2024.06.24
米国|CPSC、乳幼児用揺りかごブランコの安全基準を最終規則
安全基準に、更新されたASTM自主規格「乳幼児用ブランコおよび揺りかごブランコの標準消費者安全仕様」を取り入れる
2024年05月30日、米国消費者製品安全委員会(CPSC)は、2008年消費者製品安全法(CPSIA)第104条に基づき、ASTMの2024年版任意規格を参照して取り入れた「乳幼児用揺りかごブランコ(Infant and Cradle Swings)の消費者製品安全基準」を最終規則として発表しました。この規則は、CPSCが2024年07月01日までに重要な反対意見を受理しない限り、2024年09月14日に発効します。
米国において、乳幼児用揺りかごブランコの製造、輸入、販売に関わる事業者に影響が及びます。
ASTM規格とは
ASTM規格とは、旧称でAmerican Society for Testing and Materials(ASTM)、現在はASTM Internationalとなっている米国試験材料協会によって策定され、材料、製品、システム、品質、安全性、性能に関する技術的基準を言います。金属、塗料、繊維など、約130の異なる産業分野の製品をカバーし、その標準試験方法、仕様、ガイドラインを提供しています。ASTM規格はその性質上、任意で採用される技術標準ですが、米国の法規制や国際貿易の文脈において、この規格が参照され、実質的に要件とされていることがあります。
加えて規格への準拠は、リスク管理の観点からも重要で、製品の安全性や性能に関する訴訟リスクを低減する効果があります。そのため、多くの国際企業は、法的義務がなくても、自発的にこれらの規格を採用し、製品の設計や製造プロセスに組み込んでいます。米国市場での販売製品は、ASTM規格への準拠が求められることも多く、製造や輸入に関わる日本事業主は製品の性能や安全性をASTM規格に基づいて証明する必要があります。
この最終規則の背景
2012年6月、米国消費者製品安全委員会(Consumer Product Safety Commission、CPSC)は、2008年消費者製品安全法(Consumer Product Safety Improvement Act of 2008、CPSIA)に基づき、乳幼児用ブランコの消費者製品安全基準を発表しました。
この規格は、当時有効であった乳幼児用ブランコの自主規格であるASTM F2088-12a「Standard Consumer Safety Specification for Infant Swings(乳幼児用ブランコの標準消費者安全規格)」を参考として取り入れたものです。この規格は乳幼児用ブランコと揺りかごブランコの両方に適用されていたため、2020年にASTMは自主規格のタイトルに「揺りかごブランコ」を追加して変更していました。
今年度、ASTMは改訂版規格であるASTM F2088-24「乳幼児用ブランコおよび揺りかごブランコの標準消費者安全仕様」を発行しました。CPSIAでは、乳幼児向け製品について、自主規格団体が規格を改訂した場合、安全基準内の強制規格を更新することが定められています。
今回の最終規則は、このCPSIAの更新プロセスに従い、基準内にASTMの2024年版任意規格を参照して必須規格として取り入れ、更新しました。また、任意規格と整合性を合わせるために、「揺りかごブランコ」を含めて必須規格を改訂しました。
この最終規則で参照されているASTM F2088-24の内容
ASTM F2088-22では、ブランコのストラップやコードによる首絞め及び巻き込み事故の危険性に対処するため、シートの下側にあるストラップは16インチを超えてはならないと規定していました。しかし、ASTM F2088-22の「16インチの紐付きストラップ要件」に合格していても、その後2件の事故が起こったため、ASTM F2088-24の改訂版では、新たに以下の事項を要求しています。
(1) ブランコの下にある(ストラップ単体、他のストラップとの組み合わせ、または製品との組み合わせによって形成される)開口部は、乳幼児の頭が入るには通常小さく、しかし胴体(および頭)が通ることはできる大きさであること。
(2) 開口部が乳幼児の胴体を通るには十分な大きさである場合、開口部のストラップ部分を操作して乳幼児の首に巻き付かないようにすること。
さらに、以下の2点が改訂されています。
(3) (1)(2)の内容に関連し、ASTM F2088-24の用語の項で、「コード」と「ストラップ」の定義が追加され、「テザーストラップ」の定義が改訂されました。
(4) (1)(2)の内容に関連し、性能要求事項及び試験方法の規定が改訂されました。
ASTM F2088-24規格は、今後も幼児用ブランコと揺りかごブランコの両方に適用されます。
以上のASTM規格の変更を取り入れ、CPSCは「乳幼児用揺りかごブランコ(Infant and Cradle Swings)の消費者製品安全基準」を最終規則としました。この規則は、2024年09月14日に発効します。
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