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EU|人による消費を意図した水の管理に関する指令を補完する法案4件の意見募集

「人による消費を意図した水」を管理する各種細則を定める提案群

2023年10月19日、欧州委員会は、人による消費を意図した水の規制に関する4件の法案について、意見募集を開始しました。

■ 人による消費を意図した水と接触する製品の適合性評価手続き及びその手続きに関与する適合性評価機関の指定に関する規定を定める委任規則案
■ 人による消費を意図した水と接触する製品に使用される最終材料を試験し、承認する手順と方法に関する実施決定案
■ 人による消費を意図した水と接触する材料又は製品の製造において使用が許可される出発物質、組成物及び成分の欧州ポジティブリストを確立する実施決定案
■ 欧州ポジティブリストに含まれる出発物質、組成物及び成分の試験方法及び承認方法に関する指令 (EU) 2020/2184の適用に関する規定を定める実施決定案

 いずれも飲料水指令、指令 (EU) 2020/2184を補完する位置づけのものとなっている。

概要・背景

人による消費を意図した水と接触する製品の適合性評価手続き及びその手続きに関与する適合性評価機関の指定に関する規定を定める委任規則案

■ 飲料水指令には、人の飲用を意図する水と接触する材料に対する最低限の衛生要件が含まれている。(第11条)
■ 今回の委任規則案は、最低衛生要件に適合しているかどうかを評価するための手順を定めている。
■ 適合性評価手続きは、製品リスクグループによって異なる内容が提案されている。

対象グループ 適合性評価手続き
リスクグループ1または2 Module B:EU型式試験
Module D:生産プロセスの品質保証に基づく型式適合性 の両方
リスクグループ3または4 Module B:EU型式試験
Module C:内部生産管理に基づく型式適合性 の両方

■ それぞれの適合性評価手続きの詳細は、決定No 768/2008/ECに規定されている。
■ 組み立て製品の場合、適合性評価手続きは、最も高いリスクグループを持つ個々のコンポーネントにより決定される。
■ 適合性評価手続きにより適合性を証明した場合、上市する加盟国の公用語でのEU適合宣言が必要となる。附属書に適合宣言の構成・内容が盛り込まれている。
■ 提案では、2026年12月31日より適用される内容が盛り込まれている。

人による消費を意図した水と接触する製品に使用される最終材料を試験し、承認する手順と方法に関する実施決定案

■ 決定案は、試験の性能を保証するために、試験要件を定めるもので、有機材料、セメント材料、エナメル材料、セラミック材料については、ヒトの飲用を意図した水と接触する製品を分類することにより、リスクベースアプローチに基づく試験要件としている。
■ 飲料水指令第11条(2)(c)に規定される、製品に使用される最終材料の試験及び承認の手順と方法を、附属書1から6に規定している。
■ 人による消費を意図した水と接触する製品に使用される最終材料を試験し、受け入れることができるようにするためには、最終材料の各カテゴリー、すなわち有機材料、セメント系材料、金属材料、エナメル、セラミック、またはその他の無機材料について衛生要件を定める必要があるとされている。
■ 使用する方法論は、飲料水指令附属書5に基づき、製品の適合性評価手順の実施において考慮されるべきで、最終材料の試験には、関連物質及びその他の関連パラメータの特定が必要。これらの物質やパラメータは、移行水(migration water)中で分析される必要がある。
■ 提案では、2026年12月31日より適用される内容が盛り込まれている。

附属書1:最終有機材料
附属書2:最終金属材料
附属書3:最終セメント材料
附属書4:最終エナメル、セラミック材料、その他の無機材料(ガラスを含む) 

人による消費を意図した水と接触する材料又は製品の製造において使用が許可される出発物質、組成物及び成分の欧州ポジティブリストを確立する実施決定案

■ 飲料水指令では、有機材料、セメント材料、金属材料、エナメル材料、セラミック材料、その他の無機材料など、人による消費を意図した水と接触する材料や製品の製造に使用が許可され、同指令の第11条に該当する材料の種類ごとに、物質、組成、成分の欧州ポジティブリストの制定が規定されている。
■ リストには、必要に応じて、飲料水指令第11条(2)(a)に従って採択された方法論に基づいて決定される物質、組成、成分の使用条件、および移行限度を含める必要がある。
■ 使用条件には、純度基準、出発物質、組成物または成分の物理化学的特性に関する条件、その製造工程または最終材料の製造工程に関する条件、特定の製品への使用、これらの製品の使用、またはさらなる試験要件が含まれる場合がある。
■ 最初の欧州ポジティブリストには、複数の出発物質、組成物または構成成分を網羅するグループ項目が含まれる。
■ 欧州のポジティブリストのグループ項目は、徐々に、グループ内の個々の出発物質、組成物または成分で置き換える見込みで、経済事業者は、その出発物質、組成物または成分の安全性を証明できる場合のみ、最初の欧州のポジティブリストのグループ項目に頼ることができるようにするべきとされている。
■ 提案では、2026年12月31日より適用される内容が盛り込まれている。

