紛争地帯における鉱物の調達規制について
2025年10月17日、責任ある鉱物イニシアチブ(Responsible Minerals Initiative、以下RMI)が運営する「責任ある鉱物保証プロセス(Responsible Minerals Assurance Process、以下RMAP)」を、紛争鉱物規則(EU)2017/821のデューデリジェンス要件と同等と認める実施決定(EU)2025/2071がEU官報にて公布されました。これにより、RMAPを導入するEU域内の鉱物輸入者は、同規則の遵守を制度に沿って実現できるようになります。
背景
■ 紛争鉱物規則(EU)2017/821は、スズ、タンタル、タングステン、金の取引において、紛争影響地域および高リスク地域からの調達を監視し、企業が人権侵害や紛争資金化に関与しないよう定めるものです。同規則においてはEU域内の輸入者に対して、供給元の特定、リスク評価、監査、情報開示などのデューデリジェンス(責任ある調達)を義務付けています。
■ その一方で、第8条は政府や業界団体などが運営する既存のデューデリジェンス制度を欧州委員会が審査し、要件に適合する場合に「同等性認定」を与える仕組みを定めています。認定を受けることで、輸入者はEU規則の要件を効率的に満たすことができます。
■ RMIは2019年6月にRMAPの認定を申請しましたが、初回審査では一部基準が未達とされ、改善を求められました。その後、2022年5月に再申請を行い、欧州委員会はOECDの方法論(OECD Alignment Assessment Methodology)に基づいて再評価を実施しました.その結果、RMAPがリスクベースのデューデリジェンスを含めすべての基準に整合していると判断されました。
概要
■ 本実施決定(EU)2025/2071により、RMAPは紛争鉱物規則(EU)2017/821における要件と「同等」であると認められ、欧州委員会の「認定済みサプライチェーン・デューデリジェンス制度登録簿」に追加されます。これにより、RMAPを効果的に実施するEU域内の製錬所・精錬所(鉱物輸入者に該当する事業者)は、RMAPの枠組みを通じて同規則の遵守を証明できるようになります。
■ ただし、この認定は「RMAPへの参加だけで自動的に義務を果たしたことにはならない」点が明確にされています。輸入者は引き続き、自らの供給網に関する情報の文書化、リスク管理、第三者監査、情報開示など、規則第4条から第7条に定められた個別責任を負う必要があります。
■ また、この認定の対象は上流段階の事業者、すなわち製錬所および精錬所に限定され、下流の金属輸入者には直接適用されません。RMAPはこれら上流事業者のマネジメント体制や調達慣行を監査し、RMAP Tin and Tantalum Standard、RMAP Tungsten Standard、RMAP Gold Standard(いずれも2018年6月1日発効)との適合を検証する仕組みを持ちます。
■ さらに、RMAPでは、各製錬所・精錬所が自ら紛争影響地域や高リスク地域を特定する手法を策定し、その有効性を第三者監査で確認することが求められます。RMI自身は独自の地域リストを持たず、EU規則および関連法令で示される地域を参照する方針を採っています。
■ したがって、今回の認定により、RMAPを実施する事業者はEU法上の遵守手続を簡素化でき、国際的な信頼性も高まりますが、一方で各輸入者が自社責任でデューデリジェンスを実行する体制を維持する必要があります。今後、RMAPはEUの公式に認められた制度として位置づけられ、欧州委員会は引き続きその有効性を監視することになります。
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