解説米国-大気浄化法(CAA) -成層圏オゾン層保護

HOME > 法令解説 > 解説|米国-大気浄化法(CAA) -成層圏オゾン層保護
法令の情報時期:2024年5月 U.S.C.確認 ページ作成時期:2024年5月

目的

目的

大気浄化法(CAA)は、大気を汚染する排出物から人間の健康と環境を保護することを目的として制定された。

この法律に基づいて、米国環境保護庁(EPA)は大気環境に関する最低限の国家基準を策定している。「成層圏オゾン層保護」の項目では、モントリオール議定書の要求事項の実施が目的とされている。

概要

概要

モントリオール議定書は、1987年「オゾン層の保護のためのウィーン条約」に基づいて採択され、1989年「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」として発効される。

毎年、締約国の会議が開かれて内容が精査され、2024年5月現在の直近では2016年にキガリ改正が行われた。特定フロン、ハロン、四塩化炭素などが規制対象物質とされ、ギガリ改正ではハイドロフルオロカーボン(通称、代替フロン)も規制対象物質に含まれた。(ただし、2024年5月現在、この項目の最終改正は2011年であるため、ギガリ改正は反映されていない。)

モントリオール議定書の規定に合致した規制対象物質をクラスIまたはクラスII物質として分類・記載し、これらの(リサイクルも含む)生産、製造、輸出入の禁止もしくは廃止要件やその報告要件、廃棄や放出の要件、ラベリング要件などを規定している。

また、クラスIまたはクラスII物質を含む、接着剤やコーティング剤、洗浄用溶剤、消火剤や爆発防護剤、発泡剤、冷凍冷蔵・空調機器を含む電化製品、殺菌剤、自動車のエアコンなどが対象となっている。ただし、医療機器などの特定の機器のために代替する物質がない場合は、適用されない。

EPAは、「実行可能な最大限の範囲において、規制対象物質やその製品を、人の健康および環境へのリスクが低い化学物質、代替する製品や製造工程に置き換えるものとする。(7671k条)」ことを方針としているこの項目に基づき、重要新規代替物質政策(Significant New Alternatives Policy (SNAP) Program)プログラムの下、オゾン層破壊物質やその代替物質のリスクなどを比較・評価して、使用の認容や制限などを決定している。

注目定義

■ 「クラスI物質」(Class I substance)

「クラスI物質」(Class I substance)とは、本法7671a条(a)に規定されるリストアップされた各物質をいう。

■ 「クラスII物質」(Class II substance)

「クラスII物質」(Class II substance)とは、本法7671a条(b)に規定されるリストアップされた各物質をいう。

■ 「電化製品」(Appliance)

「電化製品」(Appliance)とは、冷媒としてクラスIまたはクラスI物質を含有し使用する装置であって、家庭用または業務用に使用されるものをいう。エアコン、冷蔵庫、冷凍庫、冷凍庫を含む。

■ 「冷媒」(Refrigerant、7671h条においてのみ)

「冷媒」(Refrigerant)とは、自動車用エアコンに使用されるクラスIまたはクラスIIの物質をいう。

■ 「認可された冷媒リサイクル機器」(Approved refrigerant recycling equipment、7671h条においてのみ)

「認可された冷媒リサイクル機器」(Approved refrigerant recycling equipment)とは、自動車エアコンから冷媒を抽出し再生する機器に適用される、環境保護庁長官またはそれが承認した独立標準試験機関)が基準を満たすと認定した機器をいう。

■ 「モントリオール議定書」(Montreal Protocol)

「モントリオール議定書」(Montreal Protocol)とは、「オゾン層の保護のためのウィーン条約」の議定書である「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」(締約国により採択された調整及び発効した改正を含む)をいう。

■ 「オゾン層破壊係数」(Ozone-depletion potential)

「オゾン層破壊係数」(Ozone-depletion potential)とは、クロロフルオロカーボン-11(CFC-11)と比較して、物質のオゾン層破壊能力を反映するために、長官が定めた係数をいう。この係数は、物質の大気寿命、臭素と塩素の分子量、光分解される能力、および相対的なオゾン層破壊能の正確な尺度であると判断されるその他の要素に基づくものとする。

■ 「消費量」(Consumption)

