EU|欧州委員会、化学部門における一般的な排気ガス管理・処理システムに関する利用可能な最良技術(BAT)結論を委員会決定として公表
技術特性、地理的立地及び環境条件の考慮
2022年12月12日、欧州委員会は、産業排出に関する欧州議会及び理事会指令2010/75/EUに基づき、化学分野における一般的な排気ガス管理・処理システムに関する利用可能な最良技術(BAT)結論を委員会決定(EU)2022/2427として公表しました。
経緯
欧州委員会は、EU の機能に関する条約、産業排出物(統合的汚染防止管理)に関する2010年11月24日の欧州議会及び理事会指令2010/75/EU、特に同13条に留意し、利用可能な最良技術(BAT)結論が、指令 2010/75/EUのII章の対象となる施設の許認可条件設定の基準となり、通常の運転条件下で、排出量が BAT結論に規定される利用可能な最良技術に関連する排出レベルを超えないことを保証する、排出制限値を設定する必要がある、との決定を公表しました。
指令2010/75/EUの13条に従い、2011年5月16日の欧州委員会決定により設立された加盟国、関連業界、環境保護を推進する非政府組織の代表からなるフォーラムは、2022年5月11日に、化学部門における共通の排気ガス管理・処理システムに関するBAT基準文書の提案内容に関する意見を欧州委員会に提出しました(公表済み)。本決定の附属書に記載された内容は、BAT基準文書の提案内容に関するフォーラムの意見を考慮したものとなっています。
本決定において規定される措置は、指令2010/75/EUの75条により設立された委員会の意見に基づくものになります。
BATとは
BATは、「工業技術的・経済的に可能なレベル」まで非意図的混入物や非意図的副生成物を低減するもので、「自主管理上限値の設定」や「管理方法(分析方法、分析頻度等)」などを明確にするものです。EUでは、IPPC指令を制定し、指定する活動からの環境汚染を防止・管理するため、対象施設の設置を許認可制としています。以下の通り、対象施設は、利用可能な最良の技術(BAT)を適用し、汚染防止策を講じなければならないとしています。
- BATの定義及びBATを決定する際の考慮すべき事項を規定すること。
- 実際に技術を使用・開発する産業界だけでBATを決めるのではなく、各国の専門家や環境団体の意見が採り入れられていること。
- 許認可の最終判断では、技術だけではなく、設置に係る技術特性や地理的立地、地域の環境条件を考慮することを定めること。
EUでは、IPPC指令において、汚染者負担の原則に基づき産業活動ができるだけ環境に影響を与えないために必要な規定を示しています。同指令で指定された施設の設置には、各国の機関から許認可を取得し、当該施設はBAT(2条)の考え方に基づくものでなければならないと定められています。
BAT結論の概要
BAT結論における具体的な要件は、以下の通り附属書に記載されています。
1.1. BATの一般的な結論
1.1.1. 環境マネジメントシステム
BAT 1
総合的な環境パフォーマンスを向上させるために、BATは、以下の特徴を全て組み込んだ環境マネジメントシステム(EMS)を精緻化し、実施することである。・i. 効果的なEMSを実施するための、上級管理職を含む経営陣のコミットメント、リーダーシップ、説明責任。
・ii. 組織の状況の把握、利害関係者のニーズと期待の特定、環境(または人の健康)に対するリスクの可能性と関連する設備の特性の特定、及び環境に関して適用される法的要件の特定を含む分析。
・iii. 施設の環境パフォーマンスの継続的な改善を含む、環境方針の策定。
・iv. 適用される法的要求事項の遵守を保護することを含む、重要な環境側面に関する目的及びパフォーマンス指標を設定すること。
・v. 環境目標を達成し、環境リスクを回避するために必要な手順と行動(必要な場合は是正措置と予防措置を含む)を計画し、実施すること。
・vi. 環境側面と目標に関連する構造、役割、責任、及び必要な資金と人的資源の提供の決定。
(中略)
BAT 2
大気への排出量の削減を促進するため、環境マネジメントシステム(BAT 1参照)の一部として、以下の全ての特徴を組み込んだ大気への排出量目録を構築、維持、定期的な見直し(大幅な変更があった場合を含む)を行うこと。・i. 化学物質の製造工程に関する、合理的に可能な限り包括的な情報(以下を含む)
a. 化学反応式、副産物
b. 排出物の起源を示す簡略化したプロセスフローシート・ii. 合理的に可能な限り包括的な、大気への排出に関する以下のような情報
a. 排出ポイント
b. 流量及び温度の平均値及び変動性
c. 関連物質/パラメータの平均濃度及び質量流量値、並びにそれらの変動(例:TVOC、CO、NOX、SOX、Cl2、HCl)。
d. 廃ガス処理システム又はプラントの安全性に影響を及ぼす可能性のある他の物質の存在(例:酸素、 窒素、水蒸気、粉塵)。(中略)
BAT 3
OTNOC(例えば、大気への排出を抑制するために重要な機器、または大気への排出に繋がる事故や事件の防止に重要な機器の故障)の発生頻度を低減し、OTNOC 時の大気への排出を削減するため、環境管理システム(BAT 1参照)の一部として、以下の全ての機能を含むリスクベースの OTNOC 管理計画を設定し実施することを BAT とする。・i. 潜在的なOTNOC、その根本原因、及びその潜在的影響を特定すること。
・ii. 重要機器の適切な設計(例:機器のモジュール化及び区画化、バックアップシステム、起動時及び停止時の排ガス処理のバイパス処理の必要性を回避する技術、高集積度機器等)。
・iii. 重要機器の予防保全計画の設定と実施(BAT1 xii.を参照)。
(中略)
BAT 4
大気への排出を削減するために、BATは、優先順位の高いプロセス統合型の回収及び軽減技術を含む、統合的な廃棄物ガス管理及び処理戦略を使用することである。・解説
統合廃棄物ガス管理・処理戦略は、BAT 2のインベントリに基づいている。 これは、温室効果ガス排出、様々な技術の使用に伴うエネルギー、水、材料の消費または再利用などの要因を考慮したものである。BAT 5
物質の回収を促進し、大気への排出を削減し、エネルギー効率を高めるために、BATは、類似した特性を持つ廃棄物ガスの流れを組み合わせ、排出地点の数を最小にすることである。・解説
類似した特性を持つ廃棄物ガスを組み合わせて処理することで、個々の廃棄物ガスストリームを別々に処理するよりも効果的かつ効率的な処理を実現することができる。廃ガスの組み合わせは、プラントの安全性(例:爆発下限/上限付近の濃度を避ける)、技術的(例:個々の廃ガス流の適合性、関係物質の濃度)、環境的(例:物質の最大回収、汚染物質の軽減)、経済的(例:異なる生産ユニット間の距離)要因を考慮して実施される。排出ガスの組み合わせが排出量の希釈に繋がらないように注意する。
(EU)2022/2427の附属書1.1の当該部分を引用・仮訳
(略)
参考情報
- COMMISSION IMPLEMENTING DECISION (EU) 2022/2427 of 6 December 2022 establishing the best available techniques (BAT) conclusions, under Directive 2010/75/EU of the European Parliament and of the Council on industrial emissions, for common waste gas management and treatment systems in the chemical sector
- 2013/732/EU:Commission Implementing Decision of 9 December 2013 establishing the best available techniques (BAT) conclusions, under Directive 2010/75/EU of the European Parliament and of the Council on industrial emissions, for the production of chlor-alkali (notified under document C(2013) 8589) Text with EEA relevance
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