EU|欧州委員会、カーボン国境調整メカニズム(CBAM)の簡素化・強化に関する改正規則公布を公表
炭素国境調整メカニズム(CBAM)の簡素化と強化
2025年10月20日、欧州委員会は炭素国境調整メカニズム(CBAM)の簡素化と強化を目的として、規則(EU)2023/956を改正する規則2025/2083がEU官報にて公布されたことを公表しました。この改正により、輸入者の負担を軽減しつつ、EUに輸入される炭素集約型製品の排出量削減をより確実にする仕組みが整備されます。
背景
■ 炭素国境調整メカニズム(CBAM)は、EUが導入した炭素漏洩防止策であり、炭素集約型製品の輸入に対して排出量に応じた証書の購入義務などを課す仕組みです。2023年10月から暫定期間が始まり、欧州委員会は輸入者の報告書や関係者との意見交換を通じて、現行制度の課題を把握してきました。
■ その結果、少量輸入者に対する負担が過剰であることや、特定製品・手続に関する複雑さが明らかとなり、制度の簡素化と環境目標の両立が求められていました。特に、輸入量が少ない事業者に対する報告義務の免除、EU排出量取引制度(EU ETS)との整合性確保、そして認定CBAM申告者(authorised CBAM declarant)の柔軟な運用の必要性が指摘されていました。
概要
■ 本改正は、輸入者ごとの年間累積輸入量に基づく「質量ベースの最低免除閾値(single mass-based threshold)」を導入するものです。
■ 鉄鋼、アルミニウム、肥料、セメントの輸入者に対する改正は以下の通りです。
- 年間輸入量が50トン以下であれば、CBAM報告義務や証書購入義務が免除
- これにより、輸入量が少ない事業者の行政負担が軽減
- ただし、電力や水素は取引や排出特性が異なるため、この免除の対象外
- 閾値は毎年、輸入データや排出強度の変化に基づき調整され、少なくとも99%の輸入排出量が炭素国境調整メカニズム(CBAM)の対象として維持
■ 輸入者は簡易通関手続における放出証書(bill of discharge)の提示も含め、すべての輸入が閾値評価の対象となります。また、認定CBAM申告者は第三者に申告を委託できますが、最終的な責任は申告者自身にあります。義務違反や小規模な誤りについては、罰則の軽減が可能です。
■ 原料(前駆体)がすでにEU ETSまたは連結炭素価格制度の対象となっている場合、その排出量は二重計上されません。さらに、アルミニウム・鉄鋼製品の生産工程由来の排出量を除外し、EU ETSとの整合性を確保します。輸入者は、第三国で支払われた実効炭素価格も控除可能です。
■ 非焼成カオリン粘土を対象外とするなど対象製品の範囲見直しも行われます。電力は間接排出のみを考慮する対象として明確化され、デフォルト排出値の算定方法も簡素化されました。CBAM運営にかかるコストは認定CBAM申告者が手数料で負担し、最初の共同調達契約期間中はEU一般予算が一時的に負担します。証書販売は2027年から開始され、2026年輸入分の価格は2026年のEU ETS価格を反映します。
■ この改正により、輸入者は自らの輸入量に応じて報告義務や証書購入義務の有無を判断し、必要に応じて認定CBAM申告者の申請や証書の取得などの対応が求められます。一方で少量輸入者や不正リスクの低い事業者の負担は大幅に軽減され、炭素国境調整メカニズム(CBAM)の環境目的と運用の効率性が両立されます。
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