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ELV規則案-ELV指令と3R指令に置き換わる位置づけ

2023年07月14日、欧州委員会は採択した廃車規則案(ELV規則案)を意見募集ページへ掲載し、10月05日までの意見募集を開始しました。

従来、廃車指令(ELV指令:2000/53/EC)として知られ、運用されていた法令の見直しの結果として登場してきた規則案ですが、あわせてRRR指令や3R指令として知られる、自動車の再使用性、リサイクル性及びリカバリー性に関する型式認証に関する指令(2005/64/EC)の見なしも検討され、結果として、ELV指令と3R指令を廃止し、それに置き換わる位置づけのものとしてELV規則案が登場しています。

概要・背景

■ 欧州委員会が公表していた循環経済行動計画にはELV指令の見直しについての内容が含まれていた。特に「特定の材料にリサイクル材料含有を義務付ける規則を検討」という内容にも言及されていたため、大きな注目を集めていた。

■ 規則案の目的には、車両の設計から廃車の最終処理に至るまで、自動車の全段階において、自動車セクターの循環型経済への移行を促進することが挙げられている。

■ ELV指令は、耐用年数を迎え廃棄物とみなされる自動車が環境的に健全な方法で処理されることを保証するために設計されたEU初の調和された枠組みで、ELVの回収と汚染除去に関する規定を定め、新車に含まれる有害物質を制限し、再使用・リサイクル(85%)および再使用・リカバリー(95%)に関する目標を、車両ごとおよび年ごとのELVの平均重量に基づいて設定していた。

■ 2018年の廃棄物枠組み指令改正に際して、ELV指令の見直しについては、2020年末までに報告書を準備し、必要に応じて立法案を添付することに言及されていたが、およそ2年半遅れての登場となる。

■ 2005年に採択された3R指令は、ELV指令の規定と、自動車の型式承認プロセスにおける再使用性、リサイクル性、リカバリー性に関する設計規定との間に、非常に密接な関連性を確立し、特に、自動車の85%が再使用・リサイクル可能で、95%が再使用・リカバリー可能であるように車両を製造すべきであるとし、ELV指令は、車両の再使用性、リカバリー性、リサイクル性に関して、加盟国に対する同じ目標を含んでいる。

■ 3R指令は、型式認証制度の枠組みの一部であり、この枠組みでは、新型車両は、一連の技術的要件を満たすことを条件に、EU上市前に試験され、型式認証が与えられる。

■ 今回の規則案は、それらELV指令と3R指令の内容を統合・近代化して置き換える位置づけとなっている。

注目すべき内容

車両中の最低リサイクル材料含有量

■ 各車種に、消費者使用後のプラスチック廃棄物からリサイクルされたプラスチックを少なくとも25%使用すること、また、その25%は廃車のリサイクル材料であることを求めている。また、欧州委員会には、他の材料についてもリサイクル材料含有率の目標を設定する委任法を採択する権限が与えられている。(第6条)

車両中に存在するリサイクル材料含有量に関する宣言

■ 製造者は型式認証書類において、自動車に含まれる表示材料のリサイクル材料含有率を申告することが義務付けられている。(第10条)

車両に含まれる部品、構成部品、材料のラベル表示

■ 材料コード化基準(material coding standards)に沿った、自動車に含まれる部品、コンポーネントおよび材料のラベル表示要件。永久磁石を含むe-driveモーターのラベル表示に関する詳細な規則は、附属書4に規定されている。(第12条)

循環性車両パスポート

■ パスポート制度の導入。同パスポートは、自動車部門に既に存在し、あるいは開発が進められている他のデジタル情報ツールやプラットフォームと整合性のある方法で、車両部品・コンポーネントの安全な取り外しと交換に関する情報提供を改善するためのデジタルツールであると説明されている。(第13条)

