解説米国-有害物質規制法(TSCA)

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法令の情報時期:2023年09月 U.S.C.確認 ページ作成時期:2023年9月

目的

目的

この法律は、化学物質の製造、処理、商業流通、使用、または廃棄を規制し、人間の健康や環境へ影響をもたらさないことを目的としている。

概要

概要

この法律では、TSCAイベントリに登録されている化学物質もしくは新規化学物質を一定量以上製造、処理、商業流通、使用、または破棄する事業者は、所管当局である米国環境保護庁(U.S. Environmental Protection Agency、EPA)に報告することが義務付けられている。

ここでいう、「製造」とは、米国の関税地域への輸入、生産、または製造を意味し、多くの事業が含まれている(2602条(14))。

特に「アスベスト」、「屋内ラドン」「鉛」「ホルムアルデヒド」については、それぞれ項目を立ててその使用を制御している。

注目定義

■ 「潜在的に曝露された、または影響を受けやすい亜集団」(potentially exposed or susceptible subpopulation)

潜在的に曝露された、または影響を受けやすい亜集団とは、EPAによって特定された一般集団内の乳児、子供、妊婦などを含むひとつのグループを意味し、感受性が高いか、曝露が大きいために、化学物質または混合物への曝露が原因で健康への悪影響のリスクが他の一般集団よりも高い可能性がある人間の集団です。 労働者、または高齢者が含まれる場合もある (2602条(12)) 。

■ 「加工業者」(processor)

加工業者とは、化学物質または混合物を処理する者をいう(2602条(14))

■ 「製造者」(manufacturer)

製造者とは、化学物質および混合物を製造する者をいう (2601条(b))

■ 「製造、加工、または商業的流通に関与する者」(person engaged in the manufacture, processing, or distribution in commerce of any chemical substance or mixture)

化学物質や混合物の製造、加工、または商業における流通に従事する者を言う。「商業的流通(distribution in commerce)」という用語は、化学物質、混合物、または成形品を、商業において販売、さらに商業開始のための導入または提供、もしくは商業後に保持することを意味する(2602条(5))。
※「製造とは米国の関税地域への輸入、生産、または製造を意味する。」と定義されていることから(2603条(9))、化学物質の輸入を行う者もこの法律に従い、要件を遵守することが要求される。

適用除外(対象外・猶予・免除等)

文書登録、文書管理、文書作成

他の法律によって規制される農薬(殺虫剤など)、食品、食品添加物、医薬品、化粧品、放射性物質、軍需物資、タバコなどの物質(2602条(2)(B))。

事業者が注意すべき内容

本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
有害物質、危険物

EPAは、83,000以上の化学物質を含んだ公開された化学物質のリスト:有害物質管理法物質(Toxic Substances Control Act Substances、TSCA)インベントリ(Inventory)を維持している(2607条(b))。

人の安全

新規化学物質の製造または輸入開始前には、EPAに通知「製造前届出(Pre-Manufacturing Notice: PMN)」が必要である(2604条(a))。

届出が受理され、EPAに十分な情報が提供した後で、15日以内にEPAから連邦官報に当該情報の受領通知が公表される(2607条(a))。

受領通知後、EPAは届け出があった化学物質が、
①2607条(b)に定義された新規化学物質であるか、
②人間の健康や環境に有害であるか、
③判断のために追加試験が必要かどうかを90日以内に判断する。化学物質に対して試験が必要となる高もしくは低優先リストに入ると少量の製造が許され、EPAと申請者が共同で化学物質の情報をさらに得るための試験を行う(2603条(a)(2))。

有害である可能性があった場合には、12か月以内に専門委員会が開かれ、有害・無害の正式な判断が下される(2603条(e))。

無害であると判断された場合、新規化学物質はEPAが作成するTSCAイベントリに登録されるまで待機状態となる(2604条(a)または(b)(1))。

文書登録、文書管理、文書作成

化学物質の新規用途も新規化学物質と同様で、製造・輸入前にEPAへの届出(予測製造量、暴露量、廃棄量の情報)が必要である(2604条(a)(2))。

機械安全、設備安全

イベントリへの登録前で待機している化学物質の製造者または輸入者は、製造または輸入後30日以内に開始届出(Notice of Commencement of Manufacture or Import: NOC)を提出する必要がある(2613条(g)(2))。