対象 ポジティブリスト
有機材料の出発物質およびそのグループ 附属書1の表1および2
金属材料の組成物質およびそのグループ 附属書2の表1および2
セメント材料の有機構成物質およびそのグループ 附属書3の表2および3
エナメル、セラミックおよびその他無機材料材料の組成物質 附属書4の表1

欧州ポジティブリストに含まれる出発物質、組成物及び成分の試験方法及び承認方法に関する指令 (EU) 2020/2184の適用に関する規定を定める実施決定案

■ 飲料水指令に基づき、欧州ポジティブリストに含まれる出発物質、組成物及び成分の試験方法及び承認方法に関する規定を定めるもの。
■ 出発物質、組成物質、構成物質の試験および承認(第2条)、試験方法論(第3条)、欧州ポジティブリストにおける承認方法論(第4条)が規定されている。
■ 提案では、2026年12月31日より適用される内容が盛り込まれている。

参考情報

■ 意見募集:人による消費を意図した水と接触する製品の適合性評価手続き及びその手続きに関与する適合性評価機関の指定に関する規定を定める委任規則案
■ 意見募集:人による消費を意図した水と接触する製品に使用される最終材料を試験し、承認する手順と方法に関する実施決定案
■ 意見募集:人による消費を意図した水と接触する材料又は製品の製造において使用が許可される出発物質、組成物及び成分の欧州ポジティブリストを確立する実施決定案
■ 意見募集:欧州ポジティブリストに含まれる出発物質、組成物及び成分の試験方法及び承認方法に関する指令 (EU) 2020/2184の適用に関する規定を定める実施決定案

飲料水指令とは?

飲料水指令は、その名の通り、人が飲むことを意図した水の管理に関する法令です。
もともとは、指令98/83/ECとして知られていましたが、新たに指令(EU) 2020/2184として整備され、新たな内容が多々盛り込まれています。

概要

■ 指令の主な目的は、人の健康を飲料水の汚染から守るための改正規定を導入すること、人による消費を意図した水へのアクセスの改善、費用対効果の高いリスクベースの水質監視手法の導入が挙げられている。

■ 「人による消費を意図した水」とは、次のものをいう。

● 原水の状態または処理後の状態で、公共施設および民間施設の両方において、飲用、調理用、食品準備用、またはその他の家庭用として使用されるすべての水で、起源や湧水を含む、配給網からの供給、タンクローリーからの供給、ボトルや容器に入れられた水かどうかに拠らないもの、および
● 製品または物質の製造、加工、保存、販売のために食品事業で使用されるすべての水

■ 適用外:ナチュラルミネラルウォーター(湧水は除く)(指令2009/54/ECの対象)、医薬品である水(指令2001/83/ECの対象)
 EU加盟国は、次のものを免除することもできるとされている。

> 水質が直接・間接を問わず消費者の健康に影響を及ぼさないと当局が確信する目的のみに使用される水
> 1日平均10m3未満、または50人未満にしか供給されない個別供給による消費用水

■ 指令では、最低限の水質基準を設けている。微生物学的パラメータや、化学的パラメータ、指標パラメータなど、各種閾値が設けられている。

■ さらに、指令では、水と接触する取水、処理、貯蔵、流通に使用される材料が、次のことをしないように規制している。

> 直接的または間接的に人の健康を損なう
> 水の色、におい、味に悪影響を与える
> 微生物の増殖を促進する
> 汚染物質が、その物質の意図された目的に必要なレベルよりも高いレベルで水中に溶出する

関連して、認可された出発物質と最終物質を受け入れるための追加の試験方法と手順(2024年01月12日まで)、および認可された出発物質のリスト(2025年01月12日まで)を段階的に導入される旨も規定している。

目次

第1条 目的
第2条 定義
第3条 免除
第4条 一般義務
第5条 品質基準
第6条 コンプライアンスのポイント
第7条 水安全へのリスクベース・アプローチ
第8条 人による消費を意図した水の取水地点の集水域のリスク評価とリスク管理
第9条 供給システムのリスク評価とリスク管理
第10条 国内流通システムのリスク評価
第11条 人による消費を意図した水と接触する材料に関する最低限の衛生要件
第12条 人による消費を意図した水に接触する処理化学物質およびフィルター媒体の最低要件
第13条 モニタリング
第14条 是正措置および使用制限
第15条 適用除外
第16条 人による消費を意図した水へのアクセス
第17条 公衆への情報提供
第18条 実施のモニタリングに関する情報
第19条 評価
第20条 レビューおよび附属書の改正
第21条 委任の行使
第22条 専門委員会手続き
第23条 罰則
第24条 移転
第25条 移行期間
第26条 廃止
第27条 発効
第28条 宛先

附属書1 人による消費を意図した水の水質評価に使用されるパラメトリック値の最低要件
附属書2 モニタリング
附属書3 パラメータ分析仕様
附属書4 公衆への情報提供
附属書5 第11条で言及される方法論の設定に関する原則
附属書6 (※廃止や国内法化について)
附属書7 相関表

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