解説米国-大気浄化法(CAA)-国家環境大気質基準(NAAQS)

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法令の情報時期:2024年11月 U.S.C.確認 ページ作成時期:2024年11月

目的

目的

この解説の対象が属するチャプター85「大気汚染の防止と管理が構成する大気浄化法(Clean Air Act、CAA)」の目的は、国民の健康と国の大気資源の質を保護するために、大気汚染の防止と制御を達成するための国家的研究開発プログラムを立案し実施して、州政府および地方政府に技術的・財政的支援を提供することである。

アメリカの大気浄化法(Clean Air Act; CAA)において、国家環境大気質基準(National Ambient Air Quality Standards、NAAQS)は、パートA§7401(a)で記された、以下の目的などを共有している。

「大気汚染の防止、すなわち、排出源で生産または生成される汚染物質の量を、あらゆる手段で削減または除去することは、基本的に、州および地方自治体の主要な責任である。CAAでは、大気汚染の防止と制御を達成するため、連邦政府が国家的な研究開発プログラムを開始してそれを加速させ、最終的に大気汚染防止に関するプログラムの開発と実施を行うことで、州政府および地方政府に技術的および財政的支援を提供することにある。」

概要

概要

米国では、大気浄化法(Clean Air Act; CAA)において、国家環境大気質基準(NAAQS)が設けられ、一般的な大気汚染物質である、粒子状物質(particulate matter、PM)、地上オゾン、一酸化炭素、二酸化硫黄、二酸化窒素、鉛の6物質への規制が行われている。

NAAQSとして、一次基準(人々の健康を保護することを目的とする基準)と二次基準(環境や建物への悪影響を防ぎ、それにより人々の快適な生活を保護することを目的とする基準)を設けている。

EPAは、各州に対して、NAAQSを達成するための州実施計画(SIP)を策定することを義務付けている。SIPに排出制限値や遵守スケジュールのほか、風下にあたる他州の大気環境に重大な影響を与える排出を禁じる規定などを盛り込むことを義務付けている。

EPAは、各州に対して、NAAQSを達成している(達成地域)、もしくは未達成地域の分類を義務付けている。これら地域に新規施設の建設あるいは既存施設の拡張が行われる場合、大気質を維持できるような対策をSIPに盛り込むこと、としている。

施設、工場などの排出源を持つ事業者は、この法に基づいた規則やガイダンスの従ったEPAと各州の規制により、排出に関する報告義務が生じ、また新しい施設の工事前に「新規排出源」として州や地域に合わせた許可を取得する必要がある。

注目定義

■ 「合理的なさらなる進展」(Reasonable further progress)

「合理的なさらなる進展」(Reasonable further progress)とは、この法律で求められる、または適用される期日までに該当する国家環境大気質基準(NAAQS)の達成を確保する目的で、管理者により合理的に求められる可能性のある、該当する大気汚染物質の排出量の年間削減量をいう。(§7501(1))

■ 「未達成地域」(Nonattainment area)

「未達成地域」(Nonattainment area)という用語は、いかなる大気汚染物質に関しても、その汚染物質に関して「未達成」と指定された地域をいう。(§7501(2))

■ 「達成可能な最低排出率」(lowest achievable emission rate)

「達成可能な最低排出率」(lowest achievable emission rate)とは、いかなる排出源に関しても、以下の排出率をいう。
(A) 提案された排出源の所有者または運営者が、そのような制限が達成不可能であることを証明しない限り、そのような排出源のクラスまたはカテゴリーの、州実施計画(State Implementation Plan、SIP)に盛り込まれている最も厳しい排出制限、または
(B) そのようなクラスまたはカテゴリーの排出源が実際上達成している最も厳しい排出制限、
のいずれかより厳しい方をいう。
いかなる場合においても、上記の適用により、提案された新規または変更される排出源が、該当する新規排出源の性能基準で許容される量を超える汚染物質を排出することは認められない。(§7501(3))

事業者が注意すべき内容

本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
文書登録、文書管理、文書作成

§7407「大気質管理地域」において、各州は地域を、以下のいずれかに分類し、指定するとしている。指定された地域は、EPAによって公布、公表される。

(i) 未達成:大気質が特定の汚染物質に対する国家の一次または二次NAAQSを満たしていない地域、もしくは近隣の大気質に影響を与えている地域、
(ii) 達成:大気質が、一次または二次NAAQSを満たしている地域、
(iii) 分類不能

人の安全

§7408「大気質基準および管理技術」において、EPAは、各大気汚染物質を含むリストを公表し、その後適宜改訂する。

また、EPA(長官)は移動排出源からの汚染を抑制するため、運輸長官と協議の上で、交通と大気質に関する計画やガイドラインを作成、公表する。

機械安全、設備安全

§7409「国家の一次および二次NAAQS基準」において、EPAは、各大気汚染物質についてNAAQSを規定する。

EPAは排出源を有する州に対して、「州実施計画(SIP)」を立案し、地域内の排出源の特定と排出量の定量、最新のインベントリ(一覧表)、新規排出源などへの許可、その他の対策を施行することを要求している。

