解説米国 – TSCA塩化メチレン規則

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法令の情報時期:2024年05月 公布版 ページ作成時期:2024年10月

目的

目的

本規則の目的は、特定の有害化学物質、特に塩化メチレンに関する製造、使用、商業流通、および廃棄に対して制限を設け、職場および消費者の健康リスクを最小限に抑えること。

概要

概要

本規則は、健康への不当な危害のリスクを防止するため、塩化メチレン(CASRN 75-09-2)の製造(輸入を含む)、加工、商業上の流通、使用、廃棄について一定の制限を設ける。

本規則には、塩化メチレンなどの有害化学物質の製造、加工、流通、使用、廃棄に関する具体的な定義や条件が規定され、ばく露防止および規制区域の設定などを含む、労働環境および消費者保護のための基準が設けられている。

注目定義

■ 「認定をうけた者」(Authorized person)

「認定をうけた者」とは、所有者または運営者により、規制区域に立ち入ることを特に許可され、その職務上立ち入る必要がある者をいう。(§751.5)

■ 「所有者、運営者」(Owner、Operator)

「所有者」「運営者」とは、本規定が適用される職場を所有、賃貸、運営、管理、または監督する者をいう。(§751.5)

■ 「小売業者」(Retailer)

「小売業者」とは、電子商取引によるインターネット販売または流通を含め、化学物質または混合物の商業上の流通を行う者、または消費者のエンドユーザーに提供する者をいう。少なくとも一人の消費者のエンドユーザーを顧客とする流通業者は、小売業者とみなされる。商業的または工業的エンドユーザーのみに、あるいは商業的または工業的な事業者のみに、化学物質または混合物の商業上の流通を行う者、あるいは入手可能にする者は、小売業者とはみなされない。(§751.5)

■ 「成形品」(Article)

「成形品」とは、次のように製造された品目をいう:
(1) 製造中に特定の形状またはデザインに成形されるもの;
(2) 最終用途の機能が、最終用途の間に、その形状またはデザインに全体的または部分的に依存するもの;および、
(3) 最終用途の間に化学組成の変化がない、または成形されるものとは別の商業的目的を持たない、そして、他の化学物質、混合物または成形されるものの最終使用時に起こる化学反応から生じる組成の変化のみを持つ。
(§751.5)

■ 「製品」(Product)

「製品」とは、化学物質、化学物質を含有する混合物、または化学物質もしくは化学物質を含有する混合物を含む何らかの物であって成形品でないものをいう。(§751.5)

■ 「ばく露の可能性のある者」(Potentially exposed person)

「ばく露の可能性のある者」とは、化学物質または混合物の使用条件の結果として、職場において化学物質または混合物にばく露するかもしれないすべての者をいう。(§751.5)

■ 「規制区域」(Regulated area)

「規制区域」とは、特定の化学物質の空気中濃度が、適用される既存化学物質ばく露限界値(Existing Chemical Exposure Limit、ECEL)またはEPA短期ばく露限界値(EPA Short Term Exposure Limit、EPA STEL)を超える、あるいは超える可能性がある区域を区切るために、規制される事業体によって設定された区域をいう。(§751.5)

■ (ECEL)

「ECEL」とは、Existing Chemical Exposure Limitのことで、8時間の時間加重平均 (time-weighted average、TWA)として計算される空気中濃度をいう。(§751.103)

■ 「ECELアクションレベル」(ECEL action level)

「ECELアクションレベル」とは、8時間の時間加重平均 (time-weighted average、TWA)として計算される、100万分の1 (1 ppm)の空気中塩化メチレンの濃度をいう。(§751.103)

■ (EPA STEL)

「EPA STEL」とは、Short Term Exposure Limit (短期ばく露限界値)のことで、8時間未満のばく露に基づく、化学物質の空気中濃度への職場ばく露に関するEPAの規制値をいう。(§751.103)

適用除外(対象外・猶予・免除等)

人の安全

別段の定めがない限り、本規則の禁止および制限は、重量において0.1%未満の閾値で塩化メチレンを含有する製品には適用されない。この規程は§751.105には適用されない。

事業者が注意すべき内容

本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
有害物質、危険物

2025年2月3日以降、塩化メチレン含有製品の小売業者への商業的流通が禁止され、5月5日以降はすべての小売業者にも同様の禁止が適用される。

さらに、同年5月5日から、特定の用途を除いた塩化メチレンの製造が禁止され、2025年8月1日以降には加工も禁止される。

2026年1月28日以降は、特定用途を除く商業的流通が禁止され、4月28日以降には工業的または商業的使用が禁止される。

2034年5月8日以降、緊急時の航空宇宙局による塩化メチレン含有製品の使用も禁止され、2029年5月8日以降には歴史的な木製家具の再仕上げや航空機関連の工業的使用も禁止される。

