FTC、子供向けの娯楽・教育・その他のコンテンツにおいて、広告を分かり易くする方法を議論
2023年09月14日、米連邦取引委員会(FTC)は、新しいスタッフ・ペーパーで、企業やソーシャルメディアのインフルエンサーなどはオンライン上で子供向けの商品を販売・宣伝する際に、子供への悪影響を抑えるために広告と娯楽・教育・その他のコンテンツを明確に分けることで、広告の立場が曖昧になることを避けるべきだと勧告しました。FTCでは、以上のようないわゆる「ぼかし広告」によって、コンテンツ内容と広告を区別する技術や知識を持っていない子供が悪影響を受けていると考え、企業などのマーケティング担当者にそのような広告の排除を推奨しています。この勧告により、子供向け商品を販売するためにオンライン上で広告を行っている企業に影響があります。
背景
2022年10月、FTCは、ワークショップ「デジタルメディアにおけるステルス広告から子供を守る」を開催しました。その中で参加者や一般からのコメントより、以下のことが主に討論されました。
- 多くの若い消費者は、曖昧もしくは欺瞞的な広告を識別し、その内容を評価するなどの技術や防御姿勢を持ち合わせておらず、広告によって身体的・心理的・金銭的に悪影響を受け、またプライバシーを守れない可能性があるという調査結果について議論されました。ワークショップの参加者は、子供たちがゲームプラットフォーム、ビデオチャンネル、ソーシャルメディアでかなりの時間を過ごしており、そこでコンテンツ(インフルエンサーの動画やモバイルゲームのプレイ動画)の周囲に溶け込んだ広告に多くさらされていると指摘しました。
- このような広告形態は、結果的にマーケティング担当者が広告を曖昧もしくは欺瞞的にすることを可能にしている、と指摘されました。特に、子供たちは、ソーシャルメディアのインフルエンサーやゲーム内で親しくなったアバターなど、信頼できる情報源からのメッセージであれば、信頼する可能性が高いことも指摘されました。
- このような広告形態で、例えば、タバコや不健康な食品など有害な製品やサービスの宣伝を行うこと、感情に刺激的な宣伝を行うこと、子供が興味を持つ不鮮明な広告を行い親の同意なしに金銭のやり取りを行うこと、は子供に被害を与えると指摘されました。
- 曖昧な広告によって子供が被害を受けたり騙されたりしないようにするために、十分で単一の方法は存在しないことが明らかにりました。さらに、親に子供のオンライン上でのやり取りを常に監視する責任を負わせるのは不合理であると結論づけました。
このワークショップで、FTCの消費者保護局の局長は、「私たちのワークショップを通じて浮き彫りになったことは、曖昧もしくは欺瞞的な広告の被害から子供たちを守る最善の方法は、そのような広告を無くすことである」との見解を出しました。
注目すべき内容
2023年09月14日、FTCは、背景で示されたようなリスクが内在しているにもかかわらず、企業がオンライン上でデジタル広告を行う場合、子供への被害を軽減するために以下の対策を推奨しています。
- 広告を曖昧にしないこと。子供向けの娯楽・教育コンテンツと広告の間には明確な区切りを設け、形式的に視覚的・言語的な仕切りを用いて、子供が「広告である」と認識させる必要がある。
- 目立つ形で、適切な情報開示を行う。このような情報開示は、製品の宣伝が開始される際、口頭および文書で提示され、メッセージの商業的性質と意図を説明すべきである。
- 企業などのマーケティング担当者、商品の宣伝のためにコンテンツ制作者に金銭や無料のものが提供されたことを、安易にわかりやすい形のアイコン等を作成して、使用すべきである。
- 子供と親や教師などの保護者に、広告を判別する技術や知識を教育する。デジタル広告がどのように機能するかについて子供、親、教育者を教育し、どこに表示されても子供たちがそれを認識し評価できるようにする方法を模索すべきである。
- コンテンツのプラットフォームにおいて、コンテンツ制作者は、保護者がそのようなコンテンツを子供が見ることを制限またはブロックできるペアレンタルコントロールを提供することを検討すべきである。
FTCは、また、これらの対策が複数とられておらず十分ではない場合、曖昧な広告をおこなっている企業は、子供を欺くもしくは不公正であると判断をされ、FTC法の下で責任を問われる可能性があるということも指摘しました。
参考情報
FTC、オンラインで子供を対象とした商品を販売・宣伝する企業やソーシャルメディアのインフルエンサーなどを対象に勧告を発表
ステルスマーケティング(広告)とは
ステルスマーケティング(広告)は、消費者に広告だと明示せず商品やサービスを宣伝する行為を指します。いわゆる「ステマ広告」として知られています。やらせやサクラなどもこれに分類され、事業者自らが第三者のフリをする「なりすまし型」や、宣伝の対価として利益が支払われているにもかかわらずそれを秘匿している「利益提供秘匿型」の2種があります。米国では、「広告における推奨、及び証言の利用に関する指導(Guides Concerning the Use of Endorsements and Testimonials in Advertising)」というガイドが2009年に改訂され、FTCが商品またはサービスの推奨者と、マーケッターや広告主との間の重大な関係の有無、及び金銭授受の有無などの情報開示を行うよう指導しています。また、同ガイドは規制ではありませんが、広告主が 同ガイドに 従わない場合、FTCがFTC法の下で不公正または欺瞞的であるかどうかを 調査する可能性があり 、その場合、FTCは訴訟を起こすことを決定することもあると発表されています。このガイドは2023年6月にも 改訂されており、FTCが常に最新の方法でステルスマーケティングに対応できるようになっています。日本では、2023年3月28日にステルスマーケティングを景品表示法が禁じる不当表示の類型に新たに指定し、10月1日から法規制が施行されています。ただし、日本では規制されるのは広告事業者で、インフルエンサーなどは対象となっていません。
注目情報一覧
新着商品情報一覧
-
2025.12.24
中国|国家認証監督委員会秘書処「2025版の解釈』の印刷発表に関する通知
-
2025.12.24
タイ|第2種・第3種水利用に係る省令の改正草案2件に対する意見募集
調査相談はこちら
概要調査、詳細調査、比較調査、個別の和訳、定期報告調査、年間コンサルなど
様々な調査に柔軟に対応可能でございます。
- ●●の詳細調査/定期報告調査
- ●●の他国(複数)における規制状況調査
- 細かな質問への適宜対応が可能な年間相談サービス
- 世界複数ヵ国における●●の比較調査 など