EU|国際海事機関(IMO)、船舶用燃料規則の強化により、地中海の硫黄系大気汚染物質を80%削減へ
海上輸送を含むすべてのセクターの低公害化、環境改善
2022年12月15日、欧州委員会は、国際海事機関(IMO)が船舶からの排気ガスに関する規則を大幅に強化し、地中海の保護を強化することでの合意を得たことを歓迎する旨の発表を行いました。
地中海が硫黄酸化物排出規制地域(SECA)に指定されたことにより、最終的にこれらのガスの排出が80%近く削減され、有害な微細粉塵(PM2.5)の排出もほぼ4分の1に削減されることになり、人の健康と環境に大きな利益がもたらされることになります。
背景、経緯
地中海の海洋環境及び沿岸地域の保護のためのバルセロナ条約及びその議定書は1976年に採択され、EUと地中海の8つの加盟国を含む22の締約国が加盟しています。国連環境計画(UNEP)は、1975年に地中海行動計画を策定し、地中海に共通する環境問題に取り組む地域的な枠組みを提供しています。
トラックや乗用車に使用される燃料の硫黄含有量は0.001 %を超えてはならないとされていますが、船舶は伝統的に推進用の燃料油を使用しており、その硫黄含有量は最大で3.5%にもなります。
ちなみに、2016年に改定された2012年の硫黄指令では、船舶用燃料の硫黄含有量の上限を設定することでSOX排出量を削減し、国際海事機関が設定した新しい基準をEU法に組み入れ、地域内外の保護に努めています。
国連の機関であるIMOは、船舶からの汚染防止のための国際条約であるMARPOL条約を監視しています。既に、2020年に義務化された「グローバルサルファーキャップ」を採択し、燃料内の従来の最大硫黄含有量を3.5%から0.5%に削減することを義務づけています。
2022年12月に開催されたIMOの海洋環境保護委員会では、大気汚染防止を扱うMARPOLの附属書VIにおいて、地中海をSECAに指定する決議が採択されました。このSECAにより、エリア内の船舶は硫黄含有量0.1%の燃料を使用することが義務付けられました。
バルセロナ条約とは
国連環境計画(UNEP)は、1975年に地中海行動計画を策定し、地中海に共通する環境問題に対処するための地域的な枠組みを提供しました。その後、1976年に「地中海の海洋環境及び沿岸地域の保護のための条約(バルセロナ条約)及びその議定書」が採択され、EUと地中海加盟国を含む22ヵ国の締約国が加盟しています。
海洋環境保護のための地域協力は、EUの海洋環境保護に関する主要な手段である海洋戦略枠組指令の重要な要素であり、海洋に対するあらゆる圧力に目を向け、それらを一つの傘の下にまとめ、人間活動の累積的影響に一つの戦略的枠組みで対処するものです。
海洋戦略枠組指令は、EU加盟国に対し、「良好な環境状態」を達成するために、加盟国の海域に関する海洋戦略を設定することを求めています。これは、生物多様性、富栄養化、汚染物質、ゴミ、水中騒音など多くの問題について、バルセロナ条約などの地域海条約と広範な協力を行うことを意味しています。海洋戦略枠組指令は2023年半ばまでに見直しが行われ、必要に応じて指令の改正が提案される予定です。
規則強化の主旨
このイニシアチブは、地中海沿岸諸国とEUがバルセロナ条約の枠組みの中で開発し、IMOに共同で提出されたものであり、地域的な海洋条約によって実現した国際協力の成功例として非常に優れたものになります。
硫黄酸化物とは、硫黄を含む船舶用燃料を燃焼させた船舶のエンジンから発生する排出ガスのことで、人体に害を与えるだけでなく、水や土壌の酸性化の原因となります。
2012年以降、国際的な低硫黄化のアプローチとして、EUは硫黄指令を通じて船舶用燃料の硫黄含有量を削減するための確固たる行動を取ってきました。
2016年、IMOは、2020年を世界の硫黄含有量0.5%規制の発効日として維持しました。さらに、バルト海や北海など、非常に脆弱な生態系の一部(SECAに指定)では、すでに2015年に最大硫黄含有量を0.1%に引き下げています。
このような硫黄規制の強化により、SECA周辺の二酸化硫黄濃度は半分以下に低下し、沿岸地域や港湾の人々に健康上のメリットをもたらす一方、このセクターへの全体的な経済的影響は最小限に留まりました。
今回の規則強化により、地中海が排出規制地域に指定されたことで、2025年5月1日以降、船舶は硫黄含有量の少ない船舶用燃料を使用することが義務づけられます。許容される硫黄含有量は、現在の0.5%から0.1%に低下する予定であり、この削減により、地中海沿岸では毎年少なくとも1,000人の早期死亡が減り、小児喘息の新規発症が2,000人減ると見込まれています。
EUでは、大気汚染が原因で毎年約30万人が死亡していると推定されており、欧州委員会は、「汚染ゼロ」行動計画の一環として、大気質に関する法律の大幅な改正を行い、この状況に対処しています。
次のステップ
EUは、欧州グリーンディールの下、海上輸送を含むすべてのセクターの脱炭素化、低公害化に取り組んでいます。欧州委員会は、「汚染ゼロ」行動計画と「EU持続可能でスマートなモビリティ戦略」の枠組みにおいて、海運による大気汚染からの保護をすべてのEU水域に拡大することを目標としており、硫黄の排出規制区域としては、すでに北海とバルト海に存在し、大きな成果を上げています。
この2つの海域では、窒素酸化物に関する排出規制区域が2021年に発効しています。欧州委員会は、直ちに開始されるべき地中海SECAの実施に向けた準備に引き続き貢献し、地域海域条約を通じたものも含め、EUの全海域をカバーする追加のSECA設定を目指すEU沿岸諸国の今後の取り組みも引き続き支援していくとしています。
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