本条は、§751.105に基づく塗料およびコーティング除去用途を除く、消費者用途の塩化メチレンの製造、加工、商業上の流通に適用される。

具体的には、工業的または商業的使用に関する塩化メチレンの製造、加工、商業上の流通が含まれ、TSCA12条(a)(1)(A)および(B)に基づく輸出専用の製品には適用されない。(§757.107)

人の安全

所有者または運営者は、連邦政府関連の機関や請負業者に対しては2027年2月8日以降、その他の所有者に対しては2025年8月1日以降、または塩化メチレンの使用が2025年5月5日以降に開始される場合は導入後4ヶ月以降に、職場での塩化メチレンの空気中濃度を8時間TWAで2ppm以下に維持しなければならない。

また、15分間のサンプリングで測定した濃度が16ppmを超えないようにする必要がある。

さらに、規制区域を設定・維持する義務があり、連邦政府関連機関については2027年2月8日までに、その他については2025年8月1日までに、またはモニタリングデータの受領後3ヶ月以内に規制区域を設定する必要がある。

この区域では、ばく露の可能性がある者に対して適切な警告を行い、アクセスを制限することが求められる。(§751.109(c))

ばく露

所有者または運営者は、呼吸器保護具の有無に関わらず、各ばく露の可能性のある者のばく露量を決定するために、個人呼吸区域の空気サンプルを採取する必要がある。

また、特定の条件を満たす場合には、サンプルを代表とみなすことができる。

モニタリング方法は95%の信頼水準で正確な結果を保証する必要があり、ECELやEPA STELを超える場合は±25%、それ以外は±35%の誤差範囲内であることが求められる。

初回モニタリングは、特定の期限内に実施しなければならず、過去5年間のデータに基づく例外もある。定期モニタリングプログラムを確立することが義務付けられ、ばく露源の変更があった場合には追加モニタリングを実施しなければならない。

モニタリング結果は15営業日以内に、内容を明示した文書でばく露の可能性がある者に通知し、理解しやすい言語で提供する必要がある。

さらに、所有者または運営者は、ばく露の可能性がある者がモニタリングを観察できる機会を提供し、必要な保護具を用意しなければならない。(§751.109(d))

文書登録、文書管理、文書作成

所有者または運営者は、ECELおよびEPA STEL以下までのばく露を確実に低減するために、除去、代替、工学的管理、作業慣行、または管理統制のいずれかを実施しなければならない。

特に、連邦政府関連の機関や請負業者は2027年5月10日までに、その他の所有者は2025年10月30日までに、管理策が実施不可能であることを証明できる場合を除いて、これを行う必要がある。

また、実施可能な管理策を設けてもばく露が低減できない場合は、最低限のレベルまで低減し、必要に応じて呼吸器保護具を使用して補完することが求められる。特に、国防総省関連の請負業者の場合、必要な工事が進行中の場合は、期限が2029年5月7日まで延長される。

所有者または運営者は、ばく露管理計画を策定し、実施することも求められ、計画には選択された管理策の理由、実施方法、区域の管理、計画の見直し手順などが含まれる必要がある。この計画は、少なくとも5年ごとに見直し・更新され、関連記録はばく露の可能性のある者が利用できるようにしなければならない。 

さらに、塩化メチレンのばく露がECELやEPA STELを超える場合、所有者または運営者は、規制区域に立ち入る者に対して適切なレスピレーターを提供し、その使用を義務付ける必要がある。(§751.109(e))

人の安全

呼吸器保護に関する規定では、所有者または運営者は、連邦政府関連の機関や請負業者に対して2027年2月8日以降、その他の所有者には2025年8月1日以降に、規制区域内のすべてのばく露の可能性のある者に呼吸器保護具を提供しなければならない。

呼吸器の種類は、ばく露濃度に応じて異なり、ECELまたはEPA STEL以下の場合は不要、2ppm超50ppm以下の場合はNIOSH承認の給気式レスピレーターや空気式レスピレーターが必要であり、50ppm超100ppm以下の場合はフルフェイスピース付きのデマンドモードのレスピレーターが求められる。

