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医療機器規則の実施法令
2022年12月02日、欧州官報にて、医療目的になり特定の製品群に関する規則を改正する2つの規則が公布されました。いずれもEUの医療機器規則の適用に関する詳細を定めるものです。
■ 医療機器に関する欧州議会及び理事会規則(EU)2017/745の附属書XVIに記載された医療目的のない製品群のための共通仕様を定めた2022年12月1日付の欧州委員会実施規則(EU)2022/2346
■ 医療目的のない特定の活性製品のグループの再分類に関する欧州議会及び理事会規則(EU)2017/745の適用に関する規則を定めた2022年12月1日付の欧州委員会実施規則(EU)2022/2347
医療機器規則の第1条では、「医療目的のない製品群」への適用について、次のように規定しています。
2.本規則は、第9条に従って採択された共通仕様の適用日から、技術の現状、特に類似の技術に基づく医療目的の類似機器に関する既存の整合規格を考慮して、附属書XVIに記載された医療目的のない製品群にも適用されるものとする。附属書XVIに記載された各製品群の共通仕様書は、少なくとも、当該製品群について附属書Iに定めるリスクマネジメントの適用及び必要に応じて安全性に関する臨床評価を取り上げなければならない。
(EU)2017/745 第1条より一部仮訳
実施規則(EU)2022/2346
この実施規則は、意図的な医療目的のない製品群に対する共通仕様を定めるものです。
■ 附属書 I :これらすべての医療目的でない製品群に対する共通仕様を規定
■ 附属書 II:その附属書の第1節に規定されたコンタクトレンズに関する共通の仕様を定める
■ 附属書 III:解剖学的構造を変更する目的で外科的侵襲手段により全体的又は部分的に人体に導入されることを意図した製品に関する共通の仕様を定める(入れ墨製品及びピアスを例外)
■ 附属書 IV:皮下、粘膜下又は皮内注射又は他の導入により顔面又は他の皮膚又は粘膜の充填に使用することを意図した物質、物質の組み合わせ又は品目に関する共通仕様を定める
■ 附属書 V:脂肪吸引、脂肪分解又は脂肪形成のための機器など、脂肪組織を減少、除去又は破壊するために使用することを意図した機器の共通仕様を定める
■ 附属書 VI:人体への使用を目的とした高強度の電磁波(例えば、赤外線、可視光線、紫外線)放出装置の共通仕様を定める(コヒーレント及びノンコヒーレント光源、単色及び広スペクトルのレーザー及び強力パルス光装置など、皮膚の表面処理、刺青又は脱毛、その他の皮膚治療用)
■ 附属書 VII:附属書第 1 節に規定された、脳内の神経活動を修正するために頭蓋を貫通する電流または磁場もしくは電磁場を適用する脳刺激用の機器の共通仕様を定める
※この共通仕様は、医療機器規則の附属書 I の第2節から第5節、第8節及び第9節に規定する要件を対象とするもの
などの規定が設けられています。この実施規則は一部を除き2023年06月22日から適用されます。
実施規則(EU)2022/2347
この実施規則は、医療目的のない活性製品の分類の見直しについて規定しています。
■ 医療機器規則附属書XVIの第5節で言及される高強度電磁波放出機器で、皮膚治療のために人体に使用することを意図したものは、クラスIIbに再分類されるが、脱毛のみを意図した場合はクラスIIaに再分類
■ 医療機器規則附属書XVIの第4節で言及される脂肪組織を減少、除去又は破壊するために使用することを意図する機器は、クラスIIbに再分類
■ 医療機器規則附属書XVIの第6節で言及される脳内の神経細胞活動を修正するために頭蓋を貫通する電流又は磁場若しくは電磁場を適用する脳刺激用の装置は、クラスIIIに再分類
医療機器規則
欧州の医療機器に係る基本法令の一つである医療機器規則(EU)2017/745は、ヒト用の医療機器およびその付属品をEU市場に配置し、利用可能にし、使用開始することに関する規定を更新するもので、EU域内における医療機器およびその付属品に関する臨床試験の実施方法に関する規定も含まれています。規則は、適合性評価および市販後調査について、より厳格な手続きを導入することにより、患者の安全性を向上させることを目的としています。
■ 医療機器は、その目的と内在するリスクに応じて分類(附属書VIIIに規定されたクラスI、IIa、IIb、III)
■ 中リスクおよび高リスクの医療機器を市場に出す前に適合性を評価する独立した届出期間(NB)の指定、組織化、監視の方法に関する規則を強化
■ 機関は、EU全域で同一の品質基準を満たす必要があり、適合性評価業務を成功させるために必要な能力、リソース、スタッフを有していなければならない。
■ 機関は、製造業者に対する立入検査(一部は抜き打ち)を実施しなければならない。
■ 特定の高リスク機器(インプラントなど)の評価には、EUレベルの独立専門家委員会(エキスパートパネル)が関与する場合もある。
■ 医療機器の臨床試験のデータ収集において要求されることを規定しており、これらの要件は、医薬品の臨床試験に適用される要件とほぼ一致している。これには、インフォームド・コンセントや被験者弱者(18歳未満、妊婦、身体障害者等)の保護に関する規則が含まれる。複数の加盟国で実施される臨床試験は、1つの調整された評価の対象となる。
■ 製造者は、機器の品質、性能、安全性を監視する義務をより明確に、より厳格に負う。
■ 製造者は、製造物責任指令85/374/EECに基づく潜在的責任に関して十分な財政的補償を確保しなければならず、関連措置はリスククラス、機器の種類、企業規模に比例したものでなければならない。
■ 製造者は、リスククラスと機器の種類に見合った品質管理および市販後調査システムを確立しなければならない。
■ 機器の欠陥による損害が発生した場合、製造者の認定代理人は連帯して責任を負う。
■ 発がん性、変異原性、生殖毒性、内分泌系に影響を及ぼす有害物質が侵襲性医療機器に一定の閾値を超えて含まれる場合、製造業者は通知機関に対しその存在を正当化しなければならない。
■ 認定代理店、輸入者、流通業者、システムやプロシージャーパックを扱う業者など、関連する経済事業者にも具体的な義務が定められている。
■ 一意の機器識別子を用いてサプライチェーン全体を通じて機器のトレーサビリティを確保するために、機器と製造業者、輸入業者、公認代理店を登録するシステムを導入している。
なお、欧州委員会は、どの医療機器について、関連法令と紐づけたデータベース(EUDAMED)を提供しています。
参考
■ 実施規則(EU)2022/2346
■ 実施規則(EU)2022/2347
■ 医療機器規則(EU)2017/745
■ 医療機器データベース(EUDAMED)