米国|プラスチック汚染防止の国家戦略を発表

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地域社会を保護するため、プラスチックの生産から廃棄に至るまでの、国内および国際的な行動を促進する戦略

2024年11月21日、米国環境保護局(EPA)は「プラスチック汚染防止のための国家戦略(National Strategy to Prevent Plastic Pollution)」を発表し、プラスチック生産と廃棄物の影響から地域社会を守るために、政府機関、企業、非営利団体、地域社会が取ることができる方法を記載しました。

この戦略の内容は世界のプラスチック汚染を削減することで公衆衛生と環境を保護するという国際協定の内容に一致し、「プラスチック汚染に関する国際交渉委員会」の最終会合で発表されました。この戦略は、EPAの「万人のための循環型経済構築(Building a Circular Economy for All)」の一環としても、位置付けられています。

具体的には、プラスチック材料をリサイクルや再利用のためにサプライチェーンに戻す仕組みを作り出すなどして、循環型経済の構築を促進するEPAの行動内容が記載されており、米国においてプラスチック製品の製造、輸出入、流通、使用、回収、リサイクル製品の製造などを行っている事業体に影響がおよびます。

この戦略発表の背景

ほとんどのプラスチック製品は再利用もリサイクルもされず焼却されるか、埋め立て処分されるかして、環境中に流出することになります。経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development、OECD)は、政治界、経済界などの介入がなければ、2060年までに世界のプラスチック使用量と廃棄量はほぼ3倍になると予測しています。また、プラスチック製品の製造や流通過程は、世界的な温室効果ガス排出の原因にもなっており、プラスチック製品のライフサイクル全体が環境汚染に影響を及ぼしていると考えられています。

現在、マイクロプラスチックやナノプラスチックは、出産後のヒトの胎盤や母乳から検出され、ヒトの身体に残存し、生殖能力、心臓発作や脳卒中、その他の死亡のリスクを高める可能性がある、と考えられています。プラスチック製品から溶出する化学物質は、内分泌をかく乱し、血液脳関門に影響するとする研究報告もあります。そのため、これらプラスチックの分解物が将来、ヒトの健康を脅かす懸念が高まっています。

この戦略発表に至るまでのEPAの動き

EPAは、数十年にわたり、大気汚染や水質汚濁、また材料のライフサイクルを通じて発生、排出される固形廃棄物や有害廃棄物の誤った管理からヒトの健康と環境を守る取り組みを進めています。EPAはすでに、「プラスチック汚染防止のための国家戦略」を採用して基盤とすることで、「国家リサイクル戦略」「食品ロス・廃棄物の削減と有機物のリサイクルのための国家戦略」を策定・発表し、製造品を循環して資源としてリサイクルするなどの循環経済の構築を試みています。この行動目標は、連邦政府の行動計画を示す「ホワイトハウスの2024年報告書」とも一致しています。

米国議会の超党派は、「Save Our Seas 2.0 Act of 2020(2020年わが海を救え2.0法)」において、米国環境保護庁(U.S. Environmental Protection Agency、EPA)に対し、水路や海洋においてプラスチックやその他の物質の廃棄物を削減するための戦略策定を課しています。

これを受けて、EPAは2023年4月に戦略草案を発表し、一般からの意見を約92,000件受け取りました。EPAは、これらの意見に基づき、米国におけるプラスチックの環境への放出を削減することで、環境とヒトの健康への懸念に対処するための目標と行動を特定しました。

今回の国家戦略以前より行っているEPAの行動

プラスチック廃棄物を削減するために、以下のEPAの措置がすでに実施されています。

  • ゴミが環境に排出されることを防ぐ「ゴミのない水域プログラム(Trash Free Waters Program)」。
  • 水質浄化法(Clean Water Act)の下、工場などの施設に設定した排水基準(wastewater standards)と、最悪の排出ケースを想定した対応計画を策定して提出する義務を課す新たな要件が記載された「地表水中の汚染物質に関する国家水質基準勧告(national water quality criteria recommendations)」。
  • エチレンオキシドやクロロプレンなどの有害大気汚染物質の排出を削減する「2024年最終規則」
  • 化学事故から脆弱なコミュニティを保護するための要件を定めている「リスク管理プログラム規程(Risk Management Program)」と2024年の「化学事故防止による安全な地域社会(Safer Communities by Chemical Accident Prevention)規程」
  • プラスチック汚染削減に焦点を当てたプロジェクトに資金提供を行う「環境正義助成金および技術支援プログラム(Environmental Justice Grants and Technical Assistance Program)」
  • 2021年の超党派インフラ法(2021 Bipartisan Infrastructure Law)により資金提供された固体廃棄物リサイクルインフラ(Solid Waste Infrastructure for Recycling )およびリサイクル教育・普及( Recycling Education and Outreach )の助成金プログラム
  • 「万人のための循環型経済構築(Building a Circular Economy for All)」に関する一連の戦略と取り組み

今回の国家戦略に記載された目標

今回の国家戦略「プラスチック汚染防止のための国家戦略」には、プラスチック汚染に対する、以下の6つの主要目標が掲げられています。

  1. プラスチック生産による汚染を削減する。
  2. 素材と製品設計を革新する。
  3. 廃棄物の発生を減らす。
  4. 廃棄物管理を改善する。
  5. プラスチック汚染の回収と除去を改善する。
  6. 水路や海洋への負荷や影響を最小限に抑える。

今回の国家戦略に記載された今後のEPAの行動

今回の国家戦略「プラスチック汚染防止のための国家戦略」には、現在行われている措置に加わる、以下のEPAの今後の行動例が示されました。

  • 使い捨てプラスチック製品の生産と消費を削減し、連邦政府を含め米国の、製品の再利用とリサイクルを行う能力を向上させる。
  • 使い捨てプラスチック製品のライフサイクル全体を通して、環境とヒトの健康に与える影響を測定する。
  • 米国の「生産者」としての責任を果たすため、他国や他者と協力して、プラスチック汚染を減らすための公共政策とインセンティブを強化する。

参考情報

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