、輸送過程での不注意な放出を防止し、最小限に抑えるための予防措置を講じなければならない。冷凍空調機器や防火システムに関しては、附属書1に記載されたオゾン層破壊物質の流体充填量に応じて、漏れ検査を定期的に実施することが義務付けられている。具体的には、充填量が3kg以上30kg未満の場合は12ヶ月ごと、30kg以上300kg未満の場合は6ヶ月ごと、300kg以上の場合は3ヶ月ごとに漏れを確認しなければならない。オゾン層破壊物質を含む機器やシステムの運用者は、漏れを発見した場合、使用禁止を害することなく、遅延なく修理を行う必要がある。また、事業者は保守や整備、最終処分の際に回収されたハロンの量や種類、オゾン層破壊物質の記録を保管し、漏洩検査の詳細や結果も含む関連情報を少なくとも5年間保存しなければならず、要請があれば提供する義務がある。(第21条)

人の安全

各事業者は、2025年3月31日までに、またその後毎年、電子報告ツールを用いて前暦年のオゾン層破壊物質に関するデータを附属書6に基づき欧州委員会に報告する義務がある。加盟国は、自国の事業者がこの電子報告ツールにアクセスできるようにしなければならない。報告を行う前に、事業者はライセンス・システムに登録する必要がある。また、加盟国および欧州委員会の管轄当局は、提出された情報の秘密を保護するための適切な措置を講じることが求められている。必要に応じて、欧州委員会は実施法により、報告の形式や手段を定める責任があり、これらは審査手続に従って採択されることになる。(第24条)

目次

第一章 一般規定
第1条 主題
第2条 範囲
第3条 定義

第二章 禁止事項
第4条 オゾン層破壊物質に関する禁止事項
第5条 オゾン層破壊物質を含有するか、その機能に依存する製品および機器に関する禁止事項

第三章 禁止事項の適用除外
第6条 原料
第7条 加工剤
第8条 実験や分析に不可欠な用途
第9条 ハロンの重要用途
第10条 臭化メチルの緊急使用
第11条 オゾン層破壊物質を内蔵する、またはその物質に依存する機能を持つ製品および機器に関する適用除外
第12条 破壊と再生
第13条 輸入
第14条 輸出
第15条 免除の条件

第四章 貿易
第16条 ライセンス・システム
第17条 貿易規制
第18条 違法取引監視措置
第19条 議定書非適用の国または地域経済統合機構および地域との貿易

第五章 排出規制
第20条 使用済みオゾン層破壊物質の回収と破壊
第21条 オゾン層破壊物質の排出と漏洩検査

第六章 オゾン層破壊物質のリストと報告
第22条 オゾン層破壊物質リストの修正
第23条 加盟国による報告
第24条 事業者による報告

第七章 執行
第25条 協力と情報交換
第26条 検査実行義務

第8章 罰則、専門委員会の手続きおよび委任の行使
第27条 罰則
第28条 専門委員会手続き
第29条 委任の行使

第九章 経過規定および最終規定
第30条 レビュー
第31条 廃止および経過規定
第32条 発効と適用

(注釈)

附属書1  第2条(a)(1)に言及されるオゾン層破壊物質(1)
附属書2  議定書で管理されていない、第2条(a)に言及されるオゾン層破壊物質(1)
附属書3  加工剤
附属書4  第 8 条(6)に言及される実験や分析に不可欠な用途のオゾン層破壊物質の上市、およびその後の供給または利用可能に関する条件
附属書5  第9条(1)に言及されるハロンの重要用途
附属書6  第24条に言及される報告
附属書7  ライセンス・システム
附属書8  相関表

 

基礎情報

法令(現地語)

Regulation (EU) 2024/590 of the European Parliament and of the Council of 7 February 2024 on substances that deplete the ozone layer, and repealing Regulation (EC) No 1005/2009 (Text with EEA relevance)

法令(日本語)

オゾン層破壊物質規則(2024年版)

公布日

2024年02月20日

所管当局

気候対策総局

作成者

株式会社先読

株式会社先読

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