法執行の実効性強化
2022年12月09日、EU理事会は、環境犯罪指令に関する欧州議会との交渉権限に合意しました。欧州委員会の環境犯罪指令の提案(2022年12月15日公表)については、加盟国に刑法上の措置を義務付けることで環境保護をより効果的にすることを目的としており、新たな環境犯罪を定義し、制裁措置の最低水準を定め、法執行協力の有効性を強化するものです。また同提案では、加盟国に対し、環境犯罪を通報し、執行に協力する人々を支援、援助することを義務付けています。
背景
環境犯罪は、世界で最も収益性の高い組織的犯罪活動の一つであり、環境だけでなく人間の健康にも大きな影響を及ぼしています。環境犯罪は違反者に非常に大きな利益をもたらしますが、その摘発、起訴、処罰は困難な状況にあります。
2008年に刑法による環境保護に関する指令が採択されましたが、2019年から2020年にかけての評価を経て、欧州委員会は、捜査に成功して判決を受けた事例の数が低いままであることから、この指令の効果は限定的であると結論づけました。さらには、科された制裁水準が低すぎることで説得力に欠け、国境を越えた協力が組織的に行われていなかったという事実もあります。
2021年12月15日、この状況を踏まえ、欧州委員会は本指令の有効性を改善するための提案を公表しました。
経緯
欧州委員会は、刑法による環境の保護に関する指令2008/99/ECを2019年及び2020年に評価した後、本指令の提案を提出しました。その評価において、欧州委員会は、過去10年間、捜査に成功し、判決を受けた環境犯罪事件の数が低いこと、科された制裁金の水準が低すぎて抑制的でなく、国境を越えた協力も組織的に行われていなかった等を挙げ、同指令が現場ではあまり効果を上げていないことを明らかにしました。
同提案では、指令の有効性を向上させることを目的としており、環境犯罪をより正確に定義し、その範囲に新たな環境犯罪カテゴリーを追加し、自然人及び法人に対する制裁の最低・最高レベル、法執行体制を強化するための特定の訓練、適切な資源配分、国境を越えた調査手段など、さまざまな新規定を導入しました。
具体的には、環境犯罪の通報者、環境保護者、環境犯罪の影響を受ける人々を支援するための規定も含め、環境犯罪に関する統計データの収集を改善し、実施された措置の結果をよりよく監視・評価し、法執行の連鎖の中で問題となる段階を特定することに努めています。
作業部会レベルでの作業では、提案書の提出後直ちに、刑事事件における司法協力に関する作業部会が検討を開始し、2022年6月、フランス議長国の下での作業により、理事会は、2 条(「関係公衆」及び「被害者」の定義を除く)、3条及び4条等に関する本文の一部である一般的アプローチに合意しました。
2022 年 7 月 1 日から、作業部会は議長国チェコの下で提案の残りの部分の審査を継続し、作業部会は、時にはJHA参事官・専門家形式で活動しました。
激しい議論の焦点としては、指令に定義された犯罪に関して最低限利用できる制裁の最大レベルに関する 5 条と7 条に特に集中しました。すべての代表団はこれらの条文に関して譲歩しましたが、現在附属書に記載されている条文は、すべての加盟国の利益を考慮したバランスの取れた条文として纏められています。
以上の作業部会での議論を踏まえ、常設代表委員会は、以下の事項を行うよう要請しました。
■ 附属書に記載された一般的なアプローチの文章に関する合意を確認すること。
■ 理事会が一般的アプローチに到達するよう勧告すること。
理事会は以下のことを行うよう要請されています。
■ 通常立法手続(TFEU294条)の枠組みにおける欧州議会との交渉の基礎となる、本附属書に記載され た一般的なアプローチに合意すること。
環境犯罪指令案の概要
本指令案では、EUの刑法における既存の9項目の犯罪の代わりに、交渉権限では20項目の犯罪を定義し、環境を害することを理由に禁止される行為の範囲を拡大、明確化しました。新しい犯罪については、世界の一部の地域で森林破壊の主な原因となっている木材の密売、船舶の汚染部品の違法リサイクル、化学物質に関する重大な法律違反が含まれています。
(1) 対象となる行為を行った自然人の場合の罰則
・ 故意に人を死に至らしめた場合、最高で10年の懲役とする。
・ 少なくとも重大な過失があり、人を死に至らしめた犯罪については、最高で5年の懲役刑とする。
・ その他の意図的な犯罪の場合、最高刑期は5年または3年以上とする。
(2) 法人の場合の罰則
・ 最も重大な違反に対しては、その法人の世界総売上高の5%以上、または4,000万ユーロの最高罰金とする。
・ その他のすべての違反に対しては、法人の全世界での売上高の少なくとも3%、あるいは2,400万ユーロの罰金を科す。
・ 環境修復や損害賠償の義務付け、公的資金へのアクセスからの排除、許可や認可の取り消しなどの追加措置が取られる場合もある。
この他に、環境犯罪の摘発、捜査、起訴に携わる人々への研修の実施や、適切な資源の割り当ての必要性についても触れられ、環境犯罪の通報者、環境擁護者、これらの犯罪の影響を受ける人々への支援と援助に関する規定も含まれています。
参考情報
- Council agrees its negotiating mandate on the environmental crime directive
- Proposal for a Directive of the European Parliament and of the Council on the protection of the environment through criminal law – General approach(PDF)
上記PDFファイルは、EUプレスリリースよりアクセスが可能です。
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