EU|企業の持続可能性デューデリジェンスに関する指令を公布

HOME > 国・地域, 全般, セクター, EU|欧州連合, 雇用・労働, 執行・監査, 産業全般, > EU|企業の持続可能性デューデリジェンスに関する指令を公布

EU企業の事業活動およびグローバルバリューチェーン全体において持続可能で責任ある企業行動を促進することが目的

2024年07月05日、欧州官報にて企業の持続可能性デューデリジェンスに関する指令(CSDDD)(EU)2024/1760が公布されました。掲載の20日後の2024年07月26日に施行されました。加盟国は2026年07月26日までに国内法への置き換えを実施し、企業の規模により段階的に適用されることになります。

デューディリジェンス指令は、従業員数や売上高が一定規模以上の企業に、人権および環境への悪影響に対するデューデリジェンス(DD)の実施を義務付けるものです。

企業のデューデリジェンス義務の対象となる人権と環境への悪影響は、企業およびその子会社が発生させているものにとどまらず、企業の供給網などを含むバリューチェーン上で発生する悪影響を含みます。また、EU企業にとどまらず、EU域外の第三国に本社を置き、EU域内に子会社を置いて事業を展開する一定の第三国企業に対しても適用されます。

背景

持続可能性はEUの価値観に根ざしており、EUの企業は人権を尊重し、地球への影響を減らすことに尽力しています。それにもかかわらず、持続可能性、特に人権と環境デューデリジェンスをコーポレートガバナンスプロセスに統合する企業の進歩は依然として遅れています。

2020年12月03日、欧州理事会は結論の中で、グローバルバリューチェーンに沿ったセクター横断的なコーポレートデューデリジェンスを含む持続可能なコーポレートガバナンスに関するEUの法的枠組みの提案を提示するよう欧州委員会に求めました。また、2021年03月、欧州議会は欧州委員会に対し、義務的なバリューチェーンデューデリジェンスに関する法案を提出するよう求めました。

2022年02月23日に欧州委員会は企業持続可能性デューディリジェンス指令案を提出し、2023年12月14日に、EU理事会と欧州議会は、暫定的な政治合意に達していました。

しかし、産業界の根強い反発により一部の加盟国が政治合意後に反対に回ったことで、EU理事会は、指令案の採択に必要な多数派の形成に失敗し、2024年03月15日に最終的な妥協案が承認され、2024年04月24日にこの指令案は欧州議会により採択されました。

今回公布された指令は、2023年12月の政治合意案に比べ対象企業の基準を大幅に引き上げて義務の対象となる企業数を絞り込まれたものです。

概要

1. 対象企業

  • EU域内で設立された企業

(1)全世界での年間純売上高が4億5,000万ユーロ超、かつ
(2)平均従業員数が1,000人超の企業

  • EU域外で設立された企業: EU域内での年間純売上高が4億5,000万ユーロ超

2. 適用時期

  • EU域内で設立された企業

2027年07月26日以降: 従業員数5,000人超、全世界での年間純売上高15億ユーロ超
2028年07月26日以降: 従業員数3,000人超、全世界での年間純売上高9億ユーロ超
2029年07月26日以降:対象となる全ての会社

  • EU域外で設立された企業

2027年07月26日以降: EU域内での年間純売上高が年間純売上高15億ユーロ超
2028年07月26日以降: EU域内での年間純売上高が全世界での年間純売上高9億ユーロ超
2029年07月26日以降: 対象となる全ての会

3. DD義務の内容

1.  デューデリジェンスに関する方針とリスク管理体制の構築
2. 人権および環境に関する実際のまたは潜在的な悪影響の特定と評価
3. 潜在的な悪影響の防止・軽減、実際の悪影響の終了・最小化
4. 苦情処理メカニズムの構築・運用
5. DDの方針および各措置の有効性についてのモニタリング
6. DDの取り組みについての公的な報告

4. DDの対象課題

  • 人権への悪影響:国際人権条約上の権利の侵害および禁止事項への違反
  • 環境への悪影響:測定可能な環境劣化や、生物多様性、水銀や化学物質の取り扱い、オゾン層破壊防止、廃棄物の移動等に関する国際枠組みで規定されている義務および禁止事項

5. DD義務の範囲

  • 自社や子会社の企業活動
  • バリューチェーンにおける上流企業の企業活動:
    自社が製造する製品・提供するサービスに関連する原材料、製品、部品の設計、抽出、調達、製造、輸送、保管、供給、及び製品・サービスの開発
  • 下流企業の企業活動:
    自社製品の流通、輸送、保管に関連する下流側のビジネスパートナーの活動のうち、自社のために、または、自社に代わって実施される活動(直接的なビジネスパートナーに限定)

6. DDのアプローチ
深刻度や発生可能性に基づくリスクベース

7. 罰則 
適用対象企業のグローバルの売上高に応じた罰金(グローバルの年間純売上高の5%が上限)

8.報告

CSDDD (CS3D)でカバーされる事項について自社のウェブサイトや年次ステートメントを通じた開示します。
ただし、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)上で報告義務がある企業は、CSDDD (CS3D)上の報告義務は免除されます。

目次

 第1条 主題
 第2条 範囲
 第3条 定義
 第4条 調和のレベル
 第5条 デューデリジェンス
 第6条 グループレベルでのデューデリジェンスサポート
 第7条 デューデリジェンスの企業ポリシーとリスク管理システムへの統合
 第8条 実際および潜在的な悪影響の特定と評価
 第9条 特定された実際のおよび潜在的な悪影響の優先順位付け
 第10条 潜在的な悪影響の防止
 第11条 実際の悪影響の終結
 第12条 実際の悪影響の是正
 第13条 ステークホルダーとの有意義な関わり
 第14条 通知メカニズムと苦情処理手順 
 第15条 モニタリング
 第16条 コミュニケーション
 第17条 欧州単一アクセスポイントにおける情報のアクセス
 第18条 モデル契約条項
 第19条 ガイドライン
 第20条 付随措置
 第21条 単一ヘルプデスク
 第22条 気候変動との闘い
 第23条 権限のある代表者 
 第24条 監督当局
 第25条 監督当局の権限
 第26条 実証された懸念
 第27条 罰則
 第28条 監督当局のヨーロッパネットワーク
 第29条 企業の民事責任と全額補償の権利
 第30条 違反の報告と報告者の保護
 第31条 公的支援、公的調達、公的譲歩
 第32条 指令(EU)2019/1937の改正
 第33条 規則(EU)2023/2859の改正
 第34条 委任行使
 第35条 委員会手続き
 第36条 レヴューと報告
 第37条 国内法化
 第38条 発効
 第39条 宛先
 
附属書
パートI  
1.国際人権文書に含まれる権利と禁止事項
2. 人権と基本的自由に関する条約

パートII 環境法に含まれる禁止事項と義務

参考情報

注目情報一覧

新着商品情報一覧

調査相談はこちら

概要調査、詳細調査、比較調査、個別の和訳、定期報告調査、年間コンサルなど
様々な調査に柔軟に対応可能でございます。

(調査例)
  • ●●の詳細調査/定期報告調査
  • ●●の他国(複数)における規制状況調査
  • 細かな質問への適宜対応が可能な年間相談サービス
  • 世界複数ヵ国における●●の比較調査 など
無料相談フォーム

    会社名・団体名

    必須

    ※個人の方は「個人」とご入力ください。

    所属・部署

    任意

    お名前

    必須

    メールアドレス

    必須

    電話番号

    任意

    お問い合わせ内容

    任意

    Page Top