さらに、測定された濃度が不明または100ppm超2,000ppm以下の場合は、APF1,000以上の保護レベルを持つ呼吸器具が必要となる。本条の要件は最低限の呼吸器保護を示しており、より高い保護度の呼吸器を使用することも可能である。(§751.109(f))

文書登録、文書管理、文書作成

連邦政府の機関や請負業者は2027年2月8日以降、その他の所有者や運営者は2025年8月1日以降に、塩化メチレンとの皮膚接触の可能性がある場合、NIOSHの管理階層に従って活動別の訓練とともに化学的耐性を有する手袋の着用を義務付けなければならない。

また、所有者または運営者は、29 CFR 1910.1052(h)および(i)に基づき、ばく露の可能性のある者を経皮ばく露から最小化し保護する必要がある。(§751.109(g))

ばく露

所有者または運営者は、塩化メチレンにばく露の可能性のある業務に就く前、または最初に就く際に、29 CFR 1910.1052(l)(1)~(6)に従った訓練を実施しなければならない。

また、規制区域内で呼吸器保護具や個人用保護具(PPE)を着用する必要がある場合、所有者または運営者は、同じく29 CFR 1910.132(f)に基づいて訓練を実施することが求められる。(§751.109(h))

有害物質、危険物

2019年8月26日以降から2024年10月7日以前に塩化メチレンを製造または輸入し、2024年12月4日以前に商業的に加工または流通させる者は、出荷先企業に対して制限を文書で通知する必要がある。

の通知は、SDSのセクション1(c)および15に特定の文言を挿入することで行われる。

また、2024年10月7日以降は、塩化メチレンを製造する際も同様の通知が必要であり、2024年12月4日以降には、塩化メチレン含有製品の商業的加工や流通に関しても通知が求められる。

2025年2月3日以降、小売業者への商業流通は禁止され、2026年1月28日以降は、特定の目的(反応剤としての加工、製剤への組み込み、リサイクル、実験用化学品としての使用など)でのみ商業流通が許可される。

さらに、芸術的価値のある木製家具の再仕上げや航空機の部品に関連する特定の用途でも、2029年5月8日までの期限が設けられている。(§751.111)

ばく露

2019年8月26日以降に塩化メチレンを製造、加工、または商業流通する者は、2024年7月8日以降に出荷先企業の情報や出荷量、通知の写しを含む文書を本社または記録作成施設に保管する必要がある。

また、所有者または運営者はばく露管理計画やその実施状況、個人用保護具の使用記録、ばく露モニタリング記録などを保持し、ばく露の可能性のある者がアクセスできることを通知しなければならない。

初回ばく露モニタリングを見送る場合、過去5年間の客観的データが必要であり、モニタリング結果や関連情報も文書化される必要がある。

さらに、木製家具や装飾品の再仕上げに関する業務では、再仕上げの詳細を記録することが求められ、記録は最低でも5年間保存されるべきである。(§751.113)

文書登録、文書管理、文書作成

米国航空宇宙局およびその請負業者は、2034年5月8日まで塩化メチレンやその含有製品を緊急使用する場合、特定の条件下での免除を受ける。

免除対象の使用条件には、低温洗浄、エアゾールスプレー、接着剤やコーキング剤の使用が含まれ、緊急事態は深刻かつ突発的な状況と定義されている。

緊急使用が15日を超える場合、理由を文書化する必要があり、免除を受けるためには安全な代替物質がないことを示し、緊急使用の通知を行い、ばく露管理に関する遵守努力を文書化する義務がある。

また、使用が行われる場所の所有者や運営者は記録保持要件に従わなければならない。(§751.115)

目次

40 CFR Part 751の対象リスト

Part 751-有害物質規制法第6条に基づく特定の化学物質および混合物の規制
§751.5 定義
§751.101 一般
§751.103 定義
§751.107 製造 (輸入を含む)、加工、商業上の流通、使用のその他の禁止
§751.109 職場の化学品保護プログラム
§751.111 川下への通知
§751.113 記録保持の要件
§751.115 免除
§751.117 芸術的、文化的、歴史的価値のある木製家具、装飾品、建築備品を再仕上げする際の塗装および塗膜除去に関する暫定的要件

基礎情報

法令(現地語)

Methylene Chloride; Regulation Under the Toxic Substances Control Act (TSCA)

法令(日本語)

TSCA塩化メチレン規則

公布日

2024年05月08日

所管当局

環境保護庁(EPA)

作成者

株式会社先読

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