新規化学物質の商業的な製造または輸入が開始されることが通知されると、イベントリに掲載される。

人の安全

ただし、EPAは、当該物質又は他の物質に関する科学的実験、分析、化学研究、分析(当該製品開発のための研究や分析を含む)のみを目的として、少量(EPAが決定)のみで製造、加工される化学物質を当該イベントリに記載しない(2607条(b))。

有害物質、危険物

NOC提出後、化学物質の情報は開示される。ただし、新規化学物質の場合、製造前通知やイベントリの登録時に、化学物質に関する機密部分の非開示を要求できる(2607条(b)(4)、2613条(c))。要求が通れば10年間開示から保護される(2613条(c))。

文書登録、文書管理、文書作成

EPAが、化学物質または混合物の製造、商業における流通、加工、使用、または廃棄が、健康または環境に害を及ぼす不当なリスクをもたらす可能性があると認めた場合、製造業者、輸入業者、および加工業者は、化学物質の試験を行う必要がある(2603条(a))。

人の安全

商業において化学物質を製造、輸入、加工、および/または流通する者は、それらの過程の記録を作成および保持すること、または規則の要件の遵守を保証するために必要な試験実施することが必要となる(2603条(a)(4))。

有害物質、危険物

化学物質もしくは混合物の製造業者または加工業者は、物質または混合物を所持している、またはそのような物質または混合物にさらされている人間などの情報を公に通知する必要がある。

商取引における販売業者も、合理的に確認できる範囲で、混合物を所持している、またはそのような物質または混合物にさらされていることを公にする必要がある(2605条(a)(4))。

目次

15 U.S.C. 第53章有害物質管理

I 有害物質の管理
2601条 調査結果、ポリシー、および目的
2602条 定義
2603条 化学物質および混合物の試験
2604条 製造および加工に関する通知
2605条 化学物質および混合物の優先順位付け、リスク評価、および規制
2606条 差し迫った危険
2607条 情報の報告と保持
2608条 他の連邦法との関係
2609条 情報の研究、開発、収集、普及、利用
2610条 検査と召喚状
2611条 輸出
2612条 米国の関税地域への入国
2613条 機密情報
2614条 禁止事条
2615条 罰則
2616条 特定の執行と差し押さえ
2617条 先取権(プリエンプション)
2618条 司法審査
2619条 市民の民事訴訟
2620条 市民の請願
2621条 国防の免除
2622条 従業員の保護
2623条 雇用効果
2624条 調査
2625条 行政
2626条 試験方法の開発と評価
2627条 州のプログラム
2628条 予算の承認
2629条 年次報告

IIアスベスト危害の緊急対応
2641条 議会の調査結果と目的
2642条 定義
2643条 EPA規制
2644条 EPAが規制を公布しなかった場合の要件
2645条 州知事への提出
2646条 請負業者および試験所の認定
2647条 実施
2648条 緊急権限
2649条 州法および連邦法
2650条 アスベスト請負業者と地元の教育機関
2651条 公共の保護
2652条 アスベストオンブズマン
2653条 公共建築物におけるアスベスト含有材料のEPA研究
2654条 移行ルール
2655条 労働者の保護
2656条 トレーニング助成金

III 屋内ラドンの除去
2661条 国家目標
2662条 定義
2663条 EPA市民ガイド
2664条 モデル構築の標準と手法
2665条 ラドン計画のための国家への技術援助
2666条 ラドン計画のための締約国への援助
2667条 学校のラドン
2668条 地域のラドントレーニングセンター
2669条 連邦政府の建物におけるラドンの研究
2670条 規則
2671条 追加の権限

IV 鉛曝露の削減
2681条 定義
2682条 鉛ベースの塗料活動のトレーニングと認定
2683条 鉛の危険なレベルの識別
2684条 認可された州のプログラム
2685条 鉛の除去と測定
2686条 鉛危険情報パンフレット
2687条 規則
2688条 連邦施設での鉛ベースの塗料の危険性の管理
2689条 禁止事条
2690条 他の連邦法との関係
2691条 行政手続に関する一般規定
2692条 予算の承認

V 健康的で健全な学校
2695条 健全な学校環境のための助成金
2695a条 学校施設の立地に関するモデルガイドライン
2695b条 一般への広報活動
2695c条 環境衛生プログラム
2695d条 予算の承認

VI 複合木材製品のホルムアルデヒド基準
2697条 ホルムアルデヒド標準物質

基礎情報

法令(現地語)

Toxic Substances Control Act (TSCA)

法令(日本語)

有害物質規制法

公布日

1976年10月11日

所管当局

環境保護庁(EPA)

作成者

株式会社先読

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