文書登録、文書管理、文書作成

§7501-7514「パートD―未達成地域に関する計画要件」の「サブパート1—未達成地域一般」では、より詳しく、NAAQSを満たしていない地域やそれをもつ州に対する大気質改善の基準とその要件を定めている。具体的には、以下の通りである。

1.基準の未達成地域の分類:基準の未達成地域は、汚染の深刻度等によって分類され、それに応じた要件と達成期日が設けられる。(§7502)

2.許可要件:各州が許可プログラムにおいて、条件を満たす場合に排出源となりうる施設の建設および操業の許可を発行できることが規定されている。この操業許可の条件には、総許容排出量が当該建設または変更許可申請前の当該排出源からの総排出量よりも十分に少なく、また適用可能な排出制限および基準に順守することなどが盛り込まれている。(§7503)

3.規制措置とスケジュール:より厳しい排出基準、燃料の再配合、検査プログラムなどの規制措置を州に義務付けている。また、順守を達成するためのスケジュールが設定されている。(§7504)

4.監視と施行:順守を確保するために大気質の継続的な監視が義務付けられている。(§7505a)

5. その他、「未達成地域でしかし基準や要件を遵守する州での新車両排出基準(§7507)」や「達成できなかった場合の制裁および結果(§7508)」などが解説されている。

人の安全

「パートD」のサブパート2、3、4、5では、特定の汚染物質においてNAAQSを満たしていない州に対する追加規程がそれぞれ示されている。

サブパート2(§7511)ではオゾン層破壊物質、サブパート3(§7512)では一酸化炭素、サブパート4(§7513)では粒子状物質(PM)、サブパート5(§7514)では硫黄酸化物、二酸化窒素または鉛の規程が示されている。

これらサブパートでは、NAAQSを満たしていない地域に合わせたより厳しい要件が導入され、排出を管理するための専門的な戦略と規制が追加されている。

それぞれ、以下の事が記載されている。
1.特定の物質の汚染に関する分類:地域は、達成すべき基準への未達成の状態の深刻度によって分類され、順守達成のための管理要件と期限が定められている。
2.州実施計画(SIP)策定の要求
3.排出源の抑制対策:分類に応じた、より厳格な抑制策を実施することが義務付けられている。
 例えば、オゾン層破壊物質、一酸化炭素、PMの場合、これらの排出源である「車両の検査およびメンテナンスプログラム」「産業からの排出量の削減」に加え「ガソリンの再配合および燃料基準」などの対策が要求される。
 硫黄酸化物、二酸化窒素、または鉛の場合は、排出源としての工業施設、発電所、鉛排出源としての製錬および電池製造などの工業施設への対策が要求される。
4.進捗状況のマイルストーンと罰則:NAAQS達成のためのマイルストーンの作成やマイルストーンが達成できない場合のさらなる規制、より厳しい基準、EPAによる連邦制裁が課される。
5.緊急時計画:州は、SIPに記載した削減目標を定められた期限までに達成できなかった場合に自動的に施行される緊急時対策も策定することが義務付けられている。

目次

チャプター85 大気汚染の防止と管理
サブチャプターI プログラムと活動
パートA―大気質と排出規制
§7405. 大気汚染防止計画および規制プログラム支援のための助成金
§7406. 州際大気質機関;プログラム費用制限
§7407. 大気質管理地域
§7408. 大気質基準および管理技術
§7409. 一次および二次国家環境大気質基準(National ambient air quality standards、NAAQS)
§7410. 一次および二次国家環境大気質基準のための州実施計画

パートD—未達成地域に関する計画要件
サブパート1—未達成地域一般
§7501. 定義
§7502. 未達成の計画の規定一般
§7503. 許可要件
§7504. 計画手順
§7505. 環境保護庁の補助金
§7505a. 維持計画
§7506. 特定の連邦支援の制限
§7506a. 州間輸送委員会
§7507. 達成されていない地域における新自動車排出基準
§7508. 指導文書
§7509. 達成できなかった場合の制裁および結果
§7509a. 国際国境地域

サブパート2—オゾン未達成地域に関する追加規定
§7511. 分類および達成期限
§7511a. 計画の提出および要件
§7511b. 連邦オゾン対策
§7511c. 州間オゾン大気汚染の抑制
§7511d. 達成できなかった深刻および極度のオゾン未達成地域に対する施行
§7511e. 移行地域
§7511f. NOxおよびVOCに関する研究

サブパート3—一酸化炭素不適合地域に関する追加規定

§7512. 分類および達成期限
§7512a. 計画の提出および要件

サブパート4—粒子状物質不適合地域に関する追加規定

§7513. 分類および達成期限
§7513a. 計画の規定および計画提出のスケジュール
§7513b. RACMおよびBACMガイダンスの発行

サブパート5—硫黄酸化物、二酸化窒素、または鉛の未達成地域として指定された地域に対する追加規定

§7514. 計画提出期限
§7514a. 達成期限

基礎情報

法令(現地語)

Clean Air Act 42 U.S.C.§7405-7410; §7501-7514

法令(日本語)

大気浄化法(CAA)国家環境大気質基準

公布日

1963年12月17日(本稿執筆時点の最終改正:2022年12月27日)

所管当局

米国環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)

作成者

株式会社先読

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