など詳細はお問い合わせください。

ELV規則案 目次

目次

第1章 一般条項

第1条 主題
第2条 適用範囲
第3条 定義

第2章 循環性要件

第4条 車両の再使用性、リサイクル性およびリカバリー性 
第5条 車両に含まれる物質に関する要件
第6条 車両中の最低リサイクル材料含有量
第7条 車両における特定の部品やコンポーネントの取り外しおよび交換を可能にする設計

第3章 製造者の義務

第8条 一般義務
第9条 循環性戦略
第10条 車両中に存在するリサイクル材料含有量に関する宣言
第11条 部品やコンポーネントに関する取り外しおよび交換や、車両中に存在する材料にする情報
第12条 車両に含まれる部品、構成部品、材料のラベル表示
第13条 循環性車両パスポート

第4章 ELV車両の管理

第1節 一般条項

第14条 所管当局
第15条 認可処理施設

第2節 拡大生産者責任(EPR)

第16条 EPR
第17条 生産者の登録簿
第18条 生産者責任組織
第19条 EPRの履行に関する認可
第20条 生産者の資金負担責任
第21条 料金モジュレーション
第22条 他加盟国で廃車となった車両の費用配分メカニズム

第3節 廃車の回収

第23条 廃車の回収
第24条 廃車の認定処理施設への引き渡し 
第25条 破壊証明書
第26条 車両所有者の義務

第4節 廃車の処理

第27条 認可処理施設の義務
第28条 破砕に関する一般要件
第29条 廃車の汚染除去
第30条 破砕前の再使用およびリサイクルに関する部品およびコンポーネントの除去義務
第31条 取り外した部品およびコンポーネントに関する要件
第32条 中古、再製造、再生部品およびコンポーネントの取引
第33条 部品およびコンポーネントの再使用、再製造ならびに再生
第34条 再使用、リサイクルおよびリカバリー目標
第35条 非不活性廃棄物の埋め立て禁止
第36条 廃車の出荷

第5章 廃車および輸出

第1節 中古車の状態

第37条 中古車と廃車の区別

第2節 中古車の輸出

第38条 中古車の輸出に関する管理および要件
第39条 車両状態に関する情報の自動検証
第40条 リスク管理および税関管理
第41条 留保
第42条 輸出のための解放
第43条 輸出のための解放の拒否
第44条 当局間の協力および情報交換
第45条 電子システム

第6章 執行

第46条 検査
第47条 国家レベルおよび加盟国間の執行強力
第48条 罰則
第49条 欧州委員会への報告

第7章 委任権限および専門委員会手続き

第50条 委任の行使
第51条 専門委員会手続き

第8章 改正

第53条 規則(EU) 2019/1020の改正
第54条 規則(EU) 2018/858の改正

第9章 最終条項

第55条 レビュー
第56条 廃止および移行規定
第57条 発効および適用

附属書1 中古車か廃車かどうかの判断基準

Part A
車両の修理性評価基準

Part B
廃車基準の指標リスト

附属書2 再使用性、リサイクル性およびリカバリー性の割合の計算

Part A
Part B

附属書3 材料、部品、コンポーネント中の鉛、水銀、カドミウム、六価クロムの条件と最大濃度値

附属書4 循環性戦略

Part A 循環性戦略の要素

Part B 循環性戦略のフォローアップおよび更新

附属書5 取り外しと交換に関する情報要件

附属書6 ラベル要件

附属書7 処理要件

Part A 保管場所および処理場所の最低要件

Part B 汚染除去の最低要件

Part C 廃車からの部品およびコンポーネントを取り外し義務

Part D 部品およびコンポーネントの再使用、再製造、再生

Part E 再使用されない部品およびコンポーネント

Part F 取り外された部品、コンポーネントおよび材料の特定の処理要件

Part G 廃車からの部品、コンポーネントおよび材料の取り外し義務を免除するために提供すべき情報

附属書8 生産者登録簿への登録のための情報

附属書9 破砕証明書に含めるべき情報

附属書10 規則(EU) 2018/858の改正点

附属書11 相関表

 

参考情報

■ ELV規則案 意見募集ページ/欧州委員会

■ Questions and Answers/欧州委員会

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