恒久的なアンカーデバイスおよび安全フックの性能について
2025年07月22日、建築製品規則(EU)305/2011を補足し、恒久的なアンカーデバイスおよび安全フックに関する性能の閾値レベルと性能区分を定める委任規則(EU)2025/695がEU官報にて公布されました。この結果、製造者は特定の機械的耐力試験結果を必ず性能宣言書に記載し、市場投入時に明確な安全・性能基準を示すことが義務づけられます。また、規格EN 17235:2024の適用性を高め、安全性確保を目的とした統一基準が設定されました。
背景
■ EUでは建設現場や高所作業に使用されるアンカーデバイスや安全フックの品質・安全性確保が重要な課題となっています。既に調和規格EN 17235:2024が存在し、機械的耐力の評価方法や分類体系が定められています。しかし、性能宣言書における記載義務や、具体的な閾値・性能区分の設定はEU法上において明確に規定されていませんでした。
■ 特に、高所作業における落下防止や荷重対応能力は作業者の命に直結するため、性能基準をEU全域で統一する必要があると考えられていました。さらに建築製品規則(EU)305/2011第27条に基づき、こうした基準は欧州委員会または各団体が設定することが可能です。しかし、性能区分や閾値の明確化および加盟国全域での安全基準の一貫性確保等の実施を通して、安全性に対する早急な対応が求められていました。
概要
■ 本委任規則(EU)2025/695は、建築製品規則(EU)305/2011を補足し、EN 17235:2024の対象である恒久的なアンカーデバイスおよび安全フックに関し、EU法として拘束力のある性能基準を定めるものです。
■ まず、製造者は市場投入時に必ず以下の本質的特性を性能宣言書に記載しなければなりません。
- 機械的耐力-動的試験
- 機械的耐力-破断荷重試験
■ また、安全フックを含む製品では機械的耐力-フック基部試験の結果も記載が必要です。
■ 閾値としては、動的試験は設計荷重値9.0kN以上、フック基部試験は5mm以下が求められます。それに加えて、動的試験については製品タイプごとに性能区分が設定され、例えば単一アンカーデバイス(キットA)や安全フック(キットB)は9kN(区分1)と10.5kN(区分2)、水平ワイヤや水平レールを用いたシステム(キットC、D)では9kNから13.5kNまで4段階の区分が規定されています。
■ これらの基準は安全性の確保と比較可能性の向上を目的としたものであり、全ての加盟国において拘束力を持ち、直接適用されます。
目次
第1条:対象
第2条:本質的特性の宣言義務
第3条:閾値レベル
第4条:性能区分
第5条:施行日
付属書 EN 17235:2024 に基づく恒久的アンカーデバイスおよび安全フックの閾値レベルと性能区分