EU|EUと米国、公益のためのAIとコンピューティングの研究・開発に関する協定に調印

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グローバルな課題へのデジタル技術の活用と国際協力

2023年1月27日、欧州委員会の通信ネットワークコンテンツ技術総局と米国国務省は、気候変動、自然災害、医療、エネルギー、農業、等の分野における公益のためのグローバルな課題に取り組むため、AI(人工知能)とコンピューティングに関する行政上の取り決め(協定)に調印しました。

本協定は、「インターネットの未来のための宣言」で示された原則と、最新のデジタル技術を活用してグローバルな課題に対処するという共通の利益と価値観を基盤としており、この分野で活動する米国とEUの関連機関、団体によって履行される予定です。

背景

共通の価値観と関心に基づき、AIの社会的応用に関する研究における協力関係の強化は、気候変動、自然災害、健康・医療、電力網の最適化から農業に至るまで、幅広い社会的利益をもたらす可能性のある有望な研究成果の特定や、さらなる発展を支援するものになります。

洪水や火災などの異常気象や自然災害は、世界中でより頻繁に発生し、かつ激甚化しており、AIは予測やシミュレーションにおいて益々重要な役割を果たすようになり、災害への備えや緊急対応に役立つと考えられています。

また、AIの研究とコンピューティングは、土壌や大気の状態、鳥や虫の生態、作物の植え付け、灌漑、農薬や肥料の使用、収穫のサイクルなどの自然条件の分析とモデル化により、作物の収穫量、生産効率、持続性を大幅に改善する可能性を持っています。

AIは既に医療研究、診断、治療分野で大いに寄与しており、最近のパンデミックは真にグローバルなアプローチの必要性を強めましたが、一方で国ごとの格差も浮き彫りになったとしています。

本協定の重要性は、このギャップを解消するために共通の価値観を持ちながら、このような緊急事態や課題の管理に必要な能力を必要とする国に対しても、科学的知見や資源を共有することを目指すとしています。

「デジタル権及び原則に関する宣言」の概要

2022年1月26日に提案された「EUにおけるデジタル変革の指針となる権利と原則」の宣言案は、EUがどのようなデジタルトランスフォーメーションを推進、擁護するかについて、すべての人に明確な基準点を提供することを目的としています。

また、政策立案者や企業が新しい技術に取り組む際の指針ともなります。

EUの法的枠組みに明記されている権利と自由、及び原則によって表現されたEUの価値は、オンラインでもオフラインと同様に尊重されるべきであり、EUが世界中で推進するデジタル変革へのアプローチを定義するものとしています。

本宣言案は、人々とその権利を中心に据え、連帯と包摂的社会を支援し、オンラインでの選択の自由を確保し、デジタル公共空間への参加及びその持続可能性を促進するなど、デジタル変革のための鍵となる権利と原則を網羅しています。

これらの権利と原則は、EUの人々の日常生活に寄り添うべきとしています。

すなわち、どこでも誰でも利用できる安価で高速なデジタル接続、設備の整った教室とデジタルに強い教師、公共サービスへのスムーズなアクセス、子供達にとって安全なデジタル環境、勤務時間外の接続解除、デジタル製品の環境への影響に関する分かりやすい情報の入手、個人データの使用方法と共有先の制御などが対象となるとしています。

「インターネットの未来に関する宣言」の概要

2022年4月28日、EU、米国及び幾つかの国際的パートナーが、信頼できるインターネットのビジョンと原則を定めた「インターネットの未来に関する宣言」を提案しました。

パートナーとしては、オープン、フリー、グローバル、相互運用性、信頼性、安全性を備えたインターネットの未来を支持し、オンライン及びデジタル世界全体で人権を保護、尊重することを確約し、現在までに、すべてのEU加盟国を含む60の国、地域がこの宣言を支持しています。

同宣言は、EUに強く定着している権利と原則に沿ったものであり、欧州委員会が欧州議会及びEU理事会とともに共同署名を提案した「デジタル権及び原則に関する宣言」を基礎とするものです。

EUは、米国及び国際的なパートナーグループと協力して、世界のインターネットの未来に向けた前向きな課題と共有ビジョンを策定しました。

「インターネットの未来のための宣言」は、「欧州デジタル化の10年」の一環として、基本権憲章やEUデジタル権原則に明記されているEUの価値観、及びEUが主導する幅広いデジタル政策のイニシアティブと完全に一致するものです。

本宣言は、デジタルコンパスコミュニケーションで発表された、志を同じくするパートナーとのより幅広い連携、すなわち、デジタル変革に関するEUのビジョンを共有するすべての人々に開かれた、共に発展する新たな関係性を構築するためのものになります。

本宣言は政治的な性格を持つものであり、その原則に従うことはEUとその加盟国に対して法的拘束力を持つものではなく、他の場面において批准国の立場を先取りしたり、予断したりするものではないとしています。

インターネットは、デジタル技術が信頼できる方法で使用され、個人間の不当な差別を避け、オンラインプラットフォームの競争力を高め、企業間の公正な競争を可能にする単一の分散型ネットワークとして運営されるべきであるという信念を共有しています。

本宣言を発表するにあたり、パートナーはまた、一部の権威主義的な政府によるインターネットの自由の抑圧、人権侵害のためのデジタルツールの使用、サイバー攻撃の影響の拡大、違法コンテンツや偽情報の拡散、経済力の過度の集中に関する強い懸念を表明しました。

EU及びパートナーは、これらの進展とリスクに対処するために協力することを約束し、デジタル技術が接続性、民主主義、平和、法の支配、持続可能な開発を促進する可能性を持っているというビジョンを共有するとしています。

現在のウクライナ情勢は、特に全体または部分的な停止という形で、インターネットが深刻に混乱するリスクを劇的に示しています。

また、ロシア政府がグローバルなインターネットから一部または全部を切り離すと脅かすことや、インターネットが断片化するリスク、現在サイバー攻撃、オンライン検閲、偽情報が急増しているように悪用されるリスクもあります。

このことは、世界中の経済と社会の原動力であるグローバルで開かれたインターネットを守るために、行動を強化することの重要性を改めて示しています。

パートナーとしては、人類を繋ぐという約束を実現し続けるために協力し、それぞれの規制の自主性を尊重しつつ、宣言の原則を具体的な政策と行動に移していくとしています。

また、宣言を支持し、その実施を促進するために、市民社会及び産業界を含む他のステークホルダーを招聘し、多国間システムの中で、これらの原則を世界的に推進していくとしています。

次のステップ

この宣言は包括的なイニシアティブであり、EU及びパートナーは他の政府にも働きかけ、宣言に参加してもらうよう働きかけを続けるとしています。

すべてのパートナーは、民間企業、国際機関、技術コミュニティ、学界、市民社会、その他世界中の関係者に働きかけ、オープン、フリー、グローバル、相互運用可能、信頼できる、安全なインターネットというビジョンを達成するためにパートナーシップを組んでいくことが期待されています。

本宣言とその指導原則には法的拘束力はありませんが、公共政策の立案者だけでなく、市民、企業、市民社会組織の参考資料として利用されるべきものとしています。

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