「消費量」(Consumption)とは、物質に関して、米国内で生産された量に輸入量を加えたものからモントリオール議定書締約国に輸出された量を差し引いたものをいう。この用語は、モントリオール議定書と矛盾しないように解釈されるものとする。

■ 「輸入」(Import)

「輸入」(Import)とは、米国の関税法にいう輸入に該当するか否かを問わず、米国の管轄に属する場所に上陸し、搬入し、もしくは導入しようとすることをいう。

■ 「生産する、された、生産」

「生産する」、「生産された」、「生産」(Produce, produced, and production)という用語は、原料または原料化学物質から物質を製造することをいう。ただし、以下のものを含まない。
(A) 他の化学物質の製造に使用され、完全に消費される(微量を除く)物質の製造。
(B) 物質の再使用またはリサイクル。

適用除外(対象外・猶予・免除等)

機械安全、設備安全

モントリオール議定書に合致する限りにおいて、①安全かつ効果的な代替する物質が入手できない必須用途(既存の航空機エンジンおよび金属疲労の影響を受けやすい航空機部品の金属疲労および腐食の非破壊検査など)にのみ使用される場合の限定量のメチルクロロホルムの製造、②通知および一般からの意見を聴取した上で、医療機器に使用するために必要であると判断した場合のクラスI物質の製造、が許可されている。

ただし、基準年にその者が製造した量の10%(使用の最終年は15%)を超える量を年間において製造することは許可されていない。(7671c条)。

事業者が注意すべき内容

本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
有害物質、危険物

クラスIおよびクラスII物質のリストが記載されている。(7671a条)

(a) クラスI物質のリスト
グループI:クロロフルオロカーボン(chlorofluorocarbon)類が5種記載されている
グループII:ハロン(halon)類が3種記載されている
グループIII:クロロフルオロカーボン-13などが10種記載されている
グループIV:四塩化炭素(carbon tetrachloride) グループV:メチルクロロホルム(methyl chloroform)

(b) クラスII物質のリスト ハイドロクロロフルオロカーボン(hydrochlorofluorocarbon)類が33種記載されている
長官(Administrator、CAAにおいては環境保護庁長官)は、1990年11月15日以降、3年を下回らない頻度で、基準を満たすと認める物質をクラスIまたはクラスII物質にリストアップし、追加する。
追加される際、その物質のオゾン層破壊係数と地球温暖化係数も公表される。

文書登録、文書管理、文書作成

クラスIおよびクラスII物質を生産、輸入、輸出した者は、四半期または長官が決定するその他の期間(年1回以上)ごとに、直前の期間中に生産、輸入、輸出した物質の量を記載した報告書を長官に提出しなければならない。(7671b条)

禁止

規定されたパーセンテージ(7671c条表2)を超える年間量のクラスI物質の生産は、メチルクロロホルム以外2000年01月01日より違法とされる。

メチルクロロホルムは2002年01月01日より違法とされる。(7671c条)

有害物質、危険物

2015年01月01日より、以下の場合を除き、いかなる者も、クラスII物質を州際通商に持ち込むこと、または使用することは違法とする。(7671d条)

(1) 使用、回収、リサイクルされたもの
(2) 他の化学物質の製造に使用され、完全に消費されるもの(微量を除く)
(3) 2020年01月01日以前に製造された機器の冷媒(冷凍システムにおいて熱伝達のために使用されるクラスII物質をいう)として使用されているもの
(4) 非住宅用の用途の消火剤として使用可能であると記載されているもの。

文書登録、文書管理、文書作成

長官は、以下の場合、本タイトルの第7671c条もしくは第7671d条、またはその両方に規定されるよりも厳しい、クラスⅠ物質またはクラスII物質の生産と消費(またはクラスⅡ物質の使用)を段階的に前倒して廃止とする。(7671e条)

(1) クラスⅠ物質またはクラスII物質に関連する成層圏オゾン層への有害な影響に関する信頼できる現在の科学情報の評価に基づき、より厳格なスケジュールが必要であると長官が判断した場合。
(2) リストにある物質を代替する物質の入手可能性を鑑み、技術的達成可能性、安全性、その他の関連要因を考慮して、より厳格なスケジュールが実行可能であると長官が判断した場合。
(3) モントリオール議定書が修正され、本法に基づくスケジュールよりも迅速に物質の生産、消費、または使用を規制または削減するスケジュールが含まれた場合。

機械安全、設備安全

本法では、ある年のある物質の生産割当量を、オゾン層破壊量加重ベースで、同じ年の別の物質の生産割当量と交換することが認められる。(7671f条)

人の安全

全国リサイクル・排出削減プログラム(National recycling and emission reduction program)において、クラスI及びクラスII物質の安全な処分に関する、以下の基準及び要件が定められている。(7671g条)

(1) 機器、機械、またはその他の物品に大量に含まれるクラスI及びクラスII物質は、廃棄またはリサイクルの段階でその物品から除去されなければならない。
(2) 大きな塊としてのクラスⅠまたはクラスⅡ物質を含む電気器具、機械、その他の物品は、修理または廃棄の際に当該物質の塊の回収を容易にするための開口部または同等の効果的な設計機能を備えていない限り、州際通商において製造、販売、流通してはならない。
(3) クラスⅠまたはクラスⅡ物質が、当該製品の固有の要素となるように組み込まれた製品は、実行可能な最大限の範囲で、当該物質の環境への放出を低減する方法で廃棄されなければならない。
(4) 電気器具または工業用プロセス冷凍機の保守、サービス、修理、または廃棄の過程で、当該電気器具の冷媒として使用されるクラスIまたはII物質を故意に放出または廃棄することは、いかなる者にとっても違法とする。

本条(4)は、クラスIまたはクラスII物質を代替する物質の排出、放出、または廃棄にも適用される。

本条(4)において、「電気器具」という用語は、代替する物質を冷媒として含有し使用する、家庭用または商業用に使用されるあらゆる装置を含み、エアコン、冷蔵庫、冷却器、冷凍庫を含む。

機械安全、設備安全

「認可された冷媒機器」として、自動車エアコンも適用範囲に含まれる。(7671h条)

禁止

環境中にクラスI物質を放出(製造、使用、保管、廃棄中の放出を含む)する非必須製品を特定し、そのような製品を州際通商で販売または配布すること、あるいはそれらのために製品を提供することを禁止する。

ここでは、以下が非必須製品に当たる。 ただし、医療機器は本条に適用されない。(7671i条)
(1) クロロフルオロカーボンを推進力とするプラスチック製のパーティー・ストリーマーおよびノイズ・ホーン、
(2) 非商用電子機器および写真機器用のクロロフルオロカーボン含有洗浄液。
(3) その他消費者製品(クラスⅡ物質を含む、エアゾール製品またはその他の加圧ディスペンサー、クラスⅡ物質を含む、またはクラスⅡ物質で製造されたプラスチック発泡製品など)で長官が決定したもの、

文書登録、文書管理、文書作成

ラベリング要件として、クラスIまたはクラスII物質が含まれる製品は、明確に読み取れ、かつ目立つように、いかのような内容が記載されたラベルが貼付されていない限り、州際通商に持ち込んではならない。(7671j条)

「警告:上層大気のオゾンを破壊して公衆衛生と環境に害を与える物質である[物質名を挿入]が含まれています。」

人の安全

大統領は、本章により許可された研究および調査を補完する協力研究を促進するため、また、米国内で適用される規制と整合性のある成層圏を保護する基準および規制を策定するために、国際協定を締結する。(7671p条)

目次

42 U.S.C.§7671-7671qサブチャプターVI 成層圏オゾン層保護

7671.定義

7671a. クラスIおよびクラスII物質のリスト
(a) クラスI物質リスト
(b) クラスII物質リスト
(c) リストの追加
(d) 新規上場物質
(e) オゾン層破壊と地球温暖化の可能性

7671b. モニタリングおよび報告要件
(a) 規則
(b) 生産、輸入、輸出レベルのレポート
(c) クラスI物質のベースライン報告書
(d) モニタリングと議会への報告
(e) 2015年の技術状況報告
(f) 緊急報告

7671c. クラスI指定物質の生産と消費の段階的廃止
(a) 生産段階からの廃止
(b) クラスI指定物質の製造中止
(c) クラスI指定物質の製造および消費に関する規制
(d) メチルクロロホルムの必須用途、医療機器、航空安全の例外
(e) 発展途上国
(f) 国家安全保障
(g) 消火および爆発防止
(h) 臭化メチル

7671d. クラスⅡ物質の生産と消費の段階的廃止
(a) クラスⅡ物質の使用制限
(b) 生産段階からの撤退
(c)クラスII物質の製造および消費に関する規制
(d) 例外

7671e. 加速スケジュール
(a) 一般的に
(b) 嘆願書

7671f. 為替当局
(a) 譲渡
(b) 汚染物質間移動
(c) 他者との取引
(d) 消費

7671g. 全国リサイクル・排出削減プログラム
(a) 一般的に
(b) 安全な廃棄
(c) 禁止事項

7671h. 自動車用エアコンの整備
(a) 規定
(b) 定義
(c) 自動車用エアコンのサービス
(d) 認証
(e) クラスIまたはクラスII物質の小型容器

7671i. フロン類を含む非必須製品
(a) 規制
(b) 非必需品
(c) 発効日
(d) その他の製品
(e) 医療機器

7671j. ラベリング
(a) 規定
(b) クラスIまたはクラスII物質を含む容器およびクラスI物質を含む製品
(c) クラス II 物質を含む製品
(d) クラスⅠおよびクラスⅡの物質を使用して製造された製品
(e) 嘆願書
(f) 他の法律との関係

7671k. 安全な代替政策
(a) 方針
(b) レビューと報告書
(c) クラスIまたはII物質の代替物質
(d) 請願権
(e) 調査および通知

7671l. 連邦調達

7671m. 他の法律との関係
(a) 州法
(b) モントリオール議定書
(c) 技術輸出と海外投資

7671n. 長官の権限

7671o. モントリオール議定書締約国間の移転
(a) 一般的に
(b) 生産制限に対する移籍の影響
(c) 規則
(d) 「適用国内法」の定義

7671p. 国際協力
(a) 一般的に
(b) 開発途上国への援助

7671q. その他の規定

基礎情報

法令(現地語)

Clean Air Act (CAA) -Stratospheric Ozone Protection

法令(日本語)

大気浄化法 -成層圏オゾン層保護

公布日

1955年7月14日 (本稿執筆時点の最終改正:2011年12月31日)

所管当局

環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)

作成者

株式会社先読

株式会社先読

調査相談はこちら

概要調査、詳細調査、比較調査、個別の和訳、定期報告調査、年間コンサルなど
様々な調査に柔軟に対応可能でございます。

(調査例)
  • ●●の詳細調査/定期報告調査
  • ●●の他国(複数)における規制状況調査
  • 細かな質問への適宜対応が可能な年間相談サービス
  • 世界複数ヵ国における●●の比較調査 など
無料相談フォーム

    会社名・団体名

    必須

    ※個人の方は「個人」とご入力ください。

    所属・部署

    任意

    お名前

    必須

    メールアドレス

    必須

    電話番号

    任意

    お問い合わせ内容

    任意

    無料メールマガジンの申込み|
    希望の情報分野を選択可能

    登録はこちらからメールアドレスを入力してお申込みください。

    「登録」クリック後、購読したいメールマガジンの種類を選択いただけます。

    ★配信頻度|各メルマガについて月に1~2回
    (不定期)

    メルマガ|全般(全分野)

    当社で扱う情報分野全般の注目規制動向の情報にご関心がある方はこちら。

    メルマガ|化学物質

    化学物質分野の注目規制動向の情報にご関心がある方はこちら。一般・工業用化学品や軍事用途の化学品、食品添加物や農薬、医薬品などが対象です。

    メルマガ|環境

    環境分野の注目規制動向の情報にご関心がある方はこちら。大気・水・土壌汚染のほか、地球温暖化やオゾン層破壊、騒音・振動・悪臭などに対する規制が対象です。

    メルマガ|先端技術

    先端技術分野の注目規制動向の情報にご関心がある方はこちら。当社で言う先端技術分野とは、人工知能(AI)、仮想・拡張現実(VR・AR)、自動運転、エコカー、デジタルトランスフォーメーション(DX)などをいいます。

    メルマガ|新領域

    新領域分野の注目規制動向の情報にご関心がある方はこちら。当社でいう新領域分野とは、宇宙、海底・深海底、大深度地下などをいいます。

    Page Top
    「目次」 「目次」