EV用電池CFP宣言要件の実施法案・委任法案
2024年04月30日、欧州委員会は、電池規則の第7条に定めるカーボンフットプリント(CFP)要件のうち、EV用電池を対象とする第1段階目の要件、CFP宣言の作成と添付要件に関連して、その宣言様式を定める実施法案と計算等の方法論を定める委任法案を公表し、意見募集を開始しました。意見募集期間はいずれも05月28日までとなっています。
概要・背景
■ 電池規則第7条では、3段階のCFP要件を定めており、それぞれについて対象となる電池区分別に適用開始日を設定しています。
■ さらに、そのそれぞれの要件について、様式を定めたり、計算方法を定める実施法や委任法を事前に定めるよう欧州委員会に要求する規定も盛り込まれています。
■ 3段階のCFP要件のうち、最初の要件は、指定の情報を含むCFP宣言を電池モデルごと、製造施設ごとに作成し、電池に添付することが要求されています。第13条に定めるQRコード要件の適用開始以降は、QRコードからアクセスできる先の情報に、CFP宣言の情報を含む必要があり、代わりに電池への添付は不要となります。
■ EV用電池の第1段階の要件については、2024年02月18日までにCFP宣言の様式を定める実施法やCFPの計算の方法論を定める委任法を採択する予定となっていましたが、予定よりも2ヵ月以上遅れて今回、草案が公表された運びとなります。
■ なお、EV用電池の第1段階の要件の適用開始日は2025年02月18日、または上記委任法令もしくは実施法令の発効12ヶ月後のいずれか遅いほうとなっています。
■ したがって、意見募集の後の採択の時期が後ろにずれ込めば、実施法や委任法の発効日も後ろにずれ込むため、適用開始日もずれ込む目算となっています。
注目すべき内容
CFP宣言様式を定める実施法案
■ CFP宣言様式は附属書に定められています。(以下、仮訳)
カーボンフットプリント宣言 | |
製造者 | [ 名称、商号または商標 ] |
電池モデル | [ モデル識別子 ] |
電池製造施設の地理的情報 | [ 町; 地域; 国/行政区] |
ライフサイクル・カーボンフットプリント | [ 量 ] kg CO2-eq. per kWh* |
ライフサイクル段階** | |
ー 原材料調達・前処理 | [ 量 ] kg CO2-eq. per kWh* |
ー 主要製品生産 | [ 量 ] kg CO2-eq. per kWh* |
ー 流通 | [ 量 ] kg CO2-eq. per kWh* |
ー EOLおよびリサイクル | [ 量 ] kg CO2-eq. per kWh* |
EU適合宣言の識別番号 | [ 番号 ] |
CFP値を裏付ける調査結果(study)の公開版へのアクセスを提供するウェブリンク | |
[ 他の追加情報 ] |
* 電池が想定される耐用年数にわたって供給する総エネルギーのkWh
** 各ライフサイクル段階に含まれる工程は、電池規則第7条(1)第4段落(a)に従って採択されたカーボンフットプリントの算定・検証方法を定める委任法に定義される。
CFP計算の方法論を定める委任法案
■ 委任法案では附属書にて方法論が規定されています。
■ 附属書に定める方法論は33ページの分量で整理されており、以下の構成となっています。
■ 規則や欧州委員会勧告(EU) 2021/2279に規定されているように、製品環境フットプリント(PEF)手法に従う内容となっており、その中にはサーキュラー・フットプリント・フォーミュラ(CFF)法も含まれています。
■ 国際的なCFP慣行と異なる欧州独自のアプローチであるとして、議論の的になっていたCFFについても、含有リサイクル材料(recycled content)と全ライフサイクル段階で発生する廃棄物は、CFFを用いてモデル化し、廃棄物の発生するライフサイクル段階で報告するよう要求されています。
委任法案附属書に定める方法論目次
1. 定義
2. 計算規定
2.1. 機能単位
2.2. システムの境界及びカットオフルール
2.2.1. (システム境界に含まれるライフサイクル段階の説明)
2.2.2. (システム境界に含まれないライフサイクル段階の説明)
2.2.3. (1%のカットオフルールについて)
2.3. データ収集要件及び品質要件
2.3.1. 企業固有の義務的工程
2.3.2. 義務的ではない最重要工程
2.3.3. その他の工程
2.3.4. 企業固有のデータセット
2.3.5. 企業固有のデータ
2.3.6. データの品質評価
2.4. 電力モデリング
2.4.1. 直接接続電力
2.5. 割当ルール
2.5.1. 多機能工程の割当
2.5.2. 生産ラインのエネルギーと補助インプットの割当
2.5.3. EV用電池の電池筐体の割当とモデル化
2.6. リサイクル材料含有とEOLモデリング
2.6.1. 製造廃棄物に適用されるCFF
2.7. 流通を含む輸送
3. 検証規定
3.1. 検証のための文書
3.1.1. カーボンフットプリント調査
3.1.2. カーボンフットプリント調査の公開版
3.2. 検証および妥当性確認技法
参考情報
■ 意見募集ページ(実施法)/欧州委員会
■ 意見募集ページ(委任法)/欧